トキメキ★胸騒ぎ24時~ベルギー・ルクセンブルク・オランダ~

トキメキ★胸騒ぎ24時~ベルギー・ルクセンブルク・オランダ~



10月後半、ベネルクスを旅する機会を得ました。オランダやベルギー、ルクセンブルクを旅行に行くというとチューリップや風車みて、チョコレート食べてビールも飲んで、ってどれも日本でもできそうだけど、というイメージです。これらの国に惹かれる人が多いのはなぜなのか、疑問に思いつつ旅発ちました。
今回下記のような日程で移動しました。
1日目 関空発・カタール航空夜行便
2日目 ブリュッセル着【ブリュッセル泊】
3日目 ゲント経由でブルージュへ【ブルージュ泊】
4日目 ディナン観光後ナミュールヘ【ナミュール泊】
5日目 専用車でアルデンヌ地方の村と古城を巡る【デュルビュイ泊】
6日目 専用車でアルデンヌ地方の村とオルヴァル修道院を訪ねる【ルクセンブルク泊】
7日目 アントワープへ【アントワープ泊】
8日目 専用車で南オランダを巡る【デルフト泊】
9日目 アムステルダムへ【アムステルダム泊】
10日目 アムステルダムと北オランダを観光【アムステルダム】
11日目 ブリュッセル空港から出発


旅行してわかったのはベネルクスの国々は首都であってもこじんまりしている街が多いので町歩きを楽しむにはこれ以上ない国々だと感じました。特に歴史深いブリュッセルやブルージュ、アムステルダムなどの都市は街の中心地は車が入れないような細い路地が多く車の通行を気にすることなく気軽に散歩できます。オランダもベルギーもそこまで大きく差はないだろうと思っていましたが大間違いで、オランダは風光明媚で美しい自然が多い国、特にアムステルダムに関しては優れた文化都市だと感じました。ベルギーは歴史ある教会や古城が素晴らしく、何よりフルコースの高級ディナーからフライドポテトやワッフルなどのB級グルメまでハズレがないのが嬉しい。ルクセンブルクは世界で最もGDPが高い国らしいのが見て取れて、とても綺麗で道路もちゃんと整備されており治安の良さも感じました。ベルギーやオランダはもちろんドイツの影響を受けおり、ほかとはまた違った印象を持ちました。
アートがメインでも食事がメインであっても、遺跡や古城はもちろんショッピング、自然のある風景などベネルクスの旅行はどの視点で旅行しても、朝も夜も期待に応えてくれる国々です。
10月31日 ブリュッセル
カタール航空にてブリュッセル空港に到着したのは午後13時。初めて降り立つベルギー。ブリュッセル空港に着くとなんだか甘い匂いが漂っていた。さすがワッフルの国、ベルギーだ。空港の中でもふんわりあたたかい匂いがするなんて。
入国審査と荷物のピックアップを受け、地下一階の空港駅へ。入国審査は入国カードも質問もなく案外すっと通れた、隣のカウンターの日本人の男の子は入国管理官から質問を受けていたので人によるのかもしれない。
地下一階の駅の券売機ではコインが使えなかったので、窓口で購入。ブリュッセル中央駅まで2等席8.5ユーロだった。ガイドブックで見たよりも高くなっている。窓口のおばさんから言われた3番のりばからはルーヴェン行きとブリュッセル方面行きの列車が出ていた。ブリュッセル行きの電車に乗り込み約20分、ブリュッセル中央駅に到着。このアール・ヌーヴォー様式の中央駅は、中央という名前にしては、割とこぢんまりとした印象。南駅が現在は長距離路線のメインターミナルになったためだだと思われる。この中央駅からグランプラスは徒歩5分くらい。地下鉄に乗り換えて、今夜の宿泊ホテルの最寄り駅、ドゥ・ブルッケールへ。中央駅からは一駅。列車代金は2.1ユーロ。例によってコインがなかったので、カウンターで切符を購入。切符を購入した後、刻印機に入れる。ドゥ・ブルッケール駅からでて今宵のホテル「サン・ニコラ」へは徒歩で約5分。グランプラスを抜けてホテルにいくことも考えていたのだが、中心部は石畳の道なので地下鉄を使って正解だった。
<サン・ニコラ Hotel Saint Nicolas>
サンタクロースのモデルとされる聖ニコラス教会近く、グランプラスまで徒歩で5分の好立地の3つ星ホテル。こじんまりしており最初どこにあるかわからなかった。日本食レストラン「カブキ」の隣に入り口がある。部屋は狭めだが、清潔でデザインもおしゃれ。ホテルのスタッフも感じは良い。室内にはセーフティーボックス、テレビ、ドライヤー、暖房設備あり。WIFIも使える。バスタブ、スリッパ、冷蔵庫はない。

サン・ニコラ ロケーションはgood、部屋は小さめ

さっそく荷物を置いて、明るいうちに街に繰り出した。
<ブリュッセル>
EUやNATOの本部が置かれていることからベルギーだけでなくヨーロッパの首都とも評されるブリュッセルは多種多様な魅力に溢れている。フランドル地方とワロン地方の言語境界線近くに位置するブリュッセルではフランス語とオランダ語が公用語だが、街を歩けば英語だけでなく隣国のドイツ語などあらゆる言葉が飛び交う。住む人々も白人だけでなく、黒人やアジア人とともにヒジャブで頭を覆ったイスラム圏の人々を目にすることができるだろう。ブリュッセルの寛容さは荘厳な中世アール・ヌーヴォー様式をはじめとした様々な建築と現代的な建築が混在しながらも緻密に設計された街並みからも伺うことができる。チョコレートやビールだけが魅力じゃない、国際都市でありながらどことなく感じる人懐っこさこそブリュッセルの魅力なのである。
<グランプラス>
ホテルをでて街を気の向くままあるいてみる。すると通りの向こうに華麗な装飾の施された一角が目に飛び込んできた。グランプラスである。かの「レ・ミゼラブル」の著者として知られるヴィクトル・ユゴーが「世界で最も美しい広場」と評したブリュッセルを代表する観光スポットである。ユゴーの言葉は100年以上後世を生きる我々にも大きく頷ける。一際目立つのがブリュッセル市庁舎。このフランボワイヤン・ゴシック様式の市庁舎の尖塔はグランプラスから離れたところからも見え、まさにブリュッセルのシンボルとも言える。その市庁舎の向かいに立つのが「王の家」とも呼ばれるブリュッセル市立博物館。後期ゴシック様式の美しいファサードをもつ。その南北を取り囲むのがギルドハウスとブラバン公爵の館。ギルドとは同業者組合のことで、相互扶助を目的とした寄合所がこのギルドハウスだ。注意深く建物の装飾をみると当時の職業表す紋章が施され興味深い。ブラバン公爵の館はバロック・イタリア風フランドル様式ファサードをもち、現在はグランプラスに面した唯一のホテル「サンミッシェル」とレストランなどになっている。 昼のグランプラスも彫刻が鮮明に見えておすすめだが、夜になるとライトアップされより立体的に、ロマンチックに表情を変える。昼のグランプラス・夜のグランプラス、どちらも訪れてほしい。

