西アフリカ6か国周遊―これぞアフリカ!な国々探訪記/西アフリカ第4弾 コートジボワール編

西アフリカ6か国周遊―これぞアフリカ!な国々探訪記/西アフリカ第4弾 コートジボワール編


象牙海岸・・・勝手な妄想で旅情は掻き立てられていた?!

コートジボワールとは COTE D’IVOIRE フランス語で象牙海岸のこと。西アフリカの大西洋に面したこの国は、かつて象牙を積みだしていた港があったことからこの名が付いた。日本では昔はこの国を象牙海岸共和国と呼んでいたこともある。
私は子供のころ象牙海岸という名前を聞いて勝手にイメージを膨らませていた。それはこんな風だ。アフリカの荒波打ち寄せる海岸。近くのジャングルにはたくさんの象がいて、カラフルなターバンを巻いた黒人奴隷が象に乗せて運んできた象牙を船に積み込んでいるシーン。妄想は私の旅情を掻き立てたものであった。
そんな世界が現代において実際にあるとは期待しないまでも、やはり初めてコートジボワールを訪れるとなった時は、かなり浮足立っていた。果たしてどんな国なんだろう?


セントポール大聖堂

コートジボワールへ向け、出発だ!

玄関口はコートジボワールの最大都市アビジャンの空港だ。フライトはここへ着く。海辺に位置するかつての首都だったアビジャン。今の首都は内陸部にあるかなりかけ離れたヤムスクロに移ったそうだ。知らなかった。ずっとコートジボワールの首都はアビジャン、というのが地理のお定まりだったのに。そしてアビジャンは海辺の町だから、象牙は無理にしても妄想に近い風景があるかも・・・・??
まずは渡航に向けての準備からすべては始まった。コートジボワールのビザ取得は結構面倒であった。本人申請が必須で、代理は頼めない。黄熱病のイエローカードがなくては申請できないし、英文の残高証明も作成する必要があった。行ってみるとアメリカみたいに指紋も取られて結構シビアだ。
その代わり着いたアビジャンの空港での入国審査は比較的簡単であった。出入国カードもない。でも現地でもイエローカードの提示はマストだった。
通貨はCFA セーファーに両替する。セネガルやマリなど西アフリカ8か国共通の通貨だ。公用語はフランス語の国。皆さんフランス語は通じやすいが、60の種族がそれぞれの言葉を持っているところは、これも西アフリカらしい国のひとつだ。ちなみに英語は少しは通じる程度。


ソフィテル・アビジャンのスタッフと


ガイドのコーヒーさんと、グランバッサムの博物館にて

コーヒーさんへのプレゼント

アクワバ!ようこそ。地元の言葉で出迎えてくれたのはガイドのコフィーさん。小柄でポッコリお腹の愛嬌たっぷりの男性ガイドさんだ。黒人なのでにっこり笑った白い前歯が目立つ。「日本人は皆さん私をコーヒーさんと呼ぶので、コーヒーでよろしく」ということで、その後はずっとコーヒーさんとなった。
実は今回、西アフリカへ行くにあたって、日本から古着を持って行って現地の人にプレゼントしてみよう。そう思って、スーツケースに日本製のスーツやネクタイ、ワイシャツの古着を詰め込んでいった。そしてそれらを試しにコーヒーさんにプレゼントしてみた。すると、コーヒーさんは飛び上がるように大喜びしてくれ、両手でがっしりと固い握手。日本の仕立てのスーツ一式はこちらでは貴重品のようだ。
翌朝、観光に出かけるとき、コーヒーさんは早速そのスーツを着て現れた。いつもはTシャツ一枚で過ごしているので、スーツなど着ることがないし、ネクタイも締めたことがないようで、お腹周りがきつそうだったけれど、特別な行事でもあるような装いが自慢気。こっちまで嬉しくなった。

この国の概要をコーヒーさんに聞く

コーヒーさんのガイドは丁寧でわかりやすかった。この国の宗教は60%がイスラム教で35%がキリスト教であること。この国の主要産業は80%農業で、カカオの生産はガーナでなく、なんとコートジボワールが世界一だったと初めて知った。ほかにもパームオイル、バナナ、パイナップル、カシューナッツ、綿、サトウキビ、アボカド、オレンジなどは主要生産物。パイナップルやバナナは年中いつでもあって、5-7月の大雨季や10-11月の小雨季にはマンゴやパパイヤがよく採れる。海辺の国なのでフィッシュマーケットも多いそうだ。
心配していた治安に関しては、近隣の国々、マリやブルキナファソに比べればやや安全であること。アビジャンの町もエリアによって治安が異なるので、注意が必要だとのこと。2010年から2011年にかけて大統領選挙のあったときに内戦が起こったが、また2020年の秋にはふたたび大統領選挙なので、荒れるんじゃないかとコーヒーさんは苦い顔をした。


