大河メコンの恵みを感じる旅~カンボジア・ベトナム紀行 トンレサップ湖とメコンデルタ~

大河メコンの恵みを感じる旅~カンボジア・ベトナム紀行 トンレサップ湖とメコンデルタ~

「宇宙の中心」、アンコールトムのバイヨン

カンボジア・シェムリアップの陽気なトゥクトゥクの運ちゃん

メコンデルタ名物の人力車でゆったり観光

明治時代、日本を訪れたオランダ人技師ヨハニス・デ・レーケは、富山県を流れる成願寺川を見て「これは川ではない、滝である」と言ったといわれている。
また、昔中国人が瀬戸内海を見て「おお、日本にも大きい河がありますね!なんという河ですか」と言ったそうだ。
・・・そんなわけで、我が国日本は島国であるがゆえに大河とはまったく無縁の国。大地をゆったり、のんびり流れる大河に憧れを持っている方も少なくないのではないだろうか。
そんな「大河フェチ」の一人である私は、今回カンボジアとベトナムのメコン川流域を訪れることになった。


<トンレサップ湖>
カンボジアの国土の中央にある東南アジア最大の湖、トンレサップ湖。チベットを源流として中国、ミャンマー、ラオス、タイと流れてきたメコン川の水が、一気にこの湖に流れ込む。乾季の面積は2700平方キロメートルほど(東京都よりも少し大きい)だが、雨季になるとその3倍の面積になるとのこと。日本では考えられない途方もないスケールだ。

目の前に広がる大海原、もとい大湖原

さらに驚くことに、このトンレサップ湖には100万人もの水上生活者がいて、水上集落で生活しているという。アンコール遺跡観光の拠点として有名なシェムリアップから、ボートに乗ってその水上集落に「上陸」することができる。

港からボートに乗り、エンジンをバリバリ回して勢いよく突っ走っていく漁船に抜かれながら進むこと約20分、湖上にぷかぷか浮かぶ民家が両側に見えてくる。
なるほど、これが水上集落。他では見られない不思議な光景だ。
民家のほかにも、学校や教会、交番、病院、商店まで見える。水上集落というより、一つの村になっているようだ。

もちろん小舟は一家に一台の標準装備

体育館付きの立派な学校。スクールバスならぬスクールボートも

そして墓まで。なんという至れり尽くせり感。水上集落の住民の一生は、文字通りすべて湖の上で完結している・・・!

夜に行ったらほんとに怖そう

この水上家屋のうちの一つをお宅訪問。ワニやナマズを養殖している家で、ワニは革製品用と食用に、ナマズは食用になるとのこと。ついでにお土産屋もやっている。

ビフォー

アフター

陸の上に住む人間から見れば水上家屋に住むなんて退屈なことこの上無さそうだけど、慣れたらなんともないのだろう。住めば都とはまさにこのこと。
ガイドさんの話によれば、彼らが陸に上がるのは市場で魚を売るときと米を買うときぐらいで十分らしい。
トンレサップ湖は魚の種類や量が豊富なことで知られていて、600種類以上の淡水魚が生息している。あのアンコールトムのバイヨンにも、湖に住む魚や魚を食べる人間がレリーフに描かれている。

戦争を描いたレリーフには魚がいっぱい。兵士を食うワニの姿も。

ここに描かれた魚は、現在も湖で見ることができ、カンボジア人の生活に密着に深くかかわっている。今も昔もカンボジア人はトンレサップ湖の恵みで生きてきたのだ。
<チャウドック>
ベトナムにまで到達したメコン川は、ここでいくつもの支流に分かれて海に流れ込む。ベトナムでは9本の川に分かれているとされ、これを龍に見立てて九龍川と呼んでいる。なんとかっこいいネーミング。
この地域がメコンデルタで、ベトナム一豊かな地域といわれる。なんとベトナムで取れる作物の4/5がメコンデルタ産なのだとか。
米は三毛作で、他国へ輸出もしている。日本もここから養殖エビを輸入している。そういえばスーパーに行くと、ベトナム産のエビをよく見るなあ。
メコンデルタまっただなかの街、チャウドックの市場に行くと、メコンデルタがいかに豊かな地域なのか実感することができる。


バナナだけでもこんなに種類が!

