LUXEMBURG A to Z  知られざる大公国を旅しよう!

LUXEMBURG  A to Z  知られざる大公国を旅しよう!


深い緑に囲まれた要塞都市、ルクセンブルク。
世界屈指の経済大国とは到底思えないほど、ゆっくりとした時間が流れています。
ルクセンブルク大公国は神奈川県ほどの大きさながらヨーロッパの中心に位置し、長い歴史のなかで各国がこぞっての覇権争いをした地です。度重なる侵略を受け、築城と破壊を繰り返し、出来上がった旧市街は世界遺産に指定されています。
大国に翻弄されるばかりの貧しい農民国も、今や世界がうらやむ経済大国。英語やフランス語、ドイツ語といった欧州の主要言語が通じ、またその優れた立地は物流の要ともなったため、海外からの投資を呼び込むことに成功したのです。
ヨーロッパの酸いも甘いも噛み分ける、知られざるルクセンブルク。トルコ航空さんとルクセンブルク大公国観光局さんのご招待を頂き、のんびり旅してきました。


○●○首都 ルクセンブルク市○●○

お祭りの日の子どもたち

首都ルクセンブルク市を訪れたこの日は、ちょうどイースターから数えて5回目の日曜日。慣例の宗教行事が行われていました。大公や街の人々が、ノートルダム大聖堂から大公宮までパレードをするのです。
世界で唯一の大公国で、年に一度の大公のパレードを楽しめるなんて!美しいこの街が一層輝く、とっておきの日です。

おノートルダム大聖堂

スタート地点のノートルダム大聖堂。
旧市街のランドマーク的存在です。柱に装飾されたオリエンタルな模様はイスパノ・モレスク様式と呼ばれ、イスラム統治時代のスペインで興ったもの。スペイン支配を受けた歴史が伺えます。


大公宮前では、大公がバルコニーへ出てくるのを待っている人々で大賑わい。今回は時間の都合上大公に見えることは叶いませんでしたが、お祭りの雰囲気は存分に味わうことができました。




大公宮の普段はこんな様子。ゆっくりと歩く近衛兵観察が楽しい?観光スポットです。かつては市庁舎だったという簡素な外観。こちらも外壁はイスパノ・モレスク様式です。夏には内部見学ツアーもあるとのこと。


世界遺産の旧市街の中で特に美しいのが、城壁の下に広がるグルント地区。すぐそこに見える新市街とは対照的に、ゆったりとした時間が流れています。迷子になるのが楽しいエリアです。まるで遺跡のような城壁を眺めながら、カフェのテラスで地ビールを楽しむのもいいでしょう。





夜のグルント地区

この地区見下ろす一番のフォトスポットは、ボックの砲台と呼ばれる場所。黒に統一された家々の屋根や、ゆったりしたアルゼット川、深い緑。向こうには新市街も見えます。

ボックの砲台より撮影

○●○モーゼル地方○●○

シェンゲン条約30周年記念のモニュメント

名前は聞いたことがあるけれど、この国の土地だということを知らない人も多いのでは?「シェンゲン協定」のシェンゲンは、ルクセンブルク中心部から車で40分ほど。ドイツ、フランス、ルクセンブルク3か国がモーゼル川を境に隣接しています。シェンゲン協定とは、ヨーロッパの国家間を国境審査なしで越えることを許可する協定。1985年、モーゼル川に停泊していたプリンセス・マリー・アストリッド号の船上で結ばれました。当初はルクセンブルク、ベルギー、フランス、オランダ、西ドイツの5ヵ国間のみの参加でしたが、今や26ヵ国がこの条約に署名しています。
まさにヨーロッパ連盟を象徴するような町シェンゲンには、ヨーロッパ博物館やシェンゲン条約を記念するモニュメントがあります。鉄のモニュメントには、シェンゲン条約国をイメージしたモチーフが星になって並んでいます。赤い部分はこれから条約に署名する国のためのスペースだそうです。

シェンゲン条約国をイメージしたモニュメント

ベルギー

ギリシャ

フランス

スウェーデン

デンマーク

ルクセンブルク

そして、ここシェンゲンにも愛の南京錠があります。他の観光地にあるこのスポットと違うのは、シェンゲン加盟国毎に錠をかけるスペースが違うこと。フランスの恋人たちはFRのスペースで愛を近い、ルクセンブルクの恋人たちはLUのスペースで愛を誓います。
一番錠が多かったのはDEのドイツでした。


シンガポール、マレーシア、インドネシア、中国、そして日本から今回のツアーに参加した15名も、互いの友情とトルコ航空、ルクセンブルクの発展を願い、LUのスペースに錠をかけました。

友情よ永遠に!

