旨すぎて身体の震えが止まらない★麵が線でつながるシルクロードグル麵の旅★

旨すぎて身体の震えが止まらない★麵が線でつながるシルクロードグル麵の旅★

本場蘭州の蘭州牛肉面と秘伝のラー油

シルクロードと言っても実際に道があるわけではなく、塩や絹、金や銀など「モノ」が各都市に到達した点と点をつないだ線がシルクロードです。今回の旅は、そのシルクロードを動いた「モノ」の中のひとつ、「麵」に魅了されたグルメな旅をレポートしたいと思います。

シルクロードの起点と終点について諸説あります。私が今回の旅で出会った数人の中国人ガイドさんたちの共通意見では、現在の西安(かつての長安)が起点となりローマ帝国のローマが終点とされるのが一般的とのことです。麵の文化を見てみると、中国の拉麺、中央アジアのラグマン(ラグメン)、ローマ(イタリア)のパスタ。確かにつながりますね。韓国には各種レンミョン(冷麺)、ベトナムのフォー、タイ、インドネシアなど東南アジアのミー類、日本にも、うどん、そば、そうめん、ラーメンと多彩な麺文化があります。これらのどれもがどこかでシルクロードにつながっているのでしょうね。

日本からシルクロードへのアクセス方法はいろいろあります。今回の私の旅は、中国国際航空で西安(北京経由)にはいりました。この大きな理由は、西安から高速鉄道で2時間ほど行った天水にある、世界遺産の「麦積山石窟」を訪れるためです。

巨大な石仏

麦積山石窟は、精度の高い石像芸術として評価が高く、絶壁に彫られた仏像を見るために壁にへばりついた階段を昇っていくスリルも味わえる世界遺産の仏教遺跡です。

麦藁を積み重ねたような山の形状からこの名が付けられたそうで、階段を登って行くに従いどんどん高度が増し高所恐怖症の方はゆっくりゆとりを持って登ってください。安全対策は行き届いていると思いますので過度な心配は無用です。そんな時に辿り着いた大きくふくよかな仏様のお顔を拝見すると気持ちが落ち着くというものです。創建が始まったのは4世紀末ころと言われ1700年の歴史を誇ります。約200もの洞窟に約8000体にも上る石像がおさめられていてその精巧さは技術水準の高さだけではなく作り手の情熱を感じざるを得ません。「シルクロード・長安~天山回廊の交易路網」の構成資産のひとつとして世界遺産に登録されています。

麦藁を積み重ねたように見えます

今回の旅で、強く印象に残った観光ポイントのひとつです。
それもそのはず、麦積山石窟(甘粛省)は、中国四大石窟のひとつに数えられ、残る3つは、莫高窟(同じく甘粛省)、雲崗石窟(山西省)、龍門石窟(河南省)です。
私は、この旅で、後日、莫高窟を訪れます。世界最強の世界文化遺産と呼ばれていますが、それは、文化遺産としての登録基準の7つすべてを兼ね備える遺産だからです。この目で見るのが本当に楽しみでした。そのお話はまた後ほど。

観光後、天水に泊まることなく高速鉄道で蘭州に移動しました。昨今、高速鉄道のおかげで効率よく旅することができるようになりました。日程は短縮できるし身体の負担も軽減できる。旅行者にとってこのうえなくありがたい交通手段です。西安―ウルムチ間など一部、長距離路線に在来線の寝台列車が残されていますのでお好みに合わせて選ぶこともできます。これもまたうれしいですね。

シルクロード疾走する中国高速鉄道と美人乗務員さん

今回唯一不味かった駅弁。日本のように進化することを願います

シルクロードエリアの中国高速鉄道は、2015年に蘭州からウルムチ間が先につながり、2017年に西安から蘭州間が開通したことから上海、北京の中国沿岸部の大都市からウルムチまで全区間高速鉄道でつながれました。

それでは、グル麺の旅のお話の始まりです。
蘭州は、広大な中国の中で一番人気の拉麺「蘭州牛肉面」の聖地です。
いきなり話がそれてしまいますが、その蘭州の中でも人気店の「馬子禄牛肉面」の支店が、当社オフィス(東京・神保町)のすぐ近くにオープンしています。連日行列ができる盛況ぶりです。是非行ってみてください。

さすがは本場蘭州です。街の中は牛肉面を出すお店だらけです。どこが有名なのやら、店による味の違いはどうなのかなどさっぱりわかりません。でも、ガイドさんがついていてくれると百人力です。ガイドさんが連れて行ってくれたお店は、牛肉とスープのバランスが絶妙だというガイドさん一押しの「舌尖尖牛肉面」です。

