お店やチケット売り場で、お客も店員もお互いにまず「モルゲン(モーニング)」「ハロー」と挨拶をする。帰るときや出て行くときは「チュス(バイバイ)」。そんな挨拶が、自分が旅行者であることを忘れさせてくれる、とても居心地の良いドイツ。日本では、他人との関わり合いが希薄になってきているが、やはり挨拶は気持ちの良いものだと改めて感じた。そんなドイツでの旅を振り返ってみる。
今回、ベルリン→ポツダム→ドレスデン→ローテンブルク→ホーエンシュバンガウ→ミュンヘンとまわったのだが、特にベルリン・ポツダム・ドレスデンについて書くことにする。
激動の首都 ベルリン
ベルリンテーゲル空港に到着。5月の半ばで、日本を出た時は初夏を思わせるほどの陽気だったが、一転、肌寒い。
空港から市内は10kmも離れておらず、バスも何路線か乗り入れているので、市内へは簡単に出られる。空港の案内所で市内交通の地図をもらうつもりだったが、たくさんの旅行者が列を作っていたので、ここでは諦めてとりあえずホテルの方角へ行くバスに乗り込む。ドイツは旅行者でもバスに簡単に乗れ、快適に移動できる。駅前の交通連盟(BVG)案内所で路線図をもらいホテルまでの行き方を訪ねると英語で丁寧に教えてくれた。ドイツでは皆ほとんど英語を話すので、不自由なく旅ができる。
ホテルに着くと、たまった時差であっという間に眠りについた。
翌日、まず、ホテル最寄りのUバーン(地下鉄)駅で1日乗車券を買う。今日はベルリン観光と、近郊のポツダムまで足を延ばすが、この1日乗車券で全てカバーできる。(ポツダムを含むゾーンに有効なチケットを選ぶ必要があるが、一番狭いゾーンのものと値段は0.40ユーロしか変わらなかった。)
ベルリン中心部は、近代的な建物が昔の建物と調和し整然とした都会的な街並みをしている。ポツダム広場付近には、ベルリンの壁跡が通っており、社会科見学の小学生たちが熱心に先生の説明を聞いていた。実際ここに壁があったのだと思うと、なんだか緊張した。
ウンター・デン・リンデンを歩いたりバスに乗ったりしながら、ブランデンブルク門、ベルリン大聖堂、ベルリンテレビ塔と観光。見どころはたくさんあるがあまり時間もなく駆け足で巡ることに。
その後は、東駅近くのイーストサイドギャラリーへ。ここには壁が残してあり、その壁面には世界各国のアーティストが絵を描いている。今では“ギャラリー”という名の通り、カラフルな絵が並びいろいろな絵が鑑賞できるが、これが一面灰色の壁だったことを想像すると・・、平和の尊さを改めて感じた。
宮殿と庭園の古都 ポツダム
ポツダムへはベルリンから列車で約30分なので、気軽に足を延ばせる。
ポツダムの市内交通もベルリンの1日乗車券で利用できるので、ラクラク。ベルリンとともに、その宮殿群と公園群が世界遺産に登録されているポツダム。巨大な美しい公園の中にあるサンスーシ宮殿へバスで向かう。外から見ると宮殿自体はそれほど大きくないが、その内部は華麗な装飾を施した数多くの部屋が並び、優雅な気分に浸れる。広大な公園には緑が生い茂り鳥やリスが生活しており、ちょっとした森である。自転車で通っていく学生やウォーキングをする人々もいて、ポツダムの人々の憩いの場でもある。
ポツダムといえば、“ポツダム宣言”しか思い浮かばなかったのだが、そのポツダム会議の開かれたツェツィーリエンホフ宮殿へは、時間がなく行けなかったのが少し心残り。
ポツダムのブランデンブルク通りは小さい通りながら歩行者天国になっており、カフェや洋服屋や食料品などの店が軒を連ねており、のんびり歩いての散策も楽しめる。
晩ご飯にはヨーロッパの春の味覚白アスパラガスをいただいた。オランデーズソースのかかったホカホカのアスパラはみずみずしくて1日の疲れが癒された。
美しいエルベ川の町 ドレスデン
ベルリン中央駅からドレスデンへ列車で移動。ベルリン中央駅はプラットホームが複数階にあり、お店も様々フードコートもあるきれいで大きな駅である。食料を買い込んでホームへ下りると、けっこうな人がすでに待っている。私が乗る予定にしている列車はドレスデンを出た後、プラハ・ブラチスラバ・ブダペストなど、東欧の主要都市をつなぐEC(ヨーロッパ都市間特急)なのである。私はジャーマンレイルパスを持っていたが、それには座席指定料は含まれないので、別途指定席(4.50ユーロだった)を取ることをお勧めする。
草原の黄緑や菜の花畑の黄色の続く風景を次々に駆け抜けて、2時間半弱でドレスデンに到着。ホテルにチェックインをして荷物を置き、旧市街へ向かう。ドレスデンは“エルベ川のフィレンツェ”と称される川沿いの町、ぜひそのエルベ川を遊覧する船に乗ってみようと決めていた。ドレスデン中央駅前からトラムに乗りアルトマルクト広場前に着き、観光客でごった返す観光案内所でエルベ川遊覧船のちらしを入手。チケットは直接エルベ川沿いの船着場で買うというので、早速川の方へ向かう。着いてみると、ちょうどその日の昼間の部の遊覧船最終便が出航するところでギリギリ乗ることができ、ボッボーという汽笛とともに出航した。この蒸気船遊覧は170年あまりもの歴史があり、世界最古の蒸気観光船だという。蒸気の力で船の左右についているプロペラのような形のパドルを回して進んでいく。エルベ川の風が冷たかったが、河畔に見える教会やオレンジ屋根の家々がとても可愛らしく、ゆったりと観光できた。こんなに寒い船のデッキでも、ドイツの方々は冷たいビールを片手にクルーズを楽しんでいた。
船着場に戻った後、もうひとつのお目当て、ゼンパーオペラ(ザクセン州歌劇場)へ向かう。オペラを見る、のではなく(もちろん時間があれば見たかったが)、不定期にやっているという内部見学ツアーに参加したかったのだ。しかし、残念なことに・・すでにその日の最終ツアーは終わった後であった。。見学者の出てくる出口から中をのぞいたが、華麗な天井画や装飾が少しだけ見え、中はどんなにすごいのだろうとますます残念であった。
すぐ隣りにはツヴィンガー宮殿とドレスデン城があり、内部はザクセン王家の財宝コレクションがずらりと並んでいる。じっくり見ているとかなりの時間がかかりそうだが、ドレスデン滞在が半日ほどで閉館時間ギリギリだった私はそそくさとその場を後にしたのであった。
ドレスデンの旧市街は、歩いて回れる範囲に見どころがあり、中世の趣きを感じられる町並みがとても魅力的なところであった。観光用の馬車で回るのも雰囲気があり楽しめるであろう。
ドイツは連邦都市が集まってできた国だけあって、それぞれの都市が魅力的な特色を持っている。旅をしやすい国でもあり、今回行けなかったほかの地方もまた訪れたい、そう思わせてくれた。
2010年5月 中島