ビール好き、鉄道好きの私にとっては、今回の研修はまさに夢のよう。ドイツはヴァイツェン、プラハではピルスナーをしっかり味わおうと意気揚々と出発した。
1日目
まず大韓航空でフランクフルトへ。噂の機内食のビビンバは、かなり本格的でおいしかった。いろんな機内食を食べてきたけれど、これはかなりの高レベルでびっくりした。夕方フランクフルトへ到着すると、サマータイムのおかげでまだまだ陽が高く、すっきりとした快晴で非常に過ごしやすい。
とりあえず空港からホテルへ移動しようと思い、空港駅のホームでなかなか来ない電車を待っていると、隣にいたお兄さんが声をかけてきた。「君は中央駅まで行くのかい?」と。
「そうですが何か?」と尋ねたら、「こっちのホームの電車はまだまだ先だから、反対側のホームの電車を待った方がいいよ」とわざわざ教えてくれたのだ。久しぶりのヨーロッパ単独旅行でビクビクしていたところ、しょっぱなでこんな優しさに触れ、いきなりドイツが大好きになってしまった。電車内でも知らない人同士で話して仲良くなっていたり、子供に微笑みかけると、満面の笑みで返してくれたり、田舎の街ですれ違ったおばあさんや、自転車に乗っているご夫婦と「ハロー」とあいさつしてみたり、どこかほのぼのとして、人とのつながりを大切にしている気質を感じることができた。
2日目
今回の旅の一つ目の目的であるザバブルクへ出発。鉄道パスを使いフランクフルトからカッセルへ、列車を乗り換えてホーフガイスマーという駅まで向かう。ドイツの列車は広くてきれいで、日本で言うところの新幹線のような感じである。フランクフルトを離れていくにつれ、広大な牧草地や森が広がり、たまに見える街並みが非常にかわいらしくヨーロッパに来たんだなぁという実感がわいてくる。
ホーフガイスマーはまわりにお店もなにもなく、イースターのお休みでバスすら来る気配がない。とりあえずホテルに電話をかけ、駅までタクシーを呼んでもらい、何とか目的地までたどり着くことができた。ホーフガイスマーからザバブルク城まではタクシーで大体20分、20ユーロくらいである。ザバブルク城の隣には、テラパークという牧場があり、古城ホテルと合わせて観光客で賑わっていた。部屋からも牧場を眺めることができ、牧歌的な雰囲気の中でのんびりとした時間を過ごすことができる。
古城ホテルの中は近代的に改装されているので、清潔で広く、あたたかな感じのする部屋である。ホテルのスタッフの方たちも皆優しく、親切ですれ違う度に笑顔で「ハイ!」と声をかけてくれるので、とても気持ちがいい。また古城ホテルは高台に建っていて、まわりにはほとんど建物がないので夜になると静かで、満天の星空が見られる。
3日目
朝は見事に鳥のさえずりで起こされ、気持ちのいい目覚めとなった。優雅なレストランでビュッフェ式の朝食をとり、行きと同じようにタクシーでホーフガイスマー駅へ。この日も長距離の列車移動である。ホーフガイスマーからカッセルへ、カッセルからビュルツブルグへ、ビュルツブルグからシュタインナッハへ、そして、シュタインナッハからローテンブルクへ。3日目は中世の街ローテンブルクに宿泊、そして観光をする。
列車移動は快適で時間が読めるので楽であるが、一つ難点が・・・ゴロゴロ転がし、日に日に重量が増すスーツケースである。階段しかない駅とか、やたらと入り口が高い電車に乗るときには一苦労である。
シュタインナッハからローテンブルクへの列車は、2両編成の新しくて開放感のある列車であった。田舎の路線だから古い小さな列車を想像していたら、見事に裏切られた。ローテンブルクに行くのがメインの観光列車のような感じなので、社内アナウンスも観光インフォメーションが流れる。イースターのお休みとかぶっていたので、ドイツ国内や各国からの観光客で賑わっていた。自転車を持ち、電車での移動と合わせて旅をしている旅行者も多く、何度「今持っている荷物が重いスーツケースではなくて、自転車だったらもっといろんなところを見にいけるのに・・・」と感じたことだろうか。
