次はフランスでダーツの旅?~「フランス」というパンドラの箱を開けてしまったボルドーとシャンパーニュの旅~

次はフランスでダーツの旅?~「フランス」というパンドラの箱を開けてしまったボルドーとシャンパーニュの旅~




前回フランスへ行ったときは10年以上前の学生旅行の時です。その時のパリのイメージはいまいちでした。とにかくなんだかお高くとまっている人が多く思えて、観光客も多く食費やホテルも高いし、人も優しくないしで訪れた街の中ではワースト。実は「もうフランスに自分から行くことないかなぁ」なんて思っていました。そして今回フランス観光開発機構のお誘いで、ボルドーでしられるアキテーヌ地方への観光とその後シャンパーニュ地方のランスでのワインツーリズムのワークショップ(商談)に参加することになりました。
この旅行で完全にフランス印象が変わりました。フランスが世界からの観光客の訪れる人数が世界で一番であることを見れば観光国として魅力的なのは明らかですが、パリをみてフランス全体を判断するのは尚早だったと反省しました。(いかにも学生な恰好だったので以前はただ単に相手にされなかったのかもしれません。今回フランスでお会いした方は素敵な方ばかりでした)


前半のアキテーヌ地方ツアーではまるでお城のようなワイナリー訪問はもちろん、世界遺産の街・ボルドーやサンテミリオン、城塞都市のブライなどの滞在を楽しみました。ワインで有名なのはもちろん知っていましたが、さすがに世界遺産に指定されているだけあって街歩きが楽しくなるような街で、ワインが目的でなくとも訪れる価値のある場所です。そしてワークショップのため訪れたランスも、世界遺産に指定されている格式ある大聖堂や日本人画家の藤田嗣治がフラスコ画を手掛けた礼拝堂など見どころが多い都市です。もちろんシャンパーニュ地方の玄関口のため、近くのメゾンの見学など楽しみも尽きません。
肝心のワークショップではボルドー滞在中にお世話になった旅行会社のほかに、ミディ・ピレネーやブルゴーニュあたりの観光局からの方々やシャンパーニュ地方の家族経営のワイナリーなどいろいろな方々のお話を伺う機会に恵まれ、フランスの奥深さをしみじみと感じました。たまたま今回はボルドーとその周辺を訪れましたが、ボルドーから北に向かえば古城でしられるロワール地方、東に行けばクロマニョン人の壁画でしられるラスコーや、「フランスで最も美しい村」に選ばれているサンシル・ラポピー、画家のロートレックの生まれ故郷のアルビなど。南には美食で知られるフレンチ・バスクが控えています。どこを切り取っても素敵な風景と美味しい料理、深い歴史があるフランスはどこに行っても間違いないでしょう。どこに行こうか迷われているのであれば、暴論ですがいっそフランスの地図でダーツで選んでも面白そうです。
**********今回の行程**********
10月7日 日本発ボルドーへ
10月8日 ボルドー市内観光とシャトー見学
10月9日  ブライ、サンテミリオン等の観光
10月10日 ランスへ、 ランスを自分で観光
10月11日 Destination Vignobles2016(ワークショップ)参加
10月12日 Destination Vignobles2016(ワークショップ)参加
10月13日 ランスからパリ・シャルルドゴール空港へ
*************************
10月7日
11時発のAF275に乗り込み、パリ乗り継ぎでボルドーを目指す。
人生初めてのエールフランス。シートの配列は3—4—3。機内食は2回出て1回目は和食・洋食の中から選べて、2回目はグラタンの軽めの夕食。どちらともとても美味しかった。もちろんアルコールも無料、ワインはミニボトルをそのままくれるのが嬉しい。オンデマンドの映画は日本語対応している最新のハリウッド映画は少ないかなと思ったがパリまでの12時間を過ごすには充分なラインナップだった。今年はフィンランド航空にも乗れたので2016年は私にとっての欧州系のあたり年として記憶されることだろう(?)。
パリの乗り継ぎの際に他の旅行社の皆さんと再合流。カフェテリアでビールを飲んで出発の時間まで歓談。
搭乗時間が近づいたので、それぞれ自分の目的地へのフライトに乗り込んだ。
ボルドーに到着。ボルドー行きのフライトは40分遅れだったが、現地ツアー会社の方と無事合流できた。
ボルドー空港はさすがワインで知られているだけあって、ワイナリーの看板や大きなワインボトルのオブジェがたくさんあった。否が応でもワインの気分が高まる。
ボルドー空港から市内まで約30分。美しくライトアップされたボルドー旧市街の中のクオリティホテル。
<クオリティホテル ボルドー>
旧市街のど真ん中に位置するホテル。旧市街の一部は車が入れないため、大劇場前に車を停めてしばらく歩くこと約5分。室内は広めでモダンなお部屋。ドライヤーに、セーフティーボックス、バスタブ、無料のWIFI、コーヒーメーカー、エアコン、ミニバーを完備。朝食は1階で。パンの種類が豊富なのが嬉しい(カヌレもあった)。


