ハイキングを楽しむ冬のスイス 鉄道の旅(2013年3月6日から3月13日)


「スイス=夏の山のハイキング」と思われる方も多いだろう。もちろん、夏のスイスも魅力的だけど冬のスイスはウィンタースポーツも盛んで、山のホテルはそれを楽しむスイス人、ヨーロッパ人達で溢れかえっている。スイスは冬もピークシーズンなのだ。今回はそんな冬のスイスの魅力に迫る旅のご紹介をしたいと思う。
マッターホルンで有名なツェルマット。空気は澄みきって街中にも雪が残るが日差しは暖かく、春を感じられる。天気のいい日はオープンカフェでビールを飲むのも気持ちがいい。


ツェルマットの町中からみるマッターホルン

ウィンターリゾート ツェルマット
まず、ツェルマットの駅のすぐ前にある、ゴルナーグラート行きの登山列車に乗り込む。みなさんご存じのようにスイスは物価も高く、この登山列車でツェルマット~ゴルナーグラート間を往復するだけでも80フラン(約9000円)もする。スイスパス、スイスフレキシーパスを提示すればなんと50%off! これを利用しない手はない。フレキシーパスの場合は選択した通用日でなければこの特典が使えないので注意しよう。登山列車にはスキーヤーでにぎわっている。ゴルナーグラートは一年のうち曇っている日がわずか20日ほどしかないそうだが、運悪くそのうちの1日にあたってしまい、残念ながらマッターホルンを見ることができなかった。

ゴルナーグラート駅に到着した登山列車

ゴルナーグラートにあるホテル、3100クルムホテルは部屋数22部屋のみで、夏はハイキング、冬はスキーヤーでいつも混んでいる。天気のいい日はマッターホルン、もしくはモンテローザを部屋から眺められる。

3100クルムホテルの室内

ハイキングコースはたくさんあるが、見逃せないのがローテンボーデンからリッフェルブルグ間。夏は逆さマッターホルンが見える湖も冬は雪で埋まっている。

フーリからツェルマットへのハイキング

冬でもハイキング、スノーシューハイキング、スキー、ボード、クロスカントリー、そりすべりなどたくさん楽しめるウィンターリゾート、ツェルマットに来てみてください。

ツェルマット たくさんの店が並ぶバーンホフ通り

温泉とスポーツの街 ロイカバードへ
ツェルマット駅から氷河特急に乗り込む。天窓も大きく優しい日差しが社内に差し込む。冬山や村々の景色が美しい。

氷河特急の1等車内

今回は特別にブリークで下車し、乗換えてロイク(Leuk)で下車、ポストバスに乗り換えロイカバードへ。ロイカバードは高さ900mの絶壁に囲まれたスポーツと温泉の村。ここを訪れる80%以上の人がスイス人で、たくさんの公共温泉と療養のためのクリニックがあり、夏のスポーツはハイキング、ロッククライミング、フィッシング、ゴルフ、テニスなど、冬のスポーツはそりすべり、スキー、ボード、カントリースキー、ハイキングなどが楽しめる。

そびえ立つ岩山の絶壁に囲まれるロイカバード

スポーツで汗を流したあと、温泉でゆっくりリラックスするのも気持ちいい。ブルガーバードというロイカバード最大の公共温泉は背後にゲンミ峠の絶壁が迫っていて風景も楽しめる露天泡風呂、洞窟風呂、25mの屋内、屋外プール、ウォータースライダー、マッサージ、エステ、サウナなどあり一日中楽しめる。

設備充実の公共温泉、ブルガーバード

また、雰囲気が落ち着いたリントナー・アルペンテルメという公共温泉はアダルトオンリーでローマ調で豪華な雰囲気で、ゆっくり疲れを取るのも良い。

優雅な温泉 リントナー・アルペンテルメ

今回宿泊したホテル、レジーナ・テルメは温泉設備も整う4つ星ホテル。部屋からバスローブを羽織り、気軽に温泉を楽しめるのがうれしい。

レジーナ・テルメの温泉

レジーナ・テルメの室内

レジーナ・テルメのロビー

ロイカバードからロープウェイに乗って約5分、ゲンミ峠は昔はベルナーオーバーラントとヴァリスを繋ぐ街道の一つだったところで、夏は渓谷と滝を楽しめるハイキング、冬はスキーなどが楽しめる。

ゲンミ峠の展望台からの眺め

今回はそりすべりを体験した。そりすべりは一人乗り、二人乗りとあって、ハイキングや、カントリースキーのレーンとは別に、そりすべり用のレーンがあって安心して楽しめる。ロープウェイも使えるし、初めての人も簡単に楽しめてスピードも結構でて、スリリング。体験のつもりが10回もやってしまった。

そりすべり体験

その後、カントリースキーも体験させてもらったがなかなかコツもつかめず、標高も高いため、息がかなりあがって、ぶっ倒れるかと思ったが、最高の雪質の中でスキーを楽しむことができて、とても楽しかった。

スイス名物料理 ロスティ

世界遺産のアレッチ氷河を見に行こう ~リーダーアルプ~
ユングフラウを源とするアレッチ氷河は長さ23キロでヨーロッパ最大で世界遺産。澄み切った空気とサラサラの雪、穏やかな陽の光がまぶしい。ここはヴァレー地方4000メートル級の名峰リーダーアルプ、ベットマーアルプ、フィーシュ・エッギスホルンを擁するアレッチ地方。展望台はいくつもあるので、ロープウェイでさらに上に上がるとヴァレー地方アルプスの絶景が広がる。その後ハイキングや冬ならスキーやボードを楽しむのも素敵だ。

