チャンスは6度 見るまで帰れません スーパーブルーとオーロラを求めて北極圏へ

チャンスは6度 見るまで帰れません スーパーブルーとオーロラを求めて北極圏へ


アイスランド南部にあって冬にしか見られない青の氷の洞窟、通称スーパーブルーとオーロラを肉眼で見てそれを綺麗に写真におさめるという人生に1度あるかないかのチャンスが巡って来た。ここまで色々な旅を経験してきたが今回は天候が相手なので結果の保証がない難易度の高い旅と感じる。ホテルや観光地を見て回るいつもの任務とは重さが違う。天気次第でオーロラは6連敗の可能性、洞窟も絶対入れる保証はない。要するに自分に運があるかないかを試す旅。バナナで釘が打てるくらい寒いかもしれない冬の北極圏へ夢と防寒具を抱いて出発! 行程は次の通り。見ないで帰るわけにはいかない。

1日目:レイキャビック
2日目:南アイスランド
3日目:レイキャビック
4日目:ブルーラグーン近く
5日目:キルナ
6日目:キルナ

出発2週間前くらいから毎日ネットで天気予報をチェック。ほぼ毎日曇りか雪というかなり悲観的な予報に暗雲が立ち込めるがまだ日があるので予報はあくまで予報ととらえ、奇跡の逆転を信じて待つ。 フライトは快適なフィンエアー。まず行きの機内で中条あやみさん主演の雪の華を鑑賞。余命宣告を受けた主人公が赤いオーロラが見たいといってフィンランドのレヴィまで行くというシンプルなラブストーリーだった。置かれた状況は違うが目的は同じ。まずはこれを見て心を整える。映画なので当然最後にオーロラは出現するがこっちは現実なので色はなんでもいい。とにかく見たいということだけを祈ってヘルシンキ乗換でアイスランドに向かった。

ヨーロッパの最北に位置するアイスランドは国土全体がオーロラの最も頻繁に現れるベルト帯の直下にある世界でただ一つの国で首都のレイキャビックでもオーロラが見られる珍しいところ。調べたところ時期は比較的天候の安定している9月から4月の上旬あたりまでだが11月から3月くらいの確率が高い。1月なので時期は当てはまるから悪くないがそれはあくまで確率の話。一番重要なのが天気。雲がないことが最低条件で雪が降ったらアウト。つまり運そして縁があるかないかである。カナダと比べて暖かいのでスキーウェア程度の装備で鑑賞できる、と予習をしてアイスランドに到着。今回は次のキルナを含めて6回しかチャンスがないのに早速初日から天気が悪くアウト。

【氷河によって作られた奇跡の青い洞窟・ブルーアイスケイブ1泊2日ツアー】

アイスランドの南東部にあるヴァトナヨークトル氷河は首都レイキャビックからおよそ400キロのところにある。ここには近年注目を集めているスーパーブルーと呼ばれる青く輝く氷の洞窟があってその見学をメインに組んだツアーが冬季限定で催行される。この日は20人足らずのグループで日本人は私だけだった。まずは1日目の観光から。
最も美しい滝の一つと言われるスコゥガフォス。400階段を上って頂上へ、さすがにきつい。


玄武岩の円柱がそびえる黒砂海岸レイニスフィヤラ


ブラックサンドビーチ


岩柱群レイニスドランガル


宿泊はスカフタフェットル自然保護区エリアのゲストハウス

夜はオーロラハント。ドライバーさんから今日はチャンスありだと言われ、その気になって明かりの少

ない位置まで移動。寒空の下、待ち構えること1時間。曇ってきたのであきらめて部屋に戻る。カメラをセットしたまま部屋の窓から夜空をずっと眺めてオーロラの出現をさらに2時間近く待ったが雨が降ってきたのでギブアップ。
そして3日目、ほとんど寝てない状態でメインの氷の洞窟へ。スーパーブルーと呼ばれているが一般的にはアイスケイブと表現される神秘の洞窟がこの旅のメインの1つ。直前の天候によって催行の可否が決まるというリスクの伴うツアー。オーロラの6回に対してこちらのチャンスは1度。夜中の雨が止んだとはいえかなり際どい空模様の中、予定通り早朝にホテルを出発しヴァトナヨークトル国立公園へ。

このヴァトナヨークトルはヨーロッパ最大の氷河でその総面積は約8千平方キロ。アイスランド国土の約8%を占めるというスケール。東京ドームが何個などという野暮なレベルではない。公園内に入ってからホイールのデカい4WDの車に乗り換えるのだがここからがややしんどい。酔うほどに激しく揺れる悪路を30分近く耐える。とてもゆっくり景色なんて見ている状況ではない。

