かつてはロシアの首都・サンクトペテルブルグ、かつてはリトアニア大公国の首都・ビリニュス、かつてはロシア第三の都市・リーガ、そしてかつてはメネスクの名でバルト海と黒海を結ぶ貿易の中心地・ミンスクを訪問した。
イスタンブール経由で最初の訪問地サンクトペテルブルグに夕方到着。明日からはガイドさん付の観光はあるものの、少しでも街を見ておこうと気がはやる。やはり何と言ってもエルミタージュ美術館の姿だけでも見ておきたいと寒い中、街に出た。それは広いスペースの宮殿広場を真正面に、左にエルミタージュ美術館、右に旧参謀本部、何かこみ上げてくる充実感。ここはこの街の中心、観光の出発点だ。
入館は明後日にして、宮殿橋を渡ると、この街が港街であること、昔は沼沢地であったことが偲ばれる。元に戻ってネフスキー大通りを散歩すると、街の両側には由緒ある建物がこれでもかと並んでいる。ビックリするほど人も多く圧倒されそうだ。ここが本当にロシアなのだろうか。まるでパリかロンドンのようである。
最初の晩は有名なレストラン「文芸カフェ」で名物「ボルシチ」と「ビーフストロガノフ」を楽しんだ。もちろん本場の料理の味は最高。
2日目の午前中は市内から約1時間の所にある、有名な「エカテリーナ宮殿」を観光。
1724年にピョートル大帝の妃、エカテリーナ1世のために建てられたこの青い塗装のロシア・バッロク様式の宮殿は豪華そのもの。建物内部の大広間、琥珀の間、絵画の間、緑の食堂、青の客間等とその贅沢さにため息がでる。公園も宮殿に劣らぬ美しさ。浴場や小宮殿、橋やモニュメント、彫刻が点在している。
午後は、噴水と庭園と宮殿のアンサンブルのペテルゴーフ宮殿を訪れる。やはりここもピョートル大帝によって1714年に建設が開始された。大宮殿の中は残念ながら撮影禁止だがその内部はエカテリーナ宮殿にも負けない豪華さ。ここの噴水は私がこれまで見た中で最も美しい。やっと晴れた青空に映えて、黄金の輝きの水を噴き上げている。大滝だけでも37の銅像、64の噴水、142の噴出し口がある壮大なスケールだ。
3日目はサンクトペテルブルグの街歩き。かつての帝政ロシアの首都であったサンクトペテルブルグには数え切れないほどの宮殿・教会がある。どこを歩いても他の町では名所となるものばかりなので焦点を絞って回りたい。先ずは町全体が見渡せるイサク聖堂の展望台に登って町全体を見渡すことにした。建物も40年もかけて建てられた世界でも有数の荘厳たる聖堂だ。
次にメインストリートのネフスキー大通りを歩いて、両側にある由緒ある建築群を見ながらウインドーショッピングやピープルウオッチング。仕上げは通りから少し北に入った所にある純ロシア風教会の「血の上の救世主教会」を訪れた。
本日のメーンイベントは世界屈指の美術館の一つであるエルミタージュ美術館。サンクトペテルブルグを訪れる人は必ず行くと言っていい。収蔵美術品は約300万点。展示室を歩いて回ると20㎞以上に及ぶ。エルミタージュの意味は「隠れ家」だが、当時のエカテリーナ2世がこっそり自分自身のために楽しんでいた館が、今では壮大な美術館に変身した。建物は4つに分かれているが、それぞれ廊下で繋がっているので見学するときは気づかず歩いている。先ずは宮殿装飾そのものに圧倒され、イタリア、フランドル、オランダ、スペイン美術と名作が揃っている。
最近の人気エリアは近代美術が展示されている旧参謀本部新館だ。モネ、セザンヌ、ゴーギャン、マテイス、ピカソ、ゴッホ、ルノワール、アンリ・ルソーが一挙に見られる必見の館である。
サンクトペテルブルグを去る前に、ロシア美人を紹介。
4日目は早朝2時半にホテルを出発して、飛行機にてリトアニアのビリニュスへ向かう。
世界遺産のビリニュスの旧市街を回るには、先ずは町の全貌が見渡せる北の端にあるゲディミナス城の登ってみるのが定番のようである。石畳の回り階段を登りきると、カトリック特有の柔和なバロック建築の多い和やかな町が一面に見えてくる。
反対側は新市街だがこちらも整然としてきれいな町だ。
この旧市街の景色を頼りに下に降りていくと、見事な大聖堂、王宮、カテドゥロス広場がある。
さらに南に下ると有名なビリニュス大学が見える。中も見学可能だ。
道を左に折れると、かのナポレオンが自分の国に持ち帰りたいと言ったゴシック造りの聖アンナ教会にぶつかる。
通りに戻り、さらに南下すると町に中心の旧市庁舎と市庁舎広場にあたり多くの人で賑わっている。