世界最高レベルの経済大国ながら、一歩郊外へ出るとまぶしい緑が広がるルクセンブルク。自慢のぶどう畑はパッチワークのように広がり、芳醇な土の香りが訪れた者を優しく誘います。ルクセンブルクが誇るぶどう生産地モーゼル地区には、40kmにもおよぶワイン街道が広がっています。

今回はドメーヌ、ヴァンモーゼルを見学、自慢のワインを試飲させて頂きました。



公用語はフランス語のルクセンブルク。長い歴史の中でさまざまな国から受けた影響が、この国の文化をつくっています。召し上がれ!は「ボナペティ!」ですが、乾杯!は「プロースト!(ドイツ語)」。ドメーヌでも「ボナペティ!」「プロースト!」が飛び交います。まるで文化の十字路のようなテーブルで味わう、ルクセンブルクの名産ワイン。香りや色の違い、口の中に広がる風味が変化していくのがわかりました。
人口あたりのミシュランの星世界一、実は美食の国でもあるルクセンブルク。ワインも料理によく合う、主張しすぎないエレガントな口当たりです。特におすすめなのはピノ・グリ、ピノ・ブランとのこと。


ショップではワインの購入も可能。輸出されることが少なく希少価値が高いので、ワインに興味はなくともとりあえず買ってみるのがおすすめ。日本へ持ち帰った後はすぐには飲まず、2週間ほど寝かせてくださいとのこと。味が怒っているので本来の風味が味わえないそうです。なるほど・・・
○●○アルデンヌ地方○●○

アルデンヌ地方の魅力は城にあります。中心部から北へ1時間弱、アルデンヌ地方には緑に囲まれた美しい二つの城が佇んでいます。素朴なヴィアンデン城は、ハリーポッターの物語に出てきそうな趣き。19世紀末、荒廃していたこの城を惚れ込み再建活動を起こしたのは、亡命中のヴィクトル・ユゴーでした。「ルクセンブルクの真珠」と呼ばれる城のふもとにある町には、彼の記念館もあります。

ヴィアンデン城

礼拝室

騎士の間

もうひとつのクレルボー城は、現在美術館として利用されています。
展示されている「the family of man」は、世界67か国で撮影された人の誕生、愛、家族、仕事、音楽、宗教、死などさまざまなテーマを持つ500枚以上の写真シリーズです。

クレルボー城







これはルクセンブルク出身の写真家であり記者のエドワード・スタイケンが収集したもので、2003年には世界記憶遺産に登録されました。写真を単なる記録としてのツールから芸術の域へ引き上げた、初めての例とされるこの作品。言葉や文化、肌の色や住む国は違えど、喜びや悲しみ、怒り、驚き、恐怖など、私たちはさまざまな感情を写真によって共有できることに気づかされます。展示の方法も魅力的で、一枚一枚の背景にあるストーリーを想像しながら見入ってしまいます。
ルクセンブルグ郊外を旅するとき、おすすめなのがルクセンブルグカード。バスの運賃や上で紹介した城の入場料が無料になります。他にも無料になったり割引が効いたりする施設がたくさん!ルクセンブルク駅やツーリストインフォメーション、ホテルなどで購入可能ですので、ぜひ利用してみてください。
その立地ゆえ周辺諸国に翻弄された過去、立地を活かしてたくましく発展した現在、混ざり合うヨーロッパ文化。初めて訪れたルクセンブルクでは、全てのものが今までになく不思議で魅力的に見えました。知れば知るほど、この国の持つ強さと美しさに惹かれていきました。ベルギーから日帰りで訪れる方が多いこの国ですが、1泊でも宿泊してみることをおすすめします。まるでルクセンブルクワインのように様々な味が混ざり合い、エレガントに昇華したこの国の文化を垣間見ることができるでしょう。

【スタッフおすすめ度】
●クレルボー城 ★★★★
感動の世界記憶遺産!これを観るためだけでもルクセンブルクを訪れる価値あり
●ルクセンブルク旧市街 ★★★★
深い緑と城壁がよく似合う、こぢんまりした美しい街。経済大国とは思えないほどゆったりとした時間が流れています。
2015年5月 仙波 佐和子
このエリアへのツアーはこちら

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