「知識型」から「体験型」 唯一無二のスイスへ

「知識型」から「体験型」 唯一無二のスイスへ




いわゆる弊社をはじめとした旅行会社が販売する海外ツアーはその目的により幾つかのタイプに分けられる。
大きく2つに分けるとするのであれば
① 見る
② 過ごす
のどちらか主体にしたものになっている。
前者は世界遺産など「そこにあるものを見に行く」ことを目的としたツアーである。歴史や情報をインプットする「知識型」と言い換えてもいいかもしれない。いま私の手元のパソコンで「世界遺産  ツアー」で検索すると「フランス3大世界遺産 モンサンミッシェル・ロワール・シャルトル」「9つの世界遺産めぐる・インド紀行」「南部アフリカ5カ国大周遊」など様々な商品が弊社含めて造られている。こういったツアーは観光場所を何カ所まわれるかなど内容の濃さを強調するツアーが多数を占める。
後者に関してはリゾート系、例えばモルディブやセブ、バリ島などがそうである。こちらは「体験型」 といえるだろう。こういった旅行先の場合はビーチの美しさやホテルで過ごす時間が長いのでホテルにこだわったツアーが多い。
前置きが長くなってしまったが今回、長年スイスに憧れていた父親とともにスイスへ旅立った。結果わかったことは、スイスは上記どちらともあてはまらない、いやどちらとも当てはまるとも言える特殊なディスティネーションであった。厳密にいうと最初は①の気分である。世界遺産のベルニナ線に乗ってみたいな、とか、マッターホルン・ユングフラウを一目見たい、という具合である。ところが一度スイスを旅すると②の気分へ自然に移行するのである。
つまりスイスにいると「見る」 → 「過ごす」へといつの間には自分の中で主眼が移りはじめる。実際にスイスの旅行者はリピーターが非常に多いといわれる。帰国した今それも大いにうなずける。山は角度だけでなく、時間や季節によって大きく表情を変え、我々を楽しませてくれる。山だけでなく、そこに咲く花や緑が風景を彩る。美しい峰々に囲まれていると不思議と爽快な気持ちになる。そんな大自然の中に手軽にいけることも魅力的だ。麓の村から登山列車に乗れば、ゴトゴトと音を立てて我々を山の上まで運んでいってくれる。ハイキングの途中、柔らかな日差しと心地よい風の中、疲れた身体を癒すためにアルプスが磨き上げた流水で汗を拭いのどを潤す。大げさかもしれないが、スイスにいるとそんな些細なことで心から幸せを感じることができる。
スイスの旅を終えた今の気分は「名画」をダイジェストで見たような気分である。これからは「1シーン」ずつ、ゆっくり味わうため繰り返し向かうことになるだろう。
今後、世界的な健康志向やアウトドアスポーツの隆盛とともに益々スイス人気は高まることが予想される。まだスイスに訪れたことがない方のために今回訪れた村々やスイスの現地情報をレポートしたい。


行程
6月2日 出発
6月3日 チューリッヒ
6月4日 マイエンフェルト
6月5日 ベルニナ特急でサンモリッツ
6月6日 氷河特急でツェルマット
6月7日 グリンデルワルト
6月8日 グリンデルワルトでハイキング
6月9日 ベルンを経由してジュネーブへ
6月10日 現地発
6月2・3日
カタール航空23:05関西発の便にのるため8時過ぎに職場近くの関西空港行きのバス乗り場へ急ぐ。カタール航空は6月に羽田からの運航を開始してますます注目される航空会社である。関西空港は大阪の中心地から約1時間。東京に勤務していた時は成田まで少なくとも2時間は余裕をみなければならなかったし、バスもこれほど頻繁にはなかった。大阪に引っ越してきてよかったことの一つは空港までのアクセスの良さである。
関西空港到着、カタール航空にチェックイン。現地の旅行社の方々にお土産を買おうと空港内を散策したが、もうあまりやっていない。両替所は幾つか営業はしていたがレストランと本屋は一つもやっていなかった、売店が少し空いている程度。大抵海外に行く時は普段は読まない小説や雑誌を買ったりするのが楽しみの一つなのだが、関西空港はそれが叶わず残念だった。
機内に乗り込み、離陸。しばらくすると機内食が。空港内で夕食をたっぷり摂ろうと思っていたが前述した理由により食べられなかったので、23時を過ぎてもカタール航空は夕食が出るのはありがたかった。
そして10数時間の空の旅を楽しんだ後カタール到着。実は今回、カタールの乗り継ぎも楽しみにしていたことの一つのであった。それは2014年の5月後半より、ドーハ新国際空港の就航が開始されたのである。カタール航空は今や弊社で最も利用する航空会社の一つ。どのような変貌を遂げたのかを見て見たかった。
まず飛行機からおりてバスに乗る(これは前の空港と同じ)。しかしこれまで幾つか別れていたターミナルは一つに統一されたようだ。空港内はかなりモダンなデザイン。アルミパネルの外壁とブラウンで統一されたフロアは近代的でありながら落ち着きを感じさせる。ターミナル内にて荷物検査。明らかに以前の空港の時は到着する飛行機が多い時間帯ではキャパシティーオーバー気味で人で溢れかえっていたが、新空港ではかなりのレーンがあり、多少の混雑でも余裕が感じられた。