この日は長時間のフライトに関わらず寝られなかったのでホテルに到着する頃には眠くてしょうがなかった。もちろんライトアップを見る気力なく、そのままベッドで寝てしまった。
10月8日
朝7時に朝食。
さすがフランス、クオリティインはチェーンホテルではあるがパンが豊富にある。特に美味しかったのはカヌレ。カヌレは後から調べてみるとボルドー発祥だそうだ。カヌレは日本でも食べたことがない。外観からシロップが中まで染み込んでいるだろうな、と甘すぎるものが苦手な私は思いながらも口にほおばる。意外にも口の中にまず広がるのは甘さよりもミルクのしっとりした優しい味わい。甘さはあとからほんのり感じられる程度。コーヒーと一緒に食すと最高に美味しい。お土産に買おうと思ったのは言うまでもない(しかしボルドー滞在中は観光や食事に忙しくて全く変えなかった)。
朝食を終えて、9時にホテルを出発。午前中はまずボルドー市内散策。
<ボルドー>
おそらく街としてではなくワインの名前としての方が知られているボルドー。すでにローマ時代以前に錫貿易の中継地点としては栄えていたが、大きな転換期は錫鉱山が枯渇し始めたころ。ボルドーの商人たちは寒冷地でも育つブドウ種が開発されると川から離れた高台に次々とブドウ畑を作り出した。それにより貿易中継地だったボルドーは徐々にワイン輸出の拠点となった。さらにボルドーのワインの地位を確固たるものになったのが12世紀。アキテーヌ公国のアリエノール妃がルイ7世との離婚の僅か2ヶ月後、イングランドのアンジュ伯ノルマンディ公アンリと再婚を果たす。さらにルイ7世に追い討ちをかけるようにアンリの王位継承権が発動し、図らずもアキテーヌ地方はイングランド王国の一部となってしまったのだ。ルイ7世にとって悪夢だったに違いないがボルドーワインにとっては幸せな季節の始まりだった。ブドウが栽培できないイングランドのワイン輸出によってワイン産業は急成長を迎える。それまで酒といえばエールしかのんでいなかったイギリス人達が高いお金を払ってでもワインを購入するようになった。今日のボルドーの高品質、ブランド力の礎となったのはイングランドの支配下にあったことが大きい。ワインの出荷の時期にはボルドーの港は交易船で埋まり、ワインの詰まった無数の木樽を乗せて海へ帰っていった。フランスの手中に戻るには英仏百年戦争が終わる300年後まで待つこととなる。
そんな歴史深いボルドーの街は当時の繁栄ぶりを忍ばせる重厚な建物が数多く残されている。ヨーロッパ随一の長さを誇る石畳の歩行者専用道路に、贅を尽くした大鐘楼や大劇場。ボルドーの都市計画・建造物はその歴史的・芸術的価値から街全体が世界遺産に指定されている。さらにサンチャゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路の一部としても世界遺産に登録されているという。ワインに興味がなくともボルドーが歩んできたその深い歴史、そして有名建築家による壮麗な建築物に圧倒されることは間違いない。もちろんワイン好きにはたまらない街だ。すぐ足を伸ばせば伝説的なシャトーや銘醸地にアクセスできるし、街中にはボルドー産のワインが集うワインセラーやワインバーが軒を連ねている。夜にはライトアップされた建築物を眺めながら三日月のように蛇行するガロング川沿いをワイン片手に散歩するのも何事に代えられないひとときになるだろう。



