「あれ?パリジャン優しいじゃん!」やさしいフランス語と巡る、花の都・パリの旅。

「あれ?パリジャン優しいじゃん!」やさしいフランス語と巡る、花の都・パリの旅。


ボンジュール!
すっかりおフランスにかぶれて、ご機嫌で出張から戻って参りました中村です。
ところで皆さん、「パリジャンは冷たい」という噂を聞いた事はあるだろうか?素っ気ない、無愛想…これまでの旅人たちによって作り上げられたパリの負のイメージ。
そんなイメージとは裏腹に今回の出張は「あれ?パリジャン優しいじゃん!」の連続であった。道を尋ねると誰もが優しく答えてくれて、店員さんも懇切丁寧に接してくれた。
振り返るとカタコトでも果敢にフランス語を話した事が功を奏したように思う。だってフランス人の母国語は英語じゃなくてフランス語だもんね。
そう、いつの時代もどこの国でも郷に入れば郷に従え!相手の文化に寄り添うことこそ心の距離を縮める秘訣だろう。それでは早速、実際に旅の中で役に立った初心者向けのやさしいフランス語をまじえつつ…、さぁパリの旅のはじまりだ!

★1日の始まり!朝のパン屋でLesson1 「これ、ください」


私が宿泊したホテルはファイブスターのツアーでもよく使われる「デ・メタッロス」。最寄りは地下鉄Parmentier駅、そこから徒歩3分。不便することのない立地だ。

デ・メタッロスは一階ロビーで簡単な朝食ビュッフェを提供している。しかし、ここはパリ。せっかくならホテルの外に出て美味しいパン屋で朝食を調達してみよう。
デ・メタッロスの玄関を出て右に向かって歩いて十数歩、地元の人々によって行列ができるパン屋「メゾン・ランドゥメンヌ」に辿り着く。


薄暗い中、朝ごはんを求める人々。


ショーケースにはケーキも並ぶ。店内にはカフェスペースもあり、もちろんお持ち帰りもOK。

行列に並ぶこと数分、ようやくレジまで辿り着く。するとレジのお姉さんが「ボンジュール、マダム」と声をかけてくれた。さぁ勇気を振り絞ってレッツ・フランス語!
「ボンジュール、マダム!アンクロワッサン、シルブプレ!」
こんにちは、クロワッサンを一つください、というフレーズだ。
シルブプレは英語で言うところのpleaseの役割を担う。非常に便利なフレーズだ。とにかくなんでもシルブプレを文頭または文末に付け加えるだけで「おや?こやつ、フランス語を話せるのか?」と思ってもらえる(気がする)。


頑張ってゲットしたクロワッサンをパクリ!

こうしてクロワッサンを一つ購入。吹けば飛んでいってしまいそうなサックサクでフッワフワの軽さ、そして噛みしめるたびに口に広がる程よい甘さ。こちらは一つ1.9ユーロ。お値段以上のクオリティ!さすが地元の人々が認める名店だ。(後日調べたところ、このパン屋は日本にも支店をかまえる超有名店であった。まぁしかし日本じゃなくてパリで食べるということに意味がある、きっとそうだと思いたい…)

★エッフェル塔とのツーショット!Lesson2「すいません、撮っていただけますか?」
お行儀悪くクロワッサンを頬張りつつ地下鉄(メトロ)の駅へ向かう。
駅に着いたらメトロの切符を購入する。パリでの滞在が長ければ一週間の磁気カードを手に入れるのも得策だが、今回の私のように一泊二日程度の弾丸ショートステイであれば一日券で十分だ。


一日乗り放題の券はMobilis(モビリス)と呼ばれる。これさえあれば無敵です。

一日券は行動範囲によって料金が変わる。パリの中心地はゾーン1、市内全体を巡ろうと思えばゾーン2、郊外まで足を延ばすならゾーン3、という仕組みだ。当然ゾーン3の券になるほど料金はお高め。市内観光にはゾーン2で事足りる。ゾーン2の一日券は7.5ユーロ。券の右端には氏名と利用日を記入する。

向かうは花の都パリのシンボル「エッフェル塔」。エッフェル塔とツーショットを撮りたいのなら塔のすぐ真下ではなく少し離れた穴場スポットへ行くと良い。人混みもほぼ無いのでスリに遭うリスクも減る。おすすめだ。私はPassy駅を降りてビル・アケム橋から、セーヌ川の向こうに見えるエッフェル塔を写真におさめた。


