スロバキアといえば・・・?と考えて、首都のブラチスラバは浮かんでくる人もいるだろうが、有名な観光地は?有名な料理は?何があるの?と、感じる人も多いだろう。北海道の5分の3ほどの大きさの国土は山に囲まれ、自然豊かな国家である。初夏の陽を浴びて美しく輝く森、そして川、素朴な生活を垣間見ることができた。
<首都ブラチスラバ>
ウィーンから列車で約一時間。オーストリアの首都からあっという間に隣国スロバキアの首都に到着した。中央駅には荷物を預けるところがあったので、スーツケースを預けて、身軽になって旧市街へ出かけた。バスかトラムで行こうとしたのだが、どれに乗ったらいいのかわからず、バス停付近にいた若者に聞いてみたところ「旧市街だったら歩いて行った方が近いよ」といわれたので、それに従って歩き始めた。地図を片手にふらふらと歩いていると、10分くらいして旧市街のはずれに到着。ガイドブックに出ていた通り、小さい旧市街は大変美しい街並みで、20分くらいうろうろしていたらあっという間にブラチスラバ城のふもとまで来ていた。街の中にはあちこちに面白い像があって、ついついカメラを向けてしまった。
ブラチスラバ城は高い丘の上にあるので、お城の前からドナウ川、旧市街を一望することができる。
丘を下り再び旧市街の中心部に戻ってくると、ちょうどお昼の時間だったので、スロバキア料理を賞味するべく、声をかけられたオープンカフェに入ってみた。お店のおじさんにオススメを聞いて頼んだのがこれ。
スベチコバというメニューで、やわらかい蒸しパンと豚肉のソテーにクリームのソースがかかっている料理だ。かなりボリュームはあったが、歩き疲れてお腹が空いていたのと、非常に美味しかったため、あっという間に食べ終えた。
次の電車までまだ時間があったので、再び市街地を散策。とにかく美しく、どこを切り取っても絵になる街であった。
<バンスカー・ビストリツァ>
ブラチスラバから列車で3時間半の中部の中心都市である。鉄道駅から中心地までは歩いて15分程度。旧市街はスロバキア民族蜂起広場(SNP広場)を中心とした狭い範囲ではあるが、やはり美しい・・・ 第二次世界大戦末期、ナチス・ドイツの支配に対して、この地からスロバキア人が立ち上がったということで、スロバキアの人たちにとっても、この広場は非常に誇らしい場所であるそうだ。
<日本語ガイドの案内でスロバキアの美しい田舎を訪問>
バンスカー・ビストリツァまで専用車で迎えにきてくれて、なおかつ日本語のガイドさんがつくということで、安心して楽しむことができるのが、ファイブスタークラブのツアーの魅力である。
○ フロンセック村
世界遺産に登録されている木造教会のある小さな村で、教会の横には管理人のおばあさんが住んでいる。以前教会の中の宝物が盗難に遭ったこともあり、常に開けているのではなく、お客さんが来る度に鍵を開け、中を案内してくれる。そのためガイドさんがいないと中を見ることはできない。中に入ると木造ならではのいい香りが漂い、今でも実際に使われている素朴で地元の人たちの信仰心を感じられる教会である。
○ クルピナ町
スロバキアの中部の山間の小さな町で、郊外の丘の上に小さな塔が建っている。オスマントルコが侵略してきた時代に造られた、火の見櫓で、今では町を見渡す展望台となっている。
○ スタラーホラ村
昔からワイン作りが盛んだった小さな村で、戦時中に防空壕として利用していた地下の穴が各家毎にあり、そこでワインを貯蔵している。ここでも村のおばあさんに説明してもらい、地元のワインも試してみる。自家製のワインは独特の風味と酸味があり、さっぱりして飲みやすい。一年中一定の気温に保たれているということで、外が暑くても、中は寒いくらいだ。ヨーロッパのあちこちからワイン好きの観光客が数多く訪れるという。
おばあさんは自分の家族の昔の写真や、お話をしてくれるので、スロバキアのごくごく一般的な家庭の姿、歴史を垣間見ることができた。
○ ブゾヴィーク村
こちらも小さな村ではあるが、修道士が昔住んでいた教会跡があり、今では残念ながら廃墟と化している。古くからあり、予想していた以上に大きな規模の教会跡で、しっかりと管理すれば貴重な歴史的財産になるのに・・・と感じた。
中に入るには村の管理人さんから鍵を借りなければいけないので、ここもガイドさんがいなければ中に入ることはできない。社会主義時代に、この中にレストランを造ろうという計画があったようで、途中まで工事をした形跡があり、社会主義時代の終焉とともに、工事は中途半端に終了し、そのまま残っている。
いずれも素朴で温かい生活の雰囲気が溢れている美しい町、村であった。自分の田舎を思い出すような心おだやかな気持ちにさせてくれる風景に、スロバキアまで来ているのを忘れるほどの、懐かしさを感じることができる。
<スロバキアの民家を訪問し、家庭料理のレッスンとお菓子作り>
オーストリアでいうザッハートルテのように特に有名なお菓子があるというわけではないが、素朴な家庭の味を教わることができる。ガイドさんの親戚の方のお宅を訪問した。既に先生であるお母さんが、準備を進めてくれていたので、エプロンをつけて早速料理教室を開始した。
教室といっても形式ばったものではなく、近所のお母さんが教えてくれるといった感じで、ガイドさんに日本語に訳してもらいながら、段取りを聞き、実際に手を動かしながら作っていく。その都度来るお客さんの好みを聞きながらメニューを決めるそうで、今回はキャベツの漬物を使ったスープと、生イースト菌を使ったパンと、じゃがいものお団子を作ることになった。前日に私がキャベツの漬物を美味しい美味しいといって、相当食べてた上に、あまり甘いものが得意ではないと伝えていたため、このメニューとなった。
先生はお子さんが5人もいるということで、さすがに手際がよく、ささっと進めていく。コンロでスープを煮立てながら、テーブルでは私にパンの生地のこね方を教え、私が生地をこねるのに夢中になっている間に、既に使わない料理器具を洗ってしまっていた。1人暮らしの私としては、料理以上にこの手際の良さが勉強になった。
日本でお菓子やパンを作るときは、軽量カップやスプーンで材料を細かく計っていたが、お母さんは目分量でバランスを見ながら材料を準備していた。おおよその量を聞きながら、ざっくり作っていくのだが、仕上がりに心配はない。さすが長年台所を守ってきたお母さんだけあって、とても美味しいパン、お団子が出来上がった。
天気も良く暖かかったので、皆で外のテーブルを囲んでのランチとなった。卒業試験を控える娘さんも一緒に、にぎやかな食卓となった。
言葉は通じなくとも、同じ料理を食べ、同じ時を過ごすということで共通意識が芽生え、何故だか私も家族の一員になったような感覚を楽しむことができた。特に急いで観光しなければいけないということもないので、スロバキアのビールを飲んで話したり、ガイドさんのお子さんと一緒に遊んだり、1日のんびり過ごさせていただいて、こういう旅もいいなぁと実感した。スロバキアの田舎は素朴で本当に美しいので、主要なヨーロッパの国々を大体まわったかなという方には是非オススメしたい。
2012年5月 倉田