『死者の日』に来てしまった ~メキシコ~

『死者の日』に来てしまった ~メキシコ~

典型的な死者の日の飾り「死者の日」は、毎年10月31日〜11月2日に行われるメキシコの伝統的なお祭りです。よく、「日本でいうとお盆みたいな日」、と説明されていますが、「死者の日」という名前からはとうてい想像できない、いかにもメキシコらしい明るいお祭りなんです。
家族でお墓に参って、この日にあの世から帰ってくる霊をお迎えし、故人が生前好んだものなどお供えして、またあの世に送り出すというのですから、それだけ聞くと、確かに日本のお盆とそっくりですが。決定的に違っているのは、骸骨です。そう、メキシコの死者の日には、そこいらじゅうに骸骨が満ちあふれるのです。しかも、「笑うガイコツ」とでも呼ぶべき、明るくて、愉快で、楽しそうなガイコツたちが。


ところが、ボクのメキシコ行きの日程は、実はそんな死者の日とは何の関係もなく決まっていたし、ボクのガイドブックには、死者の日は11月2日、と出ていたので、ボクは実のところ、死者の日のことはあんまり意識していませんでした。「2日にはどんなモノが見られるかな~?」ぐらいにしか期待していませんでした。実際、「死者の日」というものがどんなものか何も知りませんでしたし、、、、。
ホテル エル・エヘクティーボの死者の日の飾りボクが初めて実際に「死者の日」に触れることになったのは、メキシコに着いて3日目、10月31日の朝です。早朝、テレビをつけると、頭が骸骨のマスクをかぶった女性が画面に現れました。スペイン語で言ってることはさっぱりわかりませんが、最後に「www.mexicovisit.com」と出ていたので、観光局かなんかのCMだと思いました。「ハハァ、あさってが死者の日だから、メキシコに観光にいらっしゃい、ということか」と合点しましたが、どうしてそれをメキシコ国内で流しているのか不思議です。そのあとのニュースのような番組でも、各地の死者の日の催し物を映し出していました。見ているボクは、まだ2日前、と思っていますから、去年の映像かと思って見ていました。
ところが、朝食のためにホテルのレストランに行くと、しっかり、死者の日の飾り付けをしてあります。町に出ると、軒先から骸骨を吊るしたり玄関先に骸骨の人形を座らせている家もあります。「へぇ、こんなんなんや、、、、」と感心しながらボクはバスに乗って、その日観光する予定であるソカロに向かいました。
軒先と玄関先に骸骨を飾る家 しかし、バスがソカロに差し掛かると、・・・・・・・・ムムム・・・・・・・・様子が変です。だだっ広いはずの広場に、何やらテントや門のような物でいっぱいに埋め尽くされているではないですか。それは、死者の日の催し物だったのです。

門死者の日のソカロ

張りぼての大きな門をくぐって広場に入っていくと、そこはもうお祭り騒ぎでした。さまざまな企業や自治体などの団体が、死者の日の飾りを競い合って出展しているのです。それはもう、大変な出来映えで、いろんな工夫が施されて、みんな個性にあふれたガイコツたちの飾り付けなんです。

ガイコツの騎士たちガイコツの結婚式

ガイコツの王と王妃を囲むガイコツの騎士たちがいたり、結婚式をするガイコツもいます。

巨大なガイコツ婦人と記念撮影

巨大なガイコツの淑女といっしょに記念撮影をする子供たちがいます。

今年はオリンピックがあった年だったせいか、オリンピックをテーマにした飾り付けもあります。
北京オリンピック

ボクが最高傑作だと思ったガイコツ

パン屋さんの組合かパン作りの企業なのか、なんと広場に臨時のパン焼き釜を作ってしまって、母親と子供たちを集めてパン作りの実習をしています。
パン焼き釜を広場に持ってきた

そうかと思うと、交通局は広場にレールを敷いてホンモノの電車を運び込み、死者の日の飾りにしてしまっています。(いったい、何百万円かけたんやろ?) 人々はガイコツが監視するホンモノの改札機を通って中に入っていきます。
ホンモノの電車までやってきた

バスを運転するガイコツギターを弾き歌うガイコツ

ガイコツはバスも運転しているし、ギターの弾き語りもしています。

子供たちに人気のキャラクターも、しっかりガイコツになっているし、電車にひかれて亡くなってしまったらしいガイコツは、全身、麻布に覆われているのに、足だけがやけにリアルです。
子供たちに人気のガイコツ足がリアルなむくろ

殉職消防士たちの遺影と棺にすがるガイコツこんなにいっぱいのガイコツたちの飾りの中で、ボクが1等賞をあげようと思うのは消防局の作品です。
(おそらく)殉職された消防士たちの遺影が掲げられ、その前に置かれた棺にガイコツが泣いてすがっています。棺には穴に下ろすためのロープがつながれていて、二人のガイコツ消防士がそれを握って立っています。そんなに手は込んでいないまでも、亡くなった仲間たちを悼もうという気持ちがとてもよく表れた飾り付けだと思いました。
ソカロに集結したガイコツたちを十二分に堪能したボクは、こんどは2階建てバスに乗って、メキシコシティの街に観光に出ました。バスが目抜き通りの「レフォルマ通り」を走ると、広い歩道にテントを張って死者の日の飾りをここでも展示しているのが見えます。走るバスから眺めるだけなので、一つ一つがどんなのかは分かりませんが、通りに沿ってこれでもか、というように、ずらァーッと並んでいました。人々はぞろぞろ歩きながら、その飾りを楽しそうに見ています。
一度、バスから墓地が見えました。一瞬で通り過ぎたから、写真は撮れませんでしたが、墓地にもガイコツたちがたくさんいて、いろいろな飾り付けが施されていました。「墓地」という字ヅラからは感じられない、ちょうど、そう、幼稚園の運動会のような、満艦飾です。
テオティワカン遺跡の死者の日の飾り翌日訪れたテオティワカン遺跡では、ちょっと、シックな、砂で描いたアートな感じの死者の日飾りがありました。
死者の日は、メキシコシティよりも、オアハカがもっと過激に盛り上がるという話しですし、どっかの島ではひと晩じゅうたいまつを燃やすというし、まだまだ地域ごと違う死者の日を楽しめるようですよ。
これだけいろいろ見てくると、初めてメキシコにやってきたばかりのボクにも、メキシコ人にたちには、死んだ人たちが幽霊やオバケになって、生きている人を恨んだり、ましてや襲ってきたりするようなことは、けして考えられないのだろうなあ、と、とても良く感じ取られました。きっと、日本の「牡丹灯籠」のような怪談やアメリカの「13日の金曜日」みたいな恐怖映画は、メキシコでは生まれないだろうなあ、と。(でも、ホントのところは知りません。)
砂糖菓子のガイコツそうそう、最後の写真を1枚。食事に入ったメキシコ料理のレストランで、お土産をもらいました。砂糖菓子のガイコツです。もったいなくて食べるに食べられず、自宅に飾ったままです。夏になると暑さで溶け出すから、その前に食べないとなあ、と、思いながら眺める日々です。

2008年11月 小澤

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