ボルドー名物のカヌレ屋さんの前で

ボルドー市内観光を終えた後はCIVBにてワインのテイスティング。
CIVBはLe Conseil Interprofessionnel du Vin de Bordeaux、日本語だとボルドーワイン委員会と訳される。ボルドーワインに関する商工会議所のようなところでボルドー全体のワイナリーの情報を提供する機関となっている。どこの地区に行くか決めていないのであればここに立ち寄って情報収集するのもいいだろう。ワインバーも備えているのでここで気になる生産地のワインの試し飲みできる。CIVBは日本語サイトもあり非常に面白い記事になっているのでボルドーに行かれる際は一度見ていただくとワイン選びの参考になることと思う。


CIVBの目の前がツーリストインフォメーションになっている。ボルドーのツーリストインフォメーションの目の前からワイナリー巡りツアーが出発する。ツアーの申し込みはツーリストインフォメーションにて可能だ。
その後のボルドー近郊のワイナリーツアーに出発。
12:30
<シャトー・パプ・クレマン>
ボルドーの中心地からほど近いペサック村のシャトー。13世紀には、1305年クレマン5世として法王となったベルトランド・デ・ゴースの居城であったというからそれもうなずけるほどの華麗な佇まい。ワインも素晴らしくアメリカ人ワイン評論家のロバート・パーカーより2009年と2010年に100点満点の評価を受けている。オーナーは世界で35ものワイナリーの持つと言うベルナール・マグレ。日本人の中にはフランス人シェフ、ジョエル・ロブションを通じてベルナール・マグレの名を聞いたことがあるかも知れない。ジョエル・ロブションはベルナール・マグレのボルドーの星付きレストランのプロデュースを行なっていたからだ。
私からすると、初っ端から「ちょっとこれより上は想像できないぞ」、というくらいのシャトーである。このシャトーで本日の昼食。当然ながらワインも食事も私が感想を述べるのもおこがましいくらいの素敵なものだった。




15:00
<シャトー・ド・ルイヤック>
パプ・クレマンから車で10分足らず。ペサック村に位置するシャトー・ド・ルイヤックの城は19世紀後半オスマン伯爵によって所有されていたもの。かつてはサッカー選手であるオーナーのミシェル・ロラン氏がこのシャトーに一目惚れ。乗馬も趣味だったロラン氏は馬小屋も備えたこの広大なシャトーの購入を即決したという。ブドウ畑の耕作には機械でなく馬を、農薬も極力使用しないとうから、地道で丁寧なワイン造りに勤しむ姿が伺える。肝心のワインはすっきりしたフルーティーな味わい。しかしこの時点でCIVBとシャトー・パプ・クレマンですでにワインは5~6杯くらいを飲んでいるので味の違いに関してはほぼわからなくなっていた。





17:00

シャトー・ド・ルイヤックから車で20分。こちらのシャトーはこれまでのお城のようなワイン工場の大型経営ではなく、こじんまりした家族経営のワイナリー。そのためかネットでしらべてもほとんどこのワイナリーに関しての情報は日本語では見つからず、あいにく時間がおしていたためワイン造りの行程の説明を受けている途中で、次の目的地へ。ワインのテイスティングもなかった。しかしここでの体験がワイナリー巡りでも一番面白かったと思う。というのは、このワイナリーではサイクリングツアーを行っており、1時間くらいかけて周辺の有名シャトーを巡るのだ。自転車から見えるブドウ畑はまた格別で、車から見えるそれとはまるで違う。車が入れないあぜ道も自転車で抜けるので、一面ブドウ畑に囲まれた爽やかな風景を楽しめる。有名シャトーの説明をしてくれるのだが、具体的にそこがどういったシャトーなのかは私の英語力では残念ながら理解できなかった。