さらに行くと旧市街の南端「夜明けの門」に突き当たる。歩いて回るのに丁度いい広さの町だ。
5日目は専用車でカウナスの街にある「杉原記念館」を訪れる。ビザを発行して多くのユダヤ人の命を救った杉原千畝の実際の職務室や写真を見ると、尊敬の念と感謝の気持ちが沸き起こってくる。日本人の誇りである。
午後はシャウレイの街の北東約12kmにある、「十字架の丘」を訪れる。それは遠くからみるとまるで小山のように見える。大小無数の十字架が建ち並び、積み重ねられて丘を形成している。神聖さと荘厳さを感じさせる異空間だ。
6日目はラトビアの首都リーガの旧市街巡り。リーガはバルト3国の中での最大の都市。世界遺産の旧市街は見所満載だ。先ずは聖ペテロ教会の123mの塔(展望台は72m)に登り、町全体を見渡してみる。9ユーロの入場料はいささか高いと思ったが、元は十分は取れた。数多くの教会、ハンザ商人の商家、市庁舎など所狭しと並んでいる。新市街とのバランスもいい町だ。
次にリーガを代表する建築・ブラックヘッドの会館へ。大時計や数々の彫像、レリーフが美しい。
市庁舎の脇を抜けて行くと、街の中心・ドゥァマ広場には沢山の人が溢れており、その前にバルト3国最古の教会「リーガ大聖堂」がでんと構えている。高さ90mの塔を持つ教会はその威厳を今も放っている。
三人兄弟の家や趣のあるトゥルァクシュニュ通りには城壁が残り火薬塔へと続いている。
リーヴ広場の北側の建物の屋根の上に伸びをする猫が見えるのが通称「猫の家」だ。今も悪いねずみを屋根の上から見張っているかのようだ。
屋根の上ばかり見ていたら、いくつもの風見鶏を見つけることができた。
7日目はベラルーシのミンスクへ。この日は近郊の2つの世界遺産、ミール城とニャースヴィシュ宮殿を訪問。ミール城は16世紀前半に、地元の有力者ユーリ・イリイーニチによって築かれた中世の城である。緑豊かな公園と湖に囲まれ、のどかな景色とレンガ色の城が調和した人気スポットだ。2,000年には世界遺産に登録された。5つの塔はそれぞれ異なったデザインで建てられているが形状はほぼ同じ。可愛いゴシック様式の城だ。
ミンスクから南西約90㎞にあるニャースヴィシュ宮殿は2005年に世界遺産に登録された。16世紀にリトアニア大公国の最高実力者ラジヴィル家の富と名声を誇示するために建設が始まった。以降1939年にソ連の侵攻によって追放されるまで改築が繰り返された。今は博物館となり、当時の豪奢な内部を回覧できる。この宮殿(城)の立地環境は実に見事だ。ゲートから700~800m続く道は両側の池に囲まれ、訪れる宮殿に対する期待を膨らませる。その池はまるで魔法のように空の雲を池面に映しだし、絵画そのものだ。城も堀に囲まれ、美しい姿を際立たせている。
最終日はミンスクの街の観光。ベラルーシ共和国の首都・ミンスクは第2次世界大戦によって破壊されたが、旧ソ連風の町並みにすっかり復興された。印象はやはり機能的なクールな整然とした感じを受ける。10月広場や勝利広場はその代表といえる。
一方で、レーニン通りにあるフリーダムスクウエア(通称、歴史センター)はヨーロッパ的な雰囲気が味わえる地区だ。旧シテイホール、聖霊大聖堂を中心にレストランやパブなど大いに観光客で賑わっている。
近くのトラエツカヤ旧市街区も戦前の家々を復元した一画だ。石畳の小道でつながれ、民芸品や薬局など点在し、散歩に最適だ。スヴィスラテ川の中程にはアフガニスタン出兵慰霊碑「涙島」もある。
冒頭のコピーでかつての街などと、4つの街を過去の街のような表現をしてしまったが、大きな間違いだった。美しい町並み、歴史を感じさせる町並み、中世ヨーロッパを思い起させる建物群、教会、大聖堂、美術館等、それでいてそれぞれの街に特徴がある。再訪する時があったら選ぶのに苦労するに違いない。
2016年9月20日~29日
本山 泰久
おすすめポイント
*サンクトペテルブルグ ★★★★★ エルミタージュ美術館、聖堂、教会、美味しい料 理。言うこと無しの街。
*ビリニュス ★★★★ カトリック特有の柔和なバロック建築の多い和やかな街
*リーガ ★★★★★ 活気溢れる新旧入り混じった歴史の街
*ミンスク ★★★★★ ヨーロッパとロシアの中間の匂いがする不思議な街
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