さらに車を降りてから洞窟まで足場の悪い道を30分近く歩く。

ようやく氷河が見えてきたところでガイドの説明と注意が始まる。洞窟内は整備されておらず足元が不安定、そして氷の上を歩くので靴にアイゼンを装着、さらにヘルメットを着用していざ出陣。ガイドの雄叫びで参加者のテンションがぐっと上がる。さすが、客を乗せるのがうまい。1歩1歩、気をつけながら氷の内部へと進んでいく。そしてついに目の前に広がるサファイアブルーの眩しい輝き。これは凄い!

綺麗!なんて神秘的で感動的。が、しかし!なんとここでカメラ故障という痛恨のアクシデント。突然動かなくなり急遽スマホで撮ることに。なんという悪運、でも少しでも風のあると催行中止になるから入れるだけ運が良いとプラス思考に切り替える。

このスーパーブルーに入場ができるのは11月頃から3月頃まで。夏に溶けた水によって厚い氷の中に長いトンネルや洞窟が自然に形成される。氷河は少しずつ動いているので毎年洞窟の位置、大きさが変化するというのがとても興味深い。ではなぜ青いのか?ネットで調べてみた。私たちが口にする氷は空気が混じるので白く見えるがこの洞窟の氷は空気が少ないので透明度が高い。透明度の高い氷の中を太陽の光が進むと氷が赤色を吸収してしまい青色だけが反射されるので青く輝いて見えるらしい。また氷が厚いほど洞窟の中が青く光って見えるらしい。これだけ青いんだからかなり厚いのだろう。


尚、洞窟内は安全面の観点から個人では行くとは出来ず、必ずガイド付きのツアーに参加しなければならない。その後はヨークルスアゥルロゥン氷河湖とすぐそばのダイヤモンドビーチへ

風が強くなってきた、かなり寒いのでどちらもゆっくり見て感動している余裕がない。また足場が凍って滑りやすく案の定、何人か転んでいる。

必死の思いで何とか撮影だけ済ませてバスに逃げ込む。


ツアーのドライバーさん

【アイスランドでのオーロラ鑑賞】
ツアー終了後レイキャビックに戻って3日目の夜もオーロラを待つが悪天候でアウト。オーロラを確実に鑑賞するには滞在日数を長くすることだろうが、短い場合は最適のポイントに案内してくれる現地ツアーへの参加が効率的と言われる。またブルーラグーンの周辺など人と明かりが少なく空がクリアになりやすいエリアに宿泊するのもチャンスが高まるということで4泊目はノーザンライトインへ。

我々日本人が呼ぶオーロラを地元の人はノーザンライトと呼ぶ。まさにオーロラを見るために造られたようなホテルでオーロラが現れたら電話で起こしてくれるサービスもあるのが嬉しい。


日本語の案内に惹かれる

露天温泉プールのブルーラグーンの近くにあってから送迎バスが1時間に1本出ている。肝心なオーロラはまたしても曇りと雨で視界に入らず。嗚呼これで4連敗・・・・

【スウェーデン北部、ラップランド地方のキルナへ】
オーロラチャンスはあと2回しかない、いやあと2回もあると前向きに考えてレイキャビックからコペンハーゲン、ストックホルム経由でキルナへ。直前の天気予報は2日とも晴れ、オーロラ予報のサイトも出現の可能性を示す緑の帯がいい感じでグルグル回っている。よし、これはいけるという期待と同時にダメな場合を想定し、さらに北のアビスコへ行くというプロテクションを頭の中で用意しながら予定通り深夜キルナ空港に到着。

空港内にあるトールフリーの電話でタクシーを呼ぶとすぐに来た。ホテルまで向かうこと20分。とにかく寒い。アイスランドの比ではない。タクシーはメーターではなく一律で400スウェーデンクローナ(約4500円)をカードで支払う。次に行ったストックホルムを含めスウェーデンで現金はほぼ使わないカード社会。要るとしたら公共のトイレくらいなのであらかじめ日本で両替しておいた小銭が役に立った。


真夜中のキルナ

キルナは天候が比較的安定していることから冬には高い確率でオーロラを見ることができる。オーロラを絶対見なければならない私が選んだのは街の中心ではなく、少し離れたキャンプリパンホテル。街の明かりがほとんど届かない森に囲まれており、オーロラ鑑賞には絶好のホテルということを聞いてここしかない!と判断し2泊した。今の時期は極夜のため日照時間は3時間ほど。10時に陽が昇ったと思ったら13時にはあっけなく沈む。つまり夜が長い分オーロラが見える時間が増えることになる。
が、実際に現れる時間は21時前後。到着は0時を過ぎていたので時間がない!