19:30
<レ・スルス・コーダリー>
夕食はレ・スルス・コーダリーのワインバーにて。
レ・スルス・コーダリーは周りを一面のブドウ畑に囲まれたラグジュアリーホテルだ。グラーヴ地区にあるワイナリー、シャトー・スミス・オー・ラフィットの敷地内にある5つ星ホテルで、ブドウから抽出されるポリフェノールを利用したスキンケア商品のブランド「コーダリー」がプロデュースを手がけている。ホテル内のレストランは2009年に就任したニコラ・マスシェフが指揮を執る「グラン・ヴィーニュ」。2010年ミシュラン1つ星を獲得したそうだ。また手軽に食事を楽しみたい方は洗濯小屋を改装したビストロがおすすめ。地元の人たちも通えるような気軽な郷土料理がウリ。もちろんシャトー・スミス・オー・ラフィットのワインのセレクションを楽しみながら食事できる。私はここの白ワインが美味しかったのでお土産に購入した。セカンドラベルで20ユーロくらいだった。



23:00
<La Sauternaise>
コーダリ―から車で約40分。宿泊はソーテルヌのLa Sauternaiseにて。AOCワインの産地としてしられるソーテルヌにあるブティックホテル。室内はその辺のシャトーホテルに引けを取らないくらい立派な造り。私の泊まったのはロフト&ジャグジー付きの豪華なお部屋だった。深夜に到着したので滞在時間がほとんどなかったのがもったいない。翌日はキッチンでオーナーも交えての食事。家族経営の温かみのあるホテルだ。室内には無料のWIFI、ドライヤー、ミニバー、エアコンなど完備。この辺りのホテルはシャトーが多めだが、こういった手ごろなホテルはなかなかないそうで、よく近くのシャトーホテルで結婚式があったあと、その招待客などがよく利用するそうだ。宿泊した夜も近くで結婚式があったそうで、花火が騒々しかった。


10月9日
朝食を食べて朝7時半にホテルを出発。
約1時間半かけてたどり着いたのはブライ。
8:30
<ブライ>
17世紀、ボルドー港の防衛用にヴォーバンが築いたブライ要塞が残る城塞都市。ヴォーバンはルイ14世に仕えた軍人で、築城の天才と呼ばれた。ボルドーはかつて300年にわたってイングランド領だったがフランスとイングランドの百年戦争の結果、ボルドーは再びフランス領となった。しかしイングランドの人々はワインの味が忘れられず(?)、貿易の重要拠点であるボルドーを度々攻め入った。そこでイングランドからの防衛のために築城されたのがブライ要塞である。対岸にはメドック要塞がありジロンド川を遡る敵を挟み撃ちできたそうだ。なおヴォーバンが築城したフランス全土に点在する要塞は2008年世界遺産に指定されている。




ブライ要塞を後にしてモーターボートで約30分。向かったのはブール。



11:00
<ブール>
ガロンヌ川とドルドーニュ川が合流しジロンド川へと流れ出る合流地点に位置する港湾都市。メドックのマルゴー村とはちょうど反対側に位置している。ブールはボルドーワインの発祥の地とされ、現在ブール周辺の15の村を含めて「コート・ド・ブール」というアペラシオン(原産地)を名乗っている。ぶどうの栽培はメドック地区よりもかなり早い時期から行われていたそうだが、ポイヤック、ポムロール、グラーヴ、サンテミリオンなどの名だたる名産地から比較すると知名度は今ひとつなので価格はかなりおさえ気味。ボトル1本10ユーロ前後の価格帯から購入できるので私のようなボルドー初心者には良心的な場所である。ブールのワインセラーでテイスティングしたAOCコート・ド・ブールの赤ワインを3本購入した。



12:30頃。ランチは現地観光局のスタッフおすすめのサン・タンドレ・ド・キュザック駅の前のCafé de la Gare 1900にて。



たっぷりと時間をかけてワインと美味しい料理に舌鼓をうったあとは、次の目的地であるサンテミリオンへ行く途中、Domaines jean pierre moueix(ドメーヌ・ジャン・ピエール・ムエックス)にて写真ストップ。ジャン・ピエール・ムエックスはサンテミリオンきってのワイン商であり、それまでメドックなどジロンド川の左岸ばかりもてはやされていた時代にこの土地のメルローの持つ可能性にいち早く気づき、サンテミリオンのワインを世界でももっとも希少で高価なワインへと成長させた立役者である。丁寧に手入れがされたぶどう畑が緑の絨毯となり緩やかな丘陵を越え続く様は壮観だ。


