真っ白な塩の大地がどこまでも続くウユニ塩湖

真っ白な塩の大地がどこまでも続くウユニ塩湖

ウユニ塩湖は果てしなく白い

成田から24時間かけてボリビアの実質上の首都ラパスに到着。明日のウユニ湖行きにそなえてゆっくりしたいところだが、お仕事、お仕事。さっそく市内観光を開始する。ラパスの標高は3650mと富士山とほぼ同じ高さ。すり鉢型の盆地の中に110万人が暮らしている。ここの町の特徴は、町の真ん中に行くほど富裕層が住んでいることだ。狭い土地が外側に向かってどんどん広がり、見渡す限りの家、家の状態だ。6600mのイリマニ山をバックに雲がたたずむラパスの町は本当に絵になる。

イリマニ山バックに雲がたたずむラパスの町

まずは町の中心「ムリリョ広場」に行く。革命家のムリリョ将軍を記念して造られたこの広場は、0㎞ポイントと呼ばれ、今日のボリビア設立の象徴となっている。広場の前に建っているガバメントパレスの時計が変わっている。反対周りなのである。これは独立後2度と昔の時代に逆戻りしないようにとの意味をこめてだそうである。ラパスとは平和を意味し、国民の平和を願う気持ちが込められている。広場の脇には国花の「カントゥータ」がきれいに咲いていた。

ムリリョ広場

反対回りの時計

国花カントゥータ

町の中心・サンフランシスコ寺院

途中お腹がすいたので、名物「サルティーノ」を試食してみる。ミート、チキン、野菜と3種類あったが、ミートが一番口に合った。結局これが今回の旅行の中で一番美味しかった。高いビルが建ち並ぶすぐ裏は下町の風情でごみごみしており親しみ易さがある。魔女横丁(ウイッテイ・マーケット)には、その名のとおり魔女が飾られているが、民芸品・編み物・銀製品が溢れている。町全体を眺めたい時は、キリキリ(KILIKILI)の丘の上に行けば、360度四方を見渡すことができるのでお薦めだ。

名物サルティーノ

魔女横丁で恥ずかしがっている女性

キリキリの丘からのラパス

午後は町から40~50分離れた「月の谷」を訪れる。宇宙飛行士アームストロング船長が、隣接するゴルフ場でプレイしたとき、自身が降り立った月によく似ていることから「月の谷」と名付けられたそうだ。なるほど月はこんな感じであったかと思わせる。

月の谷

泊まりは日本人オーナーの南雲さんが経営する「一番ホテル」に宿泊。気楽に相談に乗ってくれ、的確なアドバイスをしてくれるので安心だ。お世話になった方も多いに違いない。

一番ホテル

翌日は04:30にホテルを出発し、06:45発のアマソネス航空にて50分のフライトでウユニに向かう。CRJ-200型(カナディア・リージョナル・ジェット)、50人乗りの飛行機だ。到着までの窓からの幻想的な景色はさらにウユニ塩湖への期待をふくらませる。ただ、12月~2月が雨期で、今年もすでに雨期が終わっており、話題の鏡のような湖が見れるかどうか不安を抱えたままの訪問である。早朝なので朝食でもと誘われカフェに入ると、何とビッグサプライズが待っていた。バースデイケーキが用意され、3月31日の私の誕生日を祝ってくれたのである。思ってもいなかっただけに、嬉しくて顔はくずれぱなしになった。現地の方の心遣いに感謝。

CRJ-200

誕生日のケーキ

それではウユニ湖の観光だが、定番だと「列車の墓場」から始まるが、私の希望でウユニ市内を先に見てまわった。ウユニ駅は今も鉱石輸送の重要な駅であり、この駅を中心に町は出来上がった。ホテルも50軒近くあり、世界中から沢山の観光客がウユニ人気を反映して訪れており、朝10時にはウユニ塩湖観光ツアーの車が延々と出発していく。ホテルの質も比較的高く、スタンダードクラスでも安心して泊まれる。

ウユニ駅

ホテル・タンボ・アイマラ

ホテル・ラ・ヒラソレス

ホテル・ヤルデナス・デ・ウユニ

最初の観光は「列車の墓場」。電化に伴い蒸気機関車が使用されなくなりそのまま放置されたものだ。まさに墓場の如く沢山の機関車が捨て置いてあるが、周りの殺伐とした風景に何故かマッチする。今日のウユニ湖人気を機関車たちは予想できただろうか。

列車の墓場

次に「コルチャニ村」を訪れる。地元の人が観光客向けにお土産を陳列し販売しているのだが、中でもみんなの関心はウユニ塩湖の塩に集中する。袋詰めを実演を見ていると購入意欲がそそられる。重いけど10袋お土産に買ってしまった。