この日の空は雲に覆われていた。が、そこはさすがのエッフェル塔。たとえ灰色の空が背景であってもしっかり絵になる。

ところでエッフェル塔の誕生秘話を皆さんご存知だろうか?
19世紀後半、建築技術が進歩するにつれてヨーロッパ先進国では空前の高層建築ブームが巻き起こる。特にフランスとドイツは互いに世界一高い建築物を目指して競争を繰り広げていたそうだ。その矢先にパリでの万博開催が決定し、万博の目玉として、そして高さ競争の決定打としてエッフェル塔は誕生したのだった。

今やパリ有数の人気スポットとなり、一日の平均来場者数はなんと約25,000人!昼間は行列ができるが、開館直後の朝であれば比較的すいている。エッフェル塔に上りたいのなら、ちょっぴり早起きを頑張ろう。

ところで、こればかりは一人旅の不便なところだが、自分の写真を撮りたいとなれば道行く人に頼るしかない。人見知りなりに持てる限りの勇気を振り絞り、優しそうなパリジャンに声をかける。「エクスキューズモア、ムシュー。Could you take a picture?シルブプレ」。読者の皆さんには、おいおい、英語も混ざってないか?とツッコまれそうだが、私は英仏まぜこぜの言語でぐいぐい押し切った。ちなみにエクスキューズモア、ムシューは「お兄さん(あるいはオジサマ)、ちょっとすみませんが」という声掛け。

ドイツとの高さ合戦の末、勝利をおさめたエッフェル塔。エピソードを知っていると旅は格段に楽しくなる。

快く撮影してくれたパリジャンには感謝しかない。
先ほど、写真を撮るときに一人旅は不便だ…とぼやいたが、だからこそ生まれる現地の人々との触れ合いは一人旅の醍醐味だ。

★パリの平和を静かに見守るモンマルトルの丘、
ランチを食べたらLesson3「お会計お願いします」
エッフェル塔とのツーショットを達成した後はモンマルトルの丘を目指す。
パリ市内を一望できる絶景スポットとして人々で賑わうモンマルトルの丘だが、その頂上では青空に向かってそびえたつ白亜の大聖堂「サクレ・クール寺院」が圧巻の存在感を放つ。


パリで一番高い丘で、はい!ポーズ!

サクレ・クール寺院はパリコミューンや普仏戦争で亡くなった人々への慰霊碑として19世紀後半に建設が開始され、今日に至るまで丘の上からパリの平和を見守ってきた。
そんなサクレ・クール寺院までの行き方は、Anvers駅を出ることまっすぐ一本道。丘の頂上まで石畳の坂道と階段を経ておよそ10分で到着だ。中に入ると繊細に描かれたモザイク画と美しいステンドグラスが広がる。


寺院は3つのドーム屋根で形成され、ドームの内側にはモザイク画が。フランスで最も大きいキリストのモザイク画らしい。

ところで観光客やパリ市民で毎日にぎわうモンマルトルの街だが、かつてこの一帯はブドウ畑や麦畑が広がり風車が並ぶのどかな農地だったそうだ。そうしてパリ郊外という位置付けのまま長い時を過ごしたが、19世紀に入ると、ようやくパリ18区として市内に仲間入り。それまで郊外であった名残として家賃や物価が安く、さらに市内中心部よりも素朴で美しい景色が残っていたこともあり、ゴッホ、ピカソ、ルノワール…といった著名画家たちは皆こぞってモンマルトルに拠点をかまえ、創作活動に明け暮れていたのだとか。


確かに言われてみれば、パリの中心街!というよりはどこか田舎っぽいというか垢抜けない印象。それがまたこの街の魅力だ。

もしかしたらこの道もあの道もゴッホやピカソが歩いたのかもしれない。そんなことを考えながら歩みを進めるとお腹がぐぅーと鳴り出した。朝から歩き通しの私はすっかりお腹ぺこぺこだ。そろそろエネルギーを摂取しないと、と丘を駆け下りて路地を歩くと小綺麗なレストランを発見した。


お昼時はほぼ満席状態だった。古今東西、美味しいお店には人が集まる。きっとここは美味しいに違いない。そんな望みをかけてドアを開ける。

こちらは「Chez Prout」。カジュアルフレンチを提供するお洒落なビストロだ。メニューは全てフランス語で書かれているが、優しい店員さんが全て英語で説明してくれる。前菜、メインディッシュ、デザート。それぞれ2,3種類の中から選ぶことができる。私はサーモンのカルパッチョを前菜に、メインは肉料理、デザートはパンナコッタに決めた。


なんとボリューミー。けれどもあまりの美味しさにあっという間に完食。フランス人の食のセンス、あっぱれです。

食事中にイケメン店員さんが「ボナペティ?(=召し上がれ!食事たのしんでる?)」と笑顔で声をかけてきた。こんな時には「メルシー、セ・ボン!(ありがとう、美味しいよ)」と2倍の笑顔で返そう。
さぁ食事が終われば当然しなくてはならないのがお会計。お会計をお願いするフレーズはとても簡単なので覚えておきたい。
「ラディション、シルブプレ」この一言で全て解決。食べ応えのあった今回のランチは約18ユーロ。フランスで食事をすると一回一回なかなか良いお値段になる。けれどもせっかく美食の国・フランス来たのだから、ここは財布の紐をゆるゆるにして贅沢をしたいところ!


