日本で一番近い秘境 パプアニューギニア

日本で一番近い秘境 パプアニューギニア


パプアニューギニアへの旅行についての情報はあまりなく、どんな国かを知っている人は少ないと思う。私たちにとって未知の国、パプアニューギニアへはなんと成田から直行便が週に1便就航しているのだ。乗ってしまえば6時間で首都ポートモレスビーに着くのだから、南米やアフリカなどに行くよりもずっと手軽に行け、こんなにも近くに秘境あるのだ。今回はそんなパプアニューギニアに行くこととなった。
夜の9時代に成田を出発し、機内食を食べ軽く寝たらもうポートモレスビーについていた。6時間だからバンコクに行く感覚だ。ああ、近くて楽なのだがぐっすりは眠れない。
ポートモレスビー空港にてビザは無料で取得できる。”Arrival without entry permit” の列に並ぶ。そのまま国内線に乗り継ぐので、荷物をピックアップし、税関を通ったところにPX(ニューギニア航空)のカウンターがあるので、そこでチェックインして荷物を預けた。それから歩いて隣の国内線ターミナルに移動するが、日本円から両替できるのは国際線ターミナルのみなので、ここで両替しておこう。時間がまだたくさんあるので、あてもなくブラブラ歩いていたらセキュリティーのおじさんが「出口はここじゃないよ、ここは入口だよ。え?出口はどこかって?連れて行ってあげる」と案内してくれるのだが、手をつないで、手を引いて連れて行ってくれたのだった。この国ではこれはあたり前のことだと後から知ることになるのだが、その時点ではまだ着いて間もないので、見知らぬおじさんと手をつなぐことにかなり抵抗があって、でも親切でしてくれているのだろうから手を振りほどくこともできず、なんだか恥ずかしいなぁと一人で赤面したりして、かなり戸惑ったのだった。


1時間ほど国内線に乗ってゴロカに到着。標高1600mのゴロカは涼しく爽やかで年中過ごしやすい。ターンテーブルさえもなく、大きな机の上にドンドン、と荷物が置かれるだけ。シンプルな空港だ。クレームタグのチェックはあるので、最後まで残しておこう。今回の宿泊先、バードオブパラダイスホテルは空港から車で2分、街の中心にあるホテルだ。(空港が街の近くにあるのではなくて、空港は第二次世界大戦のときに作られ、その空港の周りに町ができた、というのが正しい)ホテルに荷物をおき、まずはダウロ峠へ。ダウロ峠はハイランド地方、マダンやレイを結ぶ唯一の産業道路、ハイランドハイウェイにある一番標高の高い峠で、2478mにある。そこの近くにある眺めのいいポイントでちょっと休憩。かわいい子供がシャボン玉遊びをしている。近くに立つ素敵なおうちの中も見学させてもらう。標高が高く、この日は曇っているので少しひんやりとしている。子供たちはすごく人懐っこくて、みんな私と手を繋ぎたくて、奪い合っていたのがとてもうれしかった。

ダウロ峠にある絶景ポイントとすてきなおうち

人懐っこい子供たち

峠を後にしてアサロ渓谷にあるマッドマンダンスのパフォーマンスを行う村の一つ、ゲレミヤカ村に到着。ランチの時間なのでまずムームーをいただくことになった。ムームーはパプアニューギニア料理の代表的なもので、土に穴を掘って、焼き石をいれ、バナナの皮で食材をつつみ、蒸し焼きにする料理だ。できあがった料理を取り出す作業から見学させてもらった。こんもりとした土の山をシャベルを使って丁寧に土を取り除く。すると大きな葉っぱの山がでてくるのでそれを一枚一枚はがしていく。すると焼き石で蒸されたたくさんの野菜、根菜、チキンがほっくほくになって顔を出してくれた。野菜はぜんまい(日本とは種類が違って、もっと原始時代にあるような大きなもの)、パンの木の若い葉っぱ、キャベツ、サツマイモ、タピオカのいも、はやとうりの葉、カボチャの葉であった。地元の人はそのまま何もつけないで食べるけれど、外国人用に塩が用意されてあって、それで頂いた。素材の味がそのまま生きていて、ほっくほくで美味しい!しかも油も使っていないのでヘルシーだ。この地域の主食はサツマイモで、おいしいサツマイモがとれることで有名だそうだ。村人たちは太っている人もいなく、たくましい体つきで、肉も多くは食べないので、その体はサツマイモで作られているのだと思うと、人はただ自然にあるものをそのままいただけば健康に生きていけるのだと実感することができた。