コルチャニ村

塩の袋詰実演

いよいよウユニ塩湖に足を踏み入れて行く訳だが、その前にウユニの意味を確認しておきたい。ウユとはリャマ等の動物が寝る場所を意味する。ウユニのニはホテル、宿泊場所を表わすので、ウユニとは動物のホテルとなる。昔、鉱石の輸送の為、リャマの背中に積んで輸送した。リャマは決して強い動物ではなく、荷重も20~25㎏位しか積めない。しかしこつこつ歩くことができる。リャマの休憩のため、20~25㎞おきに宿泊所が必要になったわけだ。いわばリャマのキャラバン隊の宿舎ということである。ウユニ湖は約100㎞X120㎞、面積12,000 ㎢という巨大な塩湖である。数百万年前、海底が隆起し水の逃げ場が無いので濃密な塩の湖が出来上がった。よく言われる鏡の様な湖とは、雨期の12月~2月頃に現れる。湖面の高低差がほとんど無く、フラット(平ら)なので、水が平均的に湖を覆う。深さは5㎝程。雨は周りの山に降り、湖にそそぐ。湖の上に雨が降るのは夜中なので、雨期に行っても昼間の観光には問題ない。ただ、湖に水が充分溜まっているときは観光の規制が警察によって行われる。1日あたり片道9㎞、往復20㎞、所要時間4時間が制限として課せられる。環境保護のため4年前から施行されている。4時間あれば観光には充分な時間ではあるが、行き先は制限され、例えばインカ・ワシ島には行けない。雨期とは言っても自然現象なので鏡のような湖が現れるとは限らないし、乾期でも水が残って鏡のような湖が見えて観光が制限されることもあり得る。すべては自然、雨しだいである。
では、今日はどうだったのかと云うと、雨期は終わっているが一部分水が残っている状態だった。先ずは湖に入ってすぐ、塩精製の為の削堀ポイントが目に入る。三角形の山に塩がもられ、乾くのを待っている。やがて乾いた後は製塩され私たちの食卓に届く。さらに進むと、湖の中の唯一の塩のホテル「プラヤ・ブランカ」に到着。ダカールラリー開催を記念したタワーがホテルの入場門の如く建てられている。この塩のホテルは今は宿泊はできない。環境保全のため、昼食や休憩のみの使用となっている。ホテルの前には世界中の国旗が旗めいている。実際世界中から若者が集い、そこらじゅうでランチボックスを開けている。周りは一面の白銀の世界なので、いたる所でトリック写真を撮っている。湖の中、また距離的にも格別のくつろぎの場所となっている。

ダカールラリー記念碑

プラヤ・ブランカ

プラヤ・ブランカの中でランチをとる家族

プラヤ・ブランカの回りでランチタイムの若者達

プラヤ・ブランカを出発するとしばらくして周りに誰もいない所に車を停め、マットと恐竜(ティラウス)のミニチュアをガイドが取り出してきた。ガイドのファンキーはマットに横たわり、恐竜をセットし、私にポーズを要求する。いい歳して恥ずかしさもあったが、やはり自分のトリック写真を撮れるのは正直嬉しかった。なかなかの写真ではなかろうかと自己満足。

恐竜とトリック写真

次は湖の中央に位置する「インカ・ワシ島」観光だ。インカは文字とおりインカ帝国のインカだが、ワシは鳥のワシではない。家という意味で、インカ・ワシはインカの家ということになる。以前海底であった証拠に、サンゴの化石でおおわれている。老体に鞭打ち頂上まで登ってみると、全方位を見渡すことが出来、白い大地がどこまでも際限なく続く大スペクタクルシーンが目に入ってくる。サボテンも景色を活かす調味料の役目になっている。高山病の心配を抱えながら登ろうか迷ったが、登頂して本当によかったと実感した。

インカ・ワシ島


インカ・ワシ島からの塩湖

さあいよいよ鏡のような湖を探して車は再出発。かなり走ってようやく水溜りを見つけるが、生憎の風でさざなみがでて映らない。少しの風でも波立ち、映してくれない。そのまま夕日ツアーに突入し、サンセットが進んで行くのを眺めていると風が止んできたのだ。逆さ富士ならぬ、逆さ山脈が見えだした。それも夕日の反対側はピンク色に染まり、逆さピンク山となった。我慢はするものです。あきらめずに待てば良いことは起きるのです。徐々に陽が落ち、真っ赤に空が染まっていくのを大満喫した次第です。