16:00
<サンテミリオン>
ボルドーから車で約1時間。小高い丘の上に肩を寄せあうように立ち並んだ周囲2キロほどの小さな町だ。町の由来は8世紀頃、聖エミリオンがこの地で隠遁生活を送るためにこの地に居を構えたのがこの小さな田舎町の始まり。今でものその生活の場である地下住居(ハーミテージ)や地下墓地、地下教会なども見ることができる。その後、スペインの聖地サンチャゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の道の宿場町として栄えたサンテミリオンのワインをルイ14世は「甘美なる酒」とたたえ、今ではメドックと並ぶ銘醸ワインの産地として知られている。ブドウ畑に囲まれた歴史ある石造りの町並みは類するものがないほど美しく世界遺産に指定されており、フランス人のみならず世界中のワイン愛好家や観光客で賑わう。石畳の続く路地のそぞろ歩きを楽しむもよし、町中にある歴史あるシャトーを訪ね歩き、ワインに関する薀蓄を聞きながら昼間からサンテミリオン産のワインのグラスを傾けるのもいいだろう。
またサンテミリオンのマカロンはパリのそれとは違うらしくサンテミリオンの名物の一つになっている。人気店「マカロン・マダム・ブランシェ」の前には人だかり。お土産として持って帰りたかったがスケジュールが決められている今回の旅行ではあいにく叶わなかった。もし次に訪れる機会があれば、ぜひサンテミリオンで充分時間をとって心ゆくまま過ごしてみたいものだ。







サンテミリオンの最後に訪れたのはChateau Guadet。
<シャトー・ゴーデ>
サンテミリオンの歴史地区の中にあるシャトー。住宅地の中にあったので最初はここがワイナリーであるという実感が全くわかなかったが、数百年もつづく非常に歴史あるワイナリーだ。見どころは近くのカーヴ(ワイン貯蔵庫)、すべて手彫りでくりぬいたような原始的な洞窟。そこに埃を被ったワインの山。昨日訪れたワイナリーは近代的なカーヴが多かったが、サンテミリオンのシャトー・ゴーテはまさにボルドーワインの深い歴史を実感するには充分な場所だ。最後は同じ銘柄のヴィンテージを年代別にテイスティング。年代を重ねたものはよりまろやかな赤で円熟味を帯びた味わいに、若い方は赤が濃く渋みが強い味わいになるらしい(?)。



19:00
<シャトー・グラン・バライユ>
夕食はサンテミリオンから車で10分ほど。見渡す限りのブドウ畑に囲まれたChateau Grand Barrailにて。本来フランス語で城シャトーは「城」の意味を持つが、ボルドーで言うシャトーとはブドウの栽培から瓶詰めまで全ての工程を行うワイン工場の意味合いがある。しかしいくつかのシャトーは本来の意味のものと見紛うような威厳のある佇まいのもの少なくはない。中には歴史的に重要なものもある。夕食会場のChateau Grand Barrailはまさしくそんなシャトーの代表例だ。サンテミリオンの有名レストランでもあり、天蓋付きのベッドの宿泊施設も備えている。美味しいワインを飲んで目が覚めたら見渡すのは手入れが行き届いた庭と地平線までつづくブドウ畑。ここで朝を迎えたら自分がこの辺り一帯の宗主国の皇子か妃になったような気分になることだろう。
ここでもたっぷりと時間をかけて夕食楽しんだ後はボルドーのホテルへ。



23:00
<Hotel de Sezeオテル・ド・セーズ>
カンコンス広場やツーリストインフォメーションそばの4つ星ホテル。エントランスはさほど大きくはないがエレガントな内装や、遅いチェックインにもかかわらず対応したスタッフの笑顔からはここでの滞在がよいものになる確信のようなものを感じる。部屋の大きさも平均的では、あるがドライヤー、ミニバー、エアコン、セーフティーボックスを完備。テレビはapple TVと連動しておりパソコンを持ち込まなくともインターネットやYOUTUBEなどを見ることができた。食事は1階のカフェにて。


