今回私は妹を連れて、イタリアを訪れてきた。
入社して以来アジアの国をたくさん巡ってきたが、ヨーロッパは大学の卒業旅行以来。
卒業旅行のシーズンではイタリアは「王道だし」という理由でなぜか候補にすら入れていなかった私。
今回実際に訪れてみて、もはやイタリアの虜になってしまったことは言うまでもない。
王道だからこそ、やっぱり裏切られることはなかった。
アリタリア航空でバーリまで行き、まずマテーラ、アルベロベッロへ、そして列車で北上しローマ、フィレンツェ、ヴェネチアを10日間で周るという、少し、いや、かなり欲張りな旅をしてきたので是非ご紹介させていただきたい。
>>マテーラ<<
イタリアのかかとあたりに、世界でも有数の長い歴史をもつ小さな町「マテーラ」がある。
ここに一歩足を踏み入れた瞬間、21世紀から大昔にタイムスリップしたような、不思議な感覚に陥る。
ここには7,000年も前から住まれている洞窟住居(サッシ)が今でも残っており、現在でも、まだそのサッシは人々に住まわれている。
サッシが建ち並ぶ旧市街は、20世紀半ばまで、水道も電気も満足に通らず、採光は入口一つのみ、家畜と一緒に暮らすといった、近代化とは程遠い生活を続けていた。
そのため、不衛生的との理由で、政府の立ち退き政策により住民は強制移住させられ、その後しばらく人の居ない廃墟状態になっていた。
1993年に世界遺産に登録されてからは観光地としても注目を浴び、今となっては洞窟住居を改装したホテルやレストランもたくさん出来ている。
一度廃墟化した街が、ここまで復旧するとは。マテーラの底力に驚き、その歴史に思いを馳せながら迷路のような町の中石畳を踏みしめのんびりと歩いて回った。
白に統一されたサッシが不規則に建ち並ぶ。この日は雲一つない快晴で、青と白のコントラストがさらにその美しさを引き立てる。また、ここの住人によってその無機質なサッシに緑が可愛く添えられている。
高台から眺めるサッシは圧巻で、その異様な世界に吸い込まれそうになる。
眺めているとかなり遠くにあるように見えるのに、歩いてみると案外すぐそこまで辿り着くから不思議。
お昼間はシエスタのような時間があり、人通りがまあ少ない。
犬も太陽の下気持ちよさそうに寝ている。
グラヴィーナ渓谷の対岸からは、サッシ地区を一望することができる。
今回は時間がなく、残念ながら対岸には行くことはできなかった。
住民も少なければ、観光客もこの時期はまばらで、マテーラの町を独り占めした気分。
そんな景色はもちろん、私は路地に入って地元の人たちの生活を垣間見るのも好きだった。
白色の家に、赤や青の洗濯物が干してあるだけで絵になる。
マテーラでは、憧れのサッシホテルに宿泊。
今回私は「LOCANDA DI SAN MARTINO」に宿泊した。
洞窟というくらいだから少し肌寒いのかな、と勝手なイメージを抱いていたが、部屋は暖房がしっかり効いていて快適に過ごせる。
タオルやアメニティも揃っていて、wifiもフリーで使える。予想以上の設備に驚いた。
そして、部屋を出ると夜のサッシ地区を一望できる。この上ない贅沢だ。
控えめながらもひとつひとつの住居から放たれる光がその小さな町を一つに団結させ、それはまるでこれまでの苦境を一丸となって乗り越えてきたマテーラの町を表しているかのように感じられた。
この日は満月で、いつまででも見入ってしまいそうなほど幻想的な光景だった。
マテーラは小さいので半日あればゆっくり歩いても十分一周できるが、昼と夜はまた違った顔をもち、どちらも本当に素敵なので、訪れる際には是非サッシホテルに1泊し、その両方を味わって頂きたい。
>>アルベロベッロ<<
とんがり屋根で有名な「トゥルッリ」がたくさん建ち並ぶアルベロベッロ。
一歩足を踏み入れるともうそこはおとぎの国。
アルベロベッロは、お土産屋さんなどが立ち並ぶ「リオーネ・モンティ地区」と、今も住居として使われている「アイア・ピッコラ地区」の2つに分かれている。この2つの地区合わせて約1400のトゥルッリが集中して立ち並んでいる。
アイア・ピッコラ地区では、そこに住む地元の人たちの生活が垣間見ることができて面白い。
このあたりは地図があってないようなもの。町自体小さいので迷子になることはない。
赴くままに歩いていると、スーパーがあったのでぶらっと入ってみる。
後でローマに行ってから改めて思ったが、やはり南は物価がかなり安い。
ローマではここの倍以上はする。お土産は重くなるので買い控えていたがこっちで買っておけばよかったと後から少し後悔した。
一方、モンティ地区は、商業化していて、観光客向けにお土産屋さんやレストランがたくさん並んでいる。
今となっては日本でも有名となったアルベロベッロ。お土産屋さんには日本語表記のあるお店があり、片言の日本語で話しかけてくる人もたくさんいた。
>>ローマ<<
ローマに入ると、これまでの景色とうってかわり、いっきに大都会。
右も左も名所ばかりで、2日しか時間がない中でいかに効率よく、行きたいところを見て回れるかが勝負。事前に入念に計画を立てていたが、もうガイドブックと地図を見ている時点でここもあそこもと、目が回ってしまう。
バスでテルミニ駅を出発し、まずはフォロロマーノとコロッセオへ。
フォロロマーノとコロッセオは共通チケットになっていて、コロッセオではチケットを買うのに大行列ができているので、まずフォロロマーノでチケットを買って先に周ることをおすすめする。