「舌尖尖牛肉面」とガイドさんのラー油たっぷりの牛肉面

お店に入ると鮮やかな真っ赤な色をしたラー油の大きな鍋が目に飛び込んできました。唐辛子の量もすごいです。味もとっても辛かったです。私は、辛さには強い方なのですが、少しのラー油で十分でした。ガイドさんはスープが真っ赤になるまでラー油を入れて食べていました。そして、黒酢をかけて食べると、尚いっそう旨みが増すのです。私は食べ終わった後、再び蘭州牛肉面の味を思い出すと身体の震えが止まらなくなりました。

麺はもちろん手延べ麵です。大量に麺をこねるためか、若い調理師さんが多いそうです。この「舌尖尖牛肉面」もウイグル系の若いイケメン3人組でした。
日本のラーメンのかんすいにあたる、灰蓬草(はいほうそう)のエキスを加えることにより黄色く滑らかで良く延びる麺が出来上がるのです。

表情が初々しい蘭州牛肉面イケメントリオ

気になるお値段とお味ですが・・・
まず、お値段。拉麺だけで7元(約140円)、トッピングの牛肉が同じく7元で合計280円で写真の蘭州牛肉面が食べられます。神保町の「馬子禄牛肉面」は850円なので3分の1の値段です。
お味はもちろんおいしいです。麵は灰蓬草(はいほうそう)のエキスのおかげでソフトでマイルド。やわらかくてモチモチしています。スープは透明でコクがありしっかりした味です。そして、お肉もとてもやわらかく深みのある味ですが、塩ゆでしているだけなのか味はあっさりお上品。コクのあるしっかりした味のスープと一緒に食べると相性ばっちり。作り手の工夫を感じます。牛肉は最初からスープに付け込まれているより別皿で出してくれた方がいろんな食べ方ができて良いかもと思いました。これまで私は、牛丼を食べるとき、牛皿の選択肢はありませんでしたが、これからは考えてみようかと・・・。
ちなみに、神保町の「馬子禄牛肉面」は、細麺、三角麺、平麵の3種類から選べます。日本には細やかなサービスがありますね。

とってもおいしかったシシカバブレストラン「火焰山」(かえんざん)

蘭州の街のことにも触れておきましょう。
甘粛省最大都市の省都・蘭州は、古来より交通の要衝として栄え、河西回廊を西へ向かうシルクロードとチベットへ向かうチベットルートの分岐点となる巨大都市です。漢族に次いで多いのが回族、そしてウイグル族も多いため、彼らの文化の象徴であるシシカバブレストランがたくさんあります。私は、今回の旅で数回シシカバブレストランへ連れて行ってもらいました。お店によって結構味が違いましたが、どこも塩味含め各種スパイスが素晴らしいバランスでとても美味しかったです。そして羊肉だと感じさせない新鮮さも完璧で、食わず嫌いの人に食べて欲しいです。上海に新疆ウイグル族街のようなエリアがいくつかあり、そこで食べたシシカバブもとても美味しかったのを思い出しました。私個人の意見ですが、これまで日本で食べたシシカバブとは全然違いました。日本でも美味しいと思えるお店を探したいですね。ご存知の方がいらっしゃったら教えてください。よろしくお願いします。
11月から3月にかけての冬は氷点下になります。真夏でも寒暖差が激しいので注意が必要です。

小間切れで食べにくい

次にご案内したいのが、張掖の名物麺料理である炒炮(ちゃおぱ)です。
炒めた野菜を出汁で煮込み、うどんのような麺を小間切れにして、その上に煮込んだ野菜をたっぷりかけます。麺が小さいので味がよく染みこみます。今回連れて行ってもらったのが、
張掖の超人気店の「孫記炒炮」です。ここはセルフサービスなので、海外からのツアーのお客様はご案内しづらいのですが、当社ではご案内してしまいます。やはりローカルの人気店で食べたいですよね。多少の不都合は二の次です。ガイドさんが注文してくれて、ドライバーさんが出来上がったお料理を取りに行ってくれます。ただし、お店が満席の時はご勘弁ください。予約することができないのです。お味はしっかりしていて食べ応えがあります。ただ、麺が短いので食べにくいです。中国人は日本人よりも箸の使い方がうまく、器を持ち上げることなくスイスイ食べていました。日本人の作法からすると器を持ち上げて食べることになると思いますがそれで全然問題ありません。

いずれ近いうちに世界遺産に登録されます。早めの訪問を!

