パタゴニアの大自然の前で「枕草子」は生まれたか?〜アルゼンチン・チリ・ウルグアイ〜

パタゴニアの大自然の前で「枕草子」は生まれたか?〜アルゼンチン・チリ・ウルグアイ〜

自然が好きだ。自然が好きになったのはいつの頃から考えてみると、やはり旅行に出るようなってからだと思う。歳を経た事もあるかもれしない。若い時なんて周囲の何げない風景や植物を自分が愛でるようになるなんて考えもしなかった。それよりも人の創り出した巨大な遺跡や城塞の方がグッときてていた。
しかし世界の名だたる景勝地に訪れ、その自然の中にいると、どうして枕草子の時代から人々は自然に感動しているのかと、何となく自分のことのようにわかるようになってきた。

自然が創り出したものは、完成することはなく全てが流れて行く。光の加減、風の冷たさ、空気の匂い、虫の音、草木の色、山の景色、水の流れ、その瞬間瞬間で揺れ動く。調和したかと思えば、バランスを崩すこともある。

それはさておき、今回のパタゴニア。
いつかは行ってみたい憧れの場所であるとともに、個人的にはどこか「怖い」とか「恐ろしい」という感情も併せて感じる場所であった。世界には美しい景勝地は数あれど、人の生と死をもろともしない冷酷さを強く感じる場所はそうない。もし清少納言がパタゴニアで生まれていたら日本の四季と同じようにこの圧倒的な自然を愛でることはできただろうか、そんな気分でパタゴニアに行ってきた。

<<3/1:コロナウィルスのニュースが飛び交う中、出発>>

ミクロネシア、イスラエル、カザフスタンなど次々と日本を感染国として、日本人の入国に規制へ向かう情勢の中、私は成田空港へ向かっていた。今回のパタゴニアへの出張のためだ。
コロナウィルスのニュースは1月後半から徐々に大きくなり、かつてのSARSの時を凌ぐような影響が出始めていた。幸いにも今回の旅先であるアルゼンチン・チリ・ウルグアイはまだ影響はなかった(出発の時点では)。不安が全くなかったわけではないが、それよりも期待の方が強く、このような状況ではあるがアルゼンチンに向かうことにした。

●成田の様子
3月1日の午後4時頃の成田空港はかつてないほど閑散としていた、恐らく平常の時の2/1程度の人数かと思う。これから旅行に向かう観光客らしき人は少なく、特に子連れや若いカップル、ビジネスマンらしき人は見かけなかった。どちらかというと旅慣れた熟年カップル、フリーランスの仕事で行く日本人や、帰国する外国人が多く見受けられた。1ヶ月前まで空港内を賑わせていた中国人らしき人はほとんどいなかった。不思議な光景だ。

そして多くの人がマスクをしていた、空港内の約9割の人がしていたと思う。マスク姿が似合わない外国人もマスクをしていたことに驚いた。マスクが日本では手に入らないのにどこで手に入れたのだろう。

アメリカン航空のAA60便はほぼオンタイムで出発。機内は意外にも混んでおり、7、8割程度埋まっていた。アジアから本土に戻るアメリカ人や中国以外のアジア人旅行客だろうか。

アメリカン航空の飛行機の中では映画を見て過ごした。見たい映画がいくつもあったので大変嬉しい。11時間のフライトの内、3本鑑賞した。機内食はビーフかポークかと聞かれたのでビーフを選んだのだが、ポークの方は実はカツ丼だった(隣の人のを見てわかった)。それならポークにしたのに。ビーフかポークじゃなくて料理名で言って欲しいものだ。

●ダラスの様子
ダラス到着。ダラス空港ではほとんどの人がマスクをしていなかった。マスクをしている人は1割もいないように思う。ここでも中国人旅行客は見なかった。
例によってキオスクで入国に関しての質問をタッチパネルで操作し、レシートを受け取り列に並ぶ。ESTA保持者の列は非常に長く感じたが、到着してから約1時間で流れた。
ちなみにダラス1回乗り継ぎでブエノスアイレスに行く場合はダラスで荷物を引きとる必要はなくそのままブエノスアイレスまで流れる。成田空港のアメリカン航空のスタッフに聞いたところ、ダラス空港のみ1回乗り継ぎでできる方面は受け取らなくともいいみたい。便利だけど逆にややこしい。成田チェックインの時にITIというシールもらえるのでそれが目印だ。

ブエノスアイレス行きのフライトまで約6時間の空き時間。この日のために私は楽天プレミアムカードに入会してプライオリティパスをもらったので使ってみた。仕事柄、マイル修行をして、JALのサファイアやANAのダイアモンド会員になることも考えたが、アライアンスに縛られたくないし、取得にかかる経費と年会費払うことを考えると割に合わないと思い、楽天プレミアムカードにした。
ダラス空港の対象になるラウンジは「CLUB」というラウンジ。かなり混んでいたが軽食があるのとお酒が無料で飲めるのは◎。シャワーもあるそうだが、シャワーブースが1つしかなさそうで、常に混んでいると思われ入ろうとは思わなかった。

待っている間、会社の提出物を作成して過ごす。
ブエノスアイレス行きのAA997の搭乗時間に合わせて、ラウンジを出て、ゲート付近でまつ。搭乗が開始され、オンタイムで無事出発。中には韓国人の旅客が2組いた。韓国も色々制限が出ている国だが、旅行する人はいるのだな、お互い大変ですね。
ブエノスアイレス行きの搭乗の仕方がなかなか最先端で面白かったので記しておく。
一般的には搭乗券のバーコードを読み取ってゲートを超えて行くのが搭乗の流れかと思うのだが、ここの搭乗方法はなんと「顔パス」である。バーコードを読み取るのではなく、事前に顔認証で登録した顔データを基にして、ゲートに備え付けたタブレットで顔を映しだし認証していく。私はここでは眼鏡をかけていたので読み取ってくれるか不安だったのだが、見事に読み取ってくれた。しかし、バーコードをピッとする方が早いんじゃね?と思わなくもない。とはいえ人物の入れ替えは防げるので、セキュリティ面で言うとこちらの方が安心なのであろう。

<<3/2:ブエノスアイレス到着、しかしさらに先のカラファテへ>>
ダラスから約10.5間のフライトの末、ブエノスアイレスに到着。

●ブエノスアイレス到着 入国は長蛇の列
エサイサ空港に降り立つ。ブエノスアイレスは朝10時過ぎ。日差しが眩しい、まるで初夏のような陽気。成田を出発して約26時間で、熟睡できなかった身体には少し眩しすぎる。
入国審査を受けようと空港内を進むも長蛇の列。コロナウィルスの検査でもしているかと思ったのだがそうでもなさそうだ。しばらく並んでいたが、この後15:20のカラファテ行きの便に乗るために国内線空港に向かうことを考え、移動に2時間、国内線のチェックインに1時間かかると仮定すると少なくとも12:20には空港を出ていないといけない。すでに時計の針は11:30を回っていた。とても12:20には空港を出れそうにもない。そこで恥を忍んで列の最前線まで移動して、若い男の子にお願いして入れてもらった。そりゃ憮然としてたが、こちらは背に腹はかえられない。

入国の聞かれたのは来たときの便名と泊まるホテル名で特に難しいものではなかった。

バゲージクレームにて成田で流した荷物と約1日ぶりに面会。ピックアップして無事、日本語ガイドの上原さんに合流。上原さん曰く、アルゼンチンの入国には少なくとも2時間、場合によっては3時間かかるそうだ。
そのため同日に国内線で乗り継ぐ場合、少なくとも5時間、できれば6時間は余裕を見ておきたい。

Google マップによるとエサイサ国際線空港からホルヘ・ニューベリー国内線空港まで約2時間で表示されるのだが、実際には1時間もかからず移動できるそうだ。なんだ、焦って損した。
空港にて両替とSIMカードを買おうと思ったが、上原さん曰く、両替は観光地であればする必要はないとのこと。米ドルがそのまま使えるそうだ。またSIMカードはカラファテでも買えるとのことだったので、まずはカラファテを目指すことにした。

●チリ入国に暗雲が・・・・
無事到着したことを日本語ガイドの方が現地旅行社に報告してくださって、担当の方と直接話することになった。そこで知ったのはチリが日本人を始め、汚染国と認定をしている国からの入国者の制限をしているとのこと。外務省のホームページをチェックすると、空港入国時に健康診断があるとだけ書かれているが、非常に流動的なことは私も承知しているので、入国できない可能性も0ではないだろう。状況が悪化しないことを祈るばかりだ。
チリ入国できない場合のプランBも考慮しつつ、アルゼンチンの旅行を楽しもうと切り替えた。