ドーハ新空港コンコース 謎のオブジェ

ドーハ新空港 動く恐竜の模型 

ドーハ新空港 有料のオリックスラウンジ 

チューリッヒ行きのゲート番号を確認し、歩くこと数分。大きな広間に到着。まるで熊のぬいぐるみのような意味不明な巨大なオブジェ。その奥の巨大なスクリーンにはカタールがスポンサーであるFCバルセロナのメッシやネイマールが出演するカタール航空のCMが流れている。日本では考えられないスケール。どれだけの金がカタールを経由しているのか、恐ろしくなる。
チューリッヒ行きのゲートを確認した後、ラウンジを見に行くことに。私がカタール航空を好きなところはドーハ空港でお金を払えば、エコノミー席でもラウンジを使わせてくれること。そのため多少の乗り継ぎが長くとも気にならない。40ドル位するため安いとは言えないが、軽食やコーヒー、紅茶にソフトドリンク飲み放題なので、普通にレストランで20ドル位使うのであれば、ふかふかのソファーと無料のWIFIがあるラウンジの方がお勧めである。
今回の新空港でもやはりラウンジはお金を払えば使わせてくれるそうだ。ラウンジも以前と比べて広く綺麗になった印象である。
と、いろいろラウンジについて述べてきたが今回ラウンジは使わなかった。というのもこれまでのカタールの空港は狭かったため落ち着ける場所といえばラウンジ位しかなかったのだが、今回新空港ができたことによりその混雑が緩和されたので普通のパイプ椅子でも事足りるようになったのだ。また嬉しいことに新しい空港ではフードコートもできた。前の空港ではレストランらしきものはあったがあまり美味しそうに見えなかったし実際美味しくなかった。レストランの選択肢が少なすぎて、そこで食べるしかなかったのだ。
最後に嬉しいポイントといえば、ドーハ空港といえばラウンジの他に、知る人ぞ知る(?)無料で使えるデッキチェアエリアがあって、これも新空港でも受け継がれている。これは大変ありがたい。他の空港では寝られるような体勢ができるイスはほとんどなくて、むしろ寝るのを拒否しているように肘掛なんかが必ずあったりするので、ラウンジを使うほどでもない乗り継ぎのとき重宝している。
あれこれ勝手にドーハ新空港に思いを巡らしたあと、チューリッヒに向けて出発。
約7時間のフライトの末、チューリッヒに到着。
<チューリッヒ>
世界的な金融の都市として知られるスイスの玄関口チューリッヒ。チューリッヒ湖畔とリマト川沿いに栄えるこの都市はそのイメージとは裏腹に大変小さな可愛らしい街である。摩天楼のようなビルはなく、街の所々に古い教会が控えめに顔を出す。この時期(6月)は、深緑に茂った木々と、空と湖の青とのコントラストがなんとも美しく、心まで澄んだ気持ちにさせてくれるような都市であった。
実はチューリッヒは2度目の訪問である。
というのは学生時代最後のバックパッカー旅行で、最後にチューリッヒに到着立ち寄ったのだ。それも寒い2月に。スイス航空が冬はヨーロッパ行きの航空券の中で一番安かったのである。
そのときはお金がなくて、あまりの物価の高さに驚愕した覚えがある。お腹が減ってなけなしの金で仕方なく買ったマクドナルドのハンバーガーセット(約1000円)。ホテルに泊まるのを断念して、空港で一夜を明かすことを決めたのはいいものの駅のシャワールームの代金が1200円ほどしたこと。そこで思い知った事はスイスはバックパッカーが来るような場所じゃねえ!ということだった。いつか大人の男になったら来ることがあるのだろうか、とそのときは思っていたが結果的に来ることになって今日に至る。しかしよく考えて見れば、こんな物価の高い国が世界で最も人気のある観光国の一つであるのだから本当に魅力的なのだろう。
チューリッヒ空港から市内へは列車で移動。列車パスを事前に購入していて、何日か余るのでこの日から使うことにした。スイス国鉄のカウンターでバリテーションを済ませて、プラットホーム3番からチューリッヒ駅行きの列車にのる。
チューリッヒ駅には10分少々で到着。この日宿泊するホテルのXTRAを目指す。
XTRAは駅から徒歩10分弱の場所にあった。父は重いスーツケースを引きずりながら来たせいか、疲れたようだ。私も同様、スーツケースを引きずって来たがそこまで苦ではなかった。年の差だろうか。
<XTRA>
まるでデザインホテルのようなXTRAはチューリッヒ駅から徒歩圏内にある3星ホテル。周りにはスイスのスーパーマーケットチェーンであるミグロやレストラン、カフェなどが幾つかあり便利。トラム乗り場も近い。室内には湯沸かしポット、セーフティーボックス、バスタブ、ドライヤー、扇風機にテレビがあった。ミニバーらしきものはあったが、鍵がかかっており開けられなかった。WIFIはロビーであれば無料のものがパスワードを教えてもらい利用できるが、室内にはなかった( ホテルのではなく、SWISSCOMの有料のものはあった)。スリッパ、エアコンはない。それなりに広くて清潔、チューリッヒ滞在には過不足ないホテルである。