10月10日
朝荷物をパッキングして気付く。すでにスーツケースがいっぱいだ。
それぞれのシャトーやホテル、観光局からもらった資料やお土産、さらに自分で購入したワイン4本。ぱんぱんになるのも当然である。
6:30にホテルのロビーで集合。パン屋さんで働いていると思われる少年が大量のパンを荷台にのせ、自転車でホテルに乗り付けて、1階のカフェにパンを納入していた。なんとなくフランスらしい一コマだなとおもってじっくり見入ってしまった。
そしてボルドーのサン・ジャン駅へ。ボルドーでお世話になったツアー会社の方々とさよなら。もう少しゆっくりお別れしたかったが列車の時間が迫っていたので急ぎ足となってしまったのが残念だ。
TGV5441便に乗り込み、シャンペン・アルデンヌ駅を乗り継いでランスを目指す。あえてパリ乗り継ぎにしないのがミソだ(パリでは長距離駅がいくつもあるので)。

TGVの売店


ランスに到着。すでに駅そばには大型バスが待っていて我々ワークショップの参加者達を待っていた。この時間帯にランス到着する参加者達はまとめてこの大きなバス乗せられて、各ホテルに送り届ける。
日本人の参加者達が宿泊するのホリデイイン。他の参加者の人々に聞くとベストウエスタンだったりするので大体このクラスのホテルなのだろう。
<ホリデイイン ランス>
ランス駅から徒歩8分。ランス市内中心部にある4つ星ホテル。世界各地にあるホテルだけあって安心できるクオリティのホテルだ。ゆとりのある造りのモダンな室内にはセーフティーボックス、ミニバー、ドライヤー、エアコン、無料のWIFIがある。スリッパやバスタブはなかった。朝食はランスの街並みが一望できる7階のレストランで。良いホテルだが一つだけ不満を言えばコンプリメンタリーのお水がない。喉が渇いてしょうがなかったので、早めに朝食にいった(もちろんミニバーもあるのだがもったいなくて)。


まあ午後1時をまわったところだったが部屋にはすぐチェックインができた。部屋に用意されている資料などを確認し、しばらく休憩した後にランス市内へでかけた。
<ランス>
シャンパーニュ地方の最大の都市ランス。かつてはフランス国王の戴冠式が行われた格式高い街だ。街の中心にはその戴冠式の舞台の「ノートルダム大聖堂」。ノートルダム大聖堂に隣接し国王の御座所としても利用された「トー宮殿」、南に1kmほど離れた場所にフランク王国の初代王クロヴィスの洗礼を行った聖レミ司祭の遺体が安置されている「サン・レミ・バジリカ聖堂」がある。これら3つが世界遺産に登録されている。また日本人にゆかりのある場所といえば「フジタ礼拝堂」。日本人画家・藤田嗣治が晩年、自身が洗礼を受けた地・ランスへの感謝の意を表すためにG.M.Mumm社の支援のもと建立した礼拝堂である。全部で200m²にもおよぶフレスコ画はボッティチェリなど美術史に残る巨匠へのオマージュやランスの大聖堂ブドウ畑、故郷・日本への思い、さらに最愛の妻までも描いている。まさに藤田作品の集大成とも言える作品である。ところで藤田嗣治の風変わりなルックスからは某赤塚先生のキャラクターを思い出してならないのだが皆さんはどうだろう??
ランスはパリからもTGVで1時間足らずの場所にあるため日帰り旅行にもうってつけだができれば少なくとも1泊することをお勧めしたい。




