カナディアン・ロッキーには列車で行くのが正しい<カナダ>

カナディアン・ロッキーには列車で行くのが正しい<カナダ>

「モレイン湖の絶景の前でおにぎりをほおばるボク」

☆カナディアン・ロッキーには列車で行くのが正しい
マッターホルンの頂上に初めて立ったエドワード・ウィンパーという人が、「スイスを50個ほど集めた所」と言ったと伝えられるほど、美しく雄大な山々と神秘的な色をたたえる湖の数々が見られるカナディアン・ロッキー。日本からは飛行機を乗り継ぎ、カルガリー空港から車でバンフに入る人が圧倒的に多いと思いますが、ボクは、太平洋岸のバンクーバーからカナダ大陸横断鉄道をたどって列車で入る方が正しい、と断言してしまいます。
・ 徐々に美しく神々しい山々が見えだし近づいてくるので、自分がロッキーに向かっているということを実感するし、そのワクワク感がたまらない。
・ ロッキーの麓に続く美しい渓谷をたどるので、山々だけではない景色のコントラストを楽しめる。
・ 広い広いカナダの大地を実感出来る。
・ 開拓時代にカナディアンロッキーへの道を切り開いた人々の苦労と成果をかいま見ることができる。
などなど、理由はいくらでも挙げられます。


「ロッキー・マウンテニア鉄道の機関車」

☆ロッキー・マウンテニア鉄道
ロッキー・マウンテニア鉄道はこのルートを夏のシーズンだけ運行される観光列車で、バンクーバーからカナディアン・ロッキーへの4つの路線(バンクーバー~バンフ、バンクーバー~ジャスパー、バンクーバー~ウィスラー、ウィスラー~ジャスパー)で運行されていて、上に挙げたような、旅の醍醐味をいっぱい味わえます。
ボクが乗ったのは、そのうちのバンクーバーからバンフまでを2日間かけて走る「ファースト・パッセージ・トゥー・ザ・ウェスト号(First Passage to the West)」です。
世界で最も有名な豪華列車、オリエント急行や南アフリカのブルー・トレインなどはみな寝台列車で、個室にはシャワーまで完備されていますが、ロッキーマウンテニア鉄道は、車窓からの景色を楽しむ列車なので、夜は走りません。2日間かけて走る、と言っても、途中の町で乗客はホテルに泊まって次の日の旅に望みます。なので、すべて座席車です。
☆バンクーバーを出発
早朝、6時半。ロッキー・マウンテニア鉄道専用のバンクーバー駅に集まった人々は、大きな荷物をいくつも積み上げてチェックイン(乗車手続き)を行い、そのあとホームに出て乗務員たちに迎えられ、自分の車両に乗り込んでいきます。

「バンクーバー駅でロッキー・マウンテニア鉄道に乗り込む」

バンクーバーを発っても、ロッキーはまだまだ何百キロもかなた。列車は、午前中はカナダの大地の平野を辿って走ります。最初は広くてゆったりと流れる大河、フレーザー川沿いを走り、長い鉄橋を渡ったりもしますが、昼頃にはそれがやがて渓谷になり急流になって、川幅の最も狭いところでは、激流が渦巻く「ヘルズ・ゲイト」という観光名所に至ります。

「フレーザー峡谷『ヘルズ・ゲイト』の激流」

☆ロッキー・マウンテニア鉄道の車両は3種類
ロッキー・マウンテニア鉄道の車両は3種類あり、上から「ゴールド・リーフ」、「シルバー・リーフ」、「レッド・リーフ」という名前が付けられています。「ゴールド・リーフ」の車両は2階建ての豪華展望ドーム車ですが、食事などのサービスも豪華で、優雅でデラックスな列車の旅が約束されます。

「『ゴールド・リーフ』クラスの車両」

「『シルバー・リーフ』クラスの車両」

ボクが乗った「シルバー・リーフ」クラスは、2階建てではないけれど、普通車の「レッド・リーフ」に比べ窓が大きく、特に反対側の景色がよく見え、景観を存分に楽しめます。また、食事などのサービス面は、「ゴールド・リーフ」並みで、ぜいたくな列車の旅を心ゆくまで楽しみました。
『ゴールド・リーフ』車の2階客室の下には厨房があって、食事を用意しています。「シルバー・リーフ」車両には厨房がないのですが、隣に連結した「ゴールド・リーフ」車両の厨房で作られた食事が提供されます。それはそれはおいしい食事をいただくことができました。

「厨房で列車スタッフと」

「『シルバー・リーフ』クラスの朝食」

「『シルバー・リーフ』クラスの昼食」

普通車の「レッド・リーフ」クラスでは、「優雅で豪華な」、というところまでにはいきませんが、窓の外のとびきりの景色は同じです。2日間の絶景の連続を楽しめます。

「『レッド・リーフ』クラスの車両」

☆カムループスに到着
列車は午後も美しい渓谷沿いを走り続け、夕方、1日目の宿泊地、カムループスに到着しました。駅に入る直前、窓の外では、馬に乗った3人のカウボーイ姿の男性が、手を振ってボクたちの到着を歓迎してくれていました。

