~冬のフィンランドを訪ねて~ 

~冬のフィンランドを訪ねて~ 

今回行くことになった場所。それはフィンランド。それまであまり意識したことのない場所だったけれど、その言葉の響きになんだか惹かれ始めていた。
世界中にはそれこそいろんな国名や地名があるけれど、〇〇ランドという名前がついているのはそれほど多くはない気がする。
もちろん現地の言葉で同じような意味を持つものは沢山あると思うけど。
アイスランド、アイルランド、グリーンランド、ニュージーランド、ポーランド、ポートランド、ラップランド、オークランド?オーランド? ディズニーランドにサマーランドに富士急ハイランド!(遊園地名は切りがないので・・・)
僕がすぐに思いつくのはこのくらいだ。
〇〇の地、〇〇の場所、そんな意味が名前の由来になっているのは、何だかドラゴンクエストの世界みたいでわくわくしてしまう。
じゃあフィンランドって、何の地なの? FIN→FINAL=最後の、つまり果てにある
場所ってこと?
FIN→FINE=美しい、立派な場所ってこと? もっと単純にFIN(ひれ)に形が似てる(?)から?
フィン人が住む土地だから、フィンランド。じゃあ、フィン人のフィンって何?
なんだかいろいろ調べたけれど結局よくわからずじまいだ・・・。
(一応正解らしきものはわかったけれど内緒!)


まあ、それはさておき、フィンランドにはサンタクロースの住む町があるという。
正確には、遠くの山から毎日通っているらしいけれど。まずはそのサンタさんに会える町、“ロバニエミ”を訪れた。
ヘルシンキで国内線に乗り換える。僕の目に飛び込んできたのは、何とも不思議な光景だった。海が真っ白!それも見渡す限りどこまでも。
以前にも凍った海の上を歩いたことがあるけれど、空の上からこんなに広範囲に白くなった海を見たのは初めてだ。
僕らは水は凍るものだということを頭で理解しているし、実際に氷や雪が存在する世界に生きている。
だけど、世の中には雪や氷を見たこともない人もいる。南の島の真っ青なラグーンしか知らない人達に「あれは海だよ!」と言っても、「うそだ!バカにすんな!」とか言われそうな気がするし、果ては「お前、海に何をしたんだ!元に戻せ!」とか怒られちゃいそうな気がする。そんなくだらないことを想像してしまうくらい、見事に白い世界。
海って地球上のあらゆるエネルギーの象徴であり源みたいに思っていた。それを封じ込めてしまうなんて、自然界の神様どうしが闘ったら、海の神より氷を司る神?(そんなのいるのか?)の方が強いということか・・・。
さらには氷を溶かし、水を蒸発させる太陽の神が一番ということか・・・?
白い海と青い海、その境目はいったいどこなんだろう?どうなっているんだろう? いつかそんなことを探し求める旅をしてみるのも、悪くないかも知れない。
サンタクロース村までは町の中心地からバスで約15分。3月のフィンランドは、想像していたよりもはるかに暖かく過ごしやすかったけれど、ローカルバスの車窓から見えるのは一面の雪景色。真っ白な雪原と針葉樹の森、ときおり目にするちっぽけなログハウス。 なんだか小人になってクリスマスケーキの上に降ろされた気分だ。
サンタクロース村には沢山のサンタさんがいる。
正確に言うと、本物の?サンタさんは1人なんだけど、村中のあちこちからサンタ人形やサンタのイラストが顔を覗かせている。恥ずかしそうにそっと佇んでいたり、
おどけるように天井からぶら下がったり・・・。
一言でサンタと言っても、いろんな姿・形をしたサンタさんがいるもんだ。
イメージ通りのサンタもいれば、「おまえ、サンタじゃなくてただのピエロだろ!」みたいな奴も。
中には、なんだかボロ雑巾みたいで、本当にプレゼントをくれるのか心配になってしまうようなサンタまで・・・。
せっかくだから、ここで「サンクロースコレクション」をお楽しみ下さい!
