チューリップと運河とモンサンミッシェル、オランダ・ベルギー・フランス3カ国列車の旅

チューリップと運河とモンサンミッシェル、オランダ・ベルギー・フランス3カ国列車の旅


4月の中旬、オランダ・ベルギーやパリにまだ少し寒さが残る頃、この3つの国を列車で巡る旅をする機会がやってきた。アジアや中東とは異なり、完全フリーの旅である。ヨーロッパ初の私には少し緊張と不安があったものの、いざ現地に到着してみるとあれもこれもと行きたい所だらけで、不安で心配になっている暇などなかった。日本からヨーロッパへは様々な航空会社を使い、行くことができるが今回は深夜発のエミレーツ航空にて。深夜発は仕事帰りにそのまま出発できるので便利である。往復ともにドバイでの乗り継ぎ待ち時間はちょうど良く、待ち時間で疲れることもない。旅の始まりはオランダのアムステルダムから。アムステルダムのスキポール空港は鉄道駅が空港に直結しており、中央駅までは約20分ほど、滞在のホテルはアムステルダムライ駅(中心部から少しはずれた郊外)のそばだったのだが、空港から列車でたったの10分だった。



郊外といっても駅の近くで列車だけでなく、中心部までのトラムも頻繁に走っているので、決して不便ではない。

アムステルダムの中心部は歩いて観光できるくらいの範囲なので、効率よくトラムを使ったり、お店が立ち並ぶ場所は歩いて観光するようにしたい。
アムステルダムは地図で見るとわかるように市内中心部は扇状に運河が流れており、道を少しはずれるとすぐに運河があらわれ静かな生活が垣間見れる。お店やレストラン、見所が中心部に集まっており、市内はトラムもたくさん走っているため人は多いのだが、移動しやすいし歩きやすい街と言える。またアムステルダムは花屋やカフェが多くカラフルでかわいらしい街という印象だった。





オランダと言えばチューリップ。だが、町の中心にチューリップ畑があるわけではない。スキポール空港からバスで約30分で花の公園で有名なキューケンホフまで行くことができる。

いろいろな種類のチューリップや他の種類の花が大きな庭の中にまとまって植えられていて、一つの場所に同じ色の同じ花が並んで咲いている様子に魅了される。チューリップの咲く4月~5月初旬にはかかせない観光地なのでぜひ足を運んで自らの目で色とりどりのチューリップ畑を見てほしい。



そんな花と運河の町、アムステルダムを後にして次に向かうのは、アムステルダムから列車で約1時間の町、デルフト。何が有名かというと、フェルメールとデルフト焼き。有名ではあるもののあまりデルフトという町の名前を聞いたことがなかったので、日本人観光客が少ないのではないかと思っていたが、すれ違う日本人観光客は意外と多く驚いた。小さな町なので、それぞれ観光スポットまでは徒歩で行くことができる。




観光客でわいわいがやがやという町ではなく、朝から夜まで比較的静かな町で、運河沿いの道や中心部のお店が並んだ通りも一日中のどかな雰囲気なのである。フェルメールというのは有名な画家の名前で、この世に残した作品が数少ないことで有名だが、このデルフトはフェルメールの生まれ育った町であり、町を歩くとあらゆるところにフェルメールの作品を見ることができ、フェルメールが地元の人にどれだけ愛されているのか、よくわかる。今回私が滞在したデ・コープハンデルホテルにも部屋の中や廊下にはフェルメールの作品の1つが大きくコピーされ壁にかかっていた。ホテルの部屋は広々しており、シャワー室・洗面台もゆったり使える広さで、快適に過ごすことができた。




デルフトの次に目指すのはベルギーのブルージュ。デルフトからブルージュまではベネルクスパスを使って1~2回乗り換えることで簡単に行くことができる。ブルージュも運河の町である。しかし、デルフトとはまた違う風景が広がっていた。


