ハイジの世界だけじゃないスイス! ~トラベルパスをフル活用してディープにめぐるスイスの旅~

ハイジの世界だけじゃないスイス! ~トラベルパスをフル活用してディープにめぐるスイスの旅~

評判通りやっぱりイケメンなマッターホルン様。朝焼けは必見!

ベルン郊外、エメンタール地方のチーズ工場で大人の社会見学

のあとはやっぱりスイス名物チーズフォンデュ!

今回、レイルヨーロッパ様のご招待でスイスへのファムツアーに参加させていただくことになった。訪問地はベルン、ティチーノ州(ベリンツォーナとロカルノ)、ツェルマット、モントルー、ローザンヌ。ドイツ語圏、フランス語圏、イタリア語圏すべてを訪れるまさに大周遊の旅。
スイスといえばやっぱりアルプスの少女ハイジ。スイス旅行の目的も、アルプスの山々を眺めて、「口笛はなぜ~」と口ずさみながらハイジの世界に出てくるような草原と村をハイキング、、、という方が大多数(のはず)。けれど、今回スイスを大周遊したことでスイス旅の新たな魅力・可能性を見つけてきました。そんなディープなエリアにスポットを当ててみたいと思う。


<歩くもよし眺めるもよし!旧市街全体が世界遺産の首都ベルン>
スイスの首都は最大の都市チューリッヒではなく、人口10万人台のベルン。私たちがイメージする「首都=大都市」のイメージと全く違う、静かで落ち着いた街だ。日本からの直行便があるチューリッヒ空港からは列車で約1時間20分、成田空港からバスで東京駅までの時間とほぼ同じ。
この街の特徴はなんといっても旧市街全体が世界遺産に登録されていること。他のヨーロッパの街が度重なる戦火の被害に遭ってきたのに対し、永世中立国のスイスは大きな戦争を経験したことがない。それゆえベルンの街は中世の姿がそのまま残っている。


街歩きの際に見逃せないベルンならではの風景が、ヨーロッパ最長の全長6kmに及ぶアーケードと約100か所の交差点や広場にある泉、そして街の中心にそびえる時計塔。旧市街のサイズは街歩きにぴったりの広さなので、これらのポイントを見て回ってもそれほど時間がかからない。

アーケード内の時計屋さん

シムソン泉。水はそのまま飲むことができるのだとか

1時間に一回からくり仕掛けが動く、ベルン一のランドマーク時計塔

また朝にはスイスらしくチーズや肉が並ぶマーケットも開かれるので、こちらもぜひチェック。

よほど私が物欲しそうな目をしていたのか、売り物のソーセージを一切れくれたイケてるおにいさん

そんなベルン旧市街の全体を眺めるなら、歩いて気軽に行けるバラ園へ。ベルンの街は三方をアーレ川に囲まれ、崖の上に広がるような地形になっているので、立体感があり家々がぎゅっと詰まったような美しい街並みが手に取るように見える。

チューリッヒ空港とグリンデルワルトやツェルマットの間にあり、アクセスもいいベルン。アルプス観光のついでに街歩きを楽しんでみては?おっと、ついでというには失礼なほどいい街ですよ!
<所変われば言葉も変わる、言葉変われば雰囲気も変わる ベリンツォーナとロカルノ>
スイスがドイツ語圏とフランス語圏、イタリア語圏、ロマンシュ語圏の4つのエリアに分かれるのは有名な話。でもドイツ語圏の人口が6割以上と大多数なのに対し、イタリア語圏の人口は1割にも満たない。さらに州でいえば南部のティチーノ州だけで、ここがスイス旅行のメインになることも滅多にない。
そんなわけで、今回訪れたベリンツォーナとロカルノも他の都市に比べると圧倒的に観光客は少なかったが、もったいないほどのいい街だった。
まずはベリンツォーナ。街に立派な城が3つもデンと鎮座しており、すべて世界遺産に登録されている。
今回は街の中心部にあるカステルグランデに入場。

街のどこからでも目に入るカステルグランデ


なんと城内にブドウ畑が。そしてここで採れたブドウでつくられたワインを、城内のレストランでちゃっかり味わうことができる。ブドウ畑にレストランにと、ちょっと破天荒な城なのだ。

ワインの名前はそのまま「カステルグランデ」。ラベルもかわいい!