グランプラス 王の家

夕刻のグランプラス

夜のグランプラスもいい

朝は人が少ない

私はグランプラスにあるかつての醸造所だというビール博物館にいって(ビール込み、5ユーロ)、ビールの製造工程を学んだ後はピルスナービールをのみしっぽり過ごした。

グランプラスのビール博物館では生ビールも飲める

またグランプラスからはあの「本物の」小便小僧まで徒歩でいけるとあって行ってみた。やはり小便小僧は世界的にも人気なようでたくさんの人で賑わっていた。季節によっては衣装を着ていることも多い小便小僧だが、この日はデフォルトの全裸だった。しかし思った以上に小便小僧の肌の色がチョコレート色なのが気になった。

チョコレート色の小便小僧

その後、ワッフルファクトリーというお店でリエージュ・ワッフルとコーヒーで一休み(3.2ユーロ)。ワッフルにはリエージュ・ワッフルとブリュッセル・ワッフルがあるらしい。リエージュ・ワッフルは円形で表面がカリッとした甘い生地でできているのでプレーンでいける。 対してブリュッセル・ワッフルはふんわりした食感で甘さが控えめ。そのためブリュッセル・ワッフルにはチョコレートなどをトッピングして食べるのが人気。なんでブリュッセルにいるのにリエージュ・ワッフルを選んじゃったのだろうと少し思ったが美味しかったのでどうでもよくなった。コーヒーとの相性も抜群。街角にはワッフル屋さんが大阪のたこ焼き屋さんや原宿のクレープ屋さん並みにあるので少々行儀悪く、食べ歩きしても問題なし。

リエージュ・ワッフルとコーヒー 3.2ユーロ

ガイドブックにのっていた「小便小僧の妹」と呼ばれる、ジャンネケ・ピスを探しにいくことに。小便小僧の女バージョン、というとあまり想像できない。レストラン街、イロ・サクレ地区をぬけたところにその像はあった。ガイドブックにも書いてあったが実に真面目に作られており面白い。この像はなんと呼べばいいのだろう「小便幼女」だろうか。 ひっそりとした裏路地の鉄格子に入れられ、華やかな場所で放尿するお兄さんとは大違いだ。しかしなぜ同じ放尿シーンの再現である「小便小僧」愛らしいのに「小便幼女」だけ隠されたような場所にあり、なぜ見てはいけないものと思ってしまうのであろう、どこか我々に哲学的な問題提起をなげかける像なのは間違いない。
その後、ホテルのスタッフに教えてもらったレストランへ。「シリオン」と聞こえたので「シリオン、シリオン・・・・」と看板を注意深く見て歩いていたのだがどうやら「シェ・レオン」というレストランのようだ。私はムール貝のクリームパスタとシェ・レオンオリジナルのビール大を注文。パンもついてきて合計24.05ユーロ。ムール貝は大変美味しかったのだが、パスタがアルデンテでないのには少しがっかり。あとから知ったことだが、このお店はムール貝が美味しいことでしられる有名店だそうで、ガイドブックはもちろん日本のテレビでも紹介されたことがあるらしい。

「シリオン」ことシェ・レオンのパスタはアルデンテではなかった

ホテル近くのスーパーマーケットに立ち寄り、この日は就寝。
11月1日 ゲント、ブルージュ
朝食を食べた後、グランプラスまで散歩。昼や夜とは違い、人通りも少ないためゆっくり観られる。 朝のグランプラスは気持ちがいい。春から夏にかけては夜中にライトアップするみたいなのでまたグランプラスを見るためにベルギー来てもいいな。
地下鉄でブリュッセル中央駅まで移動。この日はブルージュまで行く。途中でゲントにて途中降車する予定だ。
09:59発のIC列車を待っているが予定時刻をすぐ着ても来ない。そうしていると次の列車がきた。電光掲示板をみていると25分遅れのようだ。25分遅れということは、次の10:21発のICに乗ったほうが早い。10:21発のICに乗り込むがやはり前の列車の遅れのためか混雑しており、座れなかった。MIDI駅で何人かおりたのでMIDI駅からは座れた。ブリュッセルから約30分、ゲント駅へ。ゲントではコインロッカーがあったので、それを使う。コインがあまりなかったのでトイレ(0.5ユーロ)にて両替する。
コインロッカーには大・中・小の3サイズがありスーツケースならば中で事足りた。ロッカーの値段は3.5ユーロ。硬貨をぴったりの金額で入れないと受け付けてくれなかった。お金を入れるとバーコードが書かれたレシートが出てくる。開ける時はこのバーコードをかざせば解錠できるという仕組みだ。
ゲント駅から旧市街は約2キロ離れており、駅からでて左手のトラム乗り場1番に乗車する。料金は1.3ユーロ。ガイドブックには1番に乗るしか書いていないので、とりあえず1番のトラムに乗ったが逆方面行きだった。まあ循環線だから問題なかったけど。
<ゲント>
東フランドル地方の州都であるゲント。フランドル平原を流れる大動脈のスヘルデ川と町近くのレイエ川が合流することからケルト語の合流点「ガンダ」が語源になったと言われる。水運に恵まれるゲントは13世紀から14世紀にかけてパリに次ぐ重要な交易都市であり、マルコ・ポーロの文献においても触れられている。ブルージュと並ぶ中世都市として名高いゲントだが、聖バーフ大聖堂、鐘楼と繊維ホール、フランドル伯居城など堂々とした堅牢な造りで、その尖塔はまさに天にも届きそうなくらい真っ直ぐに伸びている。可愛らしいブルージュの街並みとは対照的である。ファン・アイク兄弟作の「神秘の子羊」などフランドル絵画の宝庫としても知られており、ブルージュ同様、訪れる人々を魅了している。

聖バーフ大聖堂とファン・アイク兄弟の銅像

聖バーフ大聖堂を見学した後、金曜広場へ。金曜広場では青空マーケットで賑わっており、果物や洋服、レコード、本などあらゆるものが売られていた。金曜広場の四方にはレストランやカフェが軒を連ねている。私は金曜広場の屋台であつあつのフリットとハンバーガーを手にブラスリー・デュル・グリートにてダークビールと共に。

カフェでくつろぐ人々

外人は様になるね

子供でも様になるね

金曜広場ではマーケットが開かれていた

金曜広場での屋台で昼食

その後、川沿いをのんびり散歩。立ち並ぶギルドハウスを改築したレストランでは、昼間からくつろぐ人々がレイエ川を行き交うボートを眺めている。なんとも良い風景だ。夜のゲントも見てみたいが次なる目的地ブルージュへ向かうべく、ゲントを後にした。

ゲントのレイエ川沿いは気持ちがいい

ゲントからICで約30分、ブルージュ駅に到着。ブルージュ駅からホテルへはタクシーで。ホテルは駅から近いことは知ってはいたもののスーツケースを持っていたので、タクシーをつかうことに。何てことはない、駅のバスが向かう最初の停留所の近くだった。タクシーはメーター制で初乗り7ユーロ。
<アルベール1 Hotel Albert 1 Brugge>
駅からタクシーで1、2分。バスの停留所近くの3つ星ホテルがこのアルバート1。ブルージュの中心部の入口にある。クラシックな佇まいで室内もどことなくアンティークなかわいらしい雰囲気。比較的広め。バスタブはなくシャワーのみ。湯沸かし器、冷蔵庫やスリッパはない。ドライヤー、セーフティーボックス、無料のWIFI、暖房器具あり。夜9時を過ぎると自動的に玄関のドアが施錠される(部屋の鍵で解錠できる)ので、鍵は持ち歩くこと。