XTRAホテル

XTRAホテル モダンなデザインのお部屋 

この日は午後からチューリッヒの街をぶらぶら。
個人的に行ってみたかったFREITAGの本店。FREITAGはトラックの幌を素材としたエコなバッグで知られている。幌そのものがバッグのデザインになるためそれぞれ1点もので基本同じデザインはない。このお店であれば種類も豊富なのでお気に入りのデザインも見つかるかも。建物もユニークだ。

コンテナを積み重ねたようなFREITAG(フライターグ)店舗 

そのあとは街の中心まで、携帯ショップを探しにいく。スイスで使えるSIMカードを探す為だ。ようやくSWISSCOMを駅の地下街で見つけたが大変な混雑ぶりだったのでこの日の購入を諦めた。
ホテルに戻り父親と合流。
夕食を食べにチューリッヒ中心地へ。ホテル近くにあるトラム駅からトラムに乗り込みリマト川沿いの繁華街へ。スイスパスを持っていればチューリッヒ市内のトラムも乗り放題である(とはいっても検札には誰も来なかったが)。トラムはリマト川沿いのベルビュー広場へ。
ここで今晩の夕食をシュテルネン・グリル(Sternen Grill)という地元で人気のソーセージ屋さんへ。スタンド形式のお店であるが中に入ればテーブルも使える。調理場で焼いているソーセージが美味しそう。ソーセージを買えばパンとマスタードはセルフサービス。お腹が減っていたのでシュニッツェルのサンドイッチも注文する。2名分飲み物込みで44..50スイスフラン。1人あたり2600円程度。う〜ん、高い。日本だと高く見積もっても1000円は安い。ちなみにこの店はクレジットカードが使えなかった。

シュテルネン・グリル(Sternen Grill)

6月4日
朝6時ごろに目を覚まし、シャワーを浴びてホテルを出発する準備をする。この日はマイエンフェルトにて4時間ハイキングをする予定なので比較的しっかりした服装に着替える。朝6時半から朝食のレストランは営業しているので6時半からゆっくり朝食を食べて8時手前にチェックアウトし、駅にトラムで向かう。
<スイスでSIMフリーの携帯を使う>
駅でマイエンフェルトに行く列車に乗る前に立ち寄っておきたい場所が。それは昨日、あまりの列の長さに断念したチューリッヒ駅地下にあるSWISSCOMのお店。2ヶ月前にフィリピンに行った際、現地でSIMフリー携帯購入とデータ無制限のプランに加入した。携帯自体の性能はそこまでのものではなかったが、日本から持ってきたiPhoneをテザリングで利用できたので、これは便利だと思い、今後旅行する国は現地でSIMカードを購入して使い倒そうと思った次第である。
スイスには日本と同じように携帯電話会社が3社あり、今回SWISSCOMが良さそうなのでSWISSCOMにした。SWISSCOMがNTTdocomoのような日本最大手のキャリアらしい。公衆電話やWIFIでも至る所でSWISSCOMの名前を見た。
この日は開店の8時直後とありやはりお店の中は空いていた。店員のお兄さんに、「自分は旅行者で1週間位旅をする」、「無制限」、「テザリングしたい」というと旅行者で向けのプランを選んでくれた。「NATEL easy smart」というプランでSIMカードの登録のため、19.9フランの費用が掛かるが、20フラン分の通信費用が含まれている。1日の使い放題の料金が2フランなので10日間持つ計算になる。これは旅行者にピッタリなプランだ。しかもスイスにしてはそんなに高くない。早速お兄さんに登録してもらい、無事携帯でインターネットが使えるようになった。(あとで気づいたことだが、電話番号が割り振られていないので、このプランはデータ通信のみかもしれない。もちろんそれで問題はないけれど。)
結果、山の中でも電波を拾ってくれるので、あまり人がいない時期や旅行者が多くないハイキングコースではGoogleマップを活用し大変助かった。

