フランス。誰もが憧れ、いつも“行きたい国ナンバー1”の座を他に譲らない国。私は今まで40近くの国に行ってきたけど、なんでフランスに今まで行かなかったのだろう?なんとなく、観光客が多くて、ありふれた旅行先で、観光客に不親切で、そんな魅力的ではないのではないか・・・・と勝手に心のうちに思ってた。でも、今回の旅行でそんなネガティブなイメージも180度変わってしまった。やっぱり、多くの人が訪れるにはそれだけの理由があったのだ。そんな風に思った旅の話を書こうと思う。
今回の旅行は南仏から入り、ドイツ国境近くのアルザス、それからロワール、パリ、と見事なまでにフランスを縦断するルート。
ニース近郊にはなんともかわいらしく小さな村が点在している。そんな村々を訪ねるツアーに参加した。日本語ドライバーさんが連れて行ってくれるので、言葉の心配もなくとても安心。途中、沖縄の全日空ホテルのモデルとなった高級マンション、カーニュシュシュルメールという村を車窓から見学し、アンティーブに到着。小さい村だけど旧市街は花が咲き誇るかわいい村で、ピカソ美術館もある。こんな村でゆっくり滞在するのもいいなぁ、と思う。ニース、カンヌもそうだけれどたくさんのクルーザーが海岸にひしめき合って並んでいる。小さいものでも軽く1000万円はするそうで、イギリスや他国から休暇を楽しむためにくるのだというから世の中には時間とお金のどちらも持つ人がこんなにいるものか、と唖然とさせる光景だった。次に訪れたカンヌは映画祭で有名なのでその会場にも訪れた。 有名なスターの手形が会場の前の石畳に敷き詰められているが、みんなをふっと笑わせてしまうのがミッキーマウスの手形だった。 残念ながら、レッドカーペットはそのとき敷かれてなかった。カンヌは高級リゾート地で海岸沿いのクロワゼット大通りには高級ホテル、高級ブティックが建ち並ぶ。ニースの割と庶民的な雰囲気とは対照的だ。カンヌで海の幸を堪能した後にいくつかの村を車窓で横切り、次に訪れた村は一番のお気に入りの村、スミレ村トゥーレットシュルルーで、ゆっくり周っても30分はかからないひっそりとした村なのだけど、石でできたおうちに大きな木の扉、どの家も花がいっぱいで、小さな路地の階段、玄関前のかわいいランプ、 どこをみてもカメラにおさめたい、と思ってしまう。この村名物、スミレアイスクリームを残念ながら食べ損ねてしまった。大失態。こんな静かなかわいい村で老後を過ごしたい・・・と思ったのは私だけではないはず。
次に降り立ったのはヴァンスのロザリオ礼拝堂で、画家マティスが制作し、内部は美しいステンドグラスと彼が書いたキリストと聖母マリアの絵が壁いっぱいに描かれている。絵心のない私からするとマティスの絵は残念ながら落書きにしか見えない。かの有名な巨匠が描いたとのことだそうだが本当に理解できません。申し訳ございません。絵心のある方にはきっと必見なのだと思う。
最後に訪れたサンポールは芸術家たちの間で口コミ(?)で広がりたくさんの芸術家が住んでいた村。シャガールやマティスも住んでいたそう。すごしやすい気候で、絵心のない私ものんびり絵でも描いてみたい、と思わせる美しい風景、町並みがそこにはある。そりゃ芸術家たちが集まるよなぁ・・・。そんな芸術村にはたくさんのアートギャラリーが並び、美しいサンポール村を描いた絵を売っている。ふと足をとめた画廊で、鮮やかな海と白い村を描いた絵を一つ購入。 「僕が描いたんだよ、気に入った?」と店主さん。「うん、とてもきれいだね。」というととても嬉しそうにニコニコしていた。その絵は我が家のリビングに早速飾らせてもらった。 (日本で額を買ったが、フランスとは規格が違うらしく、いろいろ加工して絵よりお金がかかった・・・)その絵は味気ない我が家に南仏の太陽の鮮やかさを与えてくれる気がする。絵心がないなりに旅の思い出として買ってよかった。
ニースにきたらビーチでのんびりやモナコに行くのもいいけど、こんなかわいらしい村々もあるので是非行ってみてはいかがでしょうか?