アルベール1のお部屋

荷物をホテルに残して、ブルージュ観光へ出発。
<ブルージュ>
運河に囲まれた中世都市とブルージュ。織物工業で隆盛を極め、12世紀から14世紀にかけてハンザ同盟の交易都市としてヨーロッパ経済の中心を担った。しかし、15世紀にはいるとブルージュと北海を結ぶ水路が流れ込む土砂により商船の運行ができず、港の機能が失われ、ブルージュはまるで瞬間冷凍されたようにその後4世紀にわたって人々の記憶から忘れ去られることとなる。再度注目を浴びることとなったのは19世紀。フランスの高級紙「フィガロ」に掲載されたジョルジュ・ローデンバックによる小説「死都ブリュージュ」。当時の旅行ブームと相まって欧州各地から観光客がブルージュに集まることとなった。太陽が運河をキラキラと輝かせ、観光客で賑わう華やかな昼間。一方、街から人の姿が消え、静まり返った夜中のブルージュは寂寥感が漂う。真夜中のブルージュはかつてローデンバックが記したように、忘れ去れていたという当時の面影を今もなお我々に残している。
ホテルを出て真っ直ぐに進むと「救世主大聖堂」が見えてくる。ブルージュ最古のゴシック式の教会で内部は博物館にもなっている。さらに進みつづけるとマルクト広場に到着。ブルージュ市街の中心地であり州庁舎や鐘楼に四方を囲まれている。夜はライトアップされ、馬車も走り、中世の雰囲気を楽しめる。マルクト広場を抜けると、「聖血礼拝堂」のあるブルグ広場へ。「聖血礼拝堂」は十字軍がコンスタンティノープルから持ち帰った「聖血の遺物」が納められている。毎年この広場ではキリスト昇天祭が催され、礼拝堂にて崇拝式が執り行われる。帰りは運河沿いを辿ってホテルへ向かう。しかしなぜか「ゲントの門」という中心部の南西側の出口にきてしまう。迷い迷ってようやくホテルへ到着。11月になると夜7時頃にはもう真っ暗。予定外に歩く羽目になってしまったため、この日はレストランに行かず駅のサブウェイで食事。

夜のマルクト広場

幻想的な空間

夜も更けると静まりかえる

静寂の中で夜の散歩も楽しいブルージュ でも道に迷いそう

朝のブルージュもいい感じ

かわいい看板

朝のマルクト広場

朝日に照らされた屋根

11月2日 ナミュール
朝7時朝食前に、ブルージュの街を散歩。7時といっても11月のベルギーはまだ薄暗い。昨日と少し違うルートでマルクト広場へ。ブルージュは一つ一つが絵になる。お店屋さんの看板、家の前に停めてある自転車、街角のパン屋、石畳の続く道、レンガの屋根。写真に夢中になるとあっと言う間に夜が明けた。ブリュッセルもそうだけど、朝早起きして散歩すると出歩いている人が少ないため雰囲気を満喫できる。
ブルージュの街を大いに楽しんだあと、ホテルで朝食。荷物を整理してチェックアウトを済ませる。ホテル前のバス乗り場からブルージュ駅に、一路ブリュッセルへ。
ブルージュからブリュッセルへは約1時間。MIDI駅にてナミュール行きの列車に乗り換え。ナミュール行きの列車は1時間に1本なので、乗り継ぎの際は遅れないように。ナミュール行きのIC列車はブルージュ行きと比べて少し古めの車体だ。MIDI駅から約1時間でナミュールに到着。この日の宿泊はシャトー・ナミュール。シャトー・ナミュールは丘の上のシタデル付近にある。この後ナミュール市街を観光したあと、ナミュールから列車で30分離れたディナンにいって観光する予定なので、ホテルに荷物を預けるとまた駅までタクシーで戻らなければならない。よってナミュールのコインロッカーにスーツケースを預けることにした。こちらも中サイズで3.5ユーロ。

ナミュール駅

ナミュール駅の売店で買ったワッフル

<ナミュール>
ムーズ川とサンブル川の合流地点に広がるナミュール。ブリュッセルとルクセンブルクを繋ぐ
交通の要所であり、ワロン地方の経済・産業の中心都市である。アルデンヌの古城めぐりの玄関口として観光客で賑わう。市街の聖オーバン大聖堂や聖ルー教会など派手さはないものの悠然とした佇まいで、ブリュッセルやブルージュの市街地とはまた違う趣がある。また高台にあるシタデルからはナミュール市街や渓谷が織りなす絶景を楽しめる。 宿泊はシタデル近くの古城ホテル、シャトー・ナミュールにステイしたい。深緑と静寂に包まれたこのホテルでは市街の宿泊では味わえない清涼感に浸ることができる。また1階にあるレストランは気軽にワロン地方のコース料理を楽しめる。
ナミュールの街を一通り歩くには2時間ほどでも十分楽しめる。シタデルにも登りたかったが、それはシャトー・ナミュールに泊まった翌日にとっておくことにする。
ナミュールからの列車に飛び乗り、ディナンへ。
昼ごはんを食べていなかったので駅構内でワッフルとコーヒーを買う。2.5ユーロ。ナミュール
ワッフルはやはりリエージュ風であった。
<ディナン>
ナミュールから列車で30分。ムーズ川の渓谷と玉ねぎ型のノートルダム教会、そして巨大な岩壁
が織りなすダイナミックな光景が印象的な街。絵葉書にもなりそうな風光明媚な街だが、過去に戦争の舞台となり、多くの死者をだした歴史がある。軍事的な要地であったディナンは幾度となく略奪の舞台となり、フランス、オーストリア、ドイツなど近隣諸国の支配下に置かれたのだ。ディナンの岩壁の上にあるシタデルは、ディナンの歴史資料館になっており、当時の血なまぐさい戦争の経過を知ることができる。そういった黒い歴史がある一方、サックスフォーンを開発したアドルフ・サックスの生まれ故郷であることから至る所にサックスのモチーフが飾られており、夜になるとサックス型のネオンが輝きだす。 ジャズバーからは楽しげな音楽が漏れてくる。浮き足立つような、それでいて過去の歴史がまるでディナンの岩壁のようにどっしりと我々を見据えているような不思議な街だ。
ディナンのブラスリーに、オルヴァルビール(4ユーロ)を飲みつつ、夜になるのを待った。夜景をみたあと、ナミュールに戻る。