スイスでSIMフリー携帯

無事スマートフォンという文明の利器をスイスで手にした私は満を持してマイエンフェルトへ。
チューリッヒからマイエンフェルトは大変近い、乗り継ぎが良ければ1時間程度。
我々はサルガンス駅にて乗り換えて、9時40分にはもうマイエンフェルトに到着してしまった。
<マイエンフェルト>
スイスの観光地の中でも日本で最も有名な場所の一つとも言えるのがこのマイエンフェルト。このスイスの東の小さな村が日本に知られることとなったのはヨハンナ・スピリ原作のアニメ「アルプスの少女ハイジ」によるものである。このマイエンフェルトはその原作の舞台になったと言われ、まるで作中に登場するような村々や風景を見ることができる。中でもハイジに関連する見所を結んだ赤ルートと青ルートの2種類のハイキングコースはマイエンフェルトの美しい眺望やのどかな人々の生活を垣間見られるとあって人気が高く、マイエンフェルトに訪れたなら是非とも歩いてみたい。特にお勧めなのが青ルート。高低差600mの山道を1時間半ほど歩くので、少々ハード。山道では豊かな牧草地と小さな花が咲き乱れる風景の中どこからかカウベルの音が聞こえてくる、なんともスイスらしい体験ができるのがここマイエンフェルトなのだ。
この日の宿泊は「ハイジホフ」。ハイキングコースの入り口近くにある山の中腹にあるホテルである。地図にはタクシーを使って行くように書いてあったが、小さな村のようでタクシーはこの時期1台も観光客のために待っていてはいなかった。
しかたなく、駅の売店のおばあちゃんに「ハイジホフに行きたいのでタクシー呼んでいただけませんか」と聞く。このおばちゃんもまた人がよく、タウンページのような黄色い分厚い電話帳を広げて「うーん、うーん」と調べ始める。するとすぐ50mほど先にいた村人の存在に気づいたようで大声で話し始めた。どうやらこの村人はハイジホフの近くにお住まいで、我々をホテルまで乗せて行ってくれるらしい。英語が通じないので、念の為「いくらですか」とガイドブックに載っていたドイツ語をもとに聞いたが、特にお金はいらないという。本当こういう出会いがうれしい。
ハイジホフまで駅から車で5分。このおじいさんはハイジホフの向かいのお隣さんだった。
そこの駐車場からホテルに入れるよ、といって過ぎ去って行くおじいさん。かっこ良い。
<ハイジホフ>
ハイジの家(博物館)から徒歩5分程度の場所にあるロッジ風のホテル。赤コース沿いにあり、青コースの入り口近くでもあるため、マイエンフェルトでハイキングを楽しむには最適な場所である。ハイキングコースにあるため周りの景色は風光明媚で素晴らしいがもちろんお店などはない。しかしホテルにはモダンなレストランも併設しているので食には困らない。室内は狭くシンプル。シャワー、ヒーター、テレビ、ドライヤーなど最低限の設備あり。バスタブ、エアコン、セーフティーボックス、スリッパ、エアコン、湯沸かし器はない。エレベーターもなかったので部屋が上層階だと少しきつい(スタッフの方が手伝ってくれた)。無料WIFIはあるがすごく弱い。ホテルのスタッフ(+犬)の感じはよく好印象。

博物館に近くにあるハイジホフ

温かみのあるハイジホフのお部屋

10時半、ホテルに荷物を置いて早速ハイキングへ。
まずはハイジハウスと呼ばれる博物館のある青コースの入り口を目指す。ホテルからは約5分。
石の転がるゴツゴツした細い道を歩くと博物館が見えてくる。博物館のチケットはハイジショップと呼ばれるお土産屋さんで購入ができる。
ハイジハウスの脇が青コースの入り口だ。
青コース全行程の中でもっともハードだったのが最初の10分。急勾配の山道なので、5分も経たないうちにもう息切れ。まだ始まったばかりだと奮起してようやく大きなアスファルトの道にでる。ここからはなだらかな道がしばらく続く。幾つかハイジに関連したモニュメントを通り過ぎると開けた牧草地になる。ここまでくればあと一息。息を切らし辿り着いた先にはまるでハイジが出てきそうな山小屋、「ハイジヒュッテ」がある。ここはハイカー達の休憩場で軽食を取ることもできる。果てしない牧草地を目の前にしながら、美味しいワインとソーセージに舌鼓をうつ。
博物館からハイジヒュッテまで約1時間半かかった。
昼食を食べてもまだ13時なので、来た道を折り返すのではなく、青ルートの完歩することにした。青ルートはハイジヒュッテまでは綺麗に整備されて歩きやすいのだが、ここから先は標識もなく人通りもないので一般的にはあまり歩かない。ただしガイドブックには景色は綺麗だったとの、他の旅行者からの投稿がある。来た道を引き返すのも面白くないので、我々はハイジヒュッテの先に進むことにした。結果、眺望は大変楽しめたのだがガイドブック記載のとおり何も目印がないので大変困った。今回、携帯電話を持っていたのでGoogleマップとガイドの地図を参考にしながらでなんとか完歩できたものの、携帯がなければ間違いなく迷っただろう。ハイキング初心者にはお勧めできないと感じた。
ハイジヒュッテからホテルに着いたのは約2時間半後。
4時間歩いたことになるが、後半に雨が降り始めて、標識がなく不安の中でのハイキングだったのでそれ以上に疲れたような気がした。