地元の超有名人、マム(魚の発酵物)作りの名人ばあちゃん

鮮やかな色彩とベトナム人のパワーに圧倒されそうな市場に行くだけでも十分おもしろいのだけど、チャウドックの楽しみ方はそれだけではない。
ここチャウドックはカンボジア国境の街であり、ベトナム人以外の少数民族も多く住んでいる。中でも有名なのがクメール人とチャム人で、彼らはメコン川の水上集落や川べりの高床式の家に住んでいる。ここでも、ボートに乗って彼らの集落を訪問できる。
この周辺でよく目にするのが、網で魚を取っている漁師。


トンレサップ湖と同じく魚の量や種類が豊かなようで、網をちょっとおろしただけですぐにたくさんの魚が取れている。毎日どころか毎時間大漁だ。
このほか、やはりトンレサップ湖と同じくナマズを養殖している家も多い。家の床下が養殖場になっており、1トンもの魚を育てているそうだ。
途中でボートを降りて、川岸にあるチャム人の集落へ。
チャム人は2世紀からベトナム中南部を中心に栄えたチャンパー王国の末裔。民族衣装を着て生活し、イスラム教を信仰するベトナムでは異色の民族。集落を訪れてみると、やっぱり独特の雰囲気が感じられた。

異世界への入り口感MAXな集落入口

機織りで民族衣装を作っている家を訪問すると、衣装を試着させてくれる。布を腰に巻いた、いかにも南国で過ごしやすそうな衣装。

このあたりの高床式の家は雨季に水没する前提で作られており、水が一番多い10月ごろになると2階が1階になってしまう。ある家では、年ごとに水位を記録してあった。

子供の身長の記録に似ているような。

立派なチャム人のモスク

アオザイ姿の女子高生がボートで優雅に下校

さらにチャウドック郊外のチャースーにはマングローブの森があり、100%の大自然の中を手漕ぎボートに乗ってめぐることができる。
延々と続く緑のトンネルはまさに絶景。

これがメコンデルタの奥深さ

こんなに素晴らしい森なのに、ここに来ているのはベトナム人観光客ばかりで、日本人はまだほとんど来ていないとのことだった。ここが穴場になっているうちにぜひ訪問を!
<カントー>
カントーはメコンデルタ最大の街で、ベトナム全体でも5本の指に入る大都市。ここでもやはり市場見学が楽しい。


日本ではまずお目にかかれない、ネズミ肉とカエル肉の盛り合わせ

しかしカントーで最も見逃せないものといえば、ただの市場ではなく水上市場。特にカントーから7km川を下ったところにあるカイランの水上市場は規模が大きく有名。
これは今まで訪問してきた水上集落よりももっとスゴそう。。。と、期待度もUP。
水上市場は朝中心に行われるそうなので、早朝6時前から船に乗って出発。

メコン川と朝焼け

あまりの眠さにボーっとしていると、突如大船小舟が大挙して出現してきた。
これがカイランの水上市場。小舟は周辺の農家が作物とともに乗っているもので、その品物を大船に乗った卸の商人が買っていく、という仕組みらしい。スイカやパイナップルを船から船へパスする、ラグビーのような光景をあちこちで見かけた。
野菜や果物をいっぱいに積んだ船のほかにも、商店を丸ごと積んだかのような船もあるし、サンドイッチを売りつけて回っている船もある。ずっと見ていても全く飽きない。


よく見ると、船の先端にさおが立っていて何かしらくくりつけられている。これが店でいう看板のようなもので、たとえばある果物がつけられていればその船はその果物を売っているということ。誰から見ても分かりやすい。

さすがにこの船は欲張りすぎでは。

この旅でずっと眺めてきたメコン川。メコンとは偉大な河との意味ということだけど、多くの人々がその豊かさを享受し、日々の生活になくてはならないものになっているということを考えると偉大っていうネーミングがぴったりだなあと思ってしまう。そういえばベトナムのガイドさんは、「きれいに見えないかもしれないけど地元の人はそんなこと気にしない、生きていくために必要なんだから」と言ってたっけ。
有名観光地をまわる旅もいいけど、「偉大な河」メコン川を訪れてそこに生きる人々の生活に触れる旅もしてみませんか?

