「聖地巡礼」今、この言葉が脚光を浴びているのを、みなさんご存じでしょうか。
聖地巡礼といえば、宗教上の聖地に巡礼する、イスラム教のメッカ巡礼などが有名ですが、ここでいう聖地巡礼は少し意味が違います。
近年、映画や小説、漫画やアニメなどの舞台になったとされる場所を、ファンたちが訪れることを、聖地巡礼といい、その影響力はかなり強いのです。
某アニメの舞台になったといわれる埼玉の神社では、13万人だった初詣の参拝客数が、聖地巡礼の効果により、約3.5倍の47万人になるという結果もでており、もはや今「聖地巡礼」が新たな観光資源となっているのです。
そんな聖地巡礼者たちで盛り上がっている海外の地に、今回訪れてまいりました。
ハリーポッターのイギリス?ベルサイユのバラのフランス?ローマの休日のイタリア?
どこも私が行きたいところではありますが、是非皆様にお勧めしたいのが、今回私が訪れた、カナダのキャベンディッシュ。
きっと誰もが知っている、この女の子のお話しの聖地です。
成田から、時差に翻弄されながら、乗継時間を含めると実質約19時間をかけ、やっとシャーロットタウンの空港に降り立った。
何だかアジア系の人が多いなと思っていると、みなさん日本からやってきた赤毛のアンのファンの方!
バスに乗り込むなり、「やっぱりアンがお好きなんですか?」から会話が広がり、「11巻のあそこがいいんだよね!」「マシューのあの言葉が大好きで」「赤毛のアンは人生のバイブルなの」と、みなさんとても詳しい!
私も出発前に1巻だけを読破してきたものの、ここでは聞き役に徹して、お勉強です。
しかし、みなさまのそのアンを語る笑顔が何ともキラキラと眩しく、どれほど赤毛のアンが日本人に愛されているかを到着1時間でひしひしと感じることができました。
私は、カナダ出張が決まってから急いで読んだ初心者ではありますが、すっかり赤毛のアンのファンになってしまったので、胸をときめかせながら赤毛のアン一日観光へと出発です。
シャーロットタウンを出発し、キャベンディッシュに近づくにつれ、周りは見渡す限りのじゃがいも畑に。アンが世界で一番美しい場所と言ったこのプリンスエドワード島、私も半分妄想にひたりながら車窓の景色を楽しみます。
妄想ついでにギルバートみたいなイケメンを探すも、あまり道を歩いている人もいないので断念。
車内ではガイドさんが簡単に赤毛のアンのお話しを説明してくれるので、物語を読んだことがない人でも問題無しです。
プリンスエドワード島の土は、物語に出てくる通り、赤い!海の中ももちろん赤いので、なんとなく不思議な感じ。
そしてモンゴメリのお墓や郵便局を訪れ、ついにやってきました!グリーンゲーブルズ!!
「これこれ!知ってる!想像してたとおり!」と、叫んでしまうぐらい、想像通りのグリーンゲーブルズにみんなで驚き、おおはしゃぎ。
グリーンゲーブルズの中には、ちゃんと物語の世界が再現してあり、ダイアナがよっぱらったいちご水、マシューがくれた袖が膨らんだワンピースなど、1巻しか読んでいない私でも、夢中でシャッターをきってしまうような、夢のようなお家でした。
家の周りには、恋人の小径やお化けの森もあり、アンの顔が印刷されたいちご水も!
このいちご水、うっすい味を想像していたら、炭酸の効いたとっても美味しいジュースでした。瓶は持ち帰りもできるので、記念にもなるかも。
グリーンゲーブルズはいろんな国からのたくさんの観光客で賑わっており、こんなにたくさんの人に愛され続けるなんて、アンの魅力を再確認することができました。
そして今回、なんと赤毛のアンからお名前をもらったという、アンちゃんという子と同じグループに!