カウベルが鳴り響くなかのハイキングは気持ちがいい

ハイジが出てきそうな雰囲気のハイジヒュッテ

ハイジヒュッテでランチ

6月6日
朝6時に起床し出発の準備。
この日はマイエンフェルトを出発し、クールからベルニナ特急に乗車するのだ。ベルニナ特急の終点のイタリアの街・ティラーノからは普通列車でサンモリッツまで引き返す予定だ。
朝食を食べたあと、ホテルのスタッフにタクシーを呼んでもらう。ハイジホフからマイエンフェルト駅へは25フランだった。
マイエンフェルト駅からクール駅は10分程度。
クール駅はさすがベルニナ特急の始発駅だけあり大きい駅だった。
<ベルニナ特急>
クール/サンモリッツからイタリアの国境近くの街・ティラーノを結ぶパノラマ列車、ベルニナ特急。東部スイスの世界遺産に認定された高低差1800mもあるという起伏のあるルートを僅か2時間で走り抜け、自然溢れる雄大な景色を大迫力で楽しむことができる。4000m級の名峰が連なるベルニナアルプスをバックに見えるモルテラッチ氷河にラーゴ・ビアンコはまさに絶景。また円を描くように360度回転するループ橋もハイライトの一つ。次々と展開する感動的な風景に心奪われているとあっという間にイタリアのティラーノに到着。スイスでは味わえないジェラートや美味しいパスタを食べるのも楽しみ。帰りは時間があれば途中下車してハイキングするのもお勧めだ。

ベルニナ特急 1等席は2-1の配列

喫茶店のようにビールやコーヒーも注文できます

氷河が流れ込む白い湖 ラーゴ・ビアンコ

アルプ・グリュム駅 女性の車掌さんと

ガイドブックを見てベルニナ線沿いのハイキングも面白そうだと思ったがスーツケースを持って来ていたので断念した。クール駅からサンモリッツ駅へのライゼゲペックは可能だそうなので、そうすればよかったと少し後悔。といっても帰りに最も有名なハイキングコースであるラーゴ・ビアンコ沿いを車窓からみたがまだ雪が残っていたので諦めがついた。この辺りの雪が溶けて歩きやすくなるのは7月〜9月ごろになるだろう。
終点のティラーノではパスタを食べる。パスタと言っても、普通のスパゲッティではなく、ピッツォッケリと呼ばれるそば粉を使った、この北イタリアの郷土料理である。大変美味しかった。
父親はピアーダという、これまた北イタリアの郷土料理でピタサンドのようなものを注文したのでシェアした。スイスの料理も美味しいが、ここティラーノのイタリア料理は絶品だった。ベルニナ特急にのって尚且つイタリアで美味しい料理も食べられてなんだかお得な気分になった。
もちろん支払いはユーロだが、駅近くのレストランではカードが使えるので安心。

北イタリアの郷土料理 そば粉のパスタ  ピッツォッケリ

サンモリッツまで引返す電車では逆方向の窓側を陣取り、また違った景色を楽しんだ。

ベルニナ線 アルプスに向かう車窓からの景色

車窓からラーゴ・ビアンコの風景

<サンモリッツ>
ベルニナアルプスに囲まれたサンモリッツ湖を中心に広がる標高1775mの高級リゾート地。氷河特急・ベルニナ特急の玄関口であり、冬季オリンピックの開催地として名高い。冬はスキー・夏はハイキングにサイクリング、街中にはスポーツショップやブランドショップが建ち並び、お洒落なレストランやカフェは賑わいを見せ、1年中旅行者を楽しませてくれる。年間晴天日が90%というこの街ではあくせくせず、湖畔の遊歩道を散歩するのもいいだろう。穏やかな表情の峰々と深緑に縁取られた湖からなるサンモリッツはスイスの都市の中でもどこかほっとさせてくれる存在だ。

サンモリッツのシンボル 斜塔

サンモリッツ湖と街並み

我々がサンモリッツ駅に到着して、さぁホテルに向おうとした矢先、見覚えがある文字列が。
なんとちょうど我々の目の前に本日宿泊するホテルの送迎バスがあったのだ。ホテル名がバスにびっちり書いてあったので見過ごさなかった。ドライバーのおじさんに、今日このホテル泊まるのですが、というと快く乗せてくれた。
サンモリッツ駅からホテルまで徒歩10分程度とガイドブックに書いてあったので、そのまま鵜呑みにして歩いて行こうと考えていたのだが、車が進むにつれこの考えは正しくないと分かった。
サンモリッツ駅前の坂がとても急でしかも長いのだ。これはちょっとスーツケース引いて移動するのは無理だ。その後、駅付近から市内中心部へのエスカレーターがあることも分かったが、エスカレーターの位置も旅行者がホテルまでの移動するのを想定しているわけではないようなので、これを使っても役に立ちそうもない。サンモリッツに泊まられる方は是非無理しないでタクシー利用をお勧めします。途中でまた駅に戻りタクシーを利用する羽目になりますから。
<ハウザー>
この日泊まるホテルはハウザー。市内中心部、学校広場すぐそばでスーパーマーケットにレストランなどのお店が周りに沢山あり便利。3つ星ホテルだが、部屋のインテリアやデザインセンスはほかのホテルよりもレベルが高い。木目調のウッディな温かみのある部屋で、広く清潔感がある。室内にはテレビにドライヤー、バスタブ、セーフティーボックス、無料のWIFIまである。冷蔵庫、ミニバー、スリッパ、エアコンはないが暖房器具がある。人気のチョコレートショップやレストラン、カフェも併設しており便利。スタッフも愛想がよく好印象。翌日の駅までの送迎バスもチェックインの時に予約してくれた。