水の都と言われるだけに町にはたくさんの橋がかかり、中世の景観がそのまま残った美しい町である。そんな水の都であるブルージュに来たからには、やはり運河クルーズを体験していただきたい。町の中心を流れる運河をクルーズすると、歩いて観光している時とはまた違う印象やブルージュの良さを発見できる。家の形も良く似ているが、よく見ると少しずつ異なり住みたくなるかわいらしい町だ。


ブルージュからブリュッセルに戻り、ブリュッセルでの観光といえばグランプラスは外せない。グランプラスを訪れた日はずっと雨で、広場は人数が少なく、晴れの日に開催される花市も見ることができず残念だったのだが、それでも広場を囲むギルドハウスには圧巻され、感動した。



グランプラス周囲にはレストランやお店がたくさん並び、どのお店も可愛らしいので、2~3時間は時間をとり、じっくり観光したい。


また2年に1度開催されるフラワー・カーペットの開催が今年の8月にあたるので、開催日に合わせて旅行を計画するのも良いと思う。
次はブリュッセルからパリへ、タリスに乗って移動する。タリス内は快適でゆったり列車移動をすることができるが約1時間半ほどでパリに到着してしまう。

さて、パリでの観光はルーブル博物館や、エッフェル塔、凱旋門など行ったことがある人も多いのではないかと思うので、省かせていただき、今回注目すべきはパリから列車とバスを乗り継いで1泊2日で個人でモンサンミッシェルを観光するスケジュールである。1日日帰り観光など、たくさんの旅行社がツアーを組んでいるかと思うが、自身で列車とバスを使い、更に日帰りではなく、1泊するというのは新しくまた“旅”をしている感覚になった気がする。列車とバスを乗り継ぐと聞くと、なんだかややこしくて難しそうな気がするが、実はとても簡単なのである。

パリからレンヌまでTGVを利用して移動することになるが、列車やバスは乗ってしまえば着くのを待つだけなので、列車を降りてバスに乗るまでの間だけ少し移動しなければならないのだが、レンヌ駅の出入り口のすぐ横にモンサンミッシェル行きのバスが発着するバスターミナルがある。


休憩所に入れば、待合室のようになっており、チケットカウンターやバス出発の電光掲示板がある。そこでバスのチケットを買って、バスに乗り込むだけとなる。

帰りはモンサンミッシェルからのバスに乗るときに直接ドライバーからチケットを買い、レンヌ駅まで乗るだけ。レンヌ駅に到着後、指定の列車に乗ってパリに帰るという流れである。パリ~レンヌ間の列車と、レンヌ~モンサンミッシェル間のバスのスケジュールは上手く乗り継げるように、組み合わされており非常に便利だった。
さて、モンサンミッシェルの1泊滞在だが、日帰りの観光とは異なり、モンサンミッシェルの隅々まで観光することが可能になり、ライトアップや日帰りの観光客が帰った後と早朝のひっそりした島内は1泊滞在することで味わえる。



全体を眺めたいなら対岸のホテルに滞在するのが良いのだが、島内のホテルに滞在すると夜遅くまで島内を散策することができ、家の中の明かりや玄関のドアの小さな明かりで照らされる島内は幻想的で雰囲気がとても良いので特におすすめ。モンサンミッシェルまで行くのなら、日帰りではなく是非1泊は滞在してほしい。


オランダのアムステルダムから入り、ベルギー・フランスと列車でまわってきたのだが、ヨーロッパ間の列車の移動がこんなにも簡単だったとは今回旅するまでわからなかったし、デルフトやブルージュなど、運河の町で都会のような人の多さで疲れることなく、のんびり滞在し、運河の町独特の雰囲気を充分に味わえたことは、非常に良い経験となった。お店やレストランが並び、たくさんの人々が行き交う都会の町も大好きなのだが、ヨーロッパの田舎町でゆっくり時間が流れる感覚を味わいながら、滞在する旅を次もしたいと思った。



2012年4月 栗山

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