こぢんまりとして散歩にもぴったりなランスの街をうろうろ。街をぐるっと一周した後はホテル近くのスーパーマーケットの「Monoplix」へ。ボルドーでは時間がなかったので、今回旅行中の私のささやかな楽しみであるスーパーマーケットに立ち寄れて嬉しい。お土産用にサンテミリオンのハーフボトルやラメールプラールのクッキー、自分のためのビール(クローネンブルグ社の1664)などを購入。スーパーに中のパン屋でボルドーでは買えなかったカヌレが売っていたのでランスから出発する帰りがけにまた立ち寄る予定。
買い物の後は昼食をまだ食べていなかったのでスーパーの近くのバーで軽い昼食。ビールとフライドポテトとソーセージ。毎日手の込んだ料理ばかり食べているのでたまにはこういうジャンクな食べ物も恋しくなる。(それともジャンクフードに身体が侵されている?)。
昼食の後はホテルに戻って仮眠。フランスの長い夜に備えるためだ。この日の夕食はあのモエ・エ・シャンドンのカーヴにてウェルカムパーティー。
<モエ・エ・シャンドン>
歴史的・美術的な面からも重要な建築物が目白押しのランスではあるが、何と言っても忘れてはならないのはシャンパン。日本ではスパークリングワインを指す時にシャンパンという言葉を用いるが正確にはシャンパーニュ地方でつくられたものしかシャンパンとは名乗れない。ランス市内にも幾つかシャンパンのメゾンは存在するができればシャンパンの本場中の本場、エペルネーまで足を伸ばしたい。
ランスから車で約30分。エペルネーは一見どこにでもありそうな小さな田舎町だが、街の目抜き通りであるシャンパン通りを歩けば印象は一転。ハリウッドスターの邸宅それとも由緒ある資産家の大邸宅かと見紛うくらいの豪華絢爛な社屋が軒を連ねている。これらは全て著名シャンパンメーカーだ。その中でもモエ・エ・シャンドンは2015年に改装を終えたばかりとあってか、ひときわ輝きを放っているように見えた。
モエ・エ・シャンドンの名は聞いたことがなくとも「ドン・ペリニヨン」、通称「ドンペリ」なら聞いたことがあるという方も多いのでは。モエ・エ・シャンドンの最高級ヴィンテージワインの銘柄だ。
私はモエ・エ・シャンドンとドン・ペリニヨンは別のブランドで、そのイタリアンマフィアのような名前からきっとイタリアのワインメーカーだと勝手ながら思い込んでいた。シャンパンを最初に作った修道士の名前から取られているそうだ(モエ・エ・シャンドン本社前にドン・ペリニヨンの像がある)
カーヴでのパーティーの前にモエ・エ・シャンドンのカーヴ見学。見学のコースはどの銘柄のシャンパンの見学をするかによって値段が異なる。歴史ある地下のカーヴはなんと全長28km。ほとんど洞窟探検のよう。保管のために温度は6度前後に保たれているので上着を忘れずに。
モエ・エ・シャンドンのカーヴを見学した後はカーヴにあつらえた会場で優雅なウェルカムパーティー。当然ながら食前酒はシャンパン。その後に続く飲み物も全ても全てシャンパン。一般的なフランス料理であれば、出てくる料理に合わせて白、赤、デザートワインという順番であろうが、シャンパーニュ地方では食前酒合わせて4種ともすべてシャンパンを出すのが習慣だそう。
たんまり美食を楽しんでカーヴを後にしたのは23時ごろ。ランスのホテルに到着したのは24時ごろ。どんだけタフなのだ、フランス人。
ホテルについてもすることはすぐ寝るだけ。このままではフォアグラにされるガチョウ状態である。
10月11日
DESTINATION VIGNOBLES 1日目。
この日は朝からランス中心部の会場にてワークショップ。フランスの各地方の観光局や旅行会社、ホテルが一堂に集まり我々のようなフランスへのツアーを斡旋している海外の旅行会社やオペレーターに向けての商談の場である。今回のワークショップはテーマがワインなので各地のワイナリーも参加している。昼食は会場にて3コースディナー、もちろんドリンクはすべてシャンパンの組み合わせで。



この日の夕食はランス市庁舎近くのマルシェにて。なんとマルシェ全て貸し切ってランスのミシュラン三つ星シェフが腕を振るうという。なんという贅沢。フランス観光局の本気度が伝わる。
まずは会場に入るとシャンパーニュ地方のシャンパン・メゾンの試飲会(a.k.a 一次会)。シャンパンだけで6杯以上は飲んだと思う。これでは三つ星シェフの料理の味がわからなくなってしまう〜、と思いつつ美味しいので何度もお代わり。
その後のパーティーでは、美食に舌鼓打ちつつ、会場で繰り広げられるダンスショーやマジックショーを楽しんだ。試飲会と合わせて少なくとも10杯くらいシャンパンを飲んだ後は一人一人にシャンパンのボトルのお土産。すごすぎる。
そしてなんと終了は23時越え。ホテルに到着したのは0時過ぎ。ホテルのフロントも証明を落とすくらいの時間だった。





