憧れのモアイに会いに絶海の孤島・イースター島へ

憧れのモアイに会いに絶海の孤島・イースター島へ


一生に一度、いつかは行って見たいと誰もが思っている場所、遠く離れた南太平洋、ポリネシアのイースター島を訪れる機会がついに巡ってきた。
イースター島といえばモアイと言うくらいモアイのイメージが強すぎるため恥ずかしながらモアイ以外のことはよく知らない。そもそもモアイは謎の像。様々な説があるがその製造目的や運搬方法など未だに真相が判っていない。そんな謎に満ち溢れたイースター島はもちろん世界遺産に登録されている。またその島のおよそ半分がラパヌイ国立公園に指定されている。


とにかく遠い、さらに残念なことにアクセスが良くない。それを理由に見送っている人は多いのではないだろうか?
チリ本土からは3800キロ、最も近い人有人の島との距離が2000キロと世界で最も離れた絶海の孤島といわれる所以だ。
イースター島を結ぶラン航空の定期便はサンチャゴまたはパペーテ、リマからでそれぞれの本数が少ない。

遅延、欠航の場合の振替がないのも実は難点だ。
今回はアメリカン航空のダラス経由でサンチャゴへ。この日の関東地方は首都圏の電車がほぼすべて止まるほどの強風の日。羽田からの国内線もほぼ欠航というほどの悪天候の中、案の定、滑走路の前で強風に煽られながら2時間近く待たされる。なんとか離陸したが最初のダラスのイミグレーションで異常なまでの行列を経験、これは予想外の苦痛であった。サンチャゴに着くまでおよそ27時間の長旅。さらに3時間待ってラン航空に乗り換えて6時間、ようやく目的のイースター島、マタベリ空港(スペイン語でイスラ・デ・パスクア空港)に辿り着いた。もともと“遠い”目的地がさらに遠く感じた。結局合計36時間以上かかり、達成感と疲労感の両方を覚える。
空港に到着したら、モアイ像に惹かれてイースター島に移住して20年、唯一永住権を持つベテラン公認ガイドの最上さんの出迎えをうける。

今回泊まったホテルはタハタイホテル。空港から10分かからずとても近い。こちらのホテルには最上さんの奥さんが働いていらっしゃるので特に日本人のお客様には安心だろう。場所はハンガロア村の南、西海岸沿いの好ロケーション。レストラン、土産屋の多い村の中心エリアまでも徒歩圏内、さらにタハイ儀式村まで歩いて行けるので散歩ついでにいくつかのモアイ像を見ることができる。
明るく清潔な客室は本館30室とコテージ10室の計40室。

とても静かで快適な部屋。天井も高く一人で泊まるには広すぎるくらいだ。
また、朝食は海を眺めながらのビュッフェで1日がすがすがしく始まる。ケーキの種類も豊富で想像以上に満たされる。

イースター島の気候
年中温暖な気候。南半球なので日本とは逆の気候で一般的には11月から今回訪れた4月くらいまでが夏にあたり良いシーズンとされている。2月には島最大の祭り(タパティ)もあって世界中から観光客がやってくる。
日中はさらっとしていて汗ばむほど暑い!とは感じないが日差しが強く、放っておくと予想以上に焼けてしまうから観光の時は日焼け止めが必要。迂闊にもまったく準備していなかったが最上さんに貸していただいたので助かった。
着いた翌日朝から早速観光へ。今回は4泊5日。島内のほぼすべてのツアーに参加したのでじっくり紹介したい。
まずはオロンゴ儀式村とラノカウ半日観光コースからスタート。
滞在するハンガロア村から近いエリアを半日で周るコース。
まず最初に昔、鳥人儀礼が行われたオロンゴの儀式村へ。

伝説では村人がこの300メートルの断崖を降り、沖に浮かぶ3つの中で最も遠い島(モトゥヌイ)まで1.5キロ泳いで渡り鳥の最初の卵を額につけて戻る。1番に戻った人の部族の首長が神の化身であると鳥人間(タンガタマヌ)となって神として崇拝される。途中にサメもいて、命を落とす人も多かったようだ。島の記録では1866年まで続けられていたという。遥か200年以上前に部族の名誉のために命がけで島まで泳ぎ卵を持ち帰った男たちの姿を想像してみる。その儀式が行われた証しとして岩に刻まれている鳥人間の彫刻(レリーフ)を見ることが可能な、島内で最も絶海の孤島を体感できる景勝地といわれている。