次に向かうのはアルザス地方、コルマール。ニースから寝台列車に乗り込んだ。勝手な思い込みできっと食堂車があるだろう、と思ってたが、車掌さんに「マンジェ、マンジェ」と聞いてみたところ食堂車はないらしい・・・。あーこんなことになるなら飛行機の中で日本で買ったおかきを全部食べるんじゃなかった・・・と後悔がよぎる。がっかりした顔をみて車掌さんが同情してくれたらしく、たくさんの飴を恵んでくれた。 ありがとう!!なぜか停電?が多く、電気がしばらくつかない状態になることが多かったので、 小さな懐中電灯があると便利かもしれない。 寝る前は4人部屋の室内に誰もいなかったが、 どうやら寝ている間にお客さんが増えたらしく、どのベッドも埋まってた。
まだ薄暗い中、コルマールに到着。半袖で過ごせるニースとはうって変わってひんやりしている。周りはコートやジャンバーを着ている。急いで上着をスーツケースから取り出す。バスでウンターリンデン美術館前まで行き、そこから歩いてホテルに到着。
この日はアルザスワイン街道巡り。ワイン街道はおよそ170キロで、この間にワイン造りで有名な村がずらりと並び、どの村も絵本のようにかわいらしく、ワイン好きにはもちろん、そうでない人でも楽しめる。半日でオークニクスブール城、リクヴィル、リボヴィレに訪れるツアーに参加した。同乗したのはオーストラリア人のご夫妻で、英語も日本語も堪能なジョンさんが案内してくれた。ジョンさんはワイン街道の歴史、ワインの説明はもちろん軽快なジョークを飛ばしながら車内を盛り上げてくれる。 まず、最初にオークニクス城を訪れた。 このお城はロワールにあるような優美な豪華なお城ではなくて堅固な要塞で、標高755メートルの山に建っていて、 城からはブドウ畑が見渡せる。内部も当時の様子が再現されていて部屋のシャンデリア、家具、甲冑、砲台もあり、なかなか面白い。日本の城でいうと姫路城を観光している感じだ(と思う)。
次に訪れたリクヴィルはアルザスらしい伝統的な家並みがとても美しく、まるでおとぎ話の中に訪れた気分にさせてくれる。クリスマスに訪れるのもいいそうだ。
次に訪れたリクヴィルではまず最初にワインの試飲のオプショナルとして参加した。同行したオーストラリア人夫妻はワインに詳しいようで、ブドウの名前や何年ものか、ということをとても興味深そうに聞いている。ジョンさんも「まず舌の両側で味わって、それから飲んだあとの味わいがさわやかで・・・」と説明してくれるのだが、ワイン通ではない私にはわかるようなわからないような・・・。アルザスのワインは白ワインがほとんどでドライなものが多い。どれもとてもいい香りがする。ご夫妻は3本ご購入、私も気に入ったワインをお土産として2本購入した。試飲は全部飲み干さなくていいのだけど、ほとんど飲み干していた私は何種も飲んだせいで、その後のリクヴィル観光は千鳥足での観光となってしまった。街から街の移動の間もブドウ畑が広がり、私の訪れた10月初旬はまだ収穫が行われる前で緑のぶどう畑が美しい。
宿泊したコルマールは戦災から逃れ、この地方独特の木組みの建物や石畳の道など、ルネッサンス時代の街並みが残っている。その中の一画、プティットベニスはベニスを思わせる素敵な散歩道だ。乗った小船の運転手はモロッコ出身で、私がモロッコに行った話をするととても喜んでいた。街を周る観光汽車にも乗ったが、童心に返るようでとても楽しかった。ワイン好きもそうでない方もこの愛らしい町々に是非来てください!