さらにスイス秋の味覚ジビエ料理も!いただいたのは鹿肉ステーキ

そのベリンツォーナから電車で30分、ロカルノへ。マッジョーレ湖の湖畔にある明るいリゾート地とのことだが今は秋、そしてあいにく雨模様だったので街歩き中心の観光。その街並みが色鮮やかで、ベルンなどとは全く違う完全に南欧な雰囲気が漂っていた。

内装が美しいキエーザ・ノーヴァ教会

またカフェが多く、どこも地元の人でにぎわっているのもイタリアを思わせる。

そしてなんといってもイタリア語。ベリンツォーナもロカルノも、イタリア語の響きが聞こえるだけで街全体がどこか陽気で楽しそうに思えてしまう。言葉だけでここまで街の印象が変わってしまうとは・・・。改めてスイスという国の多様性に魅了される。
今年ティチーノ州へとつながる新トンネル、ゴッタルドベーストンネルが開通しアクセスがさらに良くなることが期待される。このゴッタルドベーストンネル、なんと全長57kmと世界最長のトンネル。国じゅうを走るアルプス山脈をものともせず古くから多くのトンネルや登山鉄道をつくりまくってきた鉄道大国スイスでもこのトンネル工事には相当気合いが入っていたようで、定期運行が始まるまでの期間限定で「ゴッタルディーノツアー」を企画し、トンネル内を観光客に公開している。今回、幸いなことにそのツアーに参加させていただくこととなった。

ツアー参加者限定パスポート。やっぱり気合い入ってる!

パネルに「Seikan Tunnel」の文字。そう、ここの前は青函トンネルが世界最長だったのだ

トンネル工事のドキュメンタリー映像。プロジェクトXのようで感動的!

17年の歳月と1兆円の費用を費やしたこのトンネル開通によりチューリッヒからイタリアのミラノまでの所要時間は今までより1時間も短縮され、スイス内のみならず周辺の国々への移動も一気に便利になるとのこと。鉄道大国スイスの集大成といっても過言ではないこのトンネル、通過する際はその気合いに思いをはせてみては?

<ブドウ畑+レマン湖+アルプス=大絶景!ラヴォー地区でほろよい散策>
数ある世界遺産のなかで、唯一その対象がブドウ畑になっている場所が実はスイスにある。フランス国境近く、レマン湖沿いのラヴォー地区がそこで、知る人ぞ知る質の高いワインの生産地。とはいってもこちらはワインのワの字も知らないど素人、行って楽しめるのだろうか・・・。
ラヴォー地区はブドウ畑のまっただ中を歩くハイキングコースが整備されており、まずヴヴェイから「ワイン列車」に乗って斜面の中腹の駅で下車してレマン湖沿いの村まで歩いて行くのが一般的。ワイン列車といっても普通のローカル列車と変わりはないのだけど、そのネーミングを聞くだけでなんとなくテンションが上がってしまう。

車窓にはさっそくブドウ畑。こんな中を歩けるなんて!

シェーブル駅で降り、ハイキングコースをどんどん下っていく。期待通り目の前にはブドウ畑とレマン湖、そして遠くアルプスが織りなす大絶景が広がった。

湖畔の小さい村が見えるのもまた美しい!

ここで美味しいワインが生まれるのもこの絶景があるからこそ。ラヴォー地区は本物の太陽、湖の反射光、石垣が蓄える熱の「3つの太陽」に恵まれているといわれ、ここのブドウでつくられるワインはそれはそれは絶品なのだそうだ。
途中の村では、観光客がカヴォー(ワイナリー)に寄って農家の方と談笑している。ここでカヴォーをはしごしながらテイスティングさせてもらい、ほろよい気分で散策を楽しむのがおすすめとのこと。

それはちょっとハードルが高い・・・、そんな方におすすめなのがレマン湖畔のリヴァ村にあるビジターセンター、「ヴィノラマ」。ここではラヴォーじゅうのワインが集まり、専門家のアドバイスを聞きながらテイスティングや購入が可能ということで人気の施設。ワイン生産の過程を撮った日本語のドキュメンタリー映像も見れる。