「カムループスで迎えてくれたカウボーイ姿の人」

カムループスは小さな田舎の町。川沿いの公園に散歩すると、町の人たちが日の長い初夏の夕方を楽しむ姿に出会えました。ベンチで夕陽を眺めて語るカップル、ギターを弾き語りする若者、川に入って遊ぶ子供、マス釣りをする人たちと釣り上げられたマスを恐る恐る持つ子供、美しく、のどかな風景でした。

「カムループスの川沿いの公園」

「釣り上げられたマスを持つ子供」

☆2日目、カナディアン・ロッキーに向かって
2日目の早朝、6:15、ホテルから他の乗客たちと一緒にバスで駅に向かい、「シルバー・リーフ」の自分の席に着くと、出発するまでに豪勢な朝食が出されました。
カムループスを出発した列車は、世界で最も多くのサケが遡上するアダムス川、野鳥や水鳥の楽園シュスワップ湖のほとりを進み、カナダ大陸横断鉄道の全線がつながったポイント:クライゲラヒーの記念碑横を駆け抜けて行きます。

「東西から建設が進められたカナダ大陸横断鉄道がつながった所を示す記念碑」

お昼前になると列車はレベルストークの町に達し、まだ少し雪をかぶった山々が見え始めました。いよいよ、ロッキーが近づいてきたんだ、と、気分が昂ぶってきます。

「レベルストークを出たロッキー・マウンテニア鉄道列車と雪の残る山」

☆カナディアン・ロッキーのエリアに入る
午後になると、渓流に架かる鉄橋を何度も渡りながら走る列車から、やがて、グレーシャー国立公園の山々が見え始め、ついにカナディアン・ロッキーにやってきたことが分かります。

「車窓から見えたグレーシャー国立公園の山」

グレーシャー国立公園のエリアを出た列車は、川幅の広いコロンビア川沿いをヨーホー国立公園に向かって走ります。列車の窓からは次々と現れる美しい山々が遠望出来ました。

「コロンビア川」

いつの間にか、景色はまた山中のものに変わり、険しい峰が眼前に迫ってきて、ヨーホー国立公園にはいったことが分かります。

「車窓から見えたヨーホー国立公園の山」

「線路脇のクリークの水面に山の美しい姿が映っている」

このあたりで、走る列車から、一瞬、ブラック・ベアが見えました。見つけた乗客の1人が「Black Bear!!」と叫ぶと、全ての乗客がいっせいにそちら側の窓に向かって立ち上がり、車内は騒然としました。こんな、走る列車の窓から、簡単に野生のクマが見られるということにビックリです。

「キッキングホース川とヨーホー国立公園の山」

列車は、しばらくキッキング・ホース川沿いを走った後、鉄道マニアの間では一番の名所とされている、2つのループ・トンネル(スパイラル・トンネル)を抜け、海抜1,626mの、この路線で一番標高の高い地点を目指して駆け上がっていきます。そこは、ヨーホーとバンフの2つの国立公園の境界であり、また、ブリティッシュ・コロンビア州とアルバータ州との州境でもあります。

「ヨーホー・バンフ、2つの国立公園の境界付近の景観」

☆いよいよバンフ国立公園へ
バンフ国立公園に入った列車は、有名なレイク・ルイーズの近くを南下していき、窓からは「キャッスル・マウンテン」がそびえているのが見えてきます。

「バンフ国立公園のキャッスル・マウンテン」

ここまで来ると、もう終点のバンフは間近。列車の中では乗務員がマイクを握って、乗客に対して別れの挨拶を語りました。そのあと、カードのプレゼントを配りながら乗客ひとりひとりと握手を交わして礼を言い合い、別れを惜しんでいます。そのさなかでも、窓の外には、カナディアン・ロッキーの素晴らしい景色が続いていました。

「バンフ国立公園の渓流と山の景色」

やがて、夕刻7時半。列車はやっと、終着駅のバンフに到着しました。もう、車窓からの美しい景観の連続でボクは大満足。列車で食べた食事もとてもおいしく、二重の意味で、ボクにはおなかいっぱいの本当にすばらしい列車の旅でした。

「バンフ駅に着いたロッキー・マウンテニア鉄道の列車とカスケード山」

でも、この翌日からの、山々と湖めぐりや、氷河の観光では、もっともっと美しい、これがこの世のモノかと思えるような風景に、ボクは圧倒されたのです。カナディアン・ロッキーは、本当に「スイスを50個ほど集めた所」と言ってよい、美しい、美しい、自然に満ちた所でした。
2011年 6月 小澤 誠

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