部屋に入って荷物を置いたら速攻でホテル敷地内の観測ポイントへザクザク歩く。ここはホテルの明かりさえ届かない、完全な暗闇でオーロラ鑑賞には最高のエリア。雪も深く、熊か幽霊でも出てきそうな寒さと恐怖を感じながらオーロラの出現を待つ。10分もしないうちに北の空に煙のような線が見える。もしかして?と思いシャッタースピードを遅くして撮ったが何も映ってない。IPHONE(11)で試したところ、なんとうっすら映っているではないか!これがオーロラか!と姿をとらえたその瞬間、何とも言えない感動で興奮した。かなり寒いので既に鳥肌は立っているから他に何と表現して良いのかわからないが目標は達成した。そして徐々に目が慣れてきたその後、アーチを描くように変化する様が美しすぎるっ!部屋に戻ってもまだ見えるっ!5泊名にしてようやく結果が出たのでもう悔いはない。安心して就寝。

キャンプリパンホテルの部屋はすべてコテージタイプ。
ドアを開けてすぐにオーロラが見られる。


寒い中でオーロラが現れるのを待つことが辛い人のためにロビーに待合室も


露天風呂に入りながらオーロラが楽しめるスパもある

とにかくオーロラ鑑賞をするには最高のホテルで昼はスノーモービルを使うツアーやスキー、アイスフィッシング、犬そりツアーまでラップランドの大自然を肌に感じることができるアクテビティが揃っている。


ホテル内のツアーデスクで申込可能。

2日目の午前はアイスホテルへ。キルナの東に車で約20分のユッカスヤルヴィという小さな村には世界初の氷でつくられたホテルがある。

客室は日本を含む世界各国のアーティストによってプロデュースされていてそれぞれのコンセプトが異なるのが特徴。氷が溶けたら作り直し毎年その姿が変わるなど大変興味深い。宿泊客じゃなくても入場料を払えば見学可能。柱から彫刻、ベッドまですべてが氷と雪でできているというのが凄い。


シーツはトナカイの皮


バーカウンターもこんな感じ


英語のガイドツアーもある

オプショナルツアーがちょっと高くて時間に自由がないのでタクシーで行ってじっくりと見学した。午後はキャンプリパンホテルに戻ってスパでリラックスタイム。


フランスから来た人たちと仲良くなってサウナと露天風呂で情報交換。

ここで珍しい空模様に遭遇。この不思議な空についてスタッフの女性に説明を求めたところ彼女もこの地で生まれ育って見るのは3回目というくらい非常に珍しいそうだ。彼女のご年齢から推測させて頂くと10年に1回の珍風景と言える。これはラッキーだった。

スパでゆっくりした後、夜は犬そりツアーへ。ホテルから車で約1時間かけて奥地へ向かう。うまく写真が撮れなかったがとにかく星が多い。社員旅行で行ったテカポよりも多く見えた気がした。いや気がしたのではない、多かった。途中オーロラを見るために止まってくれるがまだ時間が早かったのか、姿を現すことはなかった。


ガイドのエブリーナさんはとても優しくて逞しい頼りになるガイド。

ホテルに戻って食事をしていたらオーロラが出ているとホテルスタッフが知らせに来てくれた。
こういったサービスを含め2日連続でオーロラが見られたのだからキャンプリパンホテルに泊まって
大正解だった。

この2日間でドライバーもツアーガイドも時間が正確だと感じた。不慣れな国を旅する人にとってこの部分はとても重要。今回関わったスウェーデンの人たちはみんな親切で素晴らしかった。

空港に向かう帰りのタクシーで運転手さんが「キルナの夏は白夜で冬と違って面白いから真夜中の太陽を見に夏にまた来てください」と言われたことが決して社交辞令に聞こえなかった。

2020年1月 櫻本

★★★★★キルナでオーロラ鑑賞
時期を狙って最低3泊。オーロラ鑑賞に特化したキャンプリパンがお勧め

★★★★ブルーアイスケイブ
これぞアイスランド!冬季限定の氷の洞窟。入れるかどうかは天候次第。
毎年姿が変わる自然の力。眩しく輝くブルーに感動

★★★ノーザンライトイン
オーロラを見るならレイキャビックから少し離れたブルーラグーンの地区へ
巨大露天温泉プールとセットで楽しんで。


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