次いでラノカウ展望台へ。ここから見るカルデラ湖はとても綺麗だ。このラノカウは島に3つある火山のひとつでカルデラ湖の大きさは最大。現在も島内最大の貯水庫として飲料水の供給源になっている。

午前のツアーはここで終了する。
午後からはアキビ半日観光のコース。
まずは空港のちょっと先、南のアフビナプへ。ここでは島に10体もない、珍しい赤石の女性モアイや埋もれたモアイが見られる。

またここのアフの石組みはペルーのクスコに残るインカ時代のものと似ているため、ポリネシア人は南米から来たという説が確信された地でもある。ちなみにアフとはモアイが乗っている石を積み上げてつくった台座のことで全てのモアイ像はアフ○○と呼ばれている。
ここで偶然、幸運にもセルフヒオラプ氏に出会う。氏はイースター島出身の考古学者でこの島最初の知事。以前日本のテレビ番組に出演した際にクレーンがあればモアイが立つと言ったことで日本の企業からのサポートを受け、アフトンガリキの15体のモアイを復活へと導いた功労者。せっかくなのでお願いして記念に写真を撮らせていただいた。

次にそこから少し北上し島の中央寄りプナパウへ。ここにはモアイの頭の上に乗っているプカオが作りかけの状態でゴロゴロ転がっている。

一体どうやってここから10キロ以上離れたところまで運搬したのかが謎のまま。
さらに北上し、ついにアフアキビへ。いよいよモアイとご対面。上陸して初めてみる“生モアイ”は想像していたより小さい。感じ方は人それぞれだと思うが“意外とあっさり”というのが正直な感想だ。


モアイは村の守り神なので村を見て立つのが普通だがここには島内で唯一、海の方を見て立つ7体のモアイ像が見られる。その前の2箇所と違い、シャッターの機会が俄然増える。さまざまな角度から眺めるのが楽しい。
最後にアナテパフへ。ここは全長約4キロ、島内に200以上ある中でも最大規模の洞窟でかつては住居や侵略者から逃れる避難壕だったらしい。入口にバナナの木が生い茂っている。かまどの跡が残っていて昔の人々の暮らしが垣間見られる。


これでツアーは終了。
翌日はメインであるイースター島終日観光コースへ。
このツアーが最も充実していてイースター島らしさを感じられると思う。
まずは南海岸沿いのアフアカハンガへ。このアカハンガは18世紀に起こったモアイ倒し戦争によって倒されたモアイが数多く見られる場所。

車を降りると地元の名物オヤジがお出迎え

観光客の訪れる時間に合わせて店を出してお土産を売るので客が移動する先々に出没するらしい。イースター島では安全対策のため万一のときお互いが助け合えるようほぼ同じ時間帯に観光が行われると聞く。
そこからさらに北上してアフトンガリキへ
ここには1995年に日本の援助によって復元された15体のモアイが整然と立ち並んでいる
ここのアフは全長約100メートル、幅6メートルとポリネシアでは最大級。
その上に佇む15体のモアイのその姿はさすがに迫力がある。自分がイメージしていた、同じようで違う顔を1つずつカメラに収めてみた。ここはイースター島観光、とりわけモアイ観光の重要ポイントだろう。




入口に立っているモアイホトゥイティはかつて来日したこともあるモアイ。

その後方に見えるのがツアーのハイライト、ラノララク。

ここはカルデラ火山で火口湖がある。
島のモアイがすべてここで切り出されたいわゆる製造工場でおよそ400体のモアイが残されている。
でも何故残っているかはもちろん謎のままだ。以前CMで見たことのあるモアイはここにいた!
入口の国立公園管理事務所から山腹をぐるっと周るようにつくられた遊歩道(トレール)に沿ってじっくり時間をかけて見学。首まで埋まっているモアイ、斜面に掘り出し中のモアイ、正座するモアイ、岩肌の製造途中のモアイ、
捨てられたようなモアイなど、およそ400体の様々なモアイが楽しめるテーマパークだ。