ここでの楽しみの1つ、それは、サンタクロースにお手紙をお願いすること。
ここで申し込むと、次のクリスマスにサンタさんからの手紙が届くのだ。家族や友人(もちろん恋人でも、いなきゃ自分でも!)宛に申し込むのも悪くないかも。
ただサンタさんからの手紙は自分でメッセージを書くことはできない。まぁ、サンタからの手紙なんだから当たり前といえば当たり前なんだけど。
それじゃあもの足りない、やっぱり自分の言葉でクリスマスを祝いたい人には、自分で絵ハガキを書いて出すこともできる。
ポストが2つあって、赤い色のに投函するとクリスマスに配達してくれるのだ。
どうせ出すならなるべく前に出した方がいい。次のクリスマスなんて言わずに、5年後、10年後のクリスマスに配達してくれる、そんなタイムカプセルみたいなサービスがあればいいのに。(何だか趣旨がかわっちゃうような気がするけれど)
「ああ、自分はこんな気持ちでいたんだ」「ああ、あの人はこんなこと考えてたんだ」って。
それを受け取った時に「かわったな~」と微笑むのか、「かわらないな~」と苦笑いするのか。
それがどっちであっても何かを思い出させてくれるような気がする。でも実際に10年後に届く手紙を出すとしたら、ちゃんと覚悟がいるのかも。
いやまてよ、意外と本音が書けるかも。全てを時の流れのせいにしてしまえばいいのだから・・・。サンタさんから手紙が届くなんて、凄くロマンチックで嬉しいハプニングだ。サンタさんからのプレゼントは年に1度の心温まるファンタジーだ。だけどもっと嬉しい手紙や贈り物は確かに存在するんだろうな。
さて、いよいよサンタクロース登場の時間。1日に3回ぐらい、決められた時間にしか会うことができない。って、アシカのショーじゃないんだから・・・ などと思いつつも、まぁ忙しいんだろうから仕方がない。
奥にある部屋に入り、いよいよ面会。僕を見ると「日本人ですか! こんにちは~。」などと話し掛けてくる。
それから「おっはーー!」なんて、ポーズをとって、やたらテンションが高い。
最初、なんて胡散臭いサンタなんだ!と思ってしまったけれど、彼は根っからのエンターティナーなんだろう。なんだかとってもお茶目な人に思えてきた。
サンタさんここではサンタさんと一緒に記念撮影をすることができるけれど(有料)それゆえに、写真撮影は禁止されている(ビデオ撮影は可)。
でも他に人がいなくなったのを見計らって思い切って頼んでみると(旅行会社で働いていて写真が必要だと)笑顔で快く応じてくれた。
そこでこれは滅多にないチャンスだと、サンタさんにいろいろ質問をぶつけてみることにした。まずは簡単なものから。
沼:「好きな食べ物は何ですか?」
サ:「ポテトとサーモンだよ」
沼:「趣味は何ですか?」
サ:「夏はフィッシング。こ~んなにおっきな(と言って手を広げる)マスを釣るんだよ! 冬はスノーモービルでドライブすることかな? あ、もちろんトナカイもね!」
沼:「夏は仕事してるの?」(ちょっと失礼だったかな?)
サ:「もちろん! 世界中の人達にお手紙を書くのに忙しいんだよ!」
沼:「サンタさん、いったい何歳なの?」
サ:「400歳!」
(え~~、どうりで髭も真っ白なはずだ~)
沼:「結婚はしてるんですか~?」
サ:「してるよ! ミセス・サンタはシークレットハウスでせっせとプレゼントを作ってるんだ。」
(それは知らなかった~。だってあんまり紹介されたことってないよね。)
沼:「じゃあ、子供は?」
サ:「子供はいないんだ。でもね、助手が沢山いるよ。」
(そうなの?世界中に子供がちらばってるんだと思ってた・・・)
沼:「じゃあトナカイは何頭くらい飼ってるの?」
サ:「たくさん、たくさん! フィンランドのトナカイは空も飛ぶし速いよ! JALよりもフィンエアーよりもね!」
(やっぱり、ちょっと胡散臭いかも・・・)
沼:「身長と体重は?」
サ:「身長は2m! 体重はひみつ! だけど、すごく重いよ~」
(ほんとでか! 僕は162cmしかないけど、見上げてしまうくらいでっかい!)
沼:「サンタさんの仕事はどのくらいやってるの?」
サ:「もう400年近いよ~。」
(てことは、赤ちゃんのころからサンタの仕事やってるってこと?)
