カンボジア”秘境遺跡”巡りの旅 幻の山岳寺院プリアヴィヘアへ

カンボジア”秘境遺跡”巡りの旅 幻の山岳寺院プリアヴィヘアへ


あまりガイドブックに紹介されておらず、ツアーを組んでいる旅行会社も少ないため情報が少ないカンボジアとタイの国境線上にあるプリアヴィヘア
長年その領有問題を巡って対立が続いている。確かに領土は”南”のカンボジアだが塔門は”北”にあるタイの方向に向かって建てられておりタイのものだとタイ側が主張する理由も理解できる。(タイ名:カオ・プラ・ヴィハーン)


以前は道路整備、地雷などの治安の問題によりタイからビザなしで入るのが一般的であったが現在は国境を封鎖されているため入れないことと、道路が整備され地雷の撤去もほぼ終わったのでカンボジアから入ることが可能となった。今回はそのカンボジア側から入ることにする。
しかし、現在外務省から”渡航の是非を検討してください”の危険情報が出ているため行くには旅行者本人の理解と覚悟が必要だ。なぜなら2008年7月にカンボジアで2番目の世界遺産に登録されてからその所有権を巡りますますタイ側が反発、両軍の銃撃戦にまで発展したからだ。
折悪しくもつい2日前タイを追放になったタクシン元タイ首相がカンボジアに入ったというニュースが国内を駆け巡り緊張状態となっていると同行予定の日本人マネージャーから前夜説明がある。ただし今は平穏で銃撃戦の気配もないし、同行のカンボジア人ガイドも軍関係の情報に詳しく、いよいよ危なくなったら連絡が入るので・・・との一言で予定通り出発することに。
日本にいてはなかなか伝わってこないが現地ガイドならではの正確な情報はこういった時にとても頼りになる。
5時30分起床、しっかり朝食を取って6時30分に出発。
片道およそ270キロ、しかも半分以上は”未舗装”の悪路のため4WDで片道5時間はかかるちょっとした長旅となる。ドライバー、現地日本人マネージャー、ガイド、私の4人で聖地を目指すことに。
朝のスラスランが美しい、昨夜到着した私にとって初めて見る”カンボジアの観光地”だ。

そもそもカンボジア自体、初めて訪れたのにメインであるアンコール遺跡郡を飛ばしていきなり上級(?)のプリアヴィヘアからスケジュールが組まれているのがファイブスタークラブの凄いところ。
もちろん今回の旅の最大のミッションはカンボジア側から入る”今のプリア”を瞼と映像に収めることだ。
走ること2時間。途中アンロンベンで休憩

ホテルを出発して2時間以上経つのにまだ半分も来ていないとは・・・その先は悪路が続く。のどかな田園風景と砂塵・・・同じ風景が延々と続く。いったいあとどれくらい走るのだろう?揺れも激しくなってきた。


途中、聳える山の姿が美しい。その山の上に遺跡がある。
まだ遠いが”あれが目標地点か!”と眺めることで気持ちがやや昂ぶって来た。


2時間後山の麓に到着。
カンボジアの兵士達が集結している、銃、ミサイル、バスーカを担いでいる姿を目の当たりにし臆病な私は撃たれないよう(?)シャッターを押すも目をしっかり伏せる。ヤバいところに来ちゃったと思うが、不思議と恐怖は感じない。無論ここまで来て引き返すわけにも行かない。



ユネスコの看板が見える。どうやらここが入口らしい。ここからおよそ6キロの急斜面を登れば目的地に到達だ。

かつては横転事故も多々あったと聞くほどの急勾配!
これは普通の車では厳しいだろう。さすがの4WDでも息を切らしながら登っているように体に伝わる。エンストしないようエアコンを切って窓を開ける、生暖かい風、激しい音とともにラスト10分、ゴールを目指す。


ようやく到達。位置的には山の中腹、第一塔門の脇に車を止める。


この寺院は9世紀末に建てられた。クメールの寺院は普通、それぞれの方角に意味を持たせて
”東西”を軸に建てられているがここだけは”南北”が軸となっている。南のカンボジアを背に北のタイを向いている、さらに山の斜面に建つ、とても珍しい寺院らしい。途中から上がるのではなく真のスタート地点であるタイ国境付近にいったん歩いて戻ることにする。

有刺鉄線が張り巡らされているが、かつて訪れた観光客はここから入ってきたらしい。
お母さんが子供の体を洗っている、本当に銃撃戦が行われていたのだろうか?と思えるほど平穏な風景。危ない気配はまったく感じない。

入口付近の店周辺には日本人はおろか、欧米人などいわゆる”観光客”がまったくいない。
兵士専用のコンビ二といったところか、とても観光客相手の商品と思えない”気味悪い?”ものも並んでいる。



入口から見上げる参道、シンハ(獅子)の像がお出迎え。

まずここで一度立ち止まることが一般的らしい。
登るには意外に(?)体力が必要。30度を超える気温に汗を流し、息をきらしつつ1段1段に歴史の重さを噛みしめがら終点を目指しスタートを切る。
途中カンボジア兵と記念撮影。彼らの目がとてもやさしいのが印象的。


(写真)遺跡数点
第一塔門への参道

第一塔門の遺跡




説明によると他の遺跡と比べ保存状態は良くないらしいが決して荒んだ感じはしない。
存在感とでも言うのか、そのなんとも言えない”威圧感”は何だろう?
初めてカンボジアの遺跡を目にする私にとって、上手く言葉に表せない姿が次々に現れてくる。
さすが世界遺産に指定される所以だ。
第二塔門への参道

地雷撤去済み立て看板

近くでは子供たちも遊ぶ 兵士たちの休息の場
とてもつい最近まで血を流し争っていた場所とは思えないほど
静かに時が流れている
第二塔門


乳海攪拌

ヴィシュヌ神の化身 クリシュナー

ヒンズー教における天地創造神話「乳海攪拌」のレリーフ ヴィシュヌ神が綱引きをさせながら海を攪拌し、その海が乳海となりやがてその中からアプサラやラクシュミーが誕生し、最後に「不老不死」の薬が出来たという神話が描かれているのだがそれがとにかく細かくて美しい。
これが世紀を越えて保存されている事実に感動せずにいられない。
第三塔門への道

第三塔門


第三塔門の回廊


第三塔門
まったく”人”がいない静けさの中に不思議な凄みを感じる



戦士の休息 警護兵士との1枚
銃を背負っているがおもちゃじゃないか?と思えるほどのんびりした光景。戦争を知らない私は1日も早くこの争いが終わって欲しいと願う。

見張塔 向こうに見える山がタイ ロクに見張りをしていないようだ

この寺院のクライマックスは頂上のパノラマ。(写真はイマイチだが・・)

息を呑むほどの絶景にこれを見るだけでもここまで登りつめた甲斐があったと感じる最高の瞬間が訪れる。これがプリアヴィヘアの最大の魅力かもしれない。
戦争は決して良くないが奪い合う気持ちがわかる。

心地よい風、美しい風景・・・・
遺跡の中で遥か昔に思いを馳せ、断崖絶壁に佇みながら遠い未来を想像する、過去と未来が交錯するスリリングで感動的な瞬間を是非体感して欲しいと思う。

あとで気づいたことだがまったく観光客にすれ違うこともなかった、ほんの数時間ではあったが”独り占め”ができたことに感謝し安堵感と共にこの地を去った。
2009年11月 桜本

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