2018年7月の第3週。平均気温が40度に達するような異常気象の日本を
運良く逃れてJATA主催のコソボ、アルバニアのファムツアーに
参加させて頂いた。コソボもアルバニアもパッケージツアーを取り扱ってる
旅行会社は非常に少ないので今回は商品開発を目的とした視察旅行である。
コソボとアルバニアの人たちには申し訳ないがそもそもヨーロッパの国名である
ことや、おおよその場所がわかる日本人はかなり少数かと思う。
残念かつ恥ずかしながら旅行業界においても知らない人は多いであろう。
最初はコソボから。ターキッシュエアラインズのイスタンブール乗換で
コソボの玄関空港プリシュティーナへ。乗換含めて17時間、決して遠いとは感じない
快適なフライト。空港を出た第一印象は空気がひんやり、うーん気持ちいい。
コソボはいまだに紛争のイメージが強く家族からは大丈夫なの?何があるの?
と訊かれる。それほど日本からのツアーやガイドブックの情報も少なく観光国
としてのイメージは今は低い。
旧ユーゴスラビアを構成する共和国の一つだったセルビア
の自治州としてコソボは生まれた。私の学生時代の地図でもユーゴスラビアに
属している。1990年代のはじめにユーゴスラビアは解体。
人口の9割を占めるアルバニア系の住民が独立を目指してセルビア人と
戦った民族紛争がいわゆるコソボ紛争で多くのアルバニア系の住民が難民となった
悲しい歴史がある。その後2008年にアメリカなどの支援を受けてセルビアから
独立したコソボは現時点でヨーロッパで最も新しい国。日本など100ヵ国以上が
国として承認しているものの、ロシアなどの一部の国はこれを認めていない。
セルビアはいまだにコソボを自国内の自治州ととらえている。ゆえに国内にある世界遺産もセルビアの
遺産として登録されているのが現状だ。
現在コソボの人口の9割以上はアルバニア人。面積は岐阜県と同じくらいで
人口は約180万人。興味深いのは人口の7割が35歳以下という若さ!
国も若ければ国民も若い。そういえばあまり老人を見かけなかったかも。
<コソボの首都プリシュティーナ>
国際空港のあるコソボ最大の都市で政治経済や文化の中心。
全人口の約3分の1がここで暮らしている。
中心地のシリウスホテルに滞在。短いが快適なホテルライフを楽しめた。
まず先にチェックインをすませ、早速ガジメ洞窟へ向かった。
<ガジメ洞窟>
プリシュティーナから南へ車で約40分にあるコソボ屈指の観光ポイント
今からおよそ50年前に地元の住民が家を建て替える際に偶然発見したという鍾乳洞。
見つけた瞬間どんなリアクションをしたんだろうなどとどうでもいいことを
想像しながら洞窟内へ。およそ8000万年前に出来たと言われている神秘的な
内部へ進む。
全長1260メートルのうち一般に公開されているのは440メートル
(長さに関しては他説あり)中にはロミオとジュリエットや、マザーテレサと
名前がつけられた鍾乳石もある。
<プリシュティーナ旧市街>
ホテルから徒歩でマザーテレサ大通りへ
ここは多くのお店やカフェが建ち並ぶ地元の人にとっての憩いの場所で
歩行者天国になっている。
通りの端に聳え立つマザーテレサ大聖堂は街のシンボル。
内部の見学をしたあとエレベーターで最上階へ。聖堂の上から
プリシュティーナ市内を一望できる絶景ポイント。
ひと際目立つ、というか浮いちゃってる国立図書館。とても図書館に見えない。
コソボ独立を支援したアメリカのクリントン元大統領の名前を冠した
ビルクリントン通りと銅像
他にブッシュ通りもある。
この国の人たちにとって彼らは英雄なのだそうだ。
旧市街の北にある民族博物館
18世紀オスマントルコ時代に建てられた邸宅を利用した博物館。
キッチンや客室など保存状態が良く、コソボの人の当時の
暮らしを垣間見ることができる、記憶に残る博物館。
<ルゴヴァ渓谷とペーヤ>
コソボの大自然を満喫することができるルゴヴァ渓谷。