沼:「ところで、サンタさんって、世界中に何人いるんですか?」
サ:「君には目の前に何人のサンタが見える? 2人? 3人に見えるかい?」
沼:「え・・・・・? いや、1人ですけど・・・・・。」
サ:「そうだよ!世界中にサンタは1人。私しかいないんだよ!」
(ええ?? そうなの?? じゃあ、昔俺んちに来た?のも、タヒチでトラックの荷台に乗ってプレゼントを配ってたのもあなた??? こんなにでっかかったっけ?? そっかー、世界中周るって大変だな~~。)
沼:「どうやったらサンタになれるの?」
サ:「そりゃ、無理だよ。 だってサンタは世界に1人だって言っただろ! でも忙しいからね、助手にならしてやってもいいよ!」
沼:「じゃあ、最後に。サンタさんの夢は何ですか?」
サ:「みんなが平和で幸せであること。 テロや戦争のない平和な世界になることが1番さ。」
僕は正直、もう少し俗っぽい答えを期待していた。
そんなサンタっぽい優等生的な答えではなく、「宝くじに当たりたい!」とか言ってくれたほうが面白いのに・・・。その時はそう思ってしまった。
結局僕は1時間以上もその場に居座っていた。
普通、2~3分で通り過ぎていくその場所に。他の誰かが来たら席をはずし、いなくなったらまた戻る。 その繰り返し。
サンタさんもちょっと呆れたみたいで、最後は「そろそろ家に帰んなくちゃ」と笑って出ていった。
でもサンタさんもそんな熱狂的なファン(おっさんだけど)と会えて、まんざらではなさそうに見えたけれど。
その日の夜、ホテルでテレビを点けるとブッシュさん、ブレアさんが並んで演説していた。
そして「決断の時はきた!」などと、厳しい顔をしていきりたっている。一方で世界中で繰り広げられるデモ行進の映像が映し出される。人々の、そして、サンタさんの願いはいったいどこへ行ってしまうのだろうか?
僕には世界を動かす人の苦労や難しい話はわからないけれど、戦争がよくないことくらいはわかるつもりだ。
僕は聖人ではないし、どちらかと言えば闘争本能の塊みたいな人間だけれども、罪のない人達が、訳もなく苦しんだり、命を落とすのがおかしいということくらいはわかる。
でも一度始まってしまったら何が正しく、何が悪いのかなんてわからなくなってしまう。道徳や理性なんて通じなくなってしまう。
正義だと思うことが相手にとっての悪となり、昨日まで悪だと思っていたことが今日の正義になってしまう。
僕だって、他の誰だって、何かを、そして誰かを守る為だったらきっと闘ってしまうのだろう。だから始めてしまったらいけないと思うのだけれど・・・。
何なら、ブッシュさんもブレアさんもフセインさんも、その他のエライ人達も、みんなそろってサンタさんのもとへ行けばいい。
彼らだって、世界中の誰だって、昔はいい子だったはずだ。サンタの存在を信じ、夢や願いを託したはずだ。ならばもう一度、みんなで会いにいってみればいい。
その透き通った瞳で見つめられたら、その大きな手で頭をなでてもらったら、きっと素直で純真な子供に戻ってしまうだろう。
そして、世界中の子供達を傷つけることが、子供達の夢や未来を奪ってしまうことが、どんなに罪深いことなのかに気づかされるだろう。
「戦争なんてやめやめ。あほらし!」そう言って、みんなで子供の頃の思い出でも語り合えばいいのに。
この晩、もう世界は止められない流れの中にあったけれど、僕は真剣にこんなことを考えていた。サンタさんなら何とかしてくれるんじゃないかって。
こんなに大きくて、優しい目をした人の前でケンカなんてできっこないと思うから。 “私の願いだ”と語ったあの言葉は心からのものなのだろう。きっと彼もサンタとしての自分と人間としての自分との狭間で悩むこともあるんだろうな、なんて余計なことを考えながら眠りについた。
凍った海次の日はケミという町まで出かけ、サンポ号クルーズに参加した。普通のクルーズと違うのはそれが砕氷船であるということ、つまり氷に閉ざされた海をバリバリ、ガリガリ、バキバキ、ジャリジャリとすすんでいくのだ。
この時期、氷の厚さは80cmくらい。
そこにまっすぐな割れ目が入り、刃物で切り取られたかのように氷の板に変わっていく。大きくせりあがり、みるみる後ろへと押しやられていく。
でも氷君だって、ただただ砕かれているばかりじゃない。時にはサンポ号のその巨体をがっちりと受け止めてみせる。
砕かれた氷砕かれた氷だって、ガツン、ボコンと、ボディブローのように船体にぶち当たる。
しばし前進を止められたサンポ号もなかなかの頭脳派で、何も強引な中央突破ばかりしてるのではない。時には退き、時には身をひるがえし、確実に相手の弱いところに
切り込んでいく。
氷を削ったり、切ったり、穴をあけたりする人はいるけれど、砕くことを見せ物?