ではここで、今回の旅の大きな目的のひとつ、張掖丹霞地貌・七彩山をご紹介します。
2002年に発見された当時は中国でも知る人ぞ知る絶景ポイントとなっていました。その後、徐々に観光地としての整備が進み2008年ころから中国人の観光客が増え始め現在では、中国のグランドキャニオンとの呼称も定着しているようです。光に照らされ七色に輝くことから七彩山とも呼ばれる張掖丹霞地貌。赤い堆積岩で形成された美しい縞模様の地層が見られる広大なカルスト地形で、中国語で「丹」は赤・朱色を意味し「霞」は夕焼けなどで空が紅色に染まる現象、または雲が鮮やかな色に染まる「彩雲」のことを表すそうです。その名の通り、夕陽を受けて大地が徐々に紅く染まっていく様はまるで異空間にいるかのような美しさを体験できます。

ラグマン(粒条子)―いかにうまくまんべんなく混ぜるかがポイント

では、グル麺のお話を続けましょう。
敦煌の名物麺は粒条子(りゅうじょうし)(中国語でらじょうず)別名、拌麺(ばいめん)。日本のうどんに3~4種類の野菜の煮物や炒め物をかけてしっかりと混ぜ込みます。しっかり混ぜるのがポイント。ウイグル族のラグマンと同じです。ウイグルのラグマンは豚肉はイスラムの禁忌なので、多くは羊肉をつかった具材を乗せて食べます。ちなみに、ラグマンはウイグル語で、日本ではなぜかラグメンと発音するようになりました。
日本にもウイグル料理のレストランが増えてきているそうです。西新宿にあるシルクロードタリムは、敦煌のウイグル人にも知れていて日本を訪れることがあったら行ってみたいと言っていました。あと、駒込、高田馬場、さいたま市にもあるようです。興味のあるかたは探して行ってみてください。
話は戻りますが、敦煌の名物麺は粒条子を食べたお店は「粒条子」。普通盛りでもお腹いっぱいになります。上に乗せるものを何にするかによりますが、お腹にもやさしいお料理です。もちろん、辛くしたい人用に唐辛子がございます。

敦煌砂鍋―翌日は出発が遅いので少々多めにラー油をかけました

そしてもうひとつ敦煌のおすすめ麺料理が、「砂鍋」です。日本で言うところの鍋焼きうどんみたいなもので、強い火力で一気に調理してしまいます。冬の食べ物かと思いきや年中食べているそうです。夏は砂鍋を食べて汗をかいて涼をとり、寒い冬は心と身体をあたためる敦煌の人々に愛される麺料理です。

莫高窟と言えばこの角度の写真

日本に2年留学していた莫高窟の日本語ガイドさん

敦煌と言えばこれ、いや中国と言えばこれでしょうという観光スポットが莫高窟です。このお話をしないわけにはいきません。
東西文化を結ぶシルクロードの要衝都市であり仏教遺跡が存在する敦煌の町。その郊外に聳える砂丘、鳴沙山の麓。南北1600メートルにおよぶ断崖に492の石窟が並ぶ世界遺産の莫高窟があります。4世紀から1000年にも渡り作られた塑像はなんと2415体、石窟内部に描かれた壁画は延べ45000平方メートルにも及ぶと言われています。中国の四大石窟のひとつに数えられる前に、莫高窟はまさに世界最大の石窟寺院と呼んでも過言ではありません。

延々と続く莫高窟

敦煌の最盛期は唐の時代、華やかな色彩に彩られた浄土図や人間味溢れる菩薩像、2体の大仏などが有名です。また初期に作られた「敦煌のモナリザ」と呼ばれる仏坐像なども魅力的で必見です。莫高窟は1日あたり6,000名までという入場者制限があります。ピーク時は20,000名が訪れるそうで、敦煌は入場券を奪い合う戦場と化すそうです。
非常に残念なのですが、莫高窟の中では写真撮影禁止です。売店で売っている写真集を買いましょう。

この店の「豆豆麺」とシシカバブが一番美味しかった

さて、最後のグル麺のネタです。これが私の一押しかもしれません。トルファンの「豆豆麺」。ウイグルの食べ物なのでウイグル語では「ボルチャッアシ」。発音が難しいです。たぶん大豆だと思うのですが大量に入っていて何となくみその味もします。そして、細かく刻まれたパクチーの緑が彩り
を添えてくれます。これもまた食べ応え十分。ただ、この店も写真をご覧いただければおわかりかと思いますが、ローカル中のローカルの香りのするお店です。ガイドさんにお店の名前を聞いてみましたが、特にお店の名前はなく、何とか通りの角のモハメッドさんのお店と呼んでいるそうです。

トルファン駅を降りたらいきなり警察に拉致され取り調べを受けました

ここでちょっと触れておきたいことがあります。こんなと言っては大変失礼なのですが、こんなちいさなお店にも監視カメラが設置されているのです。来店者にIDカードを提示してもらい、ピピと訪問記録を作成します。中国政府のウイグル族監視の手は、これからもどんどん厳しくなっていくそうです。怖いですね。
何を隠そう、この私もトルファンの駅で警察に拉致されました。ただ、外国人が一人でいたからというのが理由です。ます最初に人相の悪い警官に荷物検査され、そして携帯電話のチェックです。撮影した画像をすべて見られました。恥ずかしいのも入っています。この旅に出る前にちょっと変わった川崎大師のお祭りを見学したときの写真がいっぱい入っていたのですが、そこで警官の動きがストップ。「なんだこれは」という顔をしたので英語で説明したらわかってくれたようでにっこりしながら携帯電話を返してくれました。その後はパスポートと手配確認書を見せてそれで終わり。最後は美人さんの公安職員が出てきて書類を書いていました。