お昼過ぎにはローテンブルクに到着し、午後はさっそく市内観光にでかけた。ローテンブルクの街は城壁に囲まれた中世の街並みが残る「THE ヨーロッパ」という感じの街である。周囲1キロ程度の大きさなので、半日あればメインは全てまわることができる。ショーウィンドウに並ぶお菓子やおもちゃを眺めたり、個性的なお店の看板をチェックしたりしながらなんとなく歩いているだけでも非常に楽しくなる街である。
ただ、石畳の街なので、ぼーっと歩いていると足元の小さな段差に気付かず転びそうになったことも多々あるので、その点は注意が必要である。
4日目
この日は1日かけてローテンブルクからホーエンシュバンガウという、ノイシュバンシュタイン城の麓の村まで移動する。朝9時頃にはローテンブルクを出発し、何度か乗り換えミュンヘンへ到着したのは、午後1時過ぎであった。次の電車まで2時間近く時間があったので、ミュンヘンの駅周辺を観光しようと思い、まず駅の中のコインロッカーに荷物を預ける。1回で5ユーロ・・・結構するなぁと思いながら、思いのまま動けることを考えると預けてしまった方が楽である。大きなスーツケースが入る大容量のコインロッカーがいたるところにあるので、非常に便利だ。ミュンヘンの駅も非常に大きいが、フランクフルトの駅と比べて近代的なので、個人的にはドーム型の雰囲気のあるフランクフルト駅の方が好みである。ミュンヘンではどうしてもヴァイスブルストという白ソーセージが食べたかったので、フュッセン行きの電車で食べようと思い屋台で購入し、わくわくしながら電車に乗り込んだ。想像以上にやわらかく、特製の甘辛いソースが絶妙でおいしい!嬉しそうに食べていると(1人で)、隣にいた親子に笑われてしまった・・・
ミュンヘンからフュッセンは電車で約2時間。どんどんオーストリアとの国境に近づいていくため、雪をかぶったアルプスが目前に迫ってくる。フュッセンからホーエンシュバンガウはバスで10分くらいだが、本数が少なく、最終が18時過ぎくらいなので、あまり遅くなるとバスでは行けなくなってしまう。ここではシュロスブリックというペンションのようなホテルに2連泊する。部屋からはライトアップされたノイシュバンシュタイン城と、ホーエンシュバンガウ城を眺めることができた。通常はミュンヘンからの日帰り観光が多いので、ここに宿泊しなければ夜のお城の姿を眺めることはできない。
5日目
お城への入場チケットの販売は朝8時から始まる。早い時間だとお客さんが少ないので、全く並ぶことなくチケットを購入することができた。2つのお城の共通チケットを買うと、まず先にホーエンシュバンガウ城に行くことになる。チケットに時間が記載されるので、それまでに入り口に行き、自分のツアー番号が呼び出されたらお城の中に入り、ツアーがスタートするという流れになっている。
ホーエンシュバンガウ城は麓から徒歩10分くらいで行けるが、ノイシュバンシュタイン城は山道を30~40分ほど登る。バスや馬車でもいけるが、足に自身があれば徒歩で行くことをすすめたい。空気がキレイで非常に気持ちがいい。お城の入り口は世界各国から集まった観光客でごったがえしていた。さくさくと入り口まで登ってきてしまったので、1時間近く入り口で自分のツアー開始を待つと、びっくりすることに英語のツアーグループは総勢40人~50人。この人数を狭いお城の中を1人の
ガイドさんが連れて行く。お城の中は非常に美しい装飾が施されている。ルートヴィヒ2世の物語を少しでも聞きかじっていくと、より一層このお城の存在感を感じることができるだろう。