にしてるのは、僕が知る限り、空手の達人とサンポ号ぐらいだ。さすがである。
残念だったのは、海の水がかなり黒っぽかったこと。まるでコーラみたいに・・・。
できればソーダ色の、ラムネ色の透き通るような海であってほしかったなぁ。白い氷には、そっちの方が似合うと思うから。
ドライスーツ着用さて、いよいよ船から降りる。特殊なオレンジ色のドライスーツを着て海に浮かぶのだ。
そのダラーンと伸びた腕の感じと、両腕でやじろべいみたいにバランスをとりながらヨタヨタと歩いていると、なんだかロボコンになった気分だ。
このスーツ欲しい!流れるプールなんかで、これ着てぐるぐる流されてたら、きっとそれだけで子供達の人気者だ!持ち運ぶのも、しまっておくのも邪魔邪魔だけど・・・。
ドライスーツで海に浮かぶふちに腰掛けると、おっちゃんに押し出されるように、すべり出るように氷の海へ。もちろん冷たさは伝わってくるけれど、普通に浮かんでいれば濡れることもないし、快適、快適。
不思議な浮遊感と、海が身体を支えてくれる感覚。空を見上げるのが気持ちがいい。
あいにくどんよりとした灰色の空だけど、それでも手足をいっぱいに広げて空と真正面から向かい合うのは、なんともいい気分だ。
サンポ号(外観)ああ、このまま眠ってしまいたい。
そっと目を閉じると冷たいしぶきと、チャプチャプという波音と、それに比べたら随分遠くから聞こえてくるような気がする人々の笑い声&はしゃぎ声。
やがてゴチン!と氷の淵に頭をぶつけて目を開けたけれど、ああ、ほんとこのまま眠ってしまいたい。
目が覚めたとき、サンポ号が先に帰っちゃっていたら本当に困るだろうけど・・・。
ロバニエミを後にし、いよいよ北極圏の町、サーリセルカへ。そこは冬を遊び尽くす為のリゾート地だ。
今日は犬ぞりにチャレンジ! 以前アラスカで経験したことがあったけど、1番の違いは最初からいきなり自分で操縦するということ。
アラスカでは基本的にはインストラクターさんが操縦して、慣れた頃にちょっとだけ
やらせてもらえるという感じだった。
今回、ガイドさんはスノーモービルでずっと前を先導していく。柵につながれた犬君たちは、今か今かと自分達の出番を待っている。
ガイドさんと犬僕とガイドのおじさんが近づくと、もうもう大はしゃぎ! いてもたってもいられないらしく、キュンキュン&ハアハアといきり立つ。
綱を解き放たれたとたんに全速力で走り出す。でもごめんね、こんな余計なお荷物がついていて。
今回5頭の犬君たちが僕を引っ張ってくれた。
エマ達「エマ」という名前のメス犬がリーダー。
見るからに賢そうでおだやかそうで、それでいて意思の強そうな、でも元気いっぱい&愛嬌たっぷりで人懐っこい!
ピンっとたった大きな両耳と、くりくりとまん丸で綺麗な瞳。ツンとまっすぐに伸びた鼻先。
なんて素敵な奴なんだ! いっそ、彼女にしてしまいたいくらいだ!