夜景がダイナミックなディナンのシンボル・ノートルダム教会と巨大な岸壁

ワロン地方は秋だね・・・

ディナンはサックスの生まれた町でもある

<シャトー・ナミュール Chateau de Namur>
ナミュール駅前のタクシーでシャトー・ナミュールまでメーター制のタクシーで10分、約8ユーロ。バスも出ているそうだが、本数は多くないので行きはタクシーが無難。シタデル近くの高台にあるので市街地にはない静けさがあり、他の都市とくらべて手軽にリラックスした雰囲気を味わえる。パステルカラーの室内は広め。暖房器具、ミニバー、ドライヤー、バスタブ、コーヒーメーカーや湯沸かし器まである。WIFIは無料。スリッパ、セーフティーボックスはなかった。なお本当の古城ではなく、古城風のホテル。しかし値段とクオリオティーを考えれば有り余るほど充実しているのでナミュールに泊まるのであればぜひお勧めしたい。
シャトー・ナミュールにチェックインしたあとレストランでワロン地方のベルギー料理に舌鼓。コースでなくアラカルトを選んだ。スタッフにお勧めをきいて、アイリッシュ・ビーフのステーキにした。ここがフランスなら食事にはワインを合わせなければならないのだが、ワインにはほとんど知識がない私にはビールを食事に合わせられるベルギーのレストランは気に入った(ビール2杯とメインディッシュのみで約35ユーロ)。

シャトー風ホテルだがクオリティーは高いシャトー・ナミュール

シャトー・ナミュールでの夕食はレストランがおすすめ

11月3日 アルデンヌ地方の古城と小さな村めぐり
朝食前にシャトー・ナミュール付近を散策。シタデルまで歩いて入場しようとしたがまだ開館時間に達していなかったので、入場せずに帰ってきた。
シャトー・ナミュールの朝食を堪能し、荷物を整理してチェックアウト。
<アルデンヌ地方の古城と小さな村めぐり>
この日と翌日は専用車をチャーターしてアルデンヌ地方をまわる。
運転手のピエールと合流し、出発。
ナミュール→アンヌヴォア城→クリュペ→GAUOISEゴールワーズ醸造所→レフ修道院→ディナン→フレイエル城→ヴェーヴ城→セル→サン・レミ・ノートルダム修道院→シャトー・ダッソンビル→モダーヴ城→VERVOZ(ヴェルヴォ)城→デュルビュイ、というルートでこの日はまわった。
まず目指すはアンヌヴォア城。
この古城を特徴づけるのは何と言っても巨大な庭園。その庭園はフランス式、イギリス式、イギリス式の3様式を取り入れており、季節ごとの移り変わりを堪能できる。彩り豊かな庭園に囲まれた古城はまさに緑の宝石のようで、自然と調和した柔和な造形美をつくりだしている。

アンヌヴォア城

その後、クリュペというベルギーの美しい小さな村に選ばれた村を訪ねる。水資源が豊富でかつて製紙、製塩、鍛冶、ビール醸造などの産業で栄えたそうだ。村の中心には村人が造り上げたという聖アントワーヌを祀る洞窟教会があり、この村の景観を独特なものにしている。クリュペを後にし、近くのビール工場、GAUOISE(ゴールワーズ)醸造所とレフ修道院へ。どちらも見学は出来なかったが、レフ修道院は、ベルギーで最も飲まれているトラピストビールの銘柄。トラピストビールとは醸造所を保有するトラピスト会の修道院で作られるビールのこと。世界に7つしかなく、その内6件がベルギーにあるというから驚きだ。
そして、ディナンへ。
ディナンは前日すでにシタデルや教会はまわっていたので、この日はサックスフォーンの開発者であるアドルフ・サックスの博物館とディナンの有名なお菓子、堅焼きビスケット屋さんを訪れた。
ビスケット屋さんでは顔がデザインされた固焼きビスケットを購入した。そのまま噛むと歯によくないから舐めながらたべてね、という店員さんの言葉によっぽど固いのかな、と思ったが何てことはない。かなりしけったパンくらいの固さなので固いもの好きの私としては物足りなかった。

変なおじさんのクッキーはしけってました

ディナンを過ぎ、フレイエル城を展望台から一望。フランス式庭園をもつフレイエル城は上から一望するのがおすすめ。そしてヴェーヴ城へ。ヴェーヴ城は入場は出来なかったが、5つの尖塔をもつ外観が特徴。中世のお城のイメージそのままだ。ヴェーヴ城の後はこちらもベルギーの美しい村に選ばれたセルへ。この地方特産の砂岩と石灰岩で造られたという家々が整然と建ち並び、窓辺に鮮やかな花が、住宅の堅牢さと対比的でなんとも可愛らしい村だ。同じ可愛い街並みでもフランドル地方のブルージュとは違った美しさある。

中世のお城っぽい ヴェーヴ城

石造りのセルの街

昼食はロシュフォールのサンドイッチ屋さんで。ロシュフォール近郊に、ここも有名なトラピストビールをつくる修道院がある。サン・レミ・ノートルダム修道院という名で、ピエールさんが言うには数ある修道院の中でも最も敬虔な信者達で、施設内では厳かな雰囲気が漂っていた。
そしてアルデンヌ地方を代表する古城ホテル、シャトー・ダッソンビルへ。政府関係の要人も宿泊するほど由緒あるホテルである。外観からインテリアまで、まさにアルデンヌ地方の古城そのものである。1階にではベルギー料理を堪能できるレストランもあり、アルデンヌ地方の滞在を満喫するにはうってつけのホテルだ。

政府関係者も宿泊するというお部屋

庭園もかわいいシャトー・ダッソンビル

ドライバーのピエールさんがイチ押しなのが次に向かったモダーヴ城。
美しい庭園とその曲線を多用した造形と煉瓦造りの色合いがアルデンヌ地方の他のどのお城よりも女性的な柔らかな印象をもつ。中は博物館となっており、16世紀から17世紀の貴族たちの生活を垣間見ることができる。嬉しいことに日本語音声解説もある。室内に飾られた調度品や緻密な装飾など部屋が変わるごとにため息が出るほど美しく見入ってしまう。一つ一つの部屋の案内を最後まで聞いているとここだけで日が暮れてしまいそうなほどだ。「日本語のガイダンスもあるし、その解説も途中でやめられるからいいね。私の説明は途中ではやめられないけどね」とピエールさんがお茶目にいう。私もこの城が一番気に入った。

女性的なモダーヴ城

天井の装飾も凝っていて面白い

変わったデザインのお部屋

絵本に出てきそうなモダーヴ城の入口の森

その後、VERVOZ(ヴェルヴォ)城という現在イタリア系の貴族がすむというお城へ、もちろん居住しているため中には入れない。
途中、ピエールさんのコテージ(別荘?)でビールと柿の種をいただいて、デュルビュイへ。

VERVOZ(ヴェルヴォ)城

<デュルビュイ>
アルデンヌ地方のハイライトとも言えるのがこのデュルビュイ。ウルト渓谷の森の中に抱かれた箱庭のような可愛らしい町。石畳の道と石造りの小さなお家。おとぎ話の舞台に迷い込んできたかのような雰囲気だ。是非デュルビュイに来たなら、是非1泊してアルデンヌ地方の息吹を感じて欲しい。
デュルビュイのオーベルジュ、ル・サングリエ・デ・ザルデンヌにてピエールとこの日はお別れ。
<ル・サングリエ・デ・ザルデンヌ>
ワロン地方料理を出す本格的なレストランのオーベルジュ。室内は広めでクラシックな造り。バスタブ、セーフティーボックス、ドライヤー、暖房器具、ミニバーあり。スリッパや湯沸かし器はなし。WIFIは無料だがロビーなど共有スペースのみ。是非ここに1泊するなら美味しいベルギー料理を堪能したい。私は10月から狩猟シーズンが始まったとのことで、鹿肉のジビエ料理をデュルビュイ特産のビールと美味しくいただいた(締めのコーヒーと合わせて43ユーロ)。ジビエ料理を出す時期は10月から1月までこのシーズンは週末ともなるとレストランの予約ができないほど人気だそうだ。