モアイピロピロ・・・日本のCMでもお馴染みの顔。全長12メートルもある。その表情は何か言いたげだ。

モアイトゥクトゥリ・・唯一足のあるモアイ。正座して手を膝の上に置いている。この場所からアフトンガリキが小さく見える。

モアイコトゥウホトゥイティ・・胸に舟の彫刻がある珍しいモアイ。

ツアーの時間が少なくなったので急いで火口側にまわってみた。葦が生い茂る湖とその後ろの斜面に点在するモアイは
他と一味違う趣。山の表に時間をかけすぎると見落としてしまいそうだがここも絶対に外せない場所。

もう少しゆっくりしたかったという気持ちを残してツアーはさらに北海岸へ移動する。
不思議な球形の石で光のヘソという意味のテピトオテヘヌアは磁気を帯びているので方位磁石を置くと針が回る。

島で唯一、遊泳可能なアナケナビーチは静かで綺麗なピンクサンドビーチ。

ツアーではここで1時間近く時間を取るので水着を持っていけば海に入れる。ビーチ後方のヤシの木々はまさに南国トロピカル、さらにその後ろにモアイが佇んでいるのが見える。

プカオを頭に載せたアフナウナウはこの島を象徴する風景だ。

周囲にはプカオ、倒れたモアイも見られる。ピンクサンドビーチとモアイ。この絶妙な組み合わせがポイントでもある1日ツアーはここで終了する。
博物館とタハイ儀式村半日観光コース
3日目は残りの半日観光コース。車を使ったが実際はアナカイタンガタを以外はすべてハンガロア村から歩ける距離
にある。まず村の北にあるイースター博物館から。入口で最上さんが翻訳した日本語ガイドを貸してもらえる。

アフナウナウで発見されたモアイの目

女性のモアイ、未解読の象形文字が刻まれたロンゴロンゴ板を見学する。
そしてすぐ近くのタハイ儀式村へ。ここでもイースター島を象徴する風景が目に入る。


唯一目が入っているモアイ像、アフコテリクや、頭が欠けているもの胴体だけのものと不揃いで5体並ぶアフバイウリ、さらにその隣に1体だけ聳え立つアフタハイと同時に異なるタイプのモアイが見られる。


村から歩いて行けるので夕方に訪れれば夕陽をバックにモアイを写真に収めることができる。

行くなら断然夕暮れ時のほうがお勧め。ちなみに日没が遅いイースター島では20時ごろまで明るい。
最後は南にある洞窟、アナカイタンガタへ。

ここは昔、儀式が行われた洞窟で食人洞窟とも言われている。その内壁に浮かび上る渡り鳥の絵は500年前のものとは思えないほど綺麗な状態で残っている。

以上で島内で催行するすべてのツアーに参加したことになる。
居酒屋甲太郎
初日こそ地元料理のお店も行ったが正直なところ値段とサービスがあまり良くなかった。2日目からは少し歩いて
ハンガロア村の外れ、空港近くにある日本居酒屋『幸太郎』へ。ガイドブックにも紹介されている有名な店だが
あまり期待せずに入ったところ見事に裏切られた。
入口の提灯が印象的な、オシャレで洒落のきいたお店。

日本人のお客さんは少ない。
オーナーのフランシスコザビエルさん(冗談ではなく本名らしい)はとても陽気。日本で10年近く修行した日本大好きな方でもちろん日本語OK。お子さんの名前である甲太郎をそのまま屋号にしている。

店内には日本の雑誌、単行本が置かれている。面白いのは日本語で書かれた注意事項。個人的にはこの洒落のセンスは好きだ。

かつてサッカー日本代表の中田英選手や、宮川大輔さんがテレビ番組制作のために訪れた際に使われたちょっと有名なお店。その時の映像をDVDで流してくれる。メニューの中に“宮川大輔のモアイ寿司”というのがある。食べたかったが10人前なのでさすがに1人では注文できない。天丼、鉄火丼、にぎり寿司からお茶漬けまで、上品で日本で食べるよりはるかに美味しい。

美味しいだけでなく、物価の高いイースター島にあって料金も相対的に安い。他の地元の料理への食欲がわかなくなったことも手伝って珍しく結局帰るまで通い続けてしまった。
こんなことは旅先で初めてで3日間という“束の間”の常連となった。こういうこだわりもたまには良いかもしれない。
イースター島を訪れる人に是非行って欲しい。出来れば日本の週刊誌持参でいくと喜ばれる。
一番のお勧めは鮪のお茶漬け。とにかく美味い、最高。メニューにはないがネタがあれば作ってくれる。

