登頂成功!!!憧れのウルル登山<オーストラリア>

登頂成功!!!憧れのウルル登山<オーストラリア>


1日2日の短期滞在でウルルに登るにはある程度の運に恵まれなければならない。一つでも条件が満たされないと登山道は開かない。まず原住民のアボリジニの儀式や行事がある日はダメ、風が強い日はダメ、気温が高すぎてもダメ、雨が降っていてもダメ。ましてやウルルはアボリジニの聖地であるため、基本的には登ってほしくないと考えている。そんな聖地ウルルに運良く登ることができたのであれば、アボリジニに最大限の敬意を払いつつ、危険のないように登らなければならない。


日本出発時に見た天気予報では、現地は雨。まぁまずウルルには登れないだろうと諦めていた。現地のガイドさんが言うには「今月に入って登山道が開いたのは3回だけです。」とのこと。私が滞在したのはその月の23日と24日。1週間に1回という低い確率。しかも天気予報は雨。そもそも内陸部の乾燥地帯に雨が降る予報とぶつかるというのも、ある程度低い確率にひっかかったものだ。
今回はツアーに入っていたので、ホテルにバスが迎えにきてくれた。早朝まだ暗いうちにホテルを出発するので、晴れていれば満天の星空を眺めることができる。マゼラン星雲、南十字星などの南半球でしか見られない星も、運がよければ見られるであろう。季節によって見られる時間帯、位置が異なるので、ガイドさんに確認するのがベストである。
前日のシャンパンサンセットでは曇り空のため、赤く染まるウルルを眺めることができなかったのだが、その雲はどこへやら、一転して満天の星空を眺めることができた。うっすらと明るくなりつつある空を眺めながら、バスでサンライズ会場である展望台へと向かう。雲ひとつない晴天で、赤く染まるウルルが眺められるのではと、否が応でも期待が高まる。

日の出前の黒いウルル

だんだんと明るくなり、赤みを帯びる空。そして朝日を浴びるウルル。次第に赤く染まっていき、それまでとは全く異なる姿を見せてくれた。それは神々しい風景で、あまりの美しさに言葉も出ない。世界各国からの観光客でにぎわっていたが、その神聖な姿に皆息をのんでいた。

日の出が近い空

いよいよ朝日が昇る

赤く染まるウルルと観光客

サンライズツアーをしっかり楽しんだ後、いよいよウルルに近づく。登山道が開く場合は、登る人とそうでない人と分かれて行動することになる。ガイドさんは登らない人たちの麓巡りツアーを案内するので、登る人たちは各自で行動し、集合時間までに入り口まで戻ってこなければならない。

ウルル登山口

ほぼ諦めていたのだが、美しい朝日を見ることができ、風もさほど強くない・・・あとはアボリジニの儀式や行事があるかどうか・・・入り口に近づくと、登山道を登っている人の姿が見えた。そこでガイドさんが「お、今日は登山道あいてますね」とのこと。ウルルの幸運に恵まれた!写真などで見て分かるとおり、ウルルは一枚岩の山で、両手を使って体勢を低くして登るため、ロッククライミングのようなものだ。途中までは急傾斜の坂道を手助けなしで登らなければならない。そこを自力で登ることができなければその先も行けないという度胸試しのような坂である。

見た目以上に登ってみると急な斜面

そこを登りきると、鎖がつながれている急斜面が出てくる。鎖を使って登っていくのだが、これが予想以上に怖い。さえぎるものが何もないので、風がふいてきて油断すると落ちてしまう。慎重に鎖を握り、ゆっくり登っていく他ない。スキー場の上級者コースより急なので高所恐怖症の方には一切お勧めしない。