村の入り口

バナナの葉でくるまれたムームー

よく蒸されたムームーを取り出す

さあ、召し上がれ

さて、いよいよ本日のハイライト、マッドマンのダンスの見学だ。パプアニューギニアに数多くいる民族の中で最もインパクトがあり、外国人の中でも有名なマッドマン・ダンスの由来の説はいくつかあるが、有力なのが敵に奪われた土地を取り戻すために、体に泥を塗り、泥で作ったお面をかぶり、亡霊のふりをして敵を怖がらせて退散させたのがその始まりだ、という説である。彼らの踊りは亡霊の舞なので音も立てず、ゆっくりと武器を振りかざしながら練り歩くといった感じだ。何よりもインパクトがあるのが舞う本人が作る泥のお面。彼らのパフォーマンスの後にかぶらせてもらおう。10kgもあるのでとても重い!泥で作ってそのまま乾燥させていて、焼いてないから重いのだそうだ。亡霊の踊りとはいえ、ゆっくり踊るのはこのお面が重いのも理由の一つのようだ。一人一人にお面をとってもらって自己紹介をしてもらう。お面をとった顔は汗だく!!やはりゆっくり踊っていてもかなりの重労働のようだ。マッドマンはパプアニューギニアでも一番有名な民族なので村の人々はきっと観光客にも慣れ、観光地化しているのだろうと思っていたが、そんなことが全くないのに驚いた。ダンスを披露してくれた人たちも一生懸命踊ってくれたし、素朴であった。村の人もみんなすれ違うたび挨拶してくれるし、子供たちもこちらへの興味の眼差しを向けてくる。マッドマンのパフォーマンスだけではなく、村の様子を知ったり、村人との交流も楽しめたのがとてもよかった。この国の人に言えることだが、みんな写真を撮られるのが好きで、カメラを向けても全く嫌がらない。むしろポーズを決めてくれる。また優しい人、世話好きな人が多く、人々の明るい笑顔が何よりも魅力的だ。

いよいよマッドマン登場!

サービス精神旺盛なマッドマン

そろえりそろりと踊る

泥のお面は重い!

お面の下の顔は汗だく

一緒に見学していた村の人たち

村の畑

家のお手伝いをする子供

二日目、グルポカ山にハイキングへ。ゴロカの街を出発し、昨日のハイランドハイウェイを通り、約30分ほどでグルポカ山の麓の村、コレコレト村に到着。日本語ガイドさんとその村の戦士が村を案内したのちに、グルポカ山の頂上へ共に向かった。村の畑でどんなものを育ててるか、生えている植物や木を生活の中で何にどのように使うなど、説明してくれる。

村の戦士が畑や村のことを教えてくれる

昔は遠くまで続く地下道が続いていた洞窟

途中は洞窟を通ったり、昔に捕えた敵を食べたのちに骨を入れた洞穴を見せてくれたりしてちょっとした探検隊気分になれる。
山の頂上には遠くまで見渡すことができるポイントがあり、とても気持ちがいい。

グルポカ山頂上にて

靴は軽登山靴以上のものがおすすめだ。この村でびっくりした話が、ガイドさんが「この焼跡は夫婦喧嘩で怒った奥さんが自分の家を燃やしちゃったそうなんです」と言ったことだ。私「へーこの夫婦はその後どうなっちゃんたんですか?」と話しているちょうどその時に村のビンゴ大会に仲良く加わっている夫婦の姿がみえてきて「どうやらこの夫婦がこの家を燃やした夫婦だそうです」と戦士の話を訳してくれた。この国の人々は感情の起伏が激しく、村の夫婦喧嘩で自分の家を燃やしてしまうことはよくあることだそうだ。喧嘩で自分の家を燃やすって・・・・!!私だったら、そんなことをしてしまったら恥ずかしくてこの村にはもう居づらいし、ご近所さんに合わす顔がない。でも、その夫婦も周りの人も何事もなかったように楽しそうにビンゴをやっている。この国の人たちはその場で感情を爆発させるので、村中、街中で喧嘩をしてるのを見かけるのはよくあることだそうで、そのたびにたくさんの人が周りをとりかこみ、「あんたが正しい!」だの、なんだかんだ言ってみたり、ときには取っ組み合いになったらそれを止めにかかるそうだ。でももめるのはその場限りで、後からぐちぐち「あのときはこう言った」とか、ひっぱることはないそうだ。

村のビンゴ大会

ハイキングのあと、その村の踊り「シンシン」を見せてもらった。「シンシン」は英語の“sing”から由来し、部族の踊りのことだ。この村のシンシンは「モコモコダンス」と呼ばれ、男たちが口々に「モコモコモコモコ」と言いながら腰をふったりする。昔はこの踊っている男の姿をみて女性は「あの人いいかも」とか言って、出会いの場になったそうだ。でも、仮面かぶったりしてるし、顔がはっきり見えないんじゃ?と思ったりしたけど、男性を判断するのに基準は顔じゃないんでしょう、きっと。