城内の観光を終えて、次に必ず行くのがマリエン橋。ここからの眺めが一番有名で、再び山道を登りながら、どんどん期待が高まる。しかし実際に行ってみると、マリエン橋側からのお城の側面が現在修復中で、残念なカバーがかけてあった。しばらくは続くそうなので、いつになったらあの美しい姿を拝見できるのだろうか・・・
6日目
この日も1日かけてウィーンまで移動する。9時前にはホーエンシュバンガウ発フュッセン行きのバスに乗り、フュッセンからミュンヘンへ移動、乗り換えの時間も少なくウィーン行きの電車のホームまで重い荷物を引きずりながらダッシュ!ギリギリセーフと思い、空いている席に座るとなんと出発が40分遅れ。ミュンヘンからウィーンへはICで4時間半ほどかかる。私が乗ったのは、6人で一つのコンパートメントになっているキレイな電車だった。この日だけでも電車の中で7時間も過ごしていると考えると、よっぽどな電車好きでないと退屈でたまらないだろう。
ウィーンに着いたのは16時半頃で、やはりサマータイムのお陰で陽が高く、まだまだ暑い。ホテルにチェックインして街に出ると、ほとんどの観光スポットは閉館時間を迎えているため、街並みのみの観光で我慢することに。それでもウィーンの街並みはきれいで、ドイツとはまた違う雰囲気で高貴な印象を受ける。さすがハプスブルク家の国・・・と、圧倒されてしまった。
7日目
ウィーンといえば、伝統のカフェとスイーツ!ということで、午前中はシェーンブルン宮殿内にあるカフェで、アプフェルシュトゥーデル(アップルパイに似たお菓子)の教室を見学した。もちろんコーヒーと一緒に味わうことができるのだが、やはり伝統のあるお菓子なので、甘さ控えめで味わい深く、大人のお菓子という感じだった。ウィーンでは是非カフェでコーヒーとスイーツを体験してもらいたい。
午前中でウィーン観光は終了し、再び列車でプラハへ。ここも4時間かかるので、16時の列車に乗って、到着予定は20時。さすがに旅の疲れが出てきて、ぐっすり寝込んであっという間にプラハに到着。天気が悪くなってきていて、外に出るとぐっと冷え込んでいた。ここまで一週間天気に恵まれてきたが、最後に雲に追いつかれてしまったようだ。
8日目
ヨーロッパの旅も最終日。出発の飛行機まで時間があるので、プラハ観光とホテルインスペクションで数件ホテルを回ることにした。あいにくの曇り空でキレイな街並みを見ることはできなかったけれど、プラハ城、カレル橋、旧市街はやはり美しく、圧倒されてしまう。
見るところを搾ればメインは1日あれば見れてしまうが、それ以上に美術館や魅力的な教会、かわいらしいお店がいっぱいあるので、あと1日あればなぁと心残りに感じながら、夜のプラハ発の便に乗って帰路についた。
最後になるが、私自身の楽しみの一つであった、各地のビールは非常においしく、しかもレストランで頼むと1パイントが3ユーロ前後。ミネラルウォーターを頼むのとさほど変わらないので、気軽に飲むことができる。またドイツの地ビール(ヴァイツェン)は、各都市で味が違い、大体のお店で生が飲めるので、是非飲み比べをしてみてほしい。
駆け足で3カ国巡ってきて、気付いたら合計2,000キロ以上列車で移動する旅になっていた。列車で簡単に国境を越えることができ、簡単に何カ国も旅ができてしまうのがヨーロッパの魅力の一つである。訪問する都市によって、街の表情も、人たちの雰囲気も違い、欲張っていくつもの都市を巡るのもいいだろう。ヨーロッパでは鉄道網が発達し、各都市間の移動も便利になっているので、自分なりの旅のプランを組み立て、どこにもない自分だけの旅にでかけたい。
2009年4月 倉田