しばらく鎖のある急斜面を登ると、比較的平らで風がさえぎられる休憩ポイントが現れる。ここまでくると眺めが素晴らしく、余裕が出てくる。しかし足、ひざ、腕に疲労がたまっているので、勢いよく先に進もうとしてはいけない。十分な水分をとり、休憩をとってから先に出発する。非常に眺めがいいのでここまでの急斜面を登って帰ってしまう人も多くいるようだが、頂上まで行ってみてわかったのだが、登山道で急なのはここまで。しかしながらここで登山道の三分の一程度なので、頂上への道のりはまだ長い。その後は鎖もなくなり、登山道を示すものは白い点線のみ。

白い点線を頼りに頂上を目指す

これ以外の場所を歩いていくこともできるのだが、油断すると転落してしまうので、無茶なことはしてはいけない。死者が出るほど危険な登山であることを終始忘れてはいけないのだ。
ここから先は雨などで浸食された地層の上のアップダウンを、登り降りしながら進んでいく。局所的に急なところはあるが、腕を使って慎重に登っていけば怖いということはない。さえぎるもののない場所に出るので、360度広がる大平原を見渡すことができる。景色を楽しみながらひたすら頂上に向かって進む。

地面が赤褐色で、人工のものが全く見られないので、宇宙のどこかの惑星にいるのではないかという不思議な感覚がしてくる。また登山をしていて気持ちがいいのは、登山者同士の一体感を感じられるということ。外国人であろうが、日本人であろうが、関係なく「ハイ!」とあいさつを交わす。登山口から頂上まではおおよそ1時間程度。休憩を挟んでもそれくらいあれば登れる。頂上には写真のようなマーカーが一つだけ置かれている。

頂上からの眺めは想像以上に素晴らしかった。


見渡す限りの大平原。遠くにはカタ・ジュタが見える。

遠くに見えるカタ・ジュタ

存分にその眺めを堪能し、ツアーの集合時間もあるので、下山を開始した。
二度と見られぬであろう景色に後ろ髪を引かれながら、さくさくと下山していく。問題は入り口付近の急勾配の坂道。スキー場の上級者コースの斜面より急な坂道を降りていくとなるとかなり怖いのでは・・・と心配になった。帰りも景色を楽しみながらどんどん進んでいくと、あっさり行きに休憩した場所にたどり着いた。ここからが急斜面で慎重に降りなければいけないポイントだ。驚くことに降り始めてみると、意外に怖くない。登りに感じた恐怖心が嘘のようになくなり、斜面を前に淡々と降りていくことができた。しかし膝にブレーキをかけながら降りていくため、膝が笑う。大爆笑だ。逆向きで鎖を伝って降りると楽だった。

あっさり下山し終わり、集合時間まで間があき、バスも来る気配がなかったので、ウルルの力をいただくべく、体を預けてみた。空しか見えず、ウルルに吹く風の音が聞こえてきて心地よい。

こうしてウルル登山は無事終了した。正味2時間で体験したとは思えないほどの濃い経験ができたと思う。文頭に挙げたように、聖地に足を踏み入れるからには、終始安全に考慮し、ウルルとアボリジニに対して敬意を忘れてはいけない。最後にウルルに「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えて、再びツアーバスに乗った。
ウルル・カタジュタのツアーでは、登山ができなかったとしても、間近でウルルを楽しむことができる。ガイドさんとバスと登山をしない人たちは、ウルルの麓をゆっくり散策する。また聖地と呼ばれる場所は決して写真を撮ってはいけない。ウルルの周囲を一周するとわかるのだが、通常我々が見慣れているウルルの姿は完全に一方向だけで、裏側を写した写真はない。車で通って見ることはできるが、写真を撮ることは許されない。ウルルの裏側は実際に行った人にしか見られない貴重な姿である。いつも同じ面しか見せない月の裏側を眺めているかのような不思議な感覚だった。

聖地を避けて撮ったウルルの裏側 人の顔のように見える侵食跡

※ウルルはエアーズロック、カタジュタはマウントオルガの名前が有名であるが、正式名称を利用させていただいた。
2011年10月 倉田

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