次に訪れたのはロワール地方。トゥールに宿泊し、翌朝古城巡りのツアーに参加した。ロワールにはロワール川に沿って多くの古城が点在している。それぞれアクセスが難しいところにあるので、ツアーに参加するのがベスト。まずシュノンソー城に訪れた。16世紀の創建以来19世紀まで、代々の城主が女性だったことから「6人の女の城」とも呼ばれる。その中で正妻と側室の愛憎劇も繰り広げられたそう。それぞれが自分の庭を造っていて、そのすばらしい庭を比較するのも楽しい。その次にアンボワーズ城に訪れた。1496年、イタリア遠征時にイタリア文化に魅せられ、イタリアから画家、建築家たちを呼び寄せ作ったそうだ。この城からはロワール川や清楚なアンボワーズの町が見下ろせる。
トゥールの町へ戻り、午後、城ホテルに宿泊するために列車に乗り込む。アンジェで乗り換えショレ(CHOLET)という駅へ。そこからタクシーに乗ること10分強、厳かな雰囲気を漂わせるシャトーコルベールに到着。17世紀の建築様式と中庭、大理石の暖炉、かつて女中が住んでいたであろう屋根裏部屋、全てがこのシャトーの気品と伝統を感じさせる。公園に面したテラスからの眺望も格別。面白いのが、日本庭園があるところ。このホテルに訪れるのはフランス人はもちろん、近隣のヨーロッパの国からで、忙しい都会の喧騒を逃れ、豊かな自然、洗練された料理を楽しむために来るのだそう。格調高いダイニングは宿泊客はもちろん、ウェディングパーティーも催されるそうだ。ディナーも味はもちろんすばらしかったのだが、細やかな気遣いを見せるサーヴィス、スタッフの笑顔もとても素敵だ。この料理にはこのワインがいいよ、このチーズとこれはお勧めだよ、といろいろアドバイスもくれる。 今回一人できたのだが、夕食はゆったりとしたペースで2時間くらいかかる。本来、誰かときて、食事とともに雰囲気、会話を楽しむものだろうが、一人の場合、どうも手持ちぶさただ。料理が来る間、パンでワインをちびちび飲んだり、人間観察をしたり、ぼーっとしたり・・・ 一人でフランス料理を楽しむ正しい方法をどなたか教えてください。お料理はとてもおいしかった!飾りつけと濃厚なソース、だし(?)が深い味わいを醸し出し・・・セボン!ブラボー!と心の中で叫んだ。お部屋はいくつか種類はあるが私が泊まった部屋はかわいらしい、カントリー調のお部屋。他には古城めぐりで訪れたようなお部屋もあるのでカテゴリーアップしてみてはいかがでしょうか。
翌日、視察で訪れたシャトー・ド・トランブレは19世紀に建てられたシャトーホテル。花崗岩で作られた立派な階段、壮大なカーテンで彩られたラウンジ、12エーカーもある広大な庭、温水プール、湖の眺め、全てがロワールに来たことを実感させてくれる。概観もなんとなくアンボワーズ城に似てるかも・・・・!城ではポニーも飼っていて乗馬、またハイキングも楽しめる。こちらもウェディングパーティーを催すこともしばしばあるそうだ。こちらでいただいたランチの味も格別!気さくなスタッフもとても親切。
シャトーコルベールもそうだが、夏とクリスマスに近くで“PUY DU FOU” という大掛かりなテーマパークがオープンするそうで、その時期は家族連れで賑わうそうだ。
パリも面白いけれど、やっぱり小さな村を訪れたり、古城ホテルに泊まったりしたのがとても楽しかった。フランス人はなんとなくクールなイメージがあったけど、私は運がよかったのか、私が出会った人は親切な人が多かった。そして明るい。また、いつか違うフランスの一面を見に行きたい、と思った旅でした。
2009年10月 辻