私の大好きな雰囲気のお店。でも一人だったら入れなかった

さて、お話を戻しますが、このお店はシシカバブのお店です。トルファンのガイドさんが強く推奨して連れてきてくれたお店で、羊レバーの素焼きを是非食ってみてくれと言われたのですが、その時の私は、明日の長時間の観光のことが気になり、少々弱気になっていたので断ってしまったのです。これが今回の旅行の唯一の心残りです。翌日観光が終わり、高速鉄道でウルムチに移動する前の食事場所に、この同じお店で羊レバーの素焼きを食べたいとガイドさんにお願いしてみたところ、営業開始は午後6時から。まだ4時にもなっていなかったので断念せざるをえませんでした。本当に後悔しています。

先進的な地下水道「カレーズ」面白かった

干しブドウ農家の愛嬌たっぷりお子様

トルファンにも見るべき観光スポットが多数あります。
盆地のため夏の暑さは格別で50度に迫ることもあるそうです。ウイグル族が多く暮らし、葡萄の産地としても有名で干しブドウは格好のお土産です。典型的な中国の都市景観の中心街から少し離れただけで長閑な昔ながらの田園風景を見ることができます。見どころが多く玄奘三蔵法師が説法をした伝説の教室のある「高昌故城」、夫婦のミイラが現存する「アスターナ古墳群」、ウイグル族の生活や仏教文化を知る上で貴重な資料「ベゼクリク千仏洞」、西遊記に登場する「火焔山」、先進的な地下水道「カレーズ」、辺境防衛の軍事基地「交河故城」などです。高昌故城、交河故城は、「シルクロード・長安~天山回廊の交易路網」の構成資産に含まれる世界遺産です。

本場の「ポロ」とウイグルレストラン

グル麺旅のお話はとりあえずこんなところですが、今回の旅でずっと麺ばかり食べていたわけではありません。ではここで、他の注目すべきお料理を紹介しましょう。

このガイドさんの弟さんが勤めるウイグル料理レストランで「ポロ」を食べました。本場のポロを食べるのは初めてでわくわくしながら食べました。量が非常に多く、絶対食べきれないと思いながら食べ続けていたら何とか食べられました。お腹パンパンになりましたが・・・。こくのある油なのかこれもまた食べ応えずっしり。これもまたおすすめです。

天水の農家楽レストランと野菜料理

ここ数年、中国全土で人気を集めているのが「農家楽」というアクティビティです。簡単に言うと都会で暮らしている人々が田舎に出向き、1日畑仕事をして自然に溶け込み、その畑で採れた野菜で作ったお料理を食べて帰ろうというものです。そこでしか採れない珍しい野菜なんかもあってとても人気だそうです。私も天水の農家楽レストランに連れて行ってもらいました。農家の軒先にある食堂みたいなところで食べます。何となく野菜が新鮮な気がしておいしいかったです。そんな気分にさせる雰囲気も楽しみのひとつです。

迫力の魅力たっぷりの夜市

中国は夜市が盛んなところで、蘭州の正寧路夜市に連れて行ってくれました。100mくらいの長さの道路の両側にびっしりと並んだ屋台街で迫力満点。訪問客も多く歩くのがたいへんです。ウイグルのナン屋さん、シシカバブ、くだもの、羊の頭も売っていました。ホテルからローカルバスに乗って行ったのですが夕食後なのでお腹いっぱいで何も食べることができませんでした。でも、見ているだけで血湧き肉躍る。とても楽しい時間を過ごすことができました。

今回の旅は、おいしいお料理を食べつくした感がありました。こんな旅はなかなかありません。シルクロード一帯は雨が少ないので米作には適していません。だからこその麺料理なのでしょう。「食」へのこだわりが強い中国人だからこそ、おいしい麺料理を次から次に作り出してきたに違いありません。
シルクロード。食、観光すべての面でハイレベルなエリアだと思います。

蘭州 ★★★★★ 本場蘭州牛肉面を是非食べに行こう!
張掖 ★★★★★ 世界遺産に登録される前に訪れたい張掖丹霞地貌・七彩山
敦煌 ★★★★★ 死ぬ前に絶対見ておきたい莫高窟
トルファン ★★★★★ シシカバブの本場はここ。トルファンに来ずしてシシカバブは
語れない

(2018年4月13日~21日 旅人:森  裕)

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