オーベルジュ ル・サングリエ・デ・ザルデンヌ

ル・サングリエではジビエ料理を

デュルビュイの街角

デュルビュイは石造りの街並み

11月4日 専用車でアルデンヌ地方とフランスの小さな村を巡る
朝、デュルビュイの街を散歩。石畳の道が朝露に濡れて街はその神秘さを一層際立たせていた。
朝食後、この日もピエールと合流し、ワロン地方とフランスの国境近くの小さな村々とオルヴァル醸造所も立ち寄る。
<専用車でアルデンヌ地方とフランスの小さな村を巡る>
デュルビュイ→ワハ村の教会→ロシュオ→ブイヨン→シャスピエール→オルヴァル→モメディ→アヴィオット→トルニー→ルクセンブルク
というルートで移動した。
まずワハ村へ。ここにはブリュッセル出身の画家・フォロンがデザインしたステンドグラスの教会があることで知られている。ピエールさんも「日本人ならフォロンの世界観は絶対好きなはず」太鼓判。真っ白な壁に、フォロンのステンドグラスから差し込む光が、教会全体を不思議や温かみや優しさで包み込んでいた。そこに厳しい戒律や厳かな尊厳はなく、誰しもが親しみ感じる教会へ、フォロンのステンドグラスの力がそうさせていた。
その後、ロシュオへ。ロシュオで山間の村・フラアンを見下ろす絶景やロシュオで生産している肉やチーズ、ビールにワイン、ジャムなどの地産のものを購入できるお店や、それらを使ったグルメなレストランもある。もしスケジュール的に余裕があればロシュオのオーベルジュ・ド・ラ・フェルムに泊まりたい。地元で採れた新鮮な食材を使う美味しいレストランもさることながら、洗練されたデザインのインテリアや村を見渡せる大きな窓とゆとりのあるテラスは、心身共にリラックスさせてくれるはず。

ワハ村の教会

白い壁にフォロンがデザインしたステンドグラスが映える

ロシュオの展望台から山間の村の絶景

そして、ブイヨンとシャスピエールという小さな可愛らしい村に立ち寄る。ブイヨンでは夏の間だけ営業するオーガニックのアイスクリーム屋さんがあってそれがとても美味しい、とピエールさん。
そして、この日のハイライトであるオルヴァル修道院へ。
このオルヴァル修道院は世界的に有名なビール醸造所であることのほかに、修道院自体が由緒ある歴史的な建造物であることと内部が博物館になっており、ほぼ毎日見学ができることから時期を選べない日本の旅行者には大変嬉しい施設になっている。
まずはオルヴァル修道院近くのレストランへ。ここではあのオルヴァルの生ビール(通称オルヴァル・グリーン)を飲むことができる。オルヴァル・グリーンは修道士が院内で飲むように作られたアルコール度数が低めのものなので、観光には最適である。トラピストビールは商売のためでなく信者達が最低限の生活が出来るように生産しているに過ぎないので数も少ない。もちろん、日本で購入できる場所は少なく滅多に飲むことができない。オルヴァルの生ビールは、ビールファンならずとも垂涎ものの体験なのである。私はオルヴァルでつくったというソースを使ったミートボートと付け合わせにベイクしたジャガイモを頼んだ。言うまでもないがオルヴァルと相性がよく最高の昼食だった。

これがオルヴァル・グリーン

オルヴァル修道院の建物も見応えがある

オルヴァル修道院の博物館

その後、修道院内の博物館へ。
オルヴァル修道院は12世紀から13世紀にかけて建立された修道院跡と18世紀に新しく再現された現在の修道院で成り立っている。現在廃墟になっているオリジナルの修道院はベルギー最古のゴシック様式がみられ大変希少なもの。ノートルダム聖堂跡のバラ型の窓からはフランスの影響が見て取れる。また院内跡には初代ルクセンブルク公や代々の修道院長や貴族たちが埋葬されていることからこのオルヴァル修道院が強い影響をもっていたことがわかる。博物館内ではオルヴァル製造工程を解説するものから、修道院跡の出土品などが展示されている。
オルヴァルを後にして、フランスへ。ベルギーとフランスの国境は税関もなく大変あっさりしている。国境近くのモンメディとアヴィオットという小さな村をまわった。そしてベルギーに再入国して、ベルギー側の国境近くの美しい村・トルニーへ。トルニーは温暖な気候が特徴のゴーム地方に位置する。黄色がかった褐色の住宅が並ぶ光景が特徴的だ。春から夏にかけては美しい花が街全体を彩るという。

フランスの山村、アヴィオットの立派な教会

美しい村に選ばれたトルニ―

トルニーから車で1時間、ベルギーとドイツ、フランスに挟まれた城塞国家・ルクセンブルクへ。
ルクセンブルクではぐるっと街中を一周して、この日に宿泊する駅前のベストウェスタン・インターナショナルへ。ここでピエールとはしばらくお別れ。
<ベストウェスタン・インターナショナル ルクセンブルク>
ルクセンブルク駅前のチェーンホテル。駅前のため周囲にはお店やレストランも多数。旧市街までは徒歩10分ほど。室内は広めで清潔。バスタブや湯沸かし器、スリッパはない。セーフティーボックス、ミニバー、ドライヤー、エアコン、無料のWiFiがあり室内で使える。

ベストウェスタンのお部屋

この日はピエールにお勧めしてもらった、イタリアンレストラン「BELLA NAPOLI」で夕食のトマトソーススパゲッティを食べる。ルクセンブルクのビールBOFFERDINGと合わせて13.5ユーロ。パスタはアルデンテだった。 軽く街を散策したあと就寝。
11月5日 ルクセンブルク、アントワープ
朝、ルクセンブルクを散歩。
<ルクセンブルク>
アルゼット川とペトリュス川によってえぐられた深い渓谷にそびえる城塞と眼下に広がる下町の連なる屋根が美しい都市・ルクセンブルク。要塞の上に立つ旧市街は世界遺産に指定されている。旧市街ではノートルダム大聖堂や大公宮を始めとして規律的な力強い造形の建物が建ち並び、城壁沿いのコルニッシュ通りからは新市街とを結ぶアドルフ橋などのダイナミックな景観を楽しめる。城壁には砲撃台や物見櫓の遺跡があり、過去の歴史を彷彿させる。かつての難攻不落の城塞都市は今や世界の名だたる銀行が集まる金融センターを形成し、高い経済水準を誇る世界有数の国家となった。