●ブエノスアイレスで国際線から国内線乗り継ぎ
エサイサ国際線空港から、ブエノスアイレスの街を抜けて、ホルヘ・ニューベリー国内線空港へ移動。約1時間の移動。特に渋滞もなくスムーズに流れた。窓から見たブエノスアイレスの街並みは美しく、後日訪れることを思うと私は期待で胸を膨らませた。

ホルヘ・ニューベリー国内線は横に広く、正面から見て右側がアルゼンチンの北側・左側がアルゼンチンの南側行きのフライトのチェックインカウンターとなっている。今の季節はパタゴニアのベストシーズンのため北側はガラガラ、南側は混んでいた。
無事チェックインを終えて、荷物検査のゲートへ。ここでアテンドしてくれた上原さんとはしばらくのお別れ。またブエノスアイレス観光の時に相見える。

国内線空港の中では使えるラウンジはなかったので、HARDROCKカフェのレストランで昼食を食べて過ごす。ハンバーガーとビールで800ペソ、チップ込みで1000ペソ払った(米ドルで約16ドル、日本円で1700円程度なので空港のレストランとしてはそこまで高くはない)。ちなみにはお釣りはドルではなくてアルゼンチンペソできた。

●カラファテ到着 SIMカードを探す。
ブエノスアイレスから約3時間半のフライト。ベストシーズンのためか8割ほど席は埋まっていた。機内食はなく、途中ピーナッツとドリンクが1回出ただけ。

カラファテ空港はパタゴニアにきたなぁと感じさせる荒々しい巨大な茶色い岩山、氷河由来のターコイズブルーの湖に囲まれた空港だった。
ここでガイドのマリアナさんとドライバーのリースさんと無事合流。カラファテの街まで車で20分だそうだ。移動の前にSIMカードを買いたいんだけど聞くとホテルの近くに携帯屋さんがあるよとのことなので、ついたらまずそこに行こうと思った。

カラファテの街並みは可愛らしい。どこかニュージーランドのクイーンズタウンやキルギスのカラコル、コスタリカのモンテベルデを思わせた。世界中から観光客の集まるトレッキングの拠点となる街。高層ビルなどはないが、カフェやレストラン、ホテル、お土産屋が充実している。国際色豊かな場所ではあるが、どこか落ち着く雰囲気があるのだ。

マリアナさんに教えてもらった通り、ホテル近くの携帯屋さんを目指してカラファテの街を1人歩く。
教えてもらった携帯ショップに向かい、SIMカードを売っているか聞く。うまく英語が通じない。SIMカードは売っていたが、「アクティベートまでして欲しい」と伝えるも、ちょっとそこまではやってくれなそうなので一旦店を出て他に携帯ショップがないか街を歩き回った。
旅行者が多い街ではあるが携帯ショップが少ないことが意外だ。一番多いのはお土産屋さん、その次は飲食店、そして旅行会社、スーパーマーケット、両替屋はあるがなぜか携帯ショップがほとんどない。街を歩く人で携帯を持っていない人はいないと思われる現代であるが、これほど携帯ショップが見当たらない観光地も珍しいのではないだろうか。
携帯会社「MOVISTAR」の直営店らしきお店を裏路地に1店見つけた。すでに閉まっていたので明日の観光を終えたらこの携帯屋さんに向かおうと思う。

●カラファテのホテル「QUIJOTE」
この日のホテルはカラファテ繁華街の裏通りにある「QUIJOTE」。ドン・キホーテの「キホーテ」と読む。ランク的には3つ星だが、ロケーションやサービス、設備的には多くの人々に満足していただけるホテルでだろう。室内にはドライヤー、冷蔵庫、バスタブ、セーフティボックスがあり、スタッフの感じも良い。しかし唯一であり最大の不満は、せっかくの無料WIFIが非常に貧弱であること。繋がらないわけではないのだが時間がかかる。

●カラファテのおすすめレストラン 「La Posta」
カラファテで美味しいステーキを落ち着いた雰囲気で食べたい、という人にはうってつけのレストランが街の少し外れにある「La Posta」。このレストランの良いところは、素晴らしい邸宅を利用した広々としたスペースを持ち、大通りからは少し外れているため、街の中心部のレストランとは違い人で溢れかえっていることはない。とはいえ、味には定評があり、価格も雰囲気に似合わずリーズナブル、そのためネットの口コミ評価では上位にランクインしている。
私はこのパタゴニア地方の名物のラム肉ステーキ400gと付け合わせのサラダ(かなりの大盛り)とグラスワイン、ミネラルウォーターを注文した。ラム肉は新鮮で全く臭みがなく、特にソースなどつけなくとも本来の肉も旨味で十分美味しく400gを苦もなく平らげた。しめてチップ込みで1500ペソ支払った。日本円で2600円ほどなのでフルサービスのレストラン、しかもワイン込みでこの価格は「いきなりステーキ」もびっくりである。

<<3/3:ペリト・モレノ氷河を見に、ロス・グラシアレス国立公園へ>>

この日は朝9時発、ロス・グラシアレス国立公園の観光ツアーに参加する。

●カラファテからの日帰りツアー
カラファテにきたならペリト・モレノ氷河を見ずに帰る人はいないであろう。アルゼンチン観光のハイライトの一つであり、世界で最も知られている氷河でもある。
ペリト・モレノ氷河が見れるのはロス・グラシアレス国立公園。カラファテからは車で1時間の距離なので一般的にはツアーに参加する人が大半だ。

私の今回参加したツアーのスケジュールは以下の通り。ツアーは英語とスペイン語のミックスで行われる。様々な国の人が集まる混載ツアーだ。

09:00〜50 ホテル集合 人数によってホテルのお迎え時間が若干異なる。

11:00 カラファテの街から約1時間、途中ビジターセンターに立ち寄り(チケットをWEB等で購入していない人はここで購入する)、ペリト・モレノ氷河が見える最初のミラドール(展望台)にて15分のストップ。

11:30 ペリト・モレノの1時間のクルーズに参加★

12:30 氷河の美しく見えるレストランで昼食★

13:45 ペリト・モレノを見渡す遊歩道で心ゆくまで鑑賞

15:15 カフェテリアにてバスに集合、カラファテへ

16:30頃 ホテル帰着

※★印はオプションだが、私のプランには予め組み込まれていた。今回の日帰りツアーは10人程度参加していたが約半数がクルーズに参加して、私1人だけがレストランでランチを食べた。ランチは3コースでメインはラム肉のシチューで大変美味しかった。他の人はその間、展望台で自由散策するとのこと。ランチは各自で持ち寄るか、展望台近くのカフェテリアがあるのでそこで購入する事になる。

●ロス・グラシアレス国立公園とは?
4459平方キロメートル、ほぼ山梨県と同程度という巨大な国立公園。氷河国立公園の名前の通り、他に類を見ないほどの巨大な氷河を鑑賞できる、氷河に関しては世界一の国立公園であろう。アルゼンチンは南極、グリーンランドに次ぐ大きさの世界で3番目に氷河面積の「南パタゴニア氷原」を持つ国である。南パタゴニア氷原はチリ側とアルゼンチン側に氷河として流れ出し、このロス・グラシアレス国立公園の中には47もの氷河があるほか、長い年月を経てつくりあげられた見事な氷河地形を見ることができる。美しいアンデスの山々、青い湖と氷河が調和した風景は見事で、世界中から観光客が絶えない。

●なぜペリト・モレノ氷河が氷河の代名詞と言えるほど有名となったのか?
ロス・グラシアレス国立公園の中には、ほかに最大の大きさのウプサラ氷河や高さ135mにも及ぶスペガッツィーニ氷河があるが、観光客のお目当は何と言ってもペリト・モレノ氷河である。その理由としては大きく分けで3つあると私は考えている。

1、風景の美しさ
ペリノ・モレノ氷河の圧倒的な迫力を感じるのは、何と言ってもその高さと先端部の幅の広さにある。平均で高さ60m、幅は5kmに渡って広がっているため、展望台からはその大パノラマを楽しめる。そしてロス・グラシアレスの氷河の特徴とも言える神秘的なブルー。雪がどんどん降り積もる事によって圧迫され、空気含有がほとんどない純度の高い氷河となる。空気を含まない氷河は他の色は全て吸収するが青さだけを反射するためこの輝くような青が見えるそうだ。
ターコイズブルーの水がアルヘンティーノ湖へ注ぎ、モレノ山、ネグロ山、ピエトロベッリ山といったアンデスの山々が氷河越しに見える。自然の奇跡が織りなす景色に誰もが息を飲む事だろう。

2、観光のしやすさ
ウプサラ氷河やスペガッツィーニ氷河を見るには国立公園なのクルーズツアーに参加しなければ見れないが、ペリト・モレノ氷河はそのロケーションから対岸の丘の上から見下ろすことができる。また遊歩道も整備されているため、本格的なトレッキングができない子供や年配の方まで簡単に、短時間で観光できるのが魅力の一つだ。