彼女自身も赤毛のアンのファンだそうです。こうやって、世代を超えてアンはみんなに愛され続けるのですね。
アンの名に恥じない素敵な彼女とツーショット。
キャベンディッシュには、老若男女たくさんの方がいらっしゃっていましたが、最近多いのが、アンのファンだというお母さんと、それに付いてきた娘さんという組み合わせだそう。
NHKで脚光を浴びている今だからこそ、きっと誘いやすいはず。ご家族と一緒に是非来てみてはいかがでしょうか。
赤毛のアン聖地巡礼を終え、次に私が虜になった場所が、バンフ。
まずトロントからバンフの入り口、カルガリーに向かいましたが、広大なカナダには国内に時差があり、何となく若返ったようなお得な気持ち。
カルガリーの町の近くには、1988年のオリンピックで使われた競技の建物がまだ残っており、町の近くに作りすぎて、選手たちが恐怖を感じたため、飛距離が最悪に落ち込んだジャンプスキーの台や、映画にもなった、ジャマイカ初のボブスレーチームが生まれた施設を横目に、都会から逃げるようにバンフへ。
バンフまでは約2時間のドライブですが、カルガリーの町を出るとあっという間に周りはカナディアンロッキーの名に恥じぬ、岩山だらけに!インディアンの横顔に見える岩や、スリーシスターズなどが私たちを迎え入れてくれます。
こんなに岩山の多いカナディアンロッキーですが、意外と標高は低く、この場所にもし富士山が遊びにきたら、2番目に背の高い山になるそうです。
連なる岩山たち、その上に鎮座している氷河、道端で見つけたブラックベアーの親子たち、コロンビア大氷原。
圧倒されるほど美しい自然の中で、私が一際心奪われた場所。
それがバンフ国立公園内にある、ペイトー湖。
昔、探検家ペイトーさんが、その湖を発見した時、「なんて美しい・・。僕は死ぬときはここで死にたい」と言い、なんと有言実行してしまったという湖。
(勢い余って飛び込んでしまったのかと思いきや、老後をこの地で管理人として過ごされたそうです。)
大げさな探検家もいたものだと、小雨降る中を笑いながら歩いていくと、目の前に急に現れた、天国のような景色。
あまりのキレイさに一瞬絶句したのち、みんな口々に「え・・ここ天国?」「わたしも・・ペイトーかもしれない・・」「今日からペイトーと名乗りたい・・」と訳の分からない事をうわ言のように呟いていると、なんとみるみる目の前で虹が!!
今回私は、有名なモンレー湖やルイーズ湖には行きませんでしたが、こちらも写真で見ると、とても美しい。
なぜこんなにきれいな湖がここには多いのかというと、氷河が溶けて湖に流れ込む際に、周りの岩を削りながら進み、その岩の粉(ロックフラワー)が含まれることにより、このような美しい色が作り出されるのだそうです。
このロックフラワーの含有量により、色が様々に変化するので、現地の人に言わせると、一日も同じ色の日はないとのこと。夏の始まりはロックフラワーが少なく、紺色に近い色が、だんだんとコバルトブルーになり、夏の終わりには乳白色に変わるそうです。
日差しの差し込み方などでも、色がみるみる変わるので、いくら見ていても飽きない。
私たちが訪れたこの場所は、実は地元の人の愛され隠れスポットで、通常の観光客はもう少し手前の展望台までしか行くことができないそうです。
天国のような景色を私たちだけで思う存分独占し、最高に贅沢なひと時でした。
この絶景に出会えた奇跡を記念し、私も危うくペイトー湖に飛び込み、本当にペイトー史子になるところでしたが、そこは我慢し、絶好のフォトスポットでカシャリ。
写真では伝わりにくいですが、この後ろが絶壁になっており、かなり怖いので、挑戦される方はお気を付けください。(自己責任です)
このカナダの旅を振り返り、キャベンディッシュもアンのファンにとっては聖地ですが、ペイトーさんにとっては、この湖が聖地だったのかなぁ、などとぼんやり考えてみたり。
宗教的聖地も、ファン的聖地も、訪れる人の心を浄化し、元気をたくさん与えてくれるそんな場所なんだと感じられた旅でした。
「この場所で人生を終えたい」と思える程の聖地に、私もこれから出会い、出来うるならばそこに名前を付けてもらえればいいなと、心の中でこっそり祈り、カナダを後にしました。
みなさんも、ご自身だけの聖地を旅先で見つけてみてはいかがでしょうか。
【スタッフおススメ度】
<キャベンディッシュ>★★★ 『興味があれば行ってみたい旅先』
赤毛のアンがお好きなら是非!
<コロンビア大氷原>★★★★★ 『ぜひ行ってみたい旅先』
年々溶けてきてしまっている大氷原。行くなら是非今のうちに!
2014年6月 大野 史子
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