夜のルクセンブルク駅

陸橋を通る電車

旧市街からの世界遺産の街並み

鼠色の屋根と白色の壁

ホテルで朝食を食べた後、ホテルをチェックアウト。
今日はベルギーに戻り、ベルギー第二の都市、アントワープを目指す。
ルクセンブルクからIC列車で約3時間、ブリュッセル・ノルド駅に到着。
ノルド駅からアントワープへ、約40分。中央駅手前でアントワープ・ベルヘムという別の駅があるので注意。中央駅に降り立ち、今日のホテルを探す。この日のホテルはイビス・スタイルズ・アントワープ・センター。
<イビス・スタイルズ・アントワープ・センター>
アントワープ中央駅から徒歩で3分程度にある、大手チェーン系ホテル。隣にスーパーマーケットや安い食堂もあって大変便利。室内は現代的なデザインで、清潔で比較的広め。バスタブ、スリッパ、湯沸かし器、セーフティーボックス、ミニバーはなし。ドライヤー、無料のWIFIあり。

モダンな室内のイビス・スタイルズ・アントワープ・センター

この日はピエールさんから紹介してもらった、アントワープ在住の日本語ガイド・エレナさんと待ち合わせ。エレナさんは大学で日本語を専攻し、日経の企業でお勤めだったので日本語は大変お上手。エレナさんとアントワープを徒歩観光した。
<アントワープ>
15世紀には金融・商業都市として大きく発展し、同時に世界のダイヤモンド集まる研磨と取引の中心地であったアントワープ。現在はベルギー第2の都市であり、モードファッションを牽引する街としても注目を集めている。しかし、今でもアントワープの名を我々に身近なものにしているのはアントワープで生涯過ごした画家ルーベンスの存在だろう。ノートルダム大聖堂にある「キリスト降架」はルーベンスの最高傑作の一つとして、また「フランダースの犬」で、少年ネロが憧れ続けた絵として世界的に知られることとなった。そのほかにも、ルーベンスが過ごした邸宅(ルーベンス自身がデザインした)や、ルーベンスのコレクションを収蔵している王立美術館など街中至る所にルーベンスの足跡を見ることができる。
我々は、アントワープ中央駅→ルーベンスの家→マイエル・ヴァンデン・ベルグ美術館→グランバザール→ノートルダム大聖堂→グローテマルクト→精肉業者ギルドハウス→ステーン城→ブラーイケンスハング→フルン広場のルートで歩いて、最後にフルン広場で解散した。
個人的な見所を挙げるとするならば「ルーベンスの家」と「ブラーイケンスハング」はとても良かった。
「ルーベンスの家」にはルーベンス同時代の画家達の絵画の他に当時使われた美しい家具やルーベンスがこだわった邸宅の造形を間近で見ることができ、数世紀の時を経た今でも感動的だった
「ブラーイケンスハング」は裏路地のひっそりした貧しい人々の共用アパート。個人で探し出すのは難しいのだが、石畳にレンガや白塗りの壁、それに彩りを与える植物がかわいらしい。
「ノートルダム大聖堂」はやはり素晴らしかった。外観もその大きさに圧倒されるが、内部の美しさ、ルーベンスの絵も見応えがある。現在、王立美術館が改装中のため、王立美術館収蔵の作品が何枚かこの大聖堂に展示されており、美術館のようになっている。

立派な駅舎のアントワープ駅

ルーベンスの家

アントワープ土産には最適の手の形のチョコや、ネロとパトラッシュ型のチョコもある

ネロが見たという「キリスト降架」

ネロが全裸 聖堂の土産物屋の前で

黄金色に輝くノートルダム大聖堂

エレナさんオススメのレストラン「オルタ」で食事を取ろうと思ったがグランドバザールでお土産を買いすぎて、ホテルに戻るのに疲れてしまい。仕方なく近くのブラスリーと食堂で夕食。
ブラスリーでは前から飲みたかったクワックを。このフラスコのような特殊なグラスは、乗馬の際に取り付けられるようにという理由でこのような形になったそうだ。

飲むとクワックという、パウエル・クワック

11月6日 専用車で南オランダ周遊
朝、アントワープの街並みを散歩。季節柄からも知れないが、アントワープの旧市街はシーンとしている。朝ここを通り過ぎるのはこの辺りにお店をもつ人が数人いる位で、観光客はもちろんビジネスマンもいない。巨大な大聖堂を独り占めして眺めた。
朝食を食べて9時にピエールと再会。この日はアントワープから北上してオランダのデルフトまで足を延ばす。
<専用車で南オランダ周遊>
アントワープ→バーレル・ナッソー→キンデルダイク→ゴーダ→デルフト
まず向かったのはアントワープ郊外にあるコーヘルス・オジレイ通り。ここは20世紀初頭に当時のお金持ちが競うように各自の邸宅を建築したことで、大変ユニークな景観となっている。当時流行したアール・ヌーヴォーから、アールデコなど様々な建築様式を取り入れた住宅が並ぶ様はここでしか見ることができない。

いろいろなスタイルの豪邸が建ち並ぶ コーヘルス・オジレイ通り

アントワープから約1時間、オランダ領にベルギーの飛び地がある。飛び地自体はそこまで珍しいものではないが、そのベルギーの飛び地の中にさらにオランダの飛び地があるという世界でも奇妙な村が、バーレル・ナッソーだ。国境は村の至る所に見え、同じ建物内でも国境が2つに分かれている家もなりかなりユニーク。この村には教会が2つ、役所も消防署2つあるそう。幾度も統合しようと試みがあったそうだが、世界的に有名な観光地となった今、統合する気配はなさそうである。

左がオランダで右がベルギー

自転車で颯爽と越境する人

バーレル・ナッソーから約1時間。オランダの代名詞とも言える風車を見ることができるのが、ここキンデルダイク。すべて18世紀に建てられたオリジナルでこれだけ沢山残っているのは風車で有名なオランダの中でもここだけである。一本道の両脇にずらっと並んだ風車は壮観である。あいにくの曇り空だったが、これだけの風車が青空の下で一斉に回っていたらさぞ爽やかだろう。風車の一つが博物館になっており、当時の暮らしぶりを窺い知ることができる。

自転車をよく見るな~

両脇にずらっと建ち並ぶ風車が見られるのはキンデルダイクだけ

次に訪れたのがゴーダチーズの発祥の地、ゴーダ。運河に囲まれた可愛らしい街並みだ。
街の中心地のマルクト広場にはゴシック様式の赤い窓枠が目を引く市庁舎が真ん中にある。それと対峙しているのがチーズ計量所。チーズの計量所が街の真ん中、市庁舎や教会のすぐそばにあることからいかにこの街、この時代にチーズが貴重なものであったかが伺える。毎週木曜日にはチーズ市が現在も開かれている。
この日はゴーダにて遅めのランチ。せっかくなのでオランダ料理を2品、オランダ風のサンドイッチ「ブローチェ」と青豆ペーストのポテトやソーセージの温かい「エルテンスープ」をいただいた。オランダはベルギーと比べて食文化があまりパッとしないと聞いていたが美味しかったので安心した。