3、崩落のチャンスが多い
1日に2mも前進する「生きた氷河」とも呼ばれるペリト・モレノ。冬でも最低気温が比較的高い南パタゴニア地方は絶妙なその温度によって、水面下でも氷河は完全に固まることはない。短期間で氷河は溶解と氷結を繰り返すため1日に2m前進するが、その先端部は1日に2mほど崩落により失われている。つまり崩落する回数が多いため、その瞬間を目撃できる確率も高いのだ。私は時間の関係上、ペリト・モレノの展望台を歩いたのは1時間ほど、それでも5kmにもおよぶ大パノラマを持つペリト・モレノだけあって、大小含めて3回の崩落を目にすることができた。これは2月であること(パタゴニアの夏は12〜3月)と暖かい時間帯(昼の2〜3時頃)によることも大きい。ミシミシと地割れのような乾いた音が響き、轟音とともに氷河が剥がれ水面へと落ちていく様子は大迫力。氷河を間近に鑑賞できるペリト・モレノだからこその醍醐味であろう。
動きが活発なペリト・モレノ氷河は稀に対岸まで達することがあり、リコ水道とアルヘンティーノ湖を2分することもあるそうだ。2分された湖の圧力によって、氷河の先端部分が崩落され、水位差が解消するということが繰り返し起こっているそうだ。

●水上からペリト・モレノに近づく大迫力のクルーズに参加
ペリト・モレノを観光するのであれば是非、展望台からだけではなくクルーズ船からもその雄姿を楽しんで欲しい。水上からはペリト・モレノの氷河の大きさを身近に感じ、また違った角度からペリト・モレノの表情が楽しめるためオススメだ。

●国立公園の観光を経て、SIMカードを買いに
ツアー終了後、ガイドとお別れ。どこかライアン・ゴズリングをフェミニンにしたようなガイドだった。他の観光客はチップを渡したり、渡さなかったりまばらだったが、英語も上手くない一人ぼっちの東洋の観光客に割と親切にしてくれたと思うのでチップ(10USD)を渡した。
カラファテは午後4時半、ツアーから戻ってきた人々や仕事帰りにの人々で街は徐々に賑やかさを取り戻してきていた。ホテル近くのMOVISTARという携帯ショップが昨日空いていなかったので、改めて訪問。ラッキー、今日はあいてる、しかも人がいる。店員にお姉さんにSIMカード売ってると聞くも、売ってないという素気無い返事。携帯ショップにSIMカードが売ってないとは日本だとちょっと考えられない。仕方がなく、教えてもらった携帯アクセサリーの専門店にてMOVISTARのシムを購入。20ペソ。MOVISTARのシムを購入して、MOVISTARのショップに出向いたが、やはり自分でやれとの返答。こんなサービス精神のない、携帯ショップは初めてだ。一応、アクティベートの仕方が英語で書いてあるプリントがあったので写真とって、ホテルで解読した。しかし上手くいかない。
夕食の時間も忘れて、ホテルの貧弱なWIFIを駆使してなんとか使おうと試みたがちょっと私だけの力では無理なので、今度カラファテのガイドにあったら聞いてみようと思う。

<<3/4:高速バスでプエルト・ナタレスへ>>

朝7時にドライバーがホテルにお迎え、カラファテの山の上にあるバスターミナルまで車で移動した。市内中心分からは車で10分程度だ。

●高速バスに乗車
高速バスのターミナルのCootra社のカウンターにてバウチャーをチケットと引き換え。TAXのみ現地払いとのことで、10ペソのみ請求された。

日本人はチリの入国について今の所は問題ないか、と聞こうと思ったがやめた。バスの受付のお姉さんが「問題ないわよ」と言ったところで最終的にはチリの入管の人が決めるわけだから、この受付のお姉さんが許可したところで何の効力もない。場合によっては「チリに入れない可能性があるので、あなたは乗せない」とも言われかねないので、黙った。何も言われないということは何もないだろう、ということを願って。

ちなみにバスターミナルには売店はない、また途中でサービスエリア的なものや休憩はないため、朝食は食べておこう。バスで食べれる少量の食料もあっても良いだろう。
7:30の出発までにトイレを済ませて、バスに荷物を預ける。バスに荷物を預ける時は半券を貰う必要があるので、しばらく係員の人がいま預かっている荷物の積み込みが終わるまで待つ。しかし荷物を投げるように入れるので日本の丁寧さと比べればかなり雑な入れ方である。パソコンなどを大きなバックに入れなくてよかったと思った。バスには「荷物係はサラリーをもらっていません、チップをお願いします」と書かれた張り紙があったので、100ペソを渡す。
バスは2階建て、60人ほど乗れる大型バス。1階には小さなトイレもあった。ちなみにバスにはWIFIはないが、USBで充電できるようになっていた。私は2階の通路側の席だった。隣の人はスペイン人の男性。バックパッカーにしては荷物はかなり少ない。
満席に近いバスはほとんどオンタイムで出発。

●アルゼンチンの原風景をゆく
アルゼンチンを語るときに、草原地帯(パンパ)と牧場(ランチ)を心象風景として思い浮かべる人は多いようだ。荒々しいアンデス山脈に抱かれた広大な草原、その中にポツポツと草を食む、牛や羊などの家畜。アルゼンチンのステーキが美味しいのは豊かな自然環境に育まれた所以だろうか。
そういえば、途中バイクで旅している人を何人か見つけた。チェ・ゲバラが若かれし頃、南米を旅したように。ジャック・ケアルックの「路上」に出てくる登場人物がアメリカを旅したように。
偉人が通った道を自分も同じように旅をする、大変だろうが私もいつかそんな旅をしてみたい。

●アルゼンチン出国と緊張のチリ
カラファテから出発して約4時間、アルゼンチン側の国境についた。
停車してしばらくするとバスの運転手に促されて乗客はバスを降りる。
外には出入国管理局としてはかなり小さい小屋がポツンとあるだけ。バカでかいトラックなら強行突破もできそうなくらいだ。

アルゼンチン出国では「コロナ」の「コ」文字もなかった.アルゼンチンはコロナウィルスに関しての規制していないのである意味当然だが、チリに入国できない可能性があるのであれば、やすやすとアルゼンチン出国はさせてくれないはずだ。しかしチリが私を入国してくれる保証はまだない。アルゼンチンを出国できて、チリに入国できない、そんなケースはあるだろうか?いやいや入国も帰国することもできず、空港に住む人がいるって話は良くあることだ。いくつもの考えが私の頭をぐるぐるしていたが、そんな私の心配をよそに出国管理官のお兄ちゃんは私のパスポートにポンッとハンコを押してくれた。

アルゼンチン側の国境で出国手続きに約30分、その後緩衝地帯を経て、チリ側へ移動する。チリ側を行くといきなり道路が舗装されているから面白い。チリがウチの国は裕福で道路を舗装する余裕もあるよ、と言っているみたいだ。当然入管管理の施設もちゃんとしており、アルゼンチン側の寂しい感じはなく、お洒落なレストランやギフトショップもあった。

アルゼンチン側の国境に着く前にチリ側の入国カードが渡されていたのでこちらを記入しておいた。泊るホテルなど基本的なことを書くだけで、難しい質問はなかった。

バスを降りてチリの入国審査。チリの入管施設にも特にコロナについての記述は見当たらなかった。唯一見つけたのが管理職員のブースの張り紙で「14日前以前に中国に行った場合はチリに入れません」と書いてあった。よかった、日本とは書いていない。無事、パスポートにチリのスタンプが押されて入国完了。あとは手荷物の検査を受けて、バスに戻った。
トータル40分くらいだろうか、チリ側の国境に止まっていたバスは出発して、今回の目的地であるプエルト・ナタレスへ向かう。

●プエルト・ナタレスの宿泊先、HOSTAL FRANCIS DRAKEに到着
チリの国境を越えて、約1時間。到着したのはプエルト・ナタレスのバスターミナル。
バスターミナルではすでにドライバーが待っていてくれて、私の名前の書いたボードを掲げていてくれた。荷物をおろして、車を乗り換えてホテルに向かう。

今日から2泊するプエルト・ナタレスの宿・HOSTAL FRANCIS DRAKEはホスタルという名がつくとおり、大型ホテルではない、家族経営に近いこぢんまりとして感じの良い宿。室内にはシャワーやテレビ、ヒーター、そして無料のWIFIもある。ミニバーやドライヤー、バスタブはなかったのだが、個人的には文句はない。私がチェックインしたときには、おばあちゃんが1人で受付と清掃をこなしていた。英語は話せない。しかしなんとか話は通じ、近くにオススメのレストランはありますか?と尋ねたところ、ホテルから100mほどにあるPATAGONIA’FOODをオススメされた。実は先ほどホテルに来る前に、車で横切った際「PATAGONIA’FOODなんて旅行者が飛びつきそうな名前のレストランがあるな」と思っていたので覚えていた。