坂の上のホテル ハウザー

ハウザーのお部屋

ホテルにチェックインしたあと、サンモリッツの街をうろうろ。
ピッツネイルに行きたかったがどうやらロープウェイはこの時期まだやっていないらしい。ツーリストインフォメーションで6月上旬でもいける展望台がないかを確認したところ、ディアヴォレッツァのロープウェイは運行しているそうだがすでに17時で営業終了してしまったそうだ。明日は8時半から運転開始するそうだがそれだと氷河特急の時間に間に合わないので断念した。
夜中の9時ごろ夕食を取るために外出。しかしサンモリッツの夜は早く9時を過ぎると街はしんとしていた。
レストランはやっていたもののドリンクのみで食事の扱いはしていないところが多い。スーパーマーケットすらやっていなかった。一つホテルの近くで食事が食べられるレストランがあったのでサラミサンドイッチとビールを飲んで14フラン。
6月6日
この日は氷河特急に乗る。
出発時刻が10:02なのでそれまでにゆっくり朝食をとりチェックアウトの準備。
またサンモリッツからツェルマット8時間もの長い乗車時間のため、スーパーでおやつの買い出し
水やコーラ、チーズにサラミ、ポテトチップスを買う。
9時半にホテルをチェックアウトし、サンモリッツ駅へ。
<氷河特急>
スイスを横断するかのようなサンモリッツからツェルマットまで、走行距離280kmに及ぶパノラマ特急。
始発から終点まで約8時間もの旅路。大きな車窓に迫るのは雪解け水が流れる渓谷に氷河、眼下に広がるのは古くから栄える山村、そして彩り豊かな花々。石畳の敷かれた宿場町・アンデルマットに途中下車してローヌ氷河まで足を延ばしたり、ハイキングするのもおすすめ。また氷河特急では温かい食事を席まで運んでくれるケータリングサービスやイヤフォンでの日本語解説も嬉しい。きっとこの8時間の時間は単なる移動としての時間でなく、束の間の幸福でロマンチックな時間となることだろう。

氷河特急 1等 配列は2-1

オーバーアルプ湖

アンデルマット駅

我々がプラットホームに到着したときにはすでに氷河特急は出発を待っていた。早速列車に乗り込み、写真を撮るなどして出発まで過ごした。車両は1等と2等、そしてパノラマ・バーという軽食と飲み物を取れる車両が1つ。ベルニナ特急と同じく1等は1列1ー2の並びで3席、2等は1列2ー2の並びで4席の配列。時期的な問題かもしれないが1等は比較的空いていた、2等はほぼ満席だった。予算があれば席が広めで、人も少なめな1等の方が写真を撮りやすいのでできれば1等がお勧め。氷河特急は定刻になるとしずかにゆっくり動き出した。
11時を過ぎた辺りでランチをどうするかを列車スタッフに聞かれる。セットメニューの場合は事前に申し出が必要だそうだ。列車に乗り込む前に食料を調達していたし、朝食もたっぷり食べていたので別に食べなくてもいいや、と思い注文しなかった。
8時間もの乗車時間ということだったので途中寝るかな、と思っていたが絶景を楽しんだり、写真を撮ったり、日本語の解説に耳を傾けているうちにツェルマットに到着していた。あっという間の時間だった。個人的に楽しんだのはルート最高地点2033mのオーバーアルプスヘーエに広がる氷河。そしてツェルマットに近づくに連れてヴァリス地方の民家が見えてくる様子が圧巻だった。
ツェルマットに到着。この日のホテルはエクセルシオール。昨日のサンモリッツの件があったので徒歩圏内であってもタクシー使えばいいや、と思っていたら運良く市内循環バスが停車しているのを見つけた。調べて見るとエクセルシオールはバスのルート上にあるホテルなので乗ることにした。バス1名2.5フラン、タクシーの値段を確認したところ17フランだったのでバスの方がお得だ。バスで走ること5分、エクセルシオールに到着。
<エクセルシオール>
ツェルマット駅から徒歩7、8分。バス停の近くで、周りにもお店が多い便利なエリアにある小規模なホテル。セレプションは小さいながらもバーやレストランも併設している。赤い絨毯が印象的な部屋は至ってシンプルなつくり、一部の部屋からはマッターホルンも臨むことができる。セーフティーボックス、バスタブ、ドライヤー、無料のWIFI、テレビ完備。スリッパ、エアコンはないが暖房設備はある。スタッフの感じも良い。駅までの無料送迎サービスあり。

