一度でいいから見てみたい、ずっと憧れだったサグラダファミリアをついにこの目で見る日がやってきた。そう、今回の行き先は情熱の国、スペイン。かの有名なガウディ建築、白い壁が美しい村々、美食、バル巡り・・・行きたい所、見たい所、食べたいものが満載の国。フランスとの国境近く、サンセバスチャンからバルセロナ、グラナダ、そしてマラガへとスペインをぐるっと半周する旅が始まった。
フランスを鼻先に望むサンセバスチャンは美食の街として有名。ここバスク地方は今でもバスク語が話され、街中にはスペイン語、バスク語、ときにフランス語が入り混じり独特な文化が今なお残されている。この地方には昔から男性が集まって自分たちで料理を作って食べてお酒を飲む、「美食クラブ」なるものがある。もともと、コワイ奥さんから逃れて男たちがこっそりおいしい物を食べたり、お酒を飲んだりしていたのが始まりといわれている。私は、今回この美食クラブの先生からスペインの郷土料理の講習を受けてきた。
まずは、メルカード(市場)にて食材選び。
今回作る料理は3品。イカ墨パエリア、メルルーサ(白身魚)のグリーンソース、そしてピンチョスだ。レシピは全て先生の頭の中にあるそうで、その場で色々なアレンジをしてくれた。たまにつまみ食いをさせてくれるものがすごくおいしい。
先生の手つきはさすがプロで、たまねぎのみじん切りの細かさといったら、私が切っているものとは比較にもならないほどだった。楽しくおしゃべりをしながらいつの間にか、本当にいつの間にか料理が完成していた。私は足を引っ張ってばかりだったけど、先生のお陰もあって料理はとてもおいしかった。
そして、スペインでの楽しみの一つにバル巡りがある。女子一人でバルを巡って飲むというのは、かなりハードルが高いかのように思えたが、やっぱりスペインに来たらバル巡りはかかせない!勇気を出して踏み込んでみた。慣れとは恐ろしいもので、旅の中盤にもなると、ひとりで入ることに何のためらいも無くなり、日に4~5軒周り歩くまでになっていた。
スペインのバルはカウンターにピンチョスがずらりと並んでいる。それぞれ3ユーロ前後でお酒をカウンターで飲めばチップもかからず、かなり安上がりに飲むことが出来る。ピンチョスが並ぶ様はまるで、デパ地下のお惣菜コーナーを物色するようで楽しい。そして周りの人々も小皿料理とお酒を片手にサッカーを見たり、おしゃべりをしたり。基本的にバーカウンターは立ち飲みなので、サッと入ってサッと出やすい。こちらの人は3~4軒は周って飲み歩くのだという。私はこの日は、2軒が限界だった。
翌日サンセバスチャンからバルセロナへ。
バルセロナはあの有名なガウディの街。私の旅の個人的ハイライトだ。
なぁーーんて素晴らしいんだ、ガウディ建築!建築のことなんてサッパリな私でもその奇想天外さに魅了されてしまった。頭の中を開いてみてみたい。どうしたらこんな形、こんな色合いを思いつくの!?頭の中、超ファンタジー!!と、終始ガウディへの賞賛の言葉が心の中で飛び交っていた。
国内線を利用して、バルセロナからグラナダへ。グラナダはスペインといえば、、、で思い付くものが凝縮している。フラメンコが盛んだし、闘牛の生まれた場所でもあるし、白い村がいくつもある。まずはアルハンブラ宮殿。イスラム様式の宮殿を見ていると自分が今ヨーロッパにいるとは思えなくなってくる。花が咲き乱れ、繊細な彫刻の施された宮殿内部はとても幻想的だ。※アルハンブラ宮殿のチケットは当日だと売り切れている可能性があるので、インターネットで早めの予約がお勧め。
スペインでいろいろとバル巡りをしてきたが、ここグラナダのバルが一番のお勧めスポットだ。この地方のバルは飲み物と頼むと無料でタパスが付いてくる。タパスは無料だからといって侮ってはいけない。たまにはハズレもあったのは事実だが、どの店もいろいろと工夫をしていておいしかった。アルコール類もわずか2~3ユーロなので、財布にも優しい。
そして夜はタブラオへ行ってみた。タブラオとはフラメンコを見ながらお酒を飲めるところのことだ。ダンサーが意外とご高齢の方だったので驚いた。
そしていよいよパラドール!パラドールとは、昔のお城や、修道院などを改修した国営ホテルのことだ。とても重厚な雰囲気で、中世の香りが漂う。いろいろな地域にパラドールは存在するが、私が泊まったのはカルモナのパラドールだ。あと1ヶ月もすれば、周りに何ヘクタールものひまわりが咲き乱れるそうだ。
この白い村、カルモナは道がとても入り組んでいて迷路のようだった。周りは見渡す限りひまわり畑の平原で、突如浮かぶようにこの白い村が存在している。
アンダルシアの白い村巡りはここからが本番。私は1日でサアラ・デ・ラ・シエラ、グラサレマ、ロンダ、ミハスの村を周った。もちろん専用車で、だ。公共交通機関を使ってこれだけを1日で回るのはまず無理だろう。各都市間はバスが1日に数本程度だし、場所によってはバス停から村までさらに乗継ぎが必要なところもある。効率よく専用車を使うのが旅のポイントだ。
一日に4箇所も白い村を周ったわけだが、それぞれに特徴があって興味深い。ロンダの村は断崖絶壁に張り付くように村が存在している。サアラ・デ・ラ・シエラは湖との対象がきれいだし、グラサレマは山と青空と白い村のコントラストが絵になる。中でも一番規模が大きい街がミハスで、小高い丘からはエーゲ海が一望できる。ここではロバのタクシーが有名。名物になっているのだが、現在ロバのタクシーで街の中までは行ってくれない。馬車は街中を周ってくれるので雰囲気を味わえるのは馬車かもしれない……。
9日間でスペインの見所を一気に駆け抜けた。バルセロナのような都会から、なかなか行く機会が無いであろう田舎の街までいろいろなスペインを見ることが出来た。色鮮やかで、芸術的な街並みがとても印象強く残っている。一人でこんなに楽しいのだから、誰かと来たらもっと楽しいんだろうなぁ。今度は誰かと一緒にバル巡りをしたいものだ。
2012年4月 久保井