●プエルト・ナタレスのレストランにて昼食
PATAGONIA’FOODホテルに到着したときには午後2時半をも回っていた。
レストランに到着したことにはですでに午後3時ごろだったはずだが、PATAGONIA’FOODは大盛況で15程度あるテーブルの中で、テーブルは2つしか残っていなかった。
テーブルに座って、メニューをもらったが、全部スペイン語のため、何が書いてあるかわからなかった。レストラン内には張り紙で「今日のおすすめ」みたいに「Pastel de papas」と書かれていたので、何も知らずそれを頼むのも良いなぁともおもったが、スマホの翻訳ソフトを使うと「ジャガイモのケーキ」と書かれていたのでやめた。
無難にサンドイッチとビールを頼んだ。ビールはカラファテという名前のドラフトビールだ。
しばらく待つとテーンブルに運ばれてきたのはあまりに想定外の大きさのサンドイッチ。これが通常サイズ?どんだけ食欲あるのよ、パタゴニア人。
半分はお持ち帰りさせてもらおうかと思ったが、ホテルには冷蔵庫もないし、味も落ちるのも嫌なので最後はビーフだけを抜いて、ほぼ食べ切った。美味しかった。お陰で夕食は食べなくてすみそうだ。
価格はしめて11000チリペソ。日本円で1500円。クレジットカードも使えるそうだが、うまく通らなかったのでキャッシュで20ドル払い、3000ペソをお釣りでもらった。少し多めに払っていると思うけどチップ込みで考えれば、まあいいか。

●プエルト・ナタレスの街を散策
お腹を満たしたあとはプエルト・ナタレスの街を散策。プエルト・ナタレスは地元に住んでいる人が多いためかカラファテよりもローカル感が強い。ホテルやレストラン、お土産屋さんなど外国人観光客のためのお店の密度はカラファテと比べると圧倒的に少なく感じた。街の中心部にはスーパーマーケットもあり、旅人の強い味方になっている。しかし物価は比較的高め。コーラ500m1本が約900ペソ(110円)、水500m1本が約600ペソ(80円)。スーパーの価格としては日本と同じ程度だろう。

坂道を降りてプエルト・ナタレスの海岸線を歩く。ウルティマ・エスペランサ湾沿いに沿って短い遊歩道が整備されており、途中にはコーヒーを売るフードトラックもある。パタゴニアの景色を眺めながらここで一服するのはさぞ優雅なことだろう。
海岸線には指を模したモニュメントやナマケモノの祖先と考えられているミロドンの像があり、フォトジェニックなスポットになっている。
ちなみにミロドンというのはプエルト・ナタレスの町から北に約20kmにある洞窟から発掘された骨の調査結果からその存在が確認された、十数万年前に住んでいた体長3mほどの幻の生物だ。
ミロドンと並びもう一つのプエルト・ナタレスのシンボル的なのが南部パタゴニアの原住民族とされている、セルクナム族。その奇妙なボディペインティングとユニークな被り物で世界中の旅行者から知られており、プエルト・ナタレスではグラフフィティやお土産屋などで目にする機会も多いだろう。ただし残念ながらすでにセルクナム族は現在存在を確認できていない。

プエルト・ナタレスにきた旅行者はトーレス・デル・パイネ国立公園が目的なので、おそらくミロドン洞窟やセルクナム族が目的で来る人ほぼいないように思うが、なんだかほっこりさせられるユニークな観光資源である。

<<3/5:パイネ国立公園1日観光>>

朝6時半に朝食を食べて、7:30のお迎えを待つ。

●パイネ国立公園への1日ツアーに出発
集合時間から5分、6分ほど遅れてお迎えの車がホテルにやってきた。ガイドは女性の方で、すでに何人かツアーバスにはお客さんが乗っていた。他の参加者はイタリア、ドイツ、ニュージーランド、チリからの参加者だった。ガイドさんは例によってスペイン語と英語でそれぞれ説明してくれる。

ツアーのスケジュールは下記の通り。

07:00〜08:00 プエルト・ナタレスのホテルにお迎え
08:30 ミロドンの洞窟観光
09:30 アルゼンチンとの国境にあるカスティーロ・ヒル村にて小休憩
10:30 パイネ国立公園に入場 人気のビューポイントを巡る
13:00 湖上に浮かぶレストラン「Restaurante Pehoe」にて昼食
14:30 昼食のレストランを出発
15:00 グレイ湖周辺を散策
17:00 トーロ湖にてフォトストップ
18:00 プエルト・ナタレスに到着

●ミロドンの洞窟
プエルト・ナタレスから北に約20キロ。3/4の項目で前述したようにプエルト・ナタレスのシンボルとなるミロドンが発見された洞窟。ミロドンはナマケモノの祖先と言われる体長3mの1万年前に絶滅した哺乳類。この洞窟では原始パタゴニア人とミロドンが暮らしていたとされる。
洞窟の内部まで徒歩で観光できて、所要時間は約30分。サクッと観光できるので深い興味がなくとも訪れても損はないだろう。

●パイネ国立公園のビューポイントを巡る
まずサルミエント・デ・ガンボア湖に到着。巨大な湖の向こうにトーレス・デル・パイネやパイネ・グランデ山、パイネの角などを一望できるビューポイントに到着。
その後、アマルガラグーンのビューポイントへ。こちらの方がトーレス・デル・パイネやパイネの角は近くで見れる。そしてスウェーデン人のオットーノルデンスキエルドが発見したというノルデンスキエルド湖のビューポイントへ。

そして4箇所目のフォトストップはサルト・グランデ滝。サルト・グランデ滝までは車を降りて砂利道を10分程度歩く。かなり平坦。サルト・グランデ滝は高低差10m程度の中規模の滝。3月初旬の今日は日中の暖かな陽気もあって水量が多く、流れは激しい。パイネ国立公園の青白い白濁した水が大音量とともに流れていく。これまでの静けさを保っていたパイネの表情とはまた違った側面だ。滝を通り過ぎて、トレイルを歩くとパイネ・グランデ山が目前に迫る風景を楽しめる。個人的には今回訪れたビューポイントの中ではハイキング気分を味わえたので一番好きかも。

軽いハイキングを楽しんだ後は、昼食をとるために湖上に浮かぶレストラン「Restaurante Pehoe」へ。私はツアーに昼食を含めていたので、このRestaurante Pehoeでの3コースメニューをいただいた。前菜とメインは複数のメニューの中から選べて、私は前菜をトマトクリームスープ、レモン風味のポークステーキ。旅を一緒に同行した、ドイツ人の女子旅2名とイタリア北部の素敵なカップル2名とテーブルをご一緒にした。ドイツ人とイタリア人の方どちらも日本にきたことがあると言って色々写真を見せてくれた。日本の新幹線は素晴らしいと絶賛。ドイツの列車もイタリアの列車もいいと思うけど、何よりも時間に正確なのにいたく感動したらしい。
イタリアのご夫婦はコロナウィルスの話題になると、口ごもりがちだった。日本も全く同じ状況だと伝えた。つい1、2ヶ月前はコロナウィルスについては何それ?って感じですアジアの東側のごく限られた地域での話題にしかならなかったと思うが、3月の現時点で旅行者にとってコロナウィルスは最大のトピックのようだった。

ちなみにレストランからのパイネの山々の景色が最高。Restaurante Pehoeの外観も可愛らしく、ここからの写真はパイネ国立公園を紹介している記事の写真としても良く使われている。
ちなみに昼食を含めていない人はこのレストランのアラカルトメニューで好きなものを注文。セットメニューも美味しかったが、各自好きなものを食べるでもよかったかなぁと思う。
昼食の後訪れたのはグレイ湖。舗装された道から脇道に入ること數十分。ラゴ・グレイというホテルの駐車場にて下車。ここで観光するのはグレイ氷河が流れるグレイ湖だ。時によっては湖に氷河が浮かんでいることもあるというグレイ湖はパイネ国立公園でも指折りの景勝スポット。私の訪れた時は残念ながら氷河は目視できなかったが、広大な湖越しに見るパイネ・グランデやパイネの角は壮観。
もしパイネ国立公園でキャンプではなくてちゃんとした宿で過ごしたいという方がいたらこのラゴ・グレイホテルはうってつけだ。高級感に溢れ、ホテル主催のグレイ湖のクルーズなどのアクティビティもある。そして何よりも景色がよくハイキングに最適だ。家族づれやハネムーンとしてもいいのではないだろうか。夏のハイシーズンは人気があってきっと取りづらいとは思うが。。。

