ヘミングウェイとゲバラが愛したキューバ

ヘミングウェイとゲバラが愛したキューバ



1950年代のアメリカのクラシックカーが我が物顔で今も走っている。1700~1800年代の建物がここかしこに建っている。よっぽどの遺産建築かと思われる家に人が住んでいる。





クラシックカーのボディは当時のままでも、中はディーゼルエンジンに替えられている。頑丈なボディとそれを大事にする気持ち。コロニアルな外壁は残してどうにか存続させようと街のあらゆる所で工事中だ。ここ、ハバナの旧市街は時間を限りなく遅くして、進めるのを止め、昔を残そうとするテーマパークだ。陽気なキューバ人とコロニアル・スパニッシュな街並み、音楽とダイキリ、クラシックカーと馬車、いつまでも浸っていたい空間と時間がここにある。そんなハバナに世界中から沢山の観光客が引き寄せられる。心地よい開放感に浸り、ハバナの風に溶け込んでいく。




今もヘミングウェイは彼の愛したハバナで大活躍。彼が毎日通ったレストラン「フロリディータ」では彼の像が歓迎してくれる。そして機嫌よく記念撮影に収まってくれる。ダイキリを飲みながらヘミングウェイの優しい笑顔を見ているとほのぼのしてくる。今はあなたの代わりに我々がハバナのとりこになりましたと心の中で思わずつぶやきたくなる。
定宿のホテルだった「アンボスムンドス」の511号室は今は博物館。ヘミングウェイの遺物が展示されている。立ったまま使ったタイプライター、ベッド、ハバナクラブ、服、靴、有名人との写真等。それらを専用ガイドさんが沢山の観光客に説明してくれる。屋上のテラスからはヘミングウェイが眺めた同じ旧市街と海を見つめてみよう。



ゲバラ博物館と邸宅があるカバーニャ要塞が、旧市街を隔てて海の向こうにどっしり構えている。アルゼンチン国籍のゲバラがキューバ独立の一躍を担い、そして若くして亡くなった。ゲバラがキューバを愛したように、キューバの人も今もゲバラを愛し、大事にしている。ゲバラはキューバの大きな広告塔なのだ。






ハバナ旧市街の観光は先ずは、最も賑やかなオビスポ通りから始めよう。石畳の道を歩き、ライブ演奏中のお洒落なレストランをのぞき、おばちゃんの客引きに手を振り、白人も黒人も褐色人も黄色人もごった煮の中をアルマス広場まで進んでいく。ここからすぐ向こうは海だ。少し戻って右に曲がると、カテドラル広場。キューバ風バロックスタイルのカテドラルには圧倒される。この広場と南に下るところにあるビエハ広場はおすすめ。古い建物がリニューワルされレストランに変身し、プラネテリウムがあったり、粋なコーヒー屋さんがあったり、ここちよいのである。最後は何といっても旧国会議事堂。白い大きなドーム天井がそびえ立ち、何本もの柱に支えられ、どっしりと構えている。隣のガルシア・ロルカ劇場も見事な建築物で必見なので付け加えておきます。




キューバ横断旅行の次の訪問地はゲバラの遺骨が安置されている霊廟があるサンタクララ。6mを超える巨大なゲバラの銅像が今の世を見張っている。革命勝利へのきっかけとなった装甲車襲撃記念のトレン・ブリンダート記念碑もここにある。この街のサンタクララ広場はキューバの中で最も好きなひとつだ。市役所・劇場・学校と調和良く立っており、広場には地元の多くの人が集い憩いを楽しんでいる。



次に訪れたシエンフエゴスは1819年にフランス人の移民によって造られた街。どこかお洒落な街並みはそのせいかもしれない。ホセ・マルティ広場を中心にコロニアルな市役所・劇場・学校・教会が建ち並んでいる。





世界遺産トリニダーは小さな街全体がまるで博物館のようだ。25¢コインのデザインになった元サンフランシスコ修道院の革命博物館。マヨール広場から広がる絵のような街並み。市立歴史博物館の屋上からはその街並みが一望できる。89段の階段を登るとまさしく絶景が目の前に広がっている。少し疲れた後は、ガイドさんにすすめられた名物カクテル、蜂蜜とレモンとラム酒で作った「カンチャンチャラ」を味わった。





中部からやや東寄りにある世界遺産カマグエイ歴史地区は教会の街。10以上の教会と広場が程よい空間を生み出し、生活している人々の息吹が感じ取れる親しみやすい街だ。丁度、管弦楽団のテレビロケが行われていたが、絵になる街である。おすすめのビューポイントは街の真ん中にあるグランホテルの屋上。見飽きない風景に時のたつのも忘れ日が沈んでいった。



最後はキューバ第2の都市サンティアゴ・デ・クーバに行く予定だったが、巨大ハリーケーン・サンディが直撃したため街は壊滅状態になり、手前で泣く泣くハバナに引き返した。ところが悪いことばかりではない。キューバ最大のビーチ・バラデロに1泊出来たのだ。28kmにわたる白砂が続くビーチには高級ホテルが建ち並び、まさに地上の楽園。食事に音楽に、少しばかりのハンモックでの休息と、リゾート三昧でした。


キューバには、歴史・文化・自然・海と何でもそろっている。しかし一番の魅力はキューバ人の明るさ・陽気さではないだろうか。居心地の良い、開放感あふれる理由は彼らの感性にあるのだろう。また、ヘミングウェイとダイキリを飲みに行こうと決心した。
2012年10月 本山泰久

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