ボウルいっぱいのパンナコッタ、美味でした。

★パリ一番のステンドグラスを求めてLesson4「私は〇〇に行きたいです」
お腹が満たされたところでCite駅へ向かう。目的は「サントシャペル大聖堂」。まだまだメトロ初心者の私はCite駅に辿り着くまでにあたふた。そんな時は素直にパリジャンに道を聞くのが手っ取り早い。
「ジュブドゥレアレー〇〇」この一言で、〇〇に行きたいです、が伝わる。こう尋ねられてムッとするパリジャンはいなかった。皆さんにこやかに教えてくれる。
パリジャンの優しさに甘えつつ無事にサントシャペル大聖堂に辿り着く。チケットは10ユーロ。中に入ると、まずは控えめなステンドグラスが目の前に現れる。言っちゃぁ悪いが、正直なところ拍子抜けであった。


いや、うん、もちろん美しい。確かに美しいけれども。果たしてこれが「パリNo.1」と呼ばれるステンドグラスなのか・・・?

パリで最も美しいステンドグラスを謳っているというが・・・なぁんだ、ふぅん、と物足りない気持ちで大聖堂をあとにしようとしたところ、周りの人々がぞろぞろと二階へあがっていくことに気づく。私も彼らの後を追い、狭い螺旋階段をのぼっていざ二階へ。すると、なんということだろう!


お分かりいただけるだろうか?圧巻です、本当に圧巻です。見渡す限りのステンドグラス。息をのむほどにステンドグラス。鳥肌立つほどにステンドグラス。

皆さんサントシャペル大聖堂へ来たら一階だけを見て帰ってはいけない。二階があるんです、忘れずに。

そうこうする内にパリの街は夕焼けに、そして夜空に包まれていった。


朝も昼も夜も、四六時中パリはお洒落。私はすっかりパリの虜になってしまった。

今回はあまりの弾丸ツアーのため、行くことのできた観光地はだいぶ限られた。本当はルーブル美術館、ちょっと足を延ばしてベルサイユ宮殿、それからオペラ座でバレエも観てみたかったし、もっと街歩きをして隠れ家のようなブティックやカフェを発掘したかった。叶わなかった夢たちは次回のパリ旅行のためのモチベーションにしようと思う。
そして何よりフランス語をもっと話せるようになって、もっともっとパリを満喫したい!そんな気持ちを抱いて帰路につくこと、はや二週間。パリへの愛はいっこうに冷める気がしない。

…この旅行記を最後まで読んでくださった、そこのあなた。
フランス語がほんの少しでも話せるとパリの旅はずっと楽しくなる。嘘だと思って試してほしい。(…嘘じゃないから!)
フランス語は正確に説明しようとすると女性名詞やら男性名詞やら、あれこれ難しいらしい。けれども正しい文法かどうかよりも、まずはなによりチャレンジする気持ちが大事だと私は信じている。
難解なフランス語に挑戦する私たち旅人の、その心意気にパリジャンは優しくあたたかく応えてくれるに違いない。


そして「パリジャンは冷たい」なんて悲しい噂は吹き飛ばして「あれ?パリジャン優しいじゃん!」という新しいパリのイメージをどんどん広めていって頂けると、すっかりパリ愛好家になった私としても嬉しい。


さぁまずは笑顔と共に挨拶から始めてみよう。
「ボンジュール!」、その先に素敵な旅がきっとあなたを待っている。

~完~

2019年11月 中村

おすすめ度:

<朝のクロワッサン ★★★★☆>:焼き立てほやほやのクロワッサンは絶品です。日本で言うところの炊き立てご飯?! とにもかくにも食べてみて。

<エッフェル塔   ★★★★☆>:花の都パリのシンボル。早起きすると、すんなり入場できる。早起きは三文の徳、いやいやエッフェルの徳。

<サントシャペル大聖堂   おすすめMAX!★★★★★>:息をのむ美しさとはこのこと。これでもかというほど見渡す限りステンドグラス。ステンドグラスマニアも、そうでない人も、全人類に絶対に行ってほしい。

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