だんだん風もおさまってきた塩湖

ピンク色に染まった塩湖

夕日を捕まえた

夜は星空ツアー。この日はほぼ満月なので、眼には天の川、サザンクロス等がはっきり見えるのだが、カメラのシャッターは残念ながらおりなかった。星には責任が無いのでどこにも文句の云いようがないが、それでも合格点の星空ツアーだった。
翌日は05:00にホテルを出て、日の出ツアーに参加した。日の出は06:30。それまで
徐々に空が変化していくのはドキドキする。幸運にもこの日は風が無く、逆さ写真を沢山撮ることが出来た。夜明け前に、遠くのウユニ市内の明かりが空に映えて人工的な美しさも堪能できた。空の雲も湖に映し出されて、山と雲が合体した神秘的な逆さ絵になった。早起きし、冷い水の上を長靴をはいて我慢したご褒美だろう。



日の出のウユニ湖

午後はウユニ湖ならではの塩のホテルの視察をした。最初の「ルナ・サラダ」はとても可愛らしいホテルだ。ロビーは狭いが、それを補うべく何ヶ所もリビングスペースが設けられている。塩のホテルでも決して柔らかいものではなく、レンガのように固い塩を切り出し、建築資材として利用している。コンクリートほどではないが相当な固さである。


ルナ・サラダ

2軒目の「パラシオ・デル・ソル」はロビーが広く開放的だ。廊下も広く、両脇に部屋があり使いやすい。部屋の天井が特徴的で鷹の羽を広げたように見える。2階には展望室があり、湖や周りの景色を見ることが出来る。



3軒目の「クリスタル・サマーニャ」は、エコロジーホテルだ。日差し、風向きを考慮にいれ建てられている。部屋は広く、素朴だが使いやすい。レストラン、バーは2階にあり、心地よい空間を醸し出している。廊下にはいくつかの像が塩で作られ、自然と共存することを意図している。3つの塩のホテルとも、それぞれ特徴はあるが、どのホテルに泊まっても満足するに違いない。クラスも、料金も変わらない。ただ、部屋数が少ないので予約が取れるかどうかが問題である。観光的にはウユニ市内のホテルに泊まっても何ら問題はないことは付け加えておきたい。


クリスタル・サマーニャ

ウユニ塩湖がこれほどまでに人気があるのは、なにもTV番組に取り上げられたばかりでなく、実際経験してみた感動が皆に広がったからだと思う。何しろ大自然の営みの中に、ちっぽけな存在である人間がいて、その自然の驚異を体感できるからであろう。いつまでも、どこまでも広がる真っ白な大地は忘れれない。
ラパスはウユニ湖へ行く為の経由地と思われがちだが、近郊に世界的価値のある所がある。一つはティワナク遺跡だ。ラパスから75㎞、車で約2時間。紀元前200年~紀元後1200年まで続いた文明の貴重な遺跡だ。インカ文明にも影響を与えたと云われ、その文化的価値は高い。今は野原になっているが、階段ピラミッドでは幅において世界一のアカパナ。カラササーヤ宮殿跡は長方形の巨石と角石を組み合わせた壁で囲まれている。ポンセと呼ばれるモノトリート(石像)はその中にある。半地下宮殿は180もの石の像が壁に刻まれており、見物客を凝視している。視覚的にはエジプトのピラミッド、メキシコのティティワカンには及ばないかもしれないが、歴史的、文化的価値においてははるかに凌ぐものがある。

カラササーヤの石像

半地下宮殿

カラササーヤ宮殿跡

最終日はチチカカ湖クルーズに参加した。ラパスからバスで3時間かかってワタハナの埠頭に到着。チチカカ湖は幅64㎞、長さ190㎞、最深部281m、標高3890m、大きさはなんと琵琶湖の12倍だ。高速水中翼船で最初の目的地コパカバーナに1時間半で到着。この日はマリア様のお祭りで、ラパスからも多くの人が歩いてお参りに来ており、カテドラルや町中がごったがえしていた。華麗なカテドラル、きれいな港など、わくわくさせる町だ。

コパカバーナのカテドラル

コパカバーナの港

次の寄港地・太陽の島は初代インカ皇帝マンコ・カッパクとその妹ママ・オクリョが降り立った島とされる。島には段々畑が多くあり、今でもジャガイモ、とうもろこし、キヌア等が栽培されている。ランチは絶好の眺望ポイントで取れるよう設定されている。傘を広げ、ちょっとハイキング気分である。

太陽の島

最後に訪れた「月の島」はかつての遺跡が残っている。今は76人の人達が住んでいる。ここからのアンデスの山々の眺めは最高である。09:00出航後、16:30着まで大きな湖と2つの島を楽しむ内容充実したクルーズだった。

月の島

遠くアンデス山を望む

最後の夜はラパス市内中心地にあるプレジデンテホテルで夜景を楽しみながら夕食をとりボリビアの旅を終えた。ボリビアには他にも世界遺産のポトシやスクレがあり、次回は是非とも周遊したいものだ。最後に一言、百聞は一見にしかずとはウユニ塩湖のことに違いない。
2015年3月29日~4月6日
本山泰久
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