ワインのプロが注ぐ一杯

スイスのワインはほぼ国内で消費されるため国外輸出量が少なく、しかもここラヴォー地区のブドウ畑は斜面に沿っているため手入れの手間がかかり、これから生産量が減ってしまうかも。。。とのこと。日本の棚田と同じく、美しい景観は関わっている人々の苦労のたまものなのだ。
そういうわけで、この貴重なラヴォー産ワインをぜひスイス土産に!ボトル2000円程度のものもあり、値段もお手頃ですよ。
ワインど素人でもこんなに楽しめるラヴォー地区、もっと多くの人に来て欲しいような、でもまだまだ穴場でいて欲しいような・・・。とにかく今までのスイスのイメージを覆されるような、100%オススメできる場所に間違いありません。
<スイスの鉄道を使いこなしてストレスフリーな旅行を!>
今回こんなにスイスの国じゅうを周遊できたのは、弊社ツアーでも使っているスイストラベルパスがあってこそ。このパスがあるとスイス全土でほとんどの鉄道、バス、湖船、路面電車などの都市交通が「乗り放題」。スイス自慢の登山鉄道やロープウェイなども割引になり、しかも490以上の美術館、展覧会の入場も無料となる優れもので、これを旅行に使わない手はない。スイスと聞くととにかく物価が高い!というイメージがあるけれどこのパスを使えばおトクに旅行でき、いちいち駅で切符を買う手間が省けるのも嬉しいところ。今回の旅程ではほぼ毎日列車に乗っていたので、このパスの圧倒的な威力と利便性を身をもって体験することになった。

一回乗ると軽く400円ほど飛んでしまう路面電車もスイストラベルパスなら乗り放題

レマン湖では船の旅も楽しめる!

そしてスイスを旅して感じるのが鉄道システムの優秀さ。駅構内にはいくつもモニターがあり自分が乗る列車のホームや乗車位置などを一目で確認できる。日本では当たり前のように思えるけれど、実はこんなに列車案内が充実している国はなかなか数少ない。つまり優秀な鉄道システムのおかげで日本と同じ感覚で旅行できるのはスイスぐらいなのだ。

ベルン駅構内にて

チューリッヒ空港は地下へ降りるとすぐに駅があり、入国してすぐ列車移動も可能!

それどころかラゲージサービスという日本のはるか上を行くようなシステムもある。出発駅で荷物を預け到着駅で受け取るという、旅行しながら宅配便を利用しているような新感覚。これを使えば列車に乗るたびにスーツケースの置き場所に悩んだり、コインロッカーを探してうろうろしたり・・・という海外鉄道旅行あるあるともおさらば!
しかも預けたその日のうちに目的地で受け取れてしまうエクスプレスラゲージサービスもあり、かなり利用価値は高い。

ラゲージサービスカウンター

カウンターにあった小学校の歴史教科書レベルの落書き

そのほか列車の遅延はほぼないし、国土が小さいうえ国じゅうで路線網が充実しているので移動時間が少ないし、、、とスイスの鉄道に感心しているときりがないほど。ストレスを感じることなく移動でき、気軽にあちこち旅できるのがスイスの最大の魅力なのかも。
スイスという国は他のヨーロッパ諸国に比べ、リピーターの方や特別な思い入れを持っている方が多いある意味特殊な国。今回訪れたところは、私のような初スイスの方も、何度も旅行経験があるスイスマスターな方も思いっきり楽しめるはず。ハイジには申し訳ないけれど、いかにもスイスな定番観光地だけでなくそんな穴場スポットをこれからも掘り起こしていけたら・・・と思う。
【スタッフおススメ度】
●ベルン ★★★★★
よくあるヨーロッパの古都かと思いきや実は他のどんな街にも似ていない不思議な都市。いい意味で首都らしくない、落ち着いた時間がゆっくり流れる。
●ベリンツォーナとロカルノ  ★★★★
日本人がほぼ行かないイタリア語圏。ベリンツォーナの世界遺産の3つの城とロカルノのカラフルな街並みは見ごたえあり!夏はイタリアから避暑に行くのもおすすめ。
●ラヴォー地区 ★★★★★
ブドウ畑、レマン湖、アルプスが織りなす世界でもここだけの絶景は、どこを撮っても絵になる。空港があるジュネーブや人気の観光都市ローザンヌから近く、思い立ったらすぐ行けるのも嬉しい。
(2016年10月 伊藤卓巳)
このエリアへのツアーはこちら

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