チーズを抱えるチーズ売りの銅像

この時期のエルテンスープは体にしみわたって美味しい

そして、この日の最終目的地のデルフトへ。
デルフトー・ブルーと評される美しい焼き物とフェルメールが生まれてから生涯を過ごしたことで知られる運河の街・デルフト。フェルメールも眺めたであろう運河や教会、市庁舎など絵になりそうな風景に満ち溢れている。中でもフェルメール・センターは全作品のパネルを始め、謎の多いフェルメールの生涯を探る展示はここでしか見ることができない興味深いものだ。隣町デン・ハーグの「真珠の耳飾りの少女」「デルフトの眺望」などフェルメールのコレクションで知られるマウリッツハイス美術館とあわせてフェルメールの世界観に浸りたい。
<コープハンデル De Koophandel Delft>
この日のホテルはデルフトのマルクト広場のすぐそばの好立地、コープハンデルホテル。少し古い感じはするものの室内は改装されており清潔で綺麗。デザインもなかなか洗練されている。エレベータなし。フェルメールの絵のパネルが飾ってありフェルメールの故郷・デルフトに来た感じを演出してくれる。バスタブ、セーフティーボックス、ミニバー、スリッパなし。湯沸かし器、ドライヤー、無料のWIFIあり。自販機とスナック類の自販機がホテル内にある。

コープハンデルの部屋には巨大な絵のパネルがある

デルフトの街並み

フェルメールの街でもある

デルフト焼の公衆ベンチ

朝のデルフトの風景

ピエールさんとはこのホテルでお別れ、長い間ありがとうございました。
夕食はホテルのスタッフおすすめのPIJPENLAというレストランへ。
インドネシア料理のサテを食べる。オランダではインドネシアがかつて植民地だった経緯があるためインドネシア料理が一般的である。美味しかった。何よりフレンドリーなスタッフが素晴らしかった。
11月7日 アムステルダムへ
朝、デルフトの街を散歩したあと、ホテルで朝食。荷物をパッキングし、タクシーを8:30に出発できるようにホテルのフロントに呼んでもらう。
デルフトの中心部から駅には歩いていけないこともないのだが、スーツケースをもっての移動だときつい距離だ。
タクシーにのって約5分でデルフト駅に到着。日本だと初乗り運賃程度の距離なので700円くらいだと思うが、デルフトでは10.5ユーロした。約2倍近くである。呼び出し料金が追加でかかっているのかもしれない。アムステルダムでも何度かタクシーに乗ったが、やはり日本の2倍かそれ以上の相場だと感じた
デルフトから約1時間。アムステルダムに到着。アムステルダムの駅はヨーロッパの中の駅では珍しく改札がある。ユーレイルパスを持っていた私は切符をタッチ出来ず、かと言って駅員がいるわけでないのでまごつく。インフォメーションのインターホンがあったで係員に聞くも英語でどうこの状況を説明するかわからず当然意思疎通ができなかった。このまま通るしかないとおもって恐る恐る通ると何事もなく通れた。後で確認したところこれは別に切符持ってなかったら通れない、ということではないらしい。なんのための改札やねん、と思うのだが、、、。
アムステルダムでは現地の旅行会社の方と待ち合わせして、午前中は現地の情報収集。
午後アムステルダムのユニークな宿泊施設であるハウスボートを見学した。
<ハウスボート>
ハウスボートというのはその名の通り、ボートの形をしたお家である。
運河の都市・アムステルダムでは、川沿いの至る所にボートが停泊しており、アムステルダムの風物詩の一つとなっている。すべてのボートがクルーズ用や貨物船ではなく、れっきとした住宅として住所をもったボートも多数あり、電気や水道が通っていることはもちろん、郵便物までちゃんと届く。それらのハウスボートを宿泊施設として旅行客に貸し出しを行っているオーナーもいる。
ハウスボートホテルはアパートメントホテルを思い浮かべてもらえれば分かりやすいかもしれない。
ハウスボートは各オーナーの趣味や好みによって内装やデザインなど異なり、一つとして同じものがない。船内にはベッドルームやリビングルームほかにキッチンがあり、レンジや冷蔵庫など一通りの家電製品や調理器具、調味料などがあり自由に使用できる。WIFIも予め備えていることがほとんどだ。ほぼ全てのハウスボートホテルがアムステルダム中心部の運河に停泊しているため、観光にも大変便利である。
一方、鍵の受け渡しの手続きが必要なことや、ベッドメイキングやタオルの交換など日々のサービスはない。またハウスボートは少なくとも宿泊が4泊以上という、ホテルと違い条件は簡単とはいえない。しかし、オランダに暮らすように過ごすという意味で貴重な体験ができるのは間違いない。大勢の観光客がアムステルダム運河クルーズに参加するが、こういったハウスボートに宿をとればいつでもその景色を見ることができるのだから。ハウスボートに泊まれば一層思い出に残る旅行になることだろう。
いわゆる豪華なハウスボートは4人以上の利用を想定しているものがほとんどだが、もちろん金額さえ払えば2人でも宿泊できる。中には「これがハウスボート?」と思わず叫んでしまいそうな5つ星ホテル顔負けのクオリティをもつハウスボートも多数ある。今回はそういったラグジュアリー系ハウスボートをいくつか見せてもらった。なお各ハウスボートは特定の名前はなく住所で呼ばれているのが慣例のようである
<SINGEL 17K>

SINGEL 17Kの外観

SINGEL 17Kのリビング

SINGEL 17Kのベッドルーム

<WEESPERZIJDE 1068>

WEESPERZIJDE 1068の外観

WEESPERZIJDE 1068のリビング

WEESPERZIJDE 1068のベッドルーム

<AMSTE 7>

AMSTE 7のリビング

AMSTE 7のベッドルーム

<PRINSENGRACHT 60K>

PRINSENGRACHT 60K のリビング

PRINSENGRACHT 60Kのベッドルーム

<RAAMGRACHT 17K>

RAAMGRACHT 17K の外観

RAAMGRACHT 17K のリビング

RAAMGRACHT 17Kのベッドルーム

この日はオーナーのロバートさんのご厚意でこのハウスボートに宿泊させてもらえる事に。本当ありがたいことです。
夕食を食べるためにアムステルダムの街を散策。
<アムステルダム>
オランダ最大の人口を誇るアムステルダムは運河の街であると同時に文化・芸術の都市である。なんと在アムステルダムの美術館・博物館は60をこえるという。中でもオランダ出身の画家ゴッホとレンブラントに関しては世界的なコレクションで知られている。国立ゴッホ美術館には油絵だけで200点以上、デッサンは500点にものぼるという膨大な作品数。 レンブラントに関しては国立博物館に代表作の「夜警」などの作品、17世紀に実際住んでいたレンブラントハウスにはスケッチなど数百点が展示されている。一方で現代アートやモダンなデザインにも敏感で街を歩けば多くのギャラリーのほか独創的なインテリアショップにお洒落なカフェや雑貨屋さんを目にする。特にナインストリートと呼ばれるエリアはまるでニューヨークのアッパー・ウエストのよう。実際、オランダの人たちがニューヨークに渡った歴史がありニューヨークはかつてニューアムステルダムという名称だったそうだ。良いものであれば古きものは守り、新しきものも肯定しようというアムステルダムの空気感はかつて世界一の交易都市であったからこそかもしれない。
アムステルダムの景観については時間帯によって大きく変わることも触れておきたい。世界遺産の都市であるから、もちろん街並みにそびえる教会や鐘楼などは素晴らしく言いようがないのだが、夜の街になると赤いネオンが怪しく街を照らし出し、同じベネルクスのベルギーやルクセンブルクの街とは全く雰囲気が異なってくる。飾り窓で有名な赤線地帯はかなり観光地化している印象をうけた。是非、昼から夜へ大きく移り変わるアムステルダムの表情を楽しんでほしい。