国の西部、モンテネグロとの国境の近くにある25キロに及ぶとてもきれいな渓谷
でハイキングやトレッキングが楽しめる重要観光資源。今回ジップラインを
体験するはずだったが強風のため初心者は危ないとうことで中止となりガッカリ。
経験者によるパフォーマンスを見学した
その後、近くのペーヤに移動、ホテルでコーヒーブレイクしたあと街の散策を
楽しんだ。
バザール
笑顔が素敵な父子
気軽に撮影に応じる若者
<クーラ>
伝統的なアルバニアの石造りの家、クーラを訪問。
ここで地元料理フリアを頂いた。レストランでの食事も良いが
家に上がって囲んでの食事も貴重な経験。
小麦粉、水、塩、バター、ヨーグルトから作られる地元料理フリは
見た目がお好み焼きかピザみたい。
味はシンプルというか薄く食感はモチモチ。
このまま食べてもおいしくない。普通は肉やチーズをそえて食べる。
<古都ジャコバ>
コソボの南に位置するジャコバ。中心は16世紀に始まったオールドバザール。
コソボの中で最も古く地域最大級のバザール。
1999年の紛争でほとんどの建物が焼かれてしまったが徐々に再建された。
夜も賑やか。日が暮れるとともに泊まってるホテルのすぐ裏が飲み屋街と化し
多くの人たちで賑わう。酒を飲みながら昼間に知り合ったコソボの人と
シーシャを楽しむ。
少し歩いてハシゴ酒。時間も短く量も少なめであったが
今回の旅で最も思い出に残る夜だった。
ペーヤビール
1杯1ユーロと非常に安い。
スーパーでも500MLが1ユーロくらい。
肝心な味の方は、コクがあって日本人好みの味。グイグイいける。
<南部の中心都市プリズレン>
ジャコバよりさらに南にある第2の都市プリズレンへ。
途中、ワイン工場ストーンキャッスルで見学と美味しく試飲
プリズレンはオスマン朝時代の歴史的建造物が多く見ることが出来る
コソボで最も美しい町と言われている。アルバニアとマケドニアの両方に接している
ため多様な文化が残っているのが特徴。
市街を東西に流れるビストリツァ川に架かる石橋とその向こうに
見えるスィナン・パシャ・ジャミーアはネットやガイドブックなどでよく見る
印象的な風景の1つ。
軽くお茶休憩をした後、東側の丘の上にある
プリズレン城塞へ。かなり急な坂道。体調が良くないこともあっていつもより
辛かった。上から見下ろす市街の風景はなかなか良かった。少々しんどくても
ここまで来たら絶対に登るべき場所だ。
<後半はアルバニア>
ツアー5日目。陸路で国境を越えてアルバニアに入国
アルバニアはバルカン半島西部、ギリシャの北、アドリア海に面している。
そのビーチは地中海の中でも特に美しいと言われている(がゆっくり見ていない。)
アルバニアはヨーロッパで最貧国の1つで治安面でも不安を抱えていると
聞いていたが、訪れた印象では街もきれいで危険な空気はあまり感じない。
1970年代後半から1990年頃まで鎖国や宗教活動の禁止をするなど
いろいろ複雑な国だったらしい。謎も多くヨーロッパ最後の秘境とも言われている。
その時代はちょうど自分は中学~高校~大学から社会人になるまでの多感な頃にあたる。
そう振り返って考えるとあらためて日本に生まれ育って良かったと感じる。
アルバニアの玄関口、首都のティラナはマザーテレサ国際空港から車でおよそ20分。
貧しい人に尽くしたことで有名なマザーテレサはマケドニアの
スコピエで生まれた。アルバニアの人達からもとても尊敬されていて、
国際空港にもその名がついている。
ティラナは古くは古代ローマやオスマン・トルコの支配下で交易の
拠点となっていた都市。今回泊まったのは昨年までシェラトンだった
マクアルバニアホテル
ホテルを出てすぐのところには
マザーテレサ広場がある。
ここから中心地のスカンデルベグ広場に
かけての街歩きをしてみた。
オスマン帝国時代に造られた川のない橋、
タバカヴェ橋や
街の象徴であるイスラム寺院のジャミーアエトヘムベウトを
