今回、秋が深まるチェコとハンガリー、そしてスロバキアを訪れる機会を得ました。
チェコは「百塔の町」プラハが有名ですし、ハンガリーといえば「ドナウの真珠」ブダペストが名高いです。それではスロバキアといえば何でしょう。あんまり日本人にはイメージが湧かないかもしれません。渡航前、友人にスロバキアのイメージを聞いてみたら「白人の美人」という返事がきました。うーむ。同感。まだまだ日本人には未知の国、スロバキアを少しばかりご紹介しようと思います。
スロバキアの広さは北海道の5分の3という、国土としては小さな国です。国土のほとんどが山岳地帯で、周辺国のリゾート地として人気です。実際、現地で案内していただいた日本人の方は夏に山登りをするのが楽しみの1つとのことでした。ひと夏でいくつも山を登るそうです。ほとんどの国民の趣味が山登りなのか、どうなのか、スロバキアの歩行者用の道路標識は距離ではなく、徒歩何分かという案内になっています。中には徒歩○時間で○○バス停に到着という標識があって笑いました。数時間歩いて目的地ではなく、やっとバス停にしか着かないなんて・・スロバキアの人は健脚です。小さなところに文化が垣間見えてとても興味深いです。
スロバキアの首都、ブラチスラバにもお城や大聖堂など、見どころが多いですがよりディープなスロバキアに触れるには、地方の小さな町へでかけるのがおすすめです。その中で私が訪れたのが、バンスカー・ビストリツァとバンスカー・シュティアヴニツァです。
<バンスカー・ビストリツァ>
旅行へ持っていくとずっしり重い地球の歩き方にも、わずか4ページしか割かれていない、バンスカー・ビストリツァ。14世紀から16世紀にかけて銅の生産は最盛期で、この町で採れた銅はヨーロッパ各地に輸出されていきました。やがて鉱山資源が枯渇していっても、18世紀後半からスロバキア民族運動の中心地としてこの町が盛り上がります。第二次世界大戦末期、ナチス・ドイツの支配に対してスロバキア人がおこした民族蜂起は、この町からおこりました。
バンスカー・ビストリツァへはブラチスラバから列車で3時間ほどです。ローカルな列車が旅情をそそります。駅はバンスカー・ビストリツァで下車するのではなく、1つ前のバンスカー・ビストリツァ・メスト(BANSKA BYSTRICA MESTO)で下車するのがポイント。バンスカー・ビストリツァで下車してしまうと、町の中心までは15分ほど歩かなくてはならなくなります。メスト駅で下車すると、川にかかる橋を渡って、しばらく歩くともう町の中心に出てしまいます。徒歩5分ほどです。
町の中心は、SNP広場。城と時計塔が建つ、シンプルで町の中心にしては静かな広場ですが、広場の周りにはカフェやレストランがあり、雰囲気がいいです。SNP広場から西へ延びるドルナー通りに並ぶ建物は、建築当時の様子をほぼ留めているといいます。ドルナー通りの突き当たりには、近代的なショッピングモールもあります。
次に向かったのは、バンスカー・シュティアヴニツァです。バンスカー・シュティアヴニツァはブラチスラバや、バンスカー・ビストリツァから列車を乗りついで向かうことは可能ですが、ファイブスタークラブのコースは、その間の移動に車を利用して、小さな村の観光をします。
☆木造教会☆
バンスカー・ビストリツァから車で10分ほど走ったところにある、フロンセック村には木造教会があり、世界遺産に指定されています。プロテスタントの教会で、建設の時にはカトリックから様々な条件が出されたといいます。木造にすること、釘などは使わず木材だけで建てること、高い塔を立てないこと、湿地の上に建てること・・・などなど、細かく制限がありました。教会は隣に住むおばあさんが管理していて、ちょっとしたガイドをしてくれます。祭壇のカラフルな画まで木でできているので、独特の雰囲気があります。
☆家庭料理☆