ここで思わぬ事態が発生。砂利道を通過していたためかタイヤがバーストしてしまったようで、タイヤ交換のために30分程度時間を要した。砂まみれの運転手になりながらも無事に修理した。運転手なんだから当然だと思われるかもしれないが、運転もさることながらバスのタイヤ交換もできるなんて運転手はすごいなと感心。日本のバスの運転手でできるかしら。私も車に乗るが、タイヤ交換なんてできないもの。本当はしないといけないのだろうけど。車なんて特にそうだが、自分の使っているものに関して仕組みをちゃんと理解した方がいいのに、してないことが多いとしみじみ感じた出来事だった。

最後のフォトスポットはトーロ湖。しかしすでに時計は午後5時近くで、空には青さがすっかりなくなっていたが、運よく鏡張りのような風景が楽しめた。
今思うと天気の良い午前中にプエルト・ナタレスから北上して、トーレス・デル・パイネなどパイネ国立公園のハイライト巡るルートは正解だったなと思う。仮に南から国立公園に入り、北上していくとトーレス・デル・パイネを観れるのは午後になってしまう。そう考えると理にかなったルートと言えよう。

●アウトドアのブランド「Patagonia」のシルエットはどこ?
ちなみにグレイ湖を過ぎたあたり、パイネ国立公園の中を車で移動しているところ、「あ、この山の形、Patagoniaのモデルになった山かな」と思うところがあった。これを読んでいる方はPatagoniaのロゴと言われてどんなだったか思い出せるだろうか。あの山のシルエットは適当にギザギザの形を作ったのではなく、実在する山の形を模したロゴなんです。
でも調べたところパイネ国立公園ではなくて、アルゼンチン側のエルチャルテンにあるフィッツロイ山群のシルエットがオリジナルだそう、残念。でも同じ南アンデスの山で、形も尖ったようなギザギザの形をしているので、パイネ国立公園の岩山も非常に似ているのである。

実はチリに入れなかったらパイネ国立公園の代わりにそのフィッツロイに行こうとも考えていた。結果運よくパイネ国立公園に来れたわけだが、Patagoniaの創業者の人が心惹かれたフィッツロイがどんな山なのか気になる。改めてパタゴニアに来る時のためのいい材料になった。

●パイネ国立公園からプエルト・ナタレスに到着し、ビールバー「Baguales」にて夕食
ツアー終了後はホテルか街の中心地で落としてくれるとのことだったので、街の中心地でおとろしてもらうことに。時計はすでに午後6時を回っていた。時差の関係もあって、この時間になると眠くなってしまうのだけど、昨日は夕食も食べずに早々に寝てしまったのでこの日は外食をしようと街を散策した。
プエルト・ナタレスの地理はアルマス広場を中心に広がっている典型的なスペイン風の街づくり。広場の周りには教会などがある他に旅行客向けのアウトドアグッズのお店やバーやレストランなどがひしめいている。 チリというと何と言ってもチリワインではあるが、昨日PATAGONIA’FOODで飲んだローカルのドラフトビールが美味しかったので、ビールバーを探すことにした。ホテル近くにBagualesという賑わっているパブがあったのでここに入る。パブは食事を楽しむレストラン席と酒を楽しむバー席に別れていて、1人で入店した私はバー席に通された。
注文したのはAPAというこの地方のクラフトビール。店のスタッフがいうにはこのお店のローカルのドラフトビールはこれのみだそうなのでそれをいただく。あわせてチョリソのホットドックも注文。今思い返すとパタゴニアのレストランのトレンドは完全にアメリカ風。つまりクラフトビールを多数揃えていて、メインは肉系のガッツリしたもの+付け合わせのフライドポテト、ボリューミー&ジャンキーな傾向。野菜を食べようと思ってサラダなんか頼むとその大きさにまたびっくり、みたいな。北米の旅行客が多いのだからある意味仕方ないのではあるが。。。
軽いハイキングもあったせいか、ビールが一層身体に染みる。至福の瞬間。パタゴニアの景色を満喫した1日だった。

<<3/6:プエルト・ナタレスからカラファテに戻り、空路でブエノスアイレスへ>>

朝6:30時にホテルの朝食をいただき、7:30の迎えを待つ。この日はバスでカラファテに戻り、カラファテの市内散策をした後に空港に行き、そのままブエノスアイレスまで行く予定だ。
予定よ10分早くドライバーが到着。早速バスターミナルへ。

●プエルト・ナタレスのバスターミナルにてチェックイン
この日のバスはZAAHIというバス会社のバス、前回とは別のバス会社だ。バスターミナルのカウンターにてチェックイン、往路と違い税金は取られなかった。
バスの大きさは前回と比べてひとまわり小さい。バスは一階建てで広々しているように見える。乗車人数はマックスで40人程度だろうか。ちなみにバスの中にはトイレはなかった。
荷物を預け、タグの半券をもらいバスの中へ。幸い隣には誰もおらず、広々2人がけの席を1人で使えた。

●チリとアルゼンチンとの国境へ
バスはほぼ予定通り出発。だいたい7割程度の混み具合だ。
プエルト・ナタレスのバスターミナルを出発して1時間弱。チリ側の国境に到着。あれ、前にチリに入国した時とは違うボーダーのようだ。
チリに入国した時はパイネ国立公園よりのカスティーロ・ヒルのボーダーだったが今回は、プエルト・ナタレス最も近い、国境を使っていた。
チリの出国は簡単、特に書くものもなくパスポートと入国時に渡されたレシートを見せるだけ。特に難しい質問はなかった。入国時にもらったレシートだけは無くさないようにしよう。

バスに戻り、アルゼンチン側へ移動。アルゼンチン側でも同様にバスを降りて、カウンターに並びパスポートのチェックを受けてスタンプをもらうだけ。特に難しい作業はなく、入国カードも書かなくてよかった。アルゼンチン側の国境にてトイレに行こうと思ったが、あいにくアルゼンチン側の国境には観光客用のトイレはなかった。チリ側にはあったのでいっておいた方が良かった。

チリとアルゼンチン側の国境にて掛かった時間は15分程度。前回と比べてかなり空いていたいように感じた。

アルゼンチンに入国した後は、草原が広がる風景を約4時間ひた走る。景色も変わらないので、割と暇である。かと言って、車の中なので本を読むのもままならない。せいぜい音楽を聞いたりして過ごした。なかなか退屈な時間である。2名の席を一人で使えたのがせめてもの救いだ。
カラファテまで後30分というところで、抜き打ちチェックがあるのか、アルゼンチンの警備隊がバスの中に入ってきて、パスポートのチェックを乗客全員受けた。パスポートを割とじっくり見られた。もしかしたらコロナウィルスの影響で、汚染国からの観光客は全員降ろされる!?と一瞬ひやっとしたが特に問題がなかったようで、無事バスは走り出した。

●カラファテのバスターミナルに到着
午後1時過ぎにカラファテのバスターミナルに到着。ようやくの到着だ。4時間ぶりに外の空気がすえた。カラファテ初日と同様に、マリアナさんのお出迎えを受けて、まず向かったのはグラシアリウム。

●氷河をテーマにしたグラシアリウム (パタゴニア氷博物館)
カラファテの街から車で約10分。こんなところに博物館が?と驚くくらいだたっ広い荒野の中にあるグラシアリウム。しかしカラファテ市内から無料のシャトルバスもあるためアクセスは便利。天気の悪い日などじっくりグラシアリウムで氷河についての知識を蓄えておきたい。

博物館には、氷河の成り立ちや探索した著名人についての研究、ロス・グラシアス国立公園の歴史など。さらに地球温暖化によって危機に晒される氷河や、温暖化によって生じる様々な危機的状況に関しても説明があり、地球環境の改善を啓蒙するような内容にもなっている。とはいえ解説は英語とスペイン語なので全てを理解するのはなかなか難しい。

オススメはロス・グラシアス国立公園を様々な視点から撮影した3D映像。ペリト・モレノを観光したあとであれば、その時の感動が蘇る。ペリト・モレノをまだ見ていなくとも観光に備えて気分は盛り上がるはずだ。