僕は犬という生き物の、そのあまりに人間に媚びる?姿勢ゆえ、断然、気まぐれ・マイペース・甘えんぼのネコ派だが、すっかりエマ達のことが好きになってしまった。
おそらく、「ペット」という枠をはみ出した野生の美しさを感じたからだと思う。人間に飼いならされているというよりも、共存しているという表現が正しいのだと思う。
多分、人間の力を借りなくても彼らは生きていける。誇り高き狼のような、そういう血や本能が彼らには流れているのだろう。
走る犬雪原を駆け抜ける背中がとても心強く見える。
最初はしっかりとつかまっていたけれど、そのたくましい後姿をぜひぜひ写真に納めたくてファインダーを夢中でのぞく。
ただただ広い真っ白な雪原をすべりぬけていくのも、樹林帯の間をぬうようにしてくぐりぬけていくのも、そのスピード感と躍動感とが、何とも爽快で気持ちがいい!
彼らのエネルギーとスタミナは、とどまるところを知らないみたいだ。
と思ったらだんだん失速。足がもつれてこけそうになったり、雪を食べようとして顔から前のめりに突っ込んだり、走りながらウンチをまき散らし(!) がに股になったりと、だんだん不恰好になっていく。
なんだい、なんだい、あんなに走りたがってたくせに根性ねぇなぁ~。
なんて口では言いながらも、そんなところが妙に微笑ましかったり、けな気だったり、親しみを感じてしまう。
「ホップ!ホップ!(行け行け!走れ走れ!みたいな時に使う)」
と叫んでも、全く効果なし。時々後ろを振り返り
「そんなこと言ったってよ~、俺たちだってがんばってるんだから勝手なこというなよ~」
とでも言いたげな恨めしそうな視線がかえってくる。なるべく偉そうに聞こえないように、なるべくやさしい口調で言っていたつもりだけど、そこがいけないんだろうな。
多分なめられてるんだ。その証拠に時々ガイドさんが大声で厳しく叫ぶと明らかにスピードが変わる。でも、これでいい。ガイドさんにはその権利はあるけれど、僕には彼らに対してそんな風に偉そうにする権利なんてない。
だって僕はご主人様でも何でもないし、僕の方が彼らのソリに乗せてもらい、遊んでもらっているのだから。
犬たち上り坂に差し掛かった時には僕もソリを降り、懸命に地面を蹴って、懸命に走る。
少しでも迷惑がかからないように。彼らもそれに気づき、「ありがとよ!」とでも言いたげな、さっきとは違う視線を投げかけてくれる。
こうやって、不思議と一体感が芽生えていく。まぁ、多分僕の自己満足なんだろうけど。
1時間ほど走り、もとの場所へ。ここまで一度も失敗せず、順調に駆け抜けてきた。
もちろんそれはエマ達のお陰だけれど。最後の最後、ソリは急に大きくカーブを切った。
もう一度彼らの勇姿を写真に納めようとしていた僕は遠心力に耐えられず、見事にそりからふっ飛ばされた!
よく漫画で「どっか~ん」ってぶつかってとんでいく?シーンがあるけれど、あんな風に。
最後にこういうことが待っているから面白い!それがいいことでも悪いことでも。
だから安心しちゃいけないし、あきらめてもいけない。
でもそれを用心ばかりしてたんじゃ面白くも何ともない。
雪の中にズッポリ埋まりながら、空を見上げて、意味もなく、腹をかかえて大笑いした。
照れ臭さもあったのかもしれないけど、でもそれ以上に何とも言えない愉快な気分だったから。
「ごめんね~、最後の最後でへましちゃったよ~!」
そう言ってガイドさんに謝ると、彼もただただ微笑んでいた。
トナカイゾリ次の日はトナカイサファリに参加した。同じソリでも、犬ぞりとは大違い。
スピーディーさは全くなく、ノソノソ、ノソノソと歩く感じ。
狩猟動物と草食動物の違いなのだろうか。
その後ろ脚の太ももはアスリートを彷彿させるほど、引き締まっているけれど、何だか見かけ倒しだ。
一晩中降り続いた雪のせいもあるのだろうが脚をとられ、口があき、目もうつろになってくる。これじゃあ、サンタさんも大変だ。でも、その独特の時間の流れがいい味を醸し出している。
シャンシャンという鈴の音がどこからともなく響いてきそうな世界。トナカイ
トナカイファームの柵の中に1頭、真っ白な姿が見えた。白い生き物はよく神様の使い、又は生まれ変わりだと言われるけれど、なるほどその力のこもった視線からは気品のようなものを感じる。
近付いても近付いても逃げてしまい、一定の距離を保ったままじっとこちらを見つめている。まるで見えないバリアに守られているかのように。