スロバキアのご家庭にお邪魔して、昼食をご馳走になりました。
スロバキアグルメ、鶏肉のスープです。鶏肉と一緒に野菜を煮て、小さなパスタが入っています。味が濃くなく、素材の味が生きた優しい味です。
メインは鹿肉。旦那様が狩りで狩ってきたそう。ブルーベリーソースをかけていただきます。こちらのお宅は庭も広く、食卓に家庭菜園で育った作物が並ぶことも少なくないそう。狩りで狩ってきたお肉と家庭菜園の野菜で食卓が彩られるとは、それだけで生活が充実していることがうかがえます。
☆ワイン蔵☆
スロバキアはワインが有名。スタラーホラという小さな村にはワイン蔵とワイン博物館があります。私が訪れた日は人っ子一人いませんでしたが、ワインのお祭りの日になるとどこからか人が集まってきて、スタラーホラが原宿の竹下通り状態になるそう。冷たい秋風が吹きぬける静かなスタラーホラが原宿のように人でごったがえす様子はなかなか想像できません。
蔵で作られたワインの色は、どちらかといえば白ワインですが、色も味もそれとは異なります。かなりのアルコール度数です。色はりんごジュースのような、少し黄みがかった色味。味は少し酸っぱいでしょうか。ワイン蔵を管理しているおばあさんは、私と同い年の孫をもつこともあってか、関西弁で表すとすると「ほれ飲み飲み」とばかりに嬉々として私にワインをすすめてくれました。おばあさんの期待に応えたいものの、先ほどご馳走になった昼食ですでにワインと強いお酒をいただいていた私はグラスの半分ほどしか飲めませんでしたが、風味豊かな美味しいお酒でした。
ワイン蔵の横には、伝統的な民族衣装や、おばあさんの若き日の写真プレートまで、興味深いものが博物館として多く展示されています。
<バンスカー・シュティアヴニツァ>
バンスカー・シュティアヴニツァはなんと、地球の歩き方で2ページしか割かれていません。どうしてでしょうか・・この町はユネスコ世界遺産に登録されている町で、18世紀に鉱山都市としてピークを迎えました。1年間に600kgもの金が採れたというから驚きです。小さいながらも居心地がよく、素朴な色とりどりの家々が目を楽しませてくれる、バンスカー・シュティアヴニツァ。町の中心は三位一体広場です。広場の周りにはカフェやレストランがあります。町には新城と旧城があり、坂が多い町の、長いメインの坂を上った先にある新城からは、まるで中世から時が止まったような景色が広がります。
有名なレストランがあります。このお店で出しているERBビールは、4つ星以上のホテルにしか卸していないとのこと。お店に入るとすぐに目に飛び込んでくる巨大な2つのビールタンクも特徴的です。お酒でだけでなく、お料理もおいしいです。ある家族が注文していたのは豚ひざ肉のローストで、そのビジュアルはお肉の塊にナイフが上からブサリと刺さっているという、なんとも刺激的なもの。チェコ料理ですが、複数で訪れた際にはぜひ注文してみたいです。私はお昼にさんざん家庭料理をたらふくご馳走になり、ワインもいただいたのでお腹がいっぱいで、ビールとサラダとスープだけ注文しましたが、それもボリュームたっぷりで、でもサラダは瑞々しく、かぼちゃのスープは濃厚で美味しかったです。
今回は、スロバキアの自然と素朴な村に癒される旅でありました。
スロバキアで出逢った人々は柔らかく笑い、動物と暮らし、草花を育てていました。どの家も庭が綺麗に整えらえていたのが印象的です。心の豊かさについてまた考えさせられました。またいつかスロバキアに再訪できたら、と思います。
スタッフおすすめ度
バンスカー・ビストリツァ★★★
小さいながらも居心地のよい町
バンスカー・シュティアヴニツァ★★★★
カラフルで目にも楽しい町。周辺の小さな村とも組み合わせて訪れたい。
(2016年11月 楠本悠子)
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