モースフルーから眺める世界遺産のアレッチ氷河

リーダーアルプへの行き方は電車でメレル駅に下車し、そこからロープウェイに乗る。今回の滞在はリーダーアルプのアートフラーホテル。このホテルグループはリーダーアルプにいくつものホテルがあり、まずアートフラーリゾートは3つ星棟と、4つ星棟、4つ星スーペリア棟がありバジェットに合わせて選ぶことができる。ヨーロッパで一番標高が高いゴルフ場と隣接しており、プールやサウナを使うことができる。リーダーアルプのロープウェイから徒歩10分。個人客はホテルの電気自動車でスーツケースを運んでくれる。

アートフラーホテルの4つ星スーペリア棟の室内

アートフラーホテルの4つ星スーペリア棟のレストラン

ウェルネスリゾートアルペンローゼはリーダーアルプのロープウェイから徒歩3分の距離にあり、レストランも2つある。ここのイタリアンはピザもリゾットも絶品!ゲレンデのすぐ目の前に広がるので、スキーヤー、ボーダーにとってもありがたい。

目の前に広がるゲレンデ

この地域はリーダーアルプ、ベットマーアルプ、フィーシャーアルプの3つの村を結んで広大なひとつのスキー場は整備が行き届き、コースは全て合わせると104キロに及ぶ。スキーヤーやボーダーにすれば、これ以上ないくらい素晴らしい環境だ。
1日目はリーダーアルプからロープウェイでモースフルーへ。ここからのアレッチ氷河の眺めが素晴らしい。ここでスノーシューを装着し、いざガイドさんと一緒にスノーシューハイキングに出発!!

スノーシュー装着!

今日は天気が素晴らしい。青い空とそびえ立つ山々のコントラストが美しい。日差しが強く、雪の照り返しが強いので日焼け止めは必需品だ。スノシューを履くのは初めてだったけど、扱い方も簡単ですぐ慣れる。キラキラの光る雪の上を歩くのはとても気持ちいい。世界遺産の氷河の景観を楽しみ、冬の森の中の散歩も楽しむことができた。

スノーシューハイキング

世界遺産のアレッチ氷河の景色を楽しみながらスノーシューハイキング

2時間ほど歩いて山の中腹にあるリーダーフルカに到着。夕食はアートフラーホテルの系列のマウンテンホテルリーダーフルカにて夕食を食べる。ハイキングの後の心地よい疲れが夕食をさらに格別なものにする。

マウンテンリーダーフルカ

リーダーフルカからの眺め

ここの名物のミートパイ

すっかり日が暮れたあと、トーチに火をつけ、トーチライトウォーキングでホテルに戻る。夜の山を歩いて帰るなんて大丈夫かなぁ?と不安だったが、道もちゃんと整備されているところを歩くので危なくはなかった。夜の火を見ると気持ちが高揚したり、昔のキャンプファイヤーを思い出したり、いろんな気持ちが高まってくる。静まりかえる雪山の真っ暗な中、トーチは神聖な灯りを放っているような気がした。静かな雪道を自分が持っている火を頼りに歩いていると厳かな気持ちになる。聖者の行進ってこんな感じかなぁ。ハネムーンの方にはきっとロマンチックな体験に違いない。こんな体験ができるのもきちんと整備されたスイスならでは、のことに違いない。30分ほど歩いてリーダーアルプに到着。

トーチライト・ハイキング

スイスを列車で旅をして知ったことは、多くの4つ星ホテルがスーツケースなどの荷物を駅からホテルまで無料で運んでくれるところが多いこと。後述のライゼケベックなどと合わせて利用すると便利。またチップは基本的には必要がない。列車のパスは必需品なのはもちろん、ほとんどの山岳鉄道が半額になったり、ミュージアムが無料になったりと特典もたくさんあること。氷河特急などのシーニックトレイン以外はほとんど指定券を買わずに乗れること。スイスならではのシステムがバゲージシステムで、ライゼケベックやファストバゲージのサービス。スイス国内の駅から駅へ荷物を直送することができる。目的地まで乗り換えが多い時や、途中下車で観光しながら目的地へ移動する予定の時には、大きな荷物を先に送っておけるこのサービスはかなり便利。ただしライゼケベックは、預けた日から翌々日の到着となるので、預けるタイミングや荷物の分け方など、計画的に考えて利用しよう。料金が倍額になりますが、当日の受け取りが可能な特急便サービス、ファストバゲージも便利。女性一人旅や、移動の途中でハイキングや街歩きなどを楽しみたいときに是非利用したい。このシステムで荷物がなくなるなんてことはまずない。オリンピックが以前スイスであった時も選手はこのシステムを利用して荷物を次の目的地に送ってたぐらいだから旅行者も安心して使える。
今回スイスを旅してみて、冬でもたくさんのウィンタースポーツが楽しめることを知った。アルプスの山々はやっぱり素晴らしい。ハイカーにとって永遠の憧れだ。また、夏のスイスもいつか絶対訪れたい。そしてスイス中のたくさんのハイキングを楽しみたい。こんな夢は老後までとっておくことにしよう。
2013年3月 辻

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