そして何より1番の目玉は、氷河で作った氷でお酒が飲めるというバー「グラシオバー・ブランカ」である。氷河の氷で酒が飲めることはそうとない機会なので私も楽しみにしていたアクティビティの一つだ。参加者はまず地下の移動し、防寒着と手袋を着用する。重い扉を開くとそこには椅子やテーブルまで氷でできたバーが現れた。アルコールはウィスキー、ラム、テキーラ、ウォッカなど各種取り揃えていたがビールやワインはなかった。コーラなどソフトドリンクもあったのでお子様でも楽しめるだろう。私はウィスキーを注文した。お店のスタッフは氷でできたグラスにお酒を注いで私に渡した。ウィスキーだから氷河の氷でつくったオン・ザ・ロックで飲めるのかと思ったが、店員さんに聞くと正確には「氷河が溶けて川になった水をろ過して凍らせたグラス」とのこと。なんだ、正確には氷河そのものではないんだ。「でも同じものだよ」と店員、「そりゃそうなんだけど」と内心。グラシオバー・ブランカでは30分くらいバーに滞在できる。時間内であればドリンクは飲み放題だが、アルコール度数の高い飲み物が多いので、飲みすぎないように注意。

展示物や映像作品、バーでじっくり過ごすのであれば所要時間として3時間程度は見ておいた方がいいだろう。

●遅めのランチは「MAKO Fuegos y Vinos」にて
グラシアリウムで観光した後は、カラファテの街に戻りランチ。
マリアナさんに、カラファテにて「美味しいラム肉が食べたい」とリクエストして連れてきてもらったのがこの「MAKO Fuegos y Vinos」だ。
実はカラファテのレストランは午後3時ごろになるとお昼休憩のため、営業していないお店もお多いのだ。ディナータイムは夜8時から営業を再開することが多い。このMAKO Fuegos y Vinosも4時でお昼の営業は一旦終了するとのことのこだったが、3時台に滑り込みセーフ。
私が注文したのはラム肉のアサード「cordero al asador」。注文してから約20分。立派な骨つきのラムが石の上でじゅうじゅう音を立てながら運ばれてきた。300グラムくらいありそうだが、なんとか食べられそうなサイズでよかった。付け合わせは店員さんオススメの「PAPAS MAKO」。グレイビーソースにベーコンやペッパーを加えて、フライドポテトに絡めたボリューム満点な一品、この店のオリジナルメニューである。
個人的な好みとしてはカラファテに到着して日に訪れたレストラン「La Posta」のラム肉のステーキの方が臭みがなく好みだったが、石焼きスタイルは見た目にも面白い。こちらのお店の方がカジュアルでアルコールの種類も豊富に取り揃えているようなので、お喋りしながら美味しいお肉とお酒を楽しむにはおすすめだ。
グラスワイン込みとチップ込みで価格は2450ペソ。アメリカドルでいうと大体40ドルだろう。日本のランチで4000円払うことはそうそうないのだが、この味とクオリティを考えれば4000円は惜しくない。

●昼食後はカラファテの街を軽く散策して、空港へ
遅めの昼食をとった後は、ガイドのマリアナさんが働いているカラファテ中心部の旅行代理店を目指して歩く。
レストランを出ると小雨が降っていた。今日が移動日で本当によかった、昨日は晴れていたのでパイネ国立公園の景色を楽しめたが、今日のような曇り空では感動も薄れてしまったかもしれない。
マリアナさんがチョコレートショップのクーポンをくれたのでお土産探しがてらにチョコレートショップを覗いたりしながら街を歩いた。無事マリアナさんの働くオフィスに到着。空港へ車で移動、車で約20分。カラファテ空港に到着。

カラファテ空港にてアルゼンチン航空にチェックイン。マリアナさんとお別れ。カラファテ空港の中にはお土産屋さんやカフェが数軒あるが、セキュリティチェックを通り過ぎるとほとんどお店がないので注意。

●ブエノスアイレスに到着
19:25カラファテ発のブエノスアイレス行きAR1821便は約3時間のフライト。往路と同様にドリンクとスナックが配られた。飛行機の中でかなりぐっすり寝てしまった。
ブエノスアイレス到着、カラファテと比べて平均気温が10度くらい暖かいが、到着したのは夜とあって寒いとは思わなかった。日中になると暑いんだろうなぁ。
荷物をピックアップして待っていてくれたドライバーと合流。ドライバーは白髪のおじいさんだった。到着した空港は国内線のホルヘ・ニューベリー空港だったので市内までは近く、ホテルまでは約20分の距離。

●ブエノスアイレスのホテルは「El Conquistador」
立派なエントランスを持つ市内中心部の4つ星ホテル。これまで宿泊した小ぢんまりしたホテルとは違い、都会のホテルという感じ。早速ホテルにチェックイン、パスポートの他にクレジットカードの提示も求められた。また嬉しいウェルカムドリンク付き。立派な建物ではあるがかなり年季が感じられる造りではある。と言っても定期的にメンテナンスをしているためか、館内は清潔感があり嫌な感じはない。
室内は広め、ミニバー、バスタブ付き、無料のWIFI、ドライヤー、セーフティボックスもある。全てが及第点で特に大きな特徴はないが4つ星とくらいしていくと、3つ星程度の設備とサービスなのでそこまでの期待はない方が良いと思う。すでに23時をまわっていたのでこの日はすぐに就寝。ちなみに翌日の朝食の時間は朝7時からと遅めだったので翌日は朝食を食べれなかった。

<<3/7:ウルグアイのコロニア・デル・サクラメント1日観光、夜はタンゴショー>>

この日は早起きして、ブエノスアイレスからフェリーでお隣のウルグアイに向かう。

●フェリーの搭乗手続きはまるで飛行機
朝6:45にドライバーのお迎えが来て、フェリー乗り場に移動。ブエノスアイレス中心部のホテルからフェリー乗り場へは車で10分程度。近代的で巨大なターミナルはまるでショッピングセンターのようだった。ドライバーが建物の前で降ろしてくれて、「そっちでチェックインするんだよ」と教えてくれた。なるほど、ウルグアイへは国境を渡るためか、まるで飛行機に乗る時と同じような手続きが必要になる。そのため、少なくともフェリーに乗る1時間前にはフェリーターミナルに来る必要がある。チェックインから乗船前の流れは以下の通り。

1、フェリーターミナルのカウンターにて予約確認書とパスポートを提示
2、スーツケースがある場合は預ける
3、チェックイン後は搭乗券がもらえる
4、2階のセキュリティチェックを通る
5、アルゼンチンの出国手続きとウルグアイの入国手続きを済ませる
6、乗船時間まで待ち、乗船となる

ちなみにアルゼンチン側の出国とウルグアイの入国手続きは、出発するフェリーターミナルで行うため、ウルグアイ到着時では審査などはなく、荷物がなければスルーで外に出れる。これは復路も同じでウルグアイからアルゼンチンに向かう時も、ウルグアイのフェリーターミナルにてウルグアイの出国とアルゼンチンの入国を済ませる。

●船内の様子
私の乗る予定の船は8:15だったが、1時間程度遅れて出航。通常だと出航する40分前に乗船開始となる。ボーディングパスには番号が振られているので、指定席かと思ったが、席の番号と一致する番号はなさそうなので自由席のようだった。

船内にはトイレやカフェテリアはもちろん、免税店もある。ホテルでは朝食が食べれなかったので、乗船前にフェリーターミナルのカフェテリアで無理やりサンドイッチを口に押し込んだが、船の中にもカフェテリアがあるなら特に急ぐ必要はなかったなぁ。

なお免税店での価格は米ドル表示。免税店にはお酒や化粧品はもちろん、チョコレートや洋服、その他食材なども売られていた。特に安いとは感じなかったが、アルゼンチンの人は割と大勢が買い物をしていたのが印象的だった。アルゼンチンで購入するよりは安いのだろう。

この日は土曜日とあって、子供連れが多い。子供達の声がとても大きくて寝れなかった。船内には残念ながらWIFIや電源タップはない。船内のテレビはホテルの宣伝など、同じ映像を延々と流し、特に展望デッキなどもない。私は電子書籍を読んで暇をしのいだが、暇つぶしの道具は何かあったほうがいいと思った。

●世界遺産の街 コロニア・デル・サクラメントの歴史

ブエノスアイレスの港を出港して約1時間。コロニア・デル・サクラメント(通称コロニア)に到着。コロニアのアライバルエリアにてこの日のガイドのアナさんと合流。
アナさんは育ちも生まれもコロニアとのことだ。

コロニアはポルトガルとスペインの影響を受けた非常に興味深い街の造りをしている。例えば、道路の中央部に凹みがある石畳の道路、アズレージョや木材と石を使った瓦屋根の家屋などはポルトガルの流れを組んでいる。だが一つ通りを挟めば、道路の中央部に凸のある石畳の道路や、平らな屋根と中庭(パティオ)を持つ家屋などスペインの影響を感じられる建物がある。場所によってはポルトガル風の建物の隣にスペイン風の建物がある。
これはなぜだろう。それにはコロニアの歴史を紐解く必要がある。