サンクチュールマリアル教会


セントポール大聖堂


アート


サンクチュールマリアル教会

アビジャンの見所はユニークな教会から

アビジャンの人口は500万人。町は9つのエリアに分かれている。大使館や官庁の集まる静かなエリア・ココディ地区。高級住宅街や高級ホテルがあってビジネスセンター街であるプラトー地区、人通りが最も多く賑やかなアジャメ地区はアフリカの混沌としたムードを味わえるエリアだ。
中でもプラトー地区でユニークな外観を見せているセントポール大聖堂はアビジャンで一番の見所と言っていいだろう。1980年、イタリア人建築家による設計で5年の歳月をかけて建てられた、5000人収容の巨大な教会だ。内部にはアフリカの人々や動植物をモチーフにした美しいステンドグラスが飾られている。その中にジャングルにいる象やカラフルな布を巻いた人々を描いたステンドグラスを見つけた。これこそ私がコートジボワールに描いていたイメージ通りだ。嬉しくなった。

もうひとつのモダンな教会がサンクチュエル・マリアル教会。青と白で縦長の渦巻きデザインがすごく斬新だ。こちらも収容人員が多いスケールの大きい教会だ。
モスリムが多いので大きなモスクもちゃんとあった。ブルーのドームが印象的なプラトー地区にあるグランドモスクは、資金不足のためにまだ完成していないとか。


フィッシュマーケットにて


フィッシュマーケットにて


フィッシュマーケットにて


フィッシュマーケット


フィッシュマーケット


フィッシュマーケットにて


フィッシュマーケット


フィッシュマーケット

人々が予想外にフレンドリーだった!

フィッシュマーケットは必見スポットの一つだ。たくさんの生の魚に加え、特徴的なのはスモークされた魚が多く売られていること。そこかしこに香ばしい匂いが立ち込めている。色とりどりの衣装に身を包んだ地元の女性たちが山積みにした大きな魚を売っていた。隣ではトマトやおくらやプチナスや玉ねぎ、トウガラシなどが並んでいる。
ギニアなどの市場に比べて人々はフレンドリーだ。自分から写真を撮って!とポーズしてくれる人も時々いたりして嬉しくなるほど。ボンジュール、サバー?と明るく声をかければ、ノリで撮らせてくれる女の人も多いようだった。


歴史的な町並み


郵便局跡


歴史的な町並み


博物館にて


博物館


博物館

朽ち果てた町と美しいビーチのギャップがグラン・バッサム

コートジボワールの4つの世界遺産のうちのひとつ、グラン・バッサム歴史都市は、アビジャンから45㎞、車で約1時間のところに位置する。今町を歩けば、ここがかつてはフランスの植民地で、なおかつ初めての首都として栄えたという栄光の過去が虚しいほどの廃墟ぶりだ。建物はそのまま放置され、ますます荒れ果てているのがわかった。世界遺産だからむしろ下手に手を付けられないせいか?不思議な光景だ。
かつての郵便局だった立派な建物も朽ち果てて、HOTEL DE FRANCE というかつてのホテルなどは中に木が茂り、窓や扉から木の枝が飛び出しているという異様な姿をさらしていた。ハンパでないインパクトのある廃墟を私は初めて目の当たりにしたのだった。まともに保存されていたガバナーズハウスは内部が民族文化博物館となっていて、中に入れば展示品の説明もしてもらえた。
グラン・バッサムは海辺の町だ。少し足を延ばせば美しいビーチも見つかった。そこにはリゾートホテルもいくつか並んでいた。ビーチに面し、そよ風が心地いいASSOYAM BEACH HOTELの海辺のオープンレストランでランチタイムだ。カジュアルな店ながら、味もサービスもよくてびっくり。格別に楽しいグルメタイムであった。
前菜のアボカドのシュリンプカクテルは、大きなアボカドの半分の種を取ってそこにぷりぷりのエビのオーロラソース和えがたっぷり詰めてある。アボカドが適度に柔らかくて絶品。かなりボリューミーだがぺろりと平らげた。メインに魚を頼んだら、3枚におろした白身魚をグリルしてスパイスが振りかけられ、トマトの詰め物を添えて出てきた。魚にかけられたサラサラで優しい味のトマトソースは白いご飯にかけても美味しかった。バゲットもちゃんと美味しい。
デザートのフルーツカクテルも、最後のカフェオーレもGOOD!さすがはフランスの植民地だったお国柄だと感心しきり。


町のミュージシャン


ビーチで布を売る女性


ビーチで布を売る女性

そして面白いのがビーチに大判スカーフを売りに来る女性たち。自分たちもカラフルな布を腰に巻いている。売りもののカラフルできれいなスカーフを広げて見せて、しきりに買わないかと呼びかけるのだ。どうやらレストラン内には立ち入り禁止なので、お客さんに見に来て!!としきりにアピール。
気になる華やかな色柄のがあったので、ビーチに見に行くと、値段交渉の始まりだ。最初1枚4000CFA(約800円)と言われたが、交渉して2枚5000CFA(約1000円)まで値引きしてもらった。その時はしめしめと思ったが、後で考えると1枚500円はこの国にしては結構高めだったかも。でも気に入ったのが手に入ったのでよかった。


ASSOYAM HOTEL


ASSOYAM HOTELのレストラン


ASSOYAM HOTEL


ASSOYAM HOTEL

ターバンを巻いた奴隷やジャングルの象なんて、結局海辺で繰り広げられるコートジボワールの妄想シーンは現代ではお目にかからなかった。当たり前と言えば当たり前だが。
けれども実際にコートジボワールへ行ってみて初めて知ったあれやこれやに満足している私であった。横でニコニコ白い歯で笑っているコーヒーさんも嬉しそうだったし。


ビーチで布を売る女性


アビジャンの女性と

写真・文 井原三津子

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