それを見ていた飼育係?のおじさんがコケモモをくれた。
ムギュっと掴んで大きく手を振ると、用心深げに、でも我慢できない様子で近づいてくる。
そして、おいしそうに目を細めて、もぐもぐと食べる。白いトナカイもう僕の存在なんて関係ありゃしない。なんだ、こいつも意外と普通の奴なんだなぁ。
神の使いだなんて思われていることに、実は本人は迷惑をしてるのかも知れない。
いよいよ夜になった。「今日は見れるかな?」ここサーリセルカでは、挨拶代わりの言葉だ。
オーロラについて科学的なことをいろいろ述べても、難しすぎてはっきり言ってよくわからない。
だから理屈ではなく、目の前にあるものをあるがままに楽しめばいいと思う。
もちろん、ものごとはその根拠や意味がわかったほうが楽しい場合もあるけれど、オーロラは見えるか見えないか、それが全て。そして、それをどう感じるか、どう表現するかはその人次第。
事実、現代の人達がこれほど憧れ、心奪われるオーロラも、その昔は不吉なものとして恐れられていたこともあるのだから。
オーロラ4年前に初めてみた時には、「光のカーテン」という表現がぴったりだと思った。
ひらひらー、ひらひらーとなびき、揺れ動く。
宇宙の彼方から神様が光の布を持って、
ふっているんじゃないかと思うほどだった。
今回は、もう少し遠くに見えた気がするけれど(以前は下からのぞいているような感じだった。)出現した時に思わず息を呑んでしまい、心奪われてしまう感じは変わらない。
きっとオーロラは寒い場所で精一杯生きているもの達へのプレゼントだ。
太陽の日差しのもとでキラキラと七色に輝く虹の架け橋が、土砂降りを我慢した後のご褒美ならば、凍てつくような純白の世界に舞い降りる光のシャワーは、寒さに耐えて生きるもの達への励ましと安らぎの光だ。
毎日それを見ていたら、そんなこと思わないんだろうけど・・・。
でも、そういうことにしておこう。きっとオーロラが現れない冬の夜なんて、星や太陽のない空、魚のいない海、サンタのいないクリスマスぐらい?寂しくて物足りないものなんだろうから。
当たり前のものは、いつまでも当たり前だとは限らない。だから素敵なものは素敵だと、いつでも素直に認めればいい。それが当たり前でなくならないように大切にすればいい。
指人形を売るおばさん今回旅をして感じたこと。フィンランドの人達は、基本的に皆親切だったということ。
言葉が通じなければ、仲介に入ってくれる人がいる。小銭がなければ差し出してくれ、道行く人に何かを訪ねれば、親切に教えてくれた。
北欧に住む人は体もでっかくて、無表情で冷たい感じがするんじゃないかと勝手に思っていたのは大間違いだった。
寒い大地に住む人達は、その厳しい環境ゆえ、心が温かくなるという。
南の島に住む人達は、海と空と太陽の恵みゆえ、そこ抜けに明るくおおらかになるという。
ならばそんな厳しさもエネルギーも押さえ込み、コントロールしてしまう、都会に住む僕達は優しくおおらかな人にはなれないのだろうか。
その答えはどちらでもあると思うけど、少なくとも、そういった厳しさや豊かさを知らずにいるよりも、知っていた方がいいと思う。
フィンランドの子供自分の足でその場に立ち、自分の目で見て、自分の肌で感じること。
その環境に触れ、その環境で暮らす人達に触れること。そこから学ぶことも得ることも、教えられることも沢山あるはず。そこから日常に生かせることも沢山あるはず。
所詮観光旅行じゃ、限界はある。そこで生きている人達には到底かないっこない。
だから偉そうな事は言えないけれど、そういう世界があること、そういう人々が
いることを認識することはきっと大切なんだろうと思う。
森と湖と、サンタクロースとムーミンの国。オーロラとトナカイとサウナの国。
神秘的で美しい大自然が溢れる場所。世界中の人達のメルヘンと夢と願いがいっぱいに詰まった場所。
「フィンランドって どういう意味?」
その答えは FINE LAND(素晴らしい、素敵な、美しい場所)。
それでいいじゃない! とりあえずは、それを正解としてしまおうよ!

「サンタクロースコレクション」






青沼 潤
2003年3月

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