コロニアの街を建設したのはリオデジャネイロ総督のマヌエル・ロボ。スペインが追随して1726年にモンテビデオを建設し、ウルグアイはポルトガルとスペインの係争地となった。特にコロニアは対岸のブエノスアイレスを拠点としていたスペイン軍との間で激しい戦いの舞台となり1750年のマドリード条約や1777年のサン・イルデフォンソ条約など、条約が結ばれるたびにスペイン領、ポルトガル領へと移り変わる。1816年以降はブラジルの管轄下に置かれたが、最終的には1828年にブラジルとアルゼンチンの間でモンテビデオ条約が結ばれ、独立するに至った。

以上のような経緯があるため、ポルトガルが最初に築いた12ヘクタールのエリアに、スペインとポルトガルの建築スタイルが混在しているユニークな街並みが評価され、1995年にユネスコの世界文化遺産に登録された。

●コロニア・デル・サクラメントの歩き方
コロニアのフェリーターミナルを出れば旧市街はすぐそこだ。かつてあった線路ぞいを歩けば最初に見えてくるのは大きな城門。スペイン軍を防ぐために建てられた城壁は中世を忍ばせる存在。コロニアを囲む海は浅瀬になっており、大きな船は入ることができない。そのため、陸地にこのような大きな城門が造られたそうだ。

立派な石畳の道と歴史を感じさせる旧市街。一際目を引くのは「ため息通り」を抜けるとコロニアの中心地であるマヨール広場に到着。マヨール広場を中心に博物館や美術館が点在しているのでぜひ訪れてほしい。というのは市立博物館で50ペソ(米ドルで約1.5ドル)の共通入場券を購入すれば、これらの博物館、美術館には入場し放題というお得なチケットなのだ。南半球の12月〜3月は日中でも暑いため、博物館などを上手に使って休みながら観光をしたい。

そしてコロニアの中で最も高い建物、灯台にも是非登ってみたい。コロニアの美しい風景が一望できる。入場料は30ペソ。階段は狭目なので、降りてくる人に気をつけて登ろう。

昼食は旧市街の中心地にあるおしゃれな「Meson de la Plaza」にて3コースランチ。
チーズフライとグリーンサラダの前菜に、ステーキ、それからアイスクリームのデザートをいただいた。飲み物はローカルビールのピルセンのドラフト。

昼食の後は車で、コロニアの海岸線をドライブ。Playa el Alamoのビーチには家族連れやカップルなどで海水浴を楽しむ姿も見られた。

その後、しばらくフリータイムで各自街並みを散策し、17:01のフェリーに乗船するためにアナさんとサクラメント教会前に16時集合。一緒にフェリーターミナルへ移動した。

●コロニア・デル・サクラメントの物価は?両替の必要は?
コロニアの物価はブエノスアイレスと比べて少し高いという。と言っても日本と比べれば少しやすいと感じる程度。レストランのビールは1つで3〜4ドル、アイスクリームが2ドル程度。
基本的にアルゼンチンペソやアメリカドルであれば使えるので両替をする必要はない。レストランではUSDで払えばお釣りはウルグアイペソでくれる。アメリカドルの小額紙幣があれば便利だ。ただし博物館のチケットはウルグアイペソのみの購入となるので注意。

●憧れのアルゼンチン・タンゴショーへ
ブエノスアイレスといえば何はなくとも「タンゴ」のイメージという人も多いのではないだろうか。私もその一人。でも私のタンゴの興味の入り口は少し特殊だと思う。映画「ブエノスアイレス」を見て、印象的な音楽に引かれ、その音楽がタンゴのもので、アストラ・ピアソラという作曲家だと知ったのは数年後。映画で聞いたときはタンゴの音楽とはつゆとは知らず、ピアソラの奏でる音楽を聞いて、アルゼンチン・タンゴの音楽ってこんなにカッコいいのか、と驚いた。そんな私にとって、ブエノスアイレスでタンゴを見ることは何を差し置いても優先したかったこと。まさに念願のタンゴショーなのである。

ドライバーとの約束の時間は20:00。今回タンゴショーを鑑賞する場所はホテルから車で10分程度の「El Querandi」。ガイドブックにも持っているモンセラット地区の定番タンゲリーアだ。私よりも早くドイツ人(?)の団体客がいただけで、まだまだお客は少なかった。

今回ディナー付きのタンゴ鑑賞なので、まずはディナーを食べて、ショーが始まるのを待つ。
ショーが始まるのは午後10時過ぎ。食べ応えのあるステーキをメインにした3コースディナーだったが、午後8時過ぎからディナーを開始しているので、流石に9時半過ぎにはすでに完食してしまい、かなり暇を持て余してしまった。他のお客様は大体9時過ぎから集まりだしたので、個人的にはディナー付きの場合は夜9時過ぎに来た方がいいなと思った。しかし口コミなんか見ると、「早く来ないといい席が取れない」という意見もあるので、確かにその通りだと思う。なので真剣に間近で鑑賞したい人はディナー付きで良い席を一刻も早く抑えた方が良い。そこまで強く興味はなく、遠くからでも良い(遠くといっても100mないくらいの距離なので鑑賞するには十分の近さである)という人はディナー付きでなくタンゴショーのみの鑑賞でも良いと思う。

タンゴショーは映像を交えた内容で、単語の歴史を紐解くような構成になっている。クラシックなタンゴから、コンチネンタル・タンゴ、そしてピアソラの楽曲に代表されるような現代的なタンゴへ。踊りも多彩だ。
女性と男性で踊るタンゴはもちろん、女性1人と男性3人で踊るタンゴもある。タンゴの演目の中には演劇的要素も取り入れており、言葉は発せず身体の動きだけで表現するので見ているだけで楽しい。踊りだけではなく独唱、さらにピアノ、バンドネオン、バイオリンやコントラバスの演奏も見事。奏法もクラシックとは違い大胆でリズミカルだ。ソロでの演奏も楽しませてくれる。一口にタンゴと言ってもバリエーション豊かでこれほどまで奥行きがあるものだということを初めて知った。

個人的にはスペインのフラメンコやポルトガルのファドよりも惹かれるものがあった。

<<3/8:ブエノスアイレスの市内観光とホテルインスペクション>>

この日は少し遅めに朝10時にホテル集合。この日は日本語ガイドさんにブエノスアイレス市内観光と日本人旅行者によく使われるホテルを数軒を巡る予定だ。

●ブエノスアイレス ホテルインスペクション
今回下記のホテルに訪れた。

1、Conquistador
今回私が宿泊したホテル。感想は3/6の項目で前述した通り。

2、Libertador Hotel
非常に立地の良い5つ星ホテル。かつてはシェラトン系列だったと言うLibertador Hotelは日本の団体ツアーでもよく使われているホテルだ。確かに立地や館内のエレガントさ、スタッフの様子は他のホテルのワンランク上をいくレベルである。室内もドライヤー、バスタブ、セーフティボックス、ミニバー、無料のWIFIも備えている。そこまで古さも感じさせず、幅広い年代に受け入れられるホテルだろいう。

3、Loi Suites Esmeralda
賑やかなフロリダ通りに近く、コロン劇場など観光地も徒歩圏内。しかしあいにく満室で部屋は見れなかった。エントランスからの印象から言うと清潔感があり、モダンな佇まい。

4、Hotel de Las Americas
コロン劇場にほど近い立地の4つ星ホテル。エントランスはかなりモダンにリノベーションされている。室内はいくつか古さが目立つ部分もあるが、立地とクオリティを考えれば非常に良い選択肢であろう。室内にはミニバー、セーフティボックスにバスタブ、もちろん無料のWIFIもある。

5、GrandView Hotel & Convention Center
オープンして2年経っていないという比較的新しめのホテル。ホテルサイトでは4つ星となっていたが5つ星ホテルとしても遜色ないであろう。ビジネス地区に位置しているホテルではあるが、地下鉄アルベルティ駅そばなので問題ない。とにかくこのホテルの良いポイントは「新しい」という点。つまりこれまで紹介してきたホテルというのは、ビル自体がかなりの年代物であり。エントランスは綺麗にリノベーションしていたとしても建物自体の構造や造りに古さを感じるのは否めない。もちろん古くて良いクラシックな良さを出しているホテルもあるが、エレベーターや水回りに古さがあると流石に気にならなくはない。クラシックなホテルよりも新しく清潔なホテルのほうがいい!という方にはこのホテルはうってつけである。残念ながらこの日は日曜日とあってマネージャーが不在で、部屋を見せてもらうことはできなかった。