<おまけ・カンボジア&ベトナム魅惑のC級グルメ>
今回のカンボジア・ベトナム訪問では、個人的にあるミッションを密かに持っていた。
カンボジアは知る人ぞ知る昆虫食大国(?)。そしてベトナムでは、空を飛ぶものは飛行機以外全て、四つ足のものは机以外全て食べるとか言われている。日本では信じられないほど多彩な食材があるのだ。
ってことは、やるしかないでしょう。日本でお目にかかれない珍食材、はたしていくつ食べられるのか!?
以下、虫系・爬虫類系が苦手な方は画面をスクロールして飛ばしていただくことをおススメします。
まずはカンボジアのシェムリアップ。世界中の観光客でにぎわうこの街に、「虫料理レストラン」なるものがオープンしたと聞いていた。さっそく行ってみることに。
お店の名前はそのまんま「バグズ・カフェ」。


ここで頂いたのが、スタッフおすすめの虫盛り合わせ。クモの天ぷら、アリの春巻きとパイ、サソリとクモの串焼き、コオロギと蚕の野菜炒め・・・と、お皿の上は虫のオールスターゲーム状態。

マネージャーはフランス人というこのお店、お店の中も料理もとにかくおしゃれ。食材が虫でなければ、パリの大通りにあってもおかしくないのに・・・というレベル。
才能の無駄遣いとはこのこと?いやいや、ここまで虫料理を極めたお店のスタッフの心意気は尊敬するばかり。マネージャーとお話しする機会があったが、このお店を経営していることに心から満足しているようだった。
気になるお味の方は、、、実際に食べて確かめてみて下さい。

ただただ無心にかぶりつくべし!

さらにシェムリアップの街を歩いていると、孵化しかけのアヒルの卵の屋台を発見。ベトナムではホビロン、フィリピンにはバロットと呼ばれ、日本人旅行者の間でもそれなりに有名なのだが、カンボジアにもあったのね。

卵を割ると驚きの黒さ

見た目はあれだけど、味は濃厚なゆで卵。ビールに合うかも?

その近くにあった強烈な屋台

ベトナムでは、メコンデルタの移動中にいきなりワニ牧場に連れて行かれ・・・

像にも見えるけどちゃんと生きてます

そしてワニ料理をいただくことに。歯ごたえのあるチキンという感じで、なかなかおいしい!

左上のお皿が、ワニ肉の野菜炒め

さらにその日の夕食は蛇料理。もう珍食材祭りだ。

蛇の炭火焼きと蛇鍋。思ったより原型残ってるなあ。

蛇はベトナムでは高級食材で、お祝い事などで食べられるとか。チャウドックやカントーの市場では袋や檻に入って売られているのを見かけた。
蛇もチキンを濃厚にしたようななかなかの美味しさ。中でも蛇鍋に入っていた蛇ホルモンがクセになる味で、何回か食べればやみつきになりそう。ベトナム人も蛇好きの人が多いようで、このときもドライバーさんが「あとで酒のつまみにするんだ」と言って余った蛇肉をタッパーに詰めて持ち帰っていった。
このとき食べた蛇はどこでもいる一般的な蛇のようで、コブラなんかになると値段がぐんと上がり、味もさらによくなるらしい。じゃあ次ベトナムに行ったときはコブラ料理だな。
最後にカントーでタニシを茹でたものを食べて、珍味をめぐる旅は終了。

これもビールに合いそう

カンボジアとベトナムの食文化の奥深さを実感できた今回の旅。勇気ある方は、お腹を壊さない程度にチャレンジしてみては!?
【スタッフおススメ度】
●トンレサップ湖 ★★★★
カンボジアはアンコール遺跡だけじゃない!突如出現する水上集落は圧巻の光景。
●チャウドック ★★★★★
市場、少数民族、大自然と楽しみ方いろいろ。メコン川とともに生きる人々のたくましさに圧倒される。
●カントー ★★★★
世界でも珍しい水上市場は見逃せない!
(2014年11月 伊藤卓巳)
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