10月12日
DESTINATION VIGNOBLES 2日目。
この日は半日だけアポイントメント。午前中時間があいたので再度、ランスのノートルダム大聖堂へ。このノートルダム大聖堂のステンドグラスの一つはシャガールが手掛けている。私はそれを知らなかったので聖堂の中には入っていなかったのだ。もう一度行きたいと考えていたので、その前の日に知り合ったロシア人のオペレーターの方と一緒にぶらぶら観光にいった。
昼食はホリデイインの目の前のSalons Degermannにて。ヨーロッパの小説など読むとよく出てくるがいわゆるサロンに入ったのは、私はこれが初めてである。サロンとは宮廷や貴族の邸宅の応接間、談話室であって主人が文化人、学者、作家らを招いてそこで知的な会話を楽しんだそうだ(Wikipediaより)。そんな機会はめったにないので、私ごとき人間がこうして「フランスの社交界」(?)のという歴史の中にしかないとおもっていた舞台に立てただけでも幸せである。
このサロンでは立食パーティー。もちろん飲み物はすべてシャンパン。帰る人も多いためか食事はアペリティフ(おつまみ系)ばかりで少なめだった。
午後は疲れたので仮眠しようとおもったら眠りこけてしまった。シャンパンの飲みすぎだろう。
フランス観光開発機構の神谷さんと日本のエージェント、オペレーターのメンバーの方と夜はランスの街へ飲みにいくのに、少し遅刻してしまった。
もちろん私の目的はビール!ワイン、シャンパンもおいしいがワインとシャンパンを浴びるほど飲んだ後のビールもおいしい(なんじゃそら)。ランスの街のパブはベルギービールも豊富だか、ワインもシャンパンも充実。一緒に来た皆さんと意見交換やフランスに住んでらしたという神谷さんからいろいろフランスの情報を教えてもらった。
10月13日
朝9時にホテルでて、最寄りのTGV駅のシャンパーニュ・アルデンヌ駅へタクシーで。TGVでディズニーランドの最寄り駅として有名なルヌ・ラ・ヴァレ駅に到着。そこからシャルルドゴール空港までは乗換えて約10分。シャルルドゴール空港から無事帰途についた。
※おまけ情報
フランスワインの2大名産地であるボルドーとブルゴーニュ。今回、私はボルドーしか訪問しておりませんが、ワインに詳しくない方だとどちらに行っていいか迷われることも多いと思います。そこで参考までにボルドーとブルゴーニュそれぞれの良いポイントをお知らせします。個人的な感覚でいうとボルドーが女性、ブルゴーニュが男性にあっているのではないかと思います。
ボルドーの良い点
・シャトー(ワイナリー)が本当にお城のよう。シャトーを中心にブドウ畑が広がる様子がフォトジェニック。
・まるでフランスのお姫様になったようなシャトーでの食事やホテルもできる。
・世界遺産の街ボルドー、サンテミリオンも観光可能
ブルゴーニュ(ボーヌ)の良い点
・ドメーヌ(ワイナリー)はフレンドリーでアットホームな小規模家族経営。
・ワインの格付けが畑単位でされている。そのため特一級ワインのブドウ畑のとなりが2級、3級のワインのブドウ畑になっているなどギャップが楽しい。
・ボーヌへのアクセスはパリやリヨンから約2時間。大都市からのアクセスも楽なので、ほかの都市との組み合わせが楽。
ボルドー・サンテミリオン ★★★★★ (ワイン好きであれば★★★★★L) 世界遺産であり尚且つ世界に名だたるワインの銘醸地。ワイン通でなくともいって損はなし。
ランス・エペルネー ★★★★ ドンペリで知られるシャンパンの聖地。世界遺産に指定されたフランス3大聖堂の一つに数えられるノートルダムも必見。
(2016年10月 橋本康弘)
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