●ブエノスアイレス市内観光
今回、駆け足で訪れたのは下記の4箇所。

1、レコレータ墓地
観光地化されている墓地は数あれど、その中でも最高級の墓地なのがこのレコレータ墓地。日本の墓とは違い、この墓地は遺体を安置するための、まるで小さな家のような巨大な納骨堂が軒を連ねる様子はユニーク。一つ一つの納骨堂に見事な彫刻と装飾が施されており、なくなった一族の富を象徴している。ちなみに日本とは違い、アルゼンチンでは墓地を不動産として扱つかわれるそうだ。このレコレータ墓地に安置されている遺体は歴代大統領や著名人など。かの有名なエビータことエヴァ・ペロン元大統領夫人の一族の墓もここにあり、市井の人々からの献花が絶えない。

2、エル・アテネオ・グランド・スプレンディド
イギリスのガーディアン紙で「世界で最も美しい本屋」の一つに選ばれた本屋。それもそのはず、この本屋はかつての劇場をなんと「居抜き」としてそのまま書店にしてしまったという変わった本屋。ネオクラシックの絢爛な装飾とイタリアの画家が書いたという目を引く天井画。店内は地下1階と地上3階建となっており、3階からの眺めが素晴らしい。地下はもともと控室を改築しているらしいがあまり面影はない。現在舞台はカフェテリアになっているので、「世界で最も美しい本屋」をカフェ代わりに使うのも良いだろう。なお名称の「エル・アテネオ」は本屋、「グランド・スプレンディド」はかつての劇場名である。

3、5月広場
ブエノスアイレス 、そしてアルゼンチンの政治の中心とも言えるのがこの5月広場。この広場を中心として大統領府やかつてのブエノスアイレス市議会(現在は博物館)、さらに放射状に伸びる大通り沿いには国会議事堂もある。5月広場という名称は1810年5月18日から25日までブエノスアイレスで起こった一週間にわたる一連のスペイン領からの独立運動「五月革命」から取られている。デモやストライキなど、集会の場所としてこの広場はことあるごとに使われており、この日(3/8)も「国際女性デー」のための集会がおこなれており、多数の人々で広場は賑わっていた。

4、カミニート
アルゼンチンの観光で一つだけ選べと言われたら、真っ先に挙がるであろう観光地がここカミニートであろう。かつては漁師町の貧しい人々の住まいであったカミニート。漁師たちが船の錆止めとして使っていたペンキが余ったため、自分の家に塗ったのがきっかけで、アルゼンチン有数のフォトジェニックなスポットとして世界中の観光客に知られる場所へと変貌した。お土産屋さん、レストラン、カフェのなどが軒を連ね、大変賑やか。ちなみに、カミニートのすぐそばにはアルゼンチン・サッカーリーグの人気クラブ「ボカ・ジュニアーズ」のホームがあるためか、ボカのユニフォームなどが売られていたり、伝説的なサッカー選手、ディエゴ・マラドーナが在籍していたとあって、マラドーナに模した人形が店頭に飾られているのもサッカー好きには嬉しいポイントかもしれない。アルゼンチンに来たなら是非訪れて欲しい場所だ。

欲を言えばブエノスアイレスの地下鉄に乗りたかった。ブエノスアイレスの地下鉄は世界でも先駆けて地下鉄を作った都市として知られており、実は日本の地下鉄開業前にこの地を訪れブエノスアイレスの地下鉄を視察しているのだ。そのときに参考にしたのがブエノスアイレス最古のAライン。その後、日本で造られたのが銀座線だ。ちなみに名古屋市営地下鉄東山線や名城線、東京の地下鉄丸ノ内線で利用されていた車両がブエノスアイレスの地下鉄として再利用されていることはご存知の方も多いだろう。

●アルゼンチンで最後のランチ
この日、ガイドの上原さんが私のためにと言って、予約してくれたのが「La Posada de 1820」というレストラン。お店に入ると焼いたお肉のジューシーな匂い。それもそのはず、グリルはお店のカウンターから見える位置にあって、お客から見えるような位置にある。それでいて、店内はクラシックな出で立ち、決して下町の大衆食堂という感じでもなく、かと言って高級過ぎず、「清潔な店内、良いサービス、美味しい料理」をモットーにしているような、誰を連れて来ても恥ずかしくない居心地の良いお店だった。

上原さんが私のためにオーダーしてくれたのは前菜から肉、肉、肉のオンパレード。
まずは南米の食べ物といったらこれは外せない「エンパナーダ」、ミートパイ。
そして次はソーセージの「チョリソ」と「モルシージャ」。チョリソはスペイン風のソーセージのことだが、モルシージャを知っている人はかなりソーセージ通。モルシージャは血液を材料として加えたソーセージのことで、赤身肉で作ったソーセージと比べると柔らかく、色は黒く、血の風味が感じられる。中国でも血のソーセージは一般的。
メインはやはりステーキ。和牛のサシの入ったステーキだと油っぽくて、なかなか量は食べれないが、アルゼンチンに来たらボリュームあるステーキをお腹いっぱい食べて欲しい。赤身の肉だが肉質は柔らかく、ジューシー。後味もしつこくなく、たっぷり食べてもまた食べたくなる。
事実私はこの度で朝食を除いて1日2回は肉を食べ続けたが、これを書いているいまでもまた食べたくなってきた。これまで食べた中ではアメリカのステーキハウスが美味しかったと思うけれど、やはりアメリカも高い。同じものをアメリカで食べようとすると2倍する。日本にもいきなりステーキがあるけど、それでもアルゼンチンと比べれば高いし、ましてや二人で行くならばゆっくりは食べれない。
是非ブエノスアイレスでは美味しいアルゼンチンワインを飲みながら巨大なステーキをぜひ味わっていただきたい。

●帰路へ
午後8時のフライトに乗るために午後4時半ごろにブエノスアイレス市内からエサイサ空港へ向けて出発。ブエノスアイレスからのアメリカン航空はほぼオンタイムで出発。

●清少納言がパタゴニアで生まれたらガウチョになっていた?
ちなみにタイトルどおり、もし清少納言がパタゴニアに来ていたら「枕草子」は生まれてかどうか、について。個人的にはパタゴニアの自然が圧倒的すぎるので、改めて本にしたためる必要はなかったように思う。どちらかというとパタゴニアのガウチョ的視点にたってパタゴニアのミニマルな自然を愛でていたのかも。ちなみにガウチョとはパンパ(草原地帯)やアンデス山脈東部に17世紀から19世紀にかけて居住していた、カウボーイ的な人々のことである。ガウチョ版「枕草子」はきっと面白い。

●終わりに・・・
10日間に渡ってパタゴニア+ブエノスアイレスを旅して来たが、率直な感想としては「短すぎる」、この一言に尽きる。
パイネは一日観光では絶対に足りない、ビューポイントの観光だけでなく、トーレス・デル・パイネの近くまでトレッキングしたかったし、さらに言うならエルチャルテンのフィッツロイにも行きたかった。少なくともパタゴニアをしっかり観光するならトータル13日、天候不良の日もあるかもしれないので15日ほどあったほうがベターだ。

2020年3月現在コロナウィルスの影響で旅行したくてもしにくい状況にはなってしまった。状況は流動的ではあるが私が旅行中に、コロナウィルスで困ったことや差別を受けたと言うことは全くなく、これから旅行する方達にとって多少安心材料になれば幸いだ。影響がこれから大きくならず、安全に旅行が楽しめる、そんな状況に一刻も早く戻って欲しいと願っている。

2020年3月 橋本

●お勧め情報

ペリト・モレノ ★★★★★
アクセスの良さ、景観の良さ、崩落のチャンスの多さから氷河観光ナンバー1。できれば南半球が夏の間、しかもお昼の時間帯で崩落の瞬間を目撃したい。

トーレス・デス・パイネ ★★★★★
アクセスは良いとはいえないがやはり一度はいておきたい、パタゴニア地方の象徴たる岩峰。できればビューポイント巡りとトレッキングにそれぞれ一日ずつ当てて計2日は観光したい。

ブエノスアイレス ★★★★
白人率が高いというブエノスアイレス。建物もヨーロッパ風であり、どことなくフランスを思わせる雰囲気で、暖かな気候もあいまって、まるで南仏にいるかのよう。さらに肉好きにはさらにたまらない都市だ。アルゼンチンの年間消費量は平均一人50キロというから1日あたり150g程度の消費をしていることになる。これは日本のおよそ7~8倍の量である。ワインも美味しい。

タンゴショー ★★★★
世界の踊りは数あれど、アルゼンチン・タンゴは格別だった。情熱的で官能的。ダンスのスキル、歌、演奏、それぞれ素晴らしい技術。言葉は不要、観ているだけで楽しい。

コロニア・デル・サクラメント ★★★★
ブエノスアイレスから手軽に行けるウルグアイ。美しくユニークな旧市街は唯一無二。ブエノスアイレスでもし時間があったらおすすめ。

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