眺めながらぶらぶら歩く。
鎖国時代にソ連を仮想敵国としてアルバニア全土に
建設されたバンカー(トーチカ)を発見。壊すのも面倒らしく現在でも50万個以上
放置されているらしく、観光客の目を惹く。
アルバニアの通貨はレク。1レクが1円くらいなので計算しやすい。
店によってはユーロも使えるが釣銭はレク。
焼きたてのトウモロコシやアイスクリームが50レクと物価はとても安い。
<クルヤ城へ>
翌日ティラナから車で40分くらいのところにあるクルヤ城へ。
正直なところ、個人としては城も博物館もあまり興奮するようなところでは
なかったが、この周りでビジネスを展開する素敵なキャラに遭遇。
みやげやと美少女
アルバニアの国旗はそもそもインパクトが強い。
この刺激的な色と個性的な絵を駆使したグッズがこれでもかと
置いてある。欲しい!というより写真に取りたい!という衝動の方が勝る。
孤高のチフテリスト
チフテリというバルカン半島アルバニア系の人たちの伝統的楽器。
弦が2本しかないギター。実際に触れてみるとこれが難しい。
どうやったらあれだけの音を奏でられるのか不思議だ。
博物館の前でキースリチャーズのようにタバコを加えながらプレイする、イカした
おっちゃんを発見。このラフなスタイル、そしてまあまあの速弾きから繰り出される
綺麗な音とメロディーに立ち止まらずにはいられない。
このおっちゃんなかなか渋い!城には目もくれずおっちゃんのチフテリを
楽しませてもらった。動画に収めてこなかったことを猛烈に後悔している。
<世界遺産・ベラート>
最終日はティラナから南へ車でおよそ2時間にある世界遺産のベラートへ
先に登録されたジロカストラの歴史地区に追加される格好で2008年に
世界遺産に登録されたアルバニアを代表する観光スポット。
オスマン帝国時代の民家やモスク、大聖堂など歴史的建造物の多い美しい街。
街を流れるオスミ川を隔てて北側のマンガレム地区と南側の
ゴリツァ地区に分けられる。マンガレム地区は千の窓の街と呼ばれ、
オレンジ色の屋根と白い壁、長方形の大きな窓といった同じような形をした
家が山の斜面にに立ち並んでいる。
オスム川とゴリカ橋
事前に写真で見たことはあったがやはり肉眼で
見る姿は美しい。ゆっくりと時間が流れていく、居心地のいいエリアだ。
最後に
今回のツアーでは商談も大きな目的の1つで
コソボ、アルバニアそれぞれミーティングを行いました。
1社あたりの時間が短く限られていたのでお互いどこまで話が通じたかは
定かではありませんがきっかけ作りにはなったと思います。
バルカン半島ほぼ全土、隅から隅までの手配が可能であることもわかりました。
個人的にはコソボ、アルバニア単体よりはクロアチアやモンテネグロなど近隣国との
コンビネーションで訪れることをお勧めします。
知られざる国などと言われていますが行けば確実にイメージが変わります。
コソボ、アルバニアともに食事も美味しく物価も安いです。
ホテルも快適で治安も良いと感じるので安心して旅行できると思います。
でも今回の旅を通じて一番伝えたいことはとにかく人が良いということです。
モンテネグロに行ったときも感じましたがどちらもとても親しみ易い
国だと感じます。
正直なところ観光資源は物足りなく感じますが
それを補って余るほどの人のやさしさに包まれる旅が期待できる国ではないかと思います。
貴重な機会を提供して下さった関係者の皆様にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。
【スタッフおすすめ度】
●プリズレン城塞 ★★★★
急な坂道を登りきる達成感と感動的なパノラマビュー
●世界遺産のベラート ★★★★
ゆっくりと時間の流れる、アルバニア屈指の観光スポット
●ガジメ洞窟 ★★★
説明不要。どこの国でも洞窟は神秘的、すべらないスポット。
(2018年8月 櫻本竜一)