エクセルシオールのお部屋

エクセルシオールの外観

荷物をホテルに置いたあと、ツェルマットの街を散歩。
<ツェルマット>
マッター谷の奥底に位置するヴァリス地方の伝統様式であるカラマツで造られた家々が特徴的な山岳リゾート。ここは世界中から観光客の集まるスイス1、2を争う観光地である。なにがそこまで人々をこの地に惹きつけるのか、その答えはたった1つ、かつて魔の山と恐れられたマッターホルンだ。マッターホルンはこの街からも臨むことができ、周りの峰々からは正三角形や朝日で燃えるような姿や、湖に映る姿など様々な表情を見せてくれる。訪れる観光客は春夏秋冬このマッターホルンが見せてくれる表情に恐れながらも酔いしれ、今日もアルプスを目指すのだ。

お洒落なお店が多いツェルマット

街中から顔をのぞかせるマッターホルン

伝統様式のカラマツで造られたシャレー

ツェルマットはガソリン車の乗り入れを禁止しているため見かけるのは電気自動車。そのため交通量がすくなく、どこか和やかな雰囲気が漂う。サンモリッツよりも一般的な観光客が多いからか、カジュアルなお店が多い印象。
夕食は表通りに面したイタリアンレストランで。
私はゴルゴンゾーラのパスタ、父はリゾット。どちらも本場イタリアに負けず美味であった。しかし価格は2人で60フラン超。飲み物はワイン1杯ずつなのにこの価格は厳しい。

ゴルゴンゾーラのフィットチーネ

6月7日
朝早く起きて朝食も取らずにホテルを出る。
ゴルナーグラード鉄道に乗り、展望台からマッターホルンをいち早くこの目に焼き付けるためだ。
<ゴルナーグラード展望台>
始発は朝7時。まだシーズンとは言えない6月初旬だからか、客足はまばら。チケットは往復で42フラン。スイスパスで半額になっても42フラン。ガイドブックには41フランと書いてあるので年々チケット代金は上がっているのだろう。
登山列車は静かに出発した。徐々に高度をあげて、ツェルマットの街並みは眼下に広がっていく。木々の間を縫うようにマッターホルンを追いかけて行くうちに、いつしか森林限界を越えた。リッフェルベルグ駅に到着する頃には辺り一面銀世界が広がっている。人間界から遠く離れてしまったように感じる。それでもなお列車は高度を上げてひた走る。頂上のゴルナーグラード駅に到着したときには寒さと静けさ、そしてホワイトアウトしそうなくらいの真っ白な景色。神々しささえ感じるほどだ。太古の昔から原住人はマッターホルンを恐れ崇めていたことだろう、そしてだからこそ今もマッターホルンを一目見ようと世界中から多くの人々が訪れるのだ。たかだか岩山に何故こうも人間は惹かれるのか、人間の原理的な欲求なのだろうか、雄大なもの・孤高なものに神々しさを感じてそれに近づきたい、神になりたい、という欲求が人間にあるのだろうか、そんなことをマッターホルンを眺めて考えた。
登山列車の本数がまだまだ時期的に少ないので、ゴルナーグラードからローテンボーデンを経由して、リュッフェルベルグ駅まで歩くことにした。一番の目的は、ローテンボーデン駅近くにある逆さマッターホルンが見えるという湖の撮影ポイントにて写真を撮ることである。
しかしゴルナーグラードからの下山道はまだ雪深く、ここが正しいルートかも分からないほどであった。有名な撮影ポイントだからきっとそこまで行けば道は開けるだろう、呑気に構えていたのだが甘かった。ゴルナーグラードの一つ手前のローテンボーデン駅に到着したまではよかったが、そこから湖のあるリュッフェルゼーまでは完全に雪に覆われていた。ここまで来たからには湖に行かないと損だと思い、固くなった雪の上を進む。しかし太陽が高くなるに連れ、氷が溶け出したのか、靴が雪の中にはまってしまう。これはいけないと思ったものの、元来た駅までの急斜面を戻るのも大変なので、次の駅であるリュッフェルベルグ駅までスニーカーをびしょびしょになりながら最短ルートで行くことにした。もちろん写真は取れず、おまけにスニーカーも使い物にならなくなってしまった。スイスは日本と違い、立ち入り禁止区域をつくったり、ルートを事細かに設定して標識を立てているわけではないので、何かを迷いやすい。特にこのシーズン、雪どけしていないルート以外には足を踏み入れない方が賢明だとひしひしと感じた。
ツェルマットの街に下山できたのは11時。なんと朝から4時間の大冒険だったわけである。
我々は朝食も食べていないためぐったり疲れてしまった。朝・昼兼用の食事をパン屋の2階の喫茶店ですまし、ホテルに戻る。
12時にチェックアウトを終え、ホテルからの無料の送迎バスに乗せてもらい駅前へ。