ハンガロア村とハンガロア教会


人口4000人、1周58キロの小さな島のすべての人がこのハンガロア村に住んでいて、銀行や郵便局など生活に欠かせないものが集中している。またメインストリートにお土産やが立ち並んでいる。

ちなみに島内はUSドルが流通しているのでチリペソへの両替は特に必要ないかもしれない。
その中にある教会では毎週日曜にはミサが行われる。70%がカトリック信者でこのミサには多くの島民が集う。たまたま行った日が日曜にあたったのでミサを見学することができた。最後は全員で手をつないで笑顔で歌う、予想以上に陽気なミサだった。

バナナソリ下りコンテスト

毎年2月頃に行われる最大のお祭り、タパティ。
乾季(11月から3月頃)でもあるこの時期は観光客が最も多いピークシーズン。
“世界の果てまでいってQ“でお祭り男の宮川さんが実際に滑った丘を遠くから眺める。かなり急な斜面を最高時速
80キロで降りるらしい。これはかなり勇気のいるコンテストだと思う。

ツアーでは行かない、歩いて行けるお勧めスポット
散歩して見られる海岸沿いのモアイ、ピコ港を背に佇むアフリアータと
サッカーグランドの後ろに立つアフタウティラ。この2つは村メインストリート入口付近にある。

また、タハイ儀式村の先、北の方角にあるアフハンガキオエ。

どれも1体だけ立っている。ハンガロア村の中心からはすぐ、泊まっているタハタイからもすぐなので夕暮れ時に綺麗な写真が沢山とれる。
ツアーにはない秘密のスポット、アナカケンガの洞窟トレッキングを体験

島の西海岸にある洞窟、アナカケンガは地元の人でもあまり知らない、文字通りの穴場。
さすがに歩いてはいけないがハンガロアから車でおよそ30分、かなりの悪路を通り抜けた先にこの洞窟は存在する。草で覆われた小さな穴なので一目で洞窟とは気づかない。

とても細い入口をしゃがんで入る。これがちょっときつい。

本当に真っ暗で何も見えない。懐中電灯を照らしながら暗闇を50メートルほど進むとその先が二手に別れ、光が見えてくる。光はスペイン語でドスベンターナス(2つの窓という意味)と言われている。この2つの窓とその先の風景がこの洞窟の見所。終点はいきなりの断崖絶壁で少々危険だが、足がすくむほどの絶景が楽しめる、まさに秘密のスポット。一昨日行ったアナテパフに比べ規模は小さいがサプライズ感は断然上で行く価値がある。但し個人で行くのは難しいのでガイド付きの手配がお勧め。(料金は要問合せ)


個人で来ている観光客も数名見かけたがそもそもイースター島の個人旅行の場合は?と考えると限界があるかもしれない。まず足の問題。島内にバスは走っていないし、タクシーも少なく、かつ割高で便利とはいえない。ではレンタカーはというとこれもあまりお勧めできない。まず道が悪いので運転が難しく壊してしまう危険を伴う。でもそれよりも不安なのは保険。事故に対する補償が著しく低いので運転は勧められない。自由にまわりたいのであれば自転車のレンタルがあるのでそちらを勧める。1日約25USD。

結論としては時間の制約はあるが現地ツアーに参加するのがベストだろう。
最上さんのガイドでまわれば理解が深まるし、なんといっても安心だ。
最後に旅行を計画している方へ
行くまで少し時間はかかりますが、年間通して楽しめるので是非一度、憧れで終わらせずにモアイをリアルに体感して
欲しいと思います。時間の都合でできなかったのですが体験ダイビングや乗馬も楽しめます。
とてものんびりした島で治安が良くハネムーンもお子様連れも、またご年配の方もゆっくり楽しめます。
モアイだけでなく、アナカイタンガタを始めとする数多くの洞窟や巨大なカルデラ湖を有する休火山のラノカウから
も独特の神秘性を感じることができるイースター島に是非一度訪れてみてください。
2012年4月 櫻本

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