ローマ観光のメッカ、コロッセオ。その迫力は他に勝るものはないだろう。町中にいきなり現れ、またそのオーラと存在感に圧巻。
ローマは数日前までいたマテーラとは正反対で、近くに見えるのにそこまでなかなか辿り着かない。
私たちは降りたバス停まで戻り、同じバスに乗りたかったのだが、出る方向を間違えたのかコロッセオの周りを1周してしまった。これは私の方向感覚の問題だが。。
ようやく辿り着いたバス停からバスに飛び乗り、真実の口へ。やっぱりここは外せない。
真実の口広場から川を渡ると、お洒落なバーなどが並ぶトレステヴェレという地区がある。そちらまで歩いてみたが、街並みがしっとりと落ち着いた感じで観光客も少なく、ローマの下町を見ることができて面白い。
地図と標識を見比べながら路地を歩く。そうすると、ふと見上げた途端綺麗にライトアップされたトレヴィの泉が突如として現れる。
翌朝はカンポデフィオーリ広場の朝市へ。フレッシュな野菜やフルーツ、食器やお花、またお土産用にカラフルなパスタやトリュフ、香辛料にオリーブオイルなどたくさん並んでいる。ローマの活気を生で感じることができ、見ているだけでも面白い。
そして、楽しみにしていたヴァチカン市国へ。
ヴァチカン博物館へは日本で事前に予約をしていたのでスムーズに入ることができたが、チケットを持っていないとかなり待つことになる。実際ものすごい行列ができていたので、こちらを訪れる際は事前予約が必須。
美術館は相当な広さで、主な作品を見て回って、3時間程かかった。
美術にはあまり詳しくない私でも知っている絵や彫刻がたくさん詰まっていて、存分に楽しめた。
隣のサンピエトロ大聖堂も必見。
幼い頃から映画や教科書で目にしていたものを、実際に間近で見た時の感動は言葉に出来ない。ローマではそんな感動を、朝から晩まで味わえる。今回はバタバタと駆け足で巡ったが、次はもっとじっくり時間をかけて楽しみたいと思った。
>>フィレンツェ<<
フィレンツェは、ローマよりも見所がぎゅっと集まっていて、ドゥオモを中心に歩いて周ることができる。
この日は午後から天気が崩れる予報だったので、朝一でジョットの鐘楼とドゥオモのクーポラへ登ることに。
ドゥオモのクーポラ、洗礼堂(現在修復中だった。)、ジョットの鐘楼、サンタレパターラの地化聖堂(大聖堂内部の地化)、ドゥオモ付属美術館の5施設は共通のチケットになっていて、買える場所が決まっているので要注意。(ドゥオモのクーポラへ登る際の入口ではチケットは買えない。)
私はたまたまジョットの鐘楼に先に登ったので何の問題もなかったが、ドゥオモのクーポラへ登る際、30分程並び、入る直前に「ここではチケットは買えません」という標識が小さい字で書いてある。私の後ろに並んでいた夫婦はチケットを持っていなかったようで、入口手前で「私たちは30分間何のために並んでいたんだ・・」と嘆いていた。(結局遠くまで走ってチケットを買いに行っていたが。)
ジョットの鐘楼の見晴台へは、414段の階段を、降りてくる人と器用にすれ違いながら登っていく。階段は狭く、段差もなかなかきつい。
息を切らしながら登りつめ、見晴らし台に着くとそこには360度のパノラマが広がっている。これは、息を切らしてでも絶対に登るべき。疲れも吹っ飛びそのレンガ色の美しい景色にシャッターを押す手が止まらない。
ドゥオモのクーポラへも同じように急な階段を登っていくが、こちらは登りと下りが分かれているので、下ってくる人を待っている必要はない。こちらは螺旋階段が続くので、目が回りそうになりながらも20分程でクーポラの見晴らし台に到着。
先ほど登ったジョットの鐘楼が下に見え、フィレンツェの街並みが一望できる。
天気予報通り、夜になるとぱらぱらと雨が降り始めた。雨の日のフィレンツェもまた趣がある。
>>ヴェネチア<<
この旅の締めくくりは水の都ヴェネチア。
水上バスに乗ってFondamente Noveで乗り継ぎそこから40分程のところにあるブラーノ島へ向かう。
ここには赤、緑、黄色、青、ピンクとパステルカラーの家が建ち並んでいる。そこにいると、自分がまるで絵本の中に舞い込んでしまったかのよう。
また、この島はレースが有名で、丁寧に編まれた繊細なレース製品がたくさん売っている。私も祖母に1枚購入。
島はとても小さく歩いてすぐに周れる。どこを切り取ってもカラフルで可愛い。
ブラーノ島よりも近くに(サンタルチア寄り)「ムラーノ島」がある。こちらの方が大きく、ガラス細工が有名。
サンマルコ広場に向かう途中、天気がまた悪くなり、まさかの豪雨。
窓が水面に入ってしまう程大きく揺れる船。外に出ていた人は全身ずぶ濡れ、船の中ではみんな叫んでいたり、「助けて~~!」と泣いている親子がいたり、必死に手を握る人がいたり。停留所もかなり揺れていてとても停れる状況ではなかったので、途中を全部スキップして大きな停留所のサンマルコ広場へ。ふう、生きていてよかった。と肩を撫で下ろす。
ここに住んでいる地元の人は大変だ。雨が降ったら移動も命懸け。
サンマルコ広場についたものの、天気が優れず、乗りたかったゴンドラも運休中。
ということで、ショッピングを楽しみ、リアルト橋から綺麗な夕陽を眺め、美味しいご飯を食べ、心もお腹も満腹に。
老若男女楽しめるイタリア。やっぱり、イタリアは私たちの期待を裏切らなかった。
2014年4月 池田郁依
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