運河の街・アムステルダム

アムステルダム名物FEBOのクロケット自販機 1.6ユーロ

11月8日 アムステルダム近郊観光
この日はアムステルダム近郊を観光するために団体ツアーに参加した。
朝8時頃にハウスボートを出て中央駅付近のツアー集合場所を目指す。
集合場所からバス乗り場まで誘導され、9時位にバスを出発。
<ザーンセ・スカンス&マルケン、フォーレンダム>
個人では行きにくい北オランダの見どころを周遊するツアー。英語ガイドだがバスには多言語対応の音声ガイドがあるので便利だ。ザーンセ・スカンスはキンデルダイクと並んで風車が観られる観光地として知られている。17世紀のザーン地方の伝統的な街並みを再現しながら風車の保存に努めている。ザーンセ・スカンスとキンデルダイクのどちらがいいかというと、天気がよければキンデルダイク、天気が悪ければザーンセ・スカンスが良いと思う。キンデルダイクは一本道の両脇にずらっと風車が並ぶ姿は圧巻だが、ほかに何もない。ザーンセ・スカンスは街並みを歩いているだけでも楽しいし、何よりアムステルダムから近い。
そしてマルケンへ。マルケンは現在埋め立てにより本土とつながっているがかつては小さな島の漁村であった。緑のかわいらしい家が立ち並ぶ素朴な村だ。村には木靴の工場とお土産屋さんがあり、木靴をつくる工程をみることができる。マルケンから対岸のフォーレンダムまではフェリーが結んでおり、それに乗船した。
フェリーで30分、フォーレンダムに到着。港町であるフォーレンダムでは土産物屋さんやレストラン、カフェなどが軒を連ねる賑やかな場所。シーフードが食べられる屋台もある。オランダの屋台料理といえばハーリングを思う浮かべる人もいるだろう。ハーリングとは塩漬けにしたニシンの事で、玉ねぎのみじん切りやピクルスを乗せて食べるオランダの代表的なB級グルメ。港町のフォーレンダムであれば屋台で美味しいハーリングを食べられる。またフォーレンダムから25キロ離れた場所にはエダムという、エダムチーズ発祥の町がある。そのためフォーレンダムには大きなチーズ屋があり、実演販売をおこなっており、試食もできる。
アムステルダム中央駅に到着したのは午後4時すぎ、思った以上の長いツアーだったが楽しんだ。

キンデルダイクと並ぶ風車の名所・ザーンセ・スカンス

可愛らしく彩色されたザーンセ・スカンスの風車

かわいい木靴の工房があるマルケン

港町のフォーレンダムにはチーズ屋さんにシーフードの屋台が目白押し

かもめがにあう

アムステルダムの街並み散歩しながらハウスボートへ戻る。するとオーナーのロバートさんが自前のクルーズ船があるからアムステルダムをクルーズしないか、とお誘いが。もちろん二つ返事でお願いした。
<アムステルダム運河クルーズ>
アムステルダム観光の定番ツアー、運河クルーズ。あまりに定番だしハウスボートで過ごしているので乗らなくともいいかなと思ったが、大変楽しかった。見る角度が違うとまた違った楽しみがある。すれ違うボートに乗る乗客達、上から眺める観光客、川に住む動物たちとのふれあい、風の流れ、時間によって変わる景色。通り過ぎていく情景に目を奪われているとあっという間に運河を一周してしまった。アムステルダムは運河の街であることを実感する。

運河クルーズはアムステルダムに来たら必ず体験したい

夕食のレストランを探しに夜の散歩。ロバートさんがクルーズの時に9ストリートというハイセンスなお店が集まるエリアを教えてくれたのでそこへ行くことにした。
あいにくお店はほとんど閉まっており残念だったが町歩きを楽しんだ。
最後の夕食はクロケットを食べた。アムステルダムに来てから毎日食べている。
11月9日 出国
この日、私はブリュッセル空港からするべく朝9時にハウスボートででてブリュッセルへ向かう。タリスでワントワープまでいって、そこから空港行きの列車に乗ろうと思っていたのだが、なんとタリスが満席。仕方なく普通列車で移動。アムステルダムからブリュッセルなんて東京/大阪間のようなイメージで考えていたのだが、2回乗継で約3時間もかかるというアクセスの悪さ。往路は車をつかったのでさほど気づかなかった。
最終日は時間に間に合うかどうかドギマギする羽目になったがとっても有意義な旅行となった。
【スタッフおすすめ度】
★★★★★L
ブルージュ:ベルギー政府はもっと積極的にブルージュを大々的に売り出すべきだと感じた。オランダのセットとしての認識ほどしかなかったが、こんなに素晴らしいとは思わなかった。昼の賑やかなブルージュ、夜の「死都」ブルージュの面影のコントラストが鮮やか。自分の中のベスト旧市街はマラケシュ、ドブロヴニク、ブルージュで決まり。
★★★★★
アムステルダム:運河の都市、アムステルダムは不思議な魅力に溢れた都市だ。ロンドン、パリと肩を並べるほど文化的な素地のある都市でありながら、バルセロナやミュンヘンのような親密感というか、都市が一つの村みたいな親しみを感じる。赤線地帯や大麻など危ない印象が付きまとうが、観光地化されすぎていて危険な雰囲気がなかった。あらゆることには自由だが、実際生活している人たちは自分たちの規律や価値判断をもっているようで大人びて見えた。
★★★★
(優先順で紹介)
ブリュッセル:グランプラスは必見。手軽にムール貝やチョコレート、ベルギービールが楽しめる便利な街。★4.5あげてもいい。
ザーンセ・スカンス&キンデルダイク:オランダによるならどちらかには行きたい風車の名所。天気がよければキンデルダイク、短時間で行きたければザーンセ・スカンス。
モダーヴ城:アルデンヌ地方のお城ではナンバーワン。
オルヴァル修道院:オルヴァ・グリーンが飲めるなら★4
アントワープ:ルーベンスの街ではやはりあの有名な絵を見たい。
ディナン:夜景が見られるなら★4
デュルビュイ:アルデンヌ地方でもっとも可愛らしい街。オーベルジュではジビエ料理を食べたい。
デルフト:フェルメールの街。オランダのかわいい街、ベスト1。
ルクセンブルク:旧市街コルニッシュストリートからの世界遺産の眺望を見るなら★4
ナミュール:シャトー・ナミュールに泊まってディナーも食べるなら★4
ゲント:しっぽり過ごすには最適な大学の街。
(2014年11月 橋本康弘)
このエリアへのツアーはこちら
ベルギー
オランダ
ルクセンブルク

ヨーロッパカテゴリの最新記事