もののけ姫のこだまを思わせるモコモコダンサー

くちぐちにモコモコと言っている

ダンサーたちと

町にもどりホテルで食事をしたのち、ゴロカの市内観光となった。まずは周辺の村々から持ち込まれた色とりどりの野菜が並ぶゴロカマーケットへ。他国と異なり値段が決まっていて値札がでている。値下げ交渉はまずしない。スリが多いので必ずガイドさんと行こう。みんな写真を撮られるのを嫌がらないので気兼ねなくパシャパシャ撮れる。やっぱりどの国でもマーケットを見学するのは楽しい。

ゴロカのマーケット

次に太平洋戦争時の連合軍機を屋外に展示し、白人が初めてこの国を訪れたときの様子を収めた写真や、民族の工芸品があるマッカーシー博物館を訪れた。人間の指で作ったネックレスが印象的だった。

もらいたくないプレゼント、ワースト1決定!人間の指のネックレス

その次にゴロカ大学へ。パプワニューギニアには大学は6つしかなく、一度社会人を経験した人もたくさん勉強しているのだそう。
翌日、ポートモレスビーにて乗り継いでマウントハーゲンへ。ゴロカからのフライトが3時間ほど遅延し、そのときのニューギニア航空の対応が宅配ピザを注文し、一切れずつ乗客に配っていた。ゴロカではピザは珍しい食べ物だから、イライラした乗客の口を封じるのは見事に成功していた。遅延があったものの、無事にマウントハーゲンに到着。そこから車で45分、街や谷、はるか向こうの山々を臨む標高2100mにロンドンリッジはある。このホテルは今は12部屋しかないが部屋を増築中である。部屋は広々、インテリアもこの国のアートを使い雰囲気満点でラグジュアリーなロッジだ。トレイルもあり、探検気分も味わえ、気軽に散歩も楽しめる。ごはんもおいしい。自然の中での贅沢なひとときを楽しめる。

広々としたロビー

お部屋も広い

見晴らしもよい

翌日、マウントハーゲンの空港からチャーター機で約45分。草を刈っただけのようなところに飛行機は着陸。カラワリに到着した。そこからボートで15分。ホテルの最寄の船着き場からジープに乗り込み約5分でカラワリロッジに到着。世界でも最も辺境にあるロッジの一つであるこのカラワリロッジはカラワリ川を見下ろす高台に建ち、ジャングルに囲まれている。セピック川はパプアニューギニアのアマゾンと呼ばれ、1126㎞にも及び、周りは広大な湿地帯が広がる。そのセピック川の支流のひとつがこのカラワリ川だ。この地域で精霊たちが集うと考えられている巨大な高床式住居ハウスタンバランの建築様式をとりいれ、世界のホテルベスト100にも選ばれたことがあるロッジなのである。

この国の民芸品をとりいれたダイニング

メインロッジのテラスからはジャングルと川を見下ろせる

その日の午後はクンディマム村を訪問した。サゴヤシからとれるでんぷんを使ってパンケーキやプリンのような食べ物の作り方を実演してくれた。

サゴヤシからでんぷんをとる

サゴヤシのパンケーキを作る

子供たちも明るい

翌日もビレッジツアーに出発。ボートクルーズを1時間半ほど楽しみマンジュマン村に到着。丸太ボートで魚を取る人、鱗を取る人の様子を見学する。

魚を取る女性

サゴヤシのパンケーキを作る人

大物をとらえた女性

子供たちがかわいい

魚の鱗をとる子供

クランメイ村の子供たち

村の人たちも何故か一緒に村を観光

我々のボートを押してくれる村人たち

ボートクルーズの様子

カラワリロッジからの夕日

カラワリロッジで村人が演奏をしてくれた

今回いくつかの村を訪ねたが、どの村も外国人が来ると子供も大人も様子をうかがいにやってくるし、それが大人数になることもしばしば。写真を取られることも嫌がらず、むしろ喜んでくれるのも観光客にとってありがたい。他の国でよくあるのがビレッジツアーだとチップを要求されたり、子供がお菓子くれ、とか言ってくることが多いけれど、今回は一度もそのようなことがなかった。日本人にとってはチップの習慣は旅行の度に悩まされる問題だから、この点は本当に楽だ。観光客がくるといってもさほどたくさんでないらしく、人々も擦れてなく、こちらにむけてくる眼差しも興味深々で、温かい。パプアニューギニアの魅力は美しい自然ももちろんそうだが、なんといっても人々そのものにある。みなさんも日本から最短距離にある秘境、心安らぐパプアニューギニアに来てください。
【スタッフおススメ度】
<マッドマンの村に訪問>★★★★★L
一度会えば一生忘れられない思い出に!
インパクトも大きいが人々の優しさにも感動
<グルポカ山ハイキング>★★★★★
村を散策しながら眺めのよい山頂へのハイキングはとても気持ちがいい
そのあとのモコモコダンス鑑賞も楽しみ
<カラワリロッジに滞在とボートで村々を訪問>★★★★
周りをジャングルに囲まれた秘境中の秘境!
ボートで訪れる心温まるビレッジツアーも
2014年 9月
辻 理恵子
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