ゴルナーグラード登山列車

リュッフェルベルク駅

ゴルナーグラード駅からのマッターホルン

ゴルナーグラード駅からの下山道

12時半過ぎの列車に乗り込み、次の目的地、グリンデルワルトを目指す。
フィスプとスピーツ、そしてインターラーケン・オストにて乗り継ぎ約3時間、グリンデルワルトに到着。
<グリンデルワルト>
アイガーの麓に広がる30分も歩けば1周できるほどの小さな村。駅をでるとすぐに日本語の看板やホテルのエントランスにはヨーロッパ諸国の国旗と混じって日本の国旗がはためいているのがわかるだろう。1921年、日本人登山家の槇有恒がアイガー北壁の登頂に成功して以来数々の日本人登山家がこのアイガーに文字通り命をかけてきた。古くから日本人に愛されている歴史深い村なのである。アイガーのみならずメンヒ、ユングフラウなど4000m級の名峰に囲まれ、登山列車やロープウェイ、路線バスなどの交通手段およびレストランにブランドショップ、ホテル、ロッジも充実している。アルピニストだけでなく、世界中の登山愛好家達のパラダイスとして多くの人々で賑わっている、
グリンデルワルト駅を降りた我々はこの日のホテル・グラシエを目指す。
<グラシエ>
グリンデルワルト駅から坂を下ること徒歩10分。アイガーをバックに見えるのがホテル・グラシエ。下り坂のためスーツケースをもっての訪問は大変なのでタクシー利用がお勧め。シャレー風のこじんまりしたホテルでエレベーターは無いが部屋は広くて清潔感がある。ドライヤー、テレビ、バスタブ、無料のWIFI、セーフティーボックス、暖房器具あり。スリッパ、冷蔵庫、ミニバー、エアコンはない。部屋によってはアイガーが眼前に広がる沢な景色が楽しめる。アイガー側にテラスを構えたレストランも良い。チーズフォンデュが有名で、宿泊の際にはアイガーをつまみにトライしてみては?駅までの送迎サービスあり。

スーツケース引きずりながらでは厳しいグラシエ

グラシエのお部屋

グラシエのお部屋から、アイガーの眺望

グラシエのレストランにてチーズフォンデュ

ホテルにチェックインした後はグリンデルワルトの村をぶらぶら散歩した。夕食はグラシエのレストランにて。
6月8日
グラシエホテルの朝食は開始が遅く7:30から食べてすぐにホテルをチェックアウト。
今日も宿泊はグリンデルワルトではあるが、ホテルを調査するため2泊目はあえて別のホテルに宿をとった。
ホテルスタッフのおじいさんに次なるホテル、ユングフラウロッジに連れていってもらう。別のホテルのスタッフに次なるホテルの送迎を頼むとは、しかも同じエリアの。少し申し訳無い気持ちがした。取り敢えずまだ8時になったばかりなのでホテルに荷物だけ置かせてもらうことに。
<メンリッヒェンからクライネ・シャイデックのハイキング>
まず目指すはメンリッヒェン。メンリッヒェンはグリンデルワルトの中でももっともお手軽で人気のあるハイキングコースのスタート地点である。何と言ってもこのハイキングコースはアイガー、メンヒ、ユングフラウというスイスが誇る3つの名峰の大パノラマを楽しめることで知られている。まずグリンデルワルトからはひと駅となりのグルント駅へ。グルント駅から徒歩で右手に100mほど進むとゴンドラ乗り場がある。このゴンドラの到着地点がメンリッヒェンである。料金はスイスパス利用で15.5フランだった。狭いゴンドラに揺られること30分。ようやくメンリッヒェンに到着。
ここからハイキングのスタートである。ところがどう見てもハイキングコースが 雪に埋れている。念のためゴンドラのスタッフ方に、いまクライネ・シャイデックまでのハイキングはできるのか、と聞いたとことやはり雪のため通行できないという。ここが日本とスイスの違いだ。日本だとまだ入ってはいけないコースにはかならずロープが貼られていたり、看板がたっているはず。スイスでは特に通行止めであることは書いていないので、自分である程度判断をしなければならない。それが面白いことところではあるが、自己責任なので慎重にならなければならない。
しばらく目視でコースを辿ってみたがやはり雪深そうなので諦めて、次なる目的であるユングフラウヨッホを目指す。

メンリッヒェンからクライネ・シャイデックのハイキングコース入口

<ユングフラウヨッホ>
ユングフラウヨッホは、標高3454mに位置するヨーロッパで最も標高が高い鉄道駅である。なんと駅構内はユングフラウとメンヒを結ぶ稜線の鞍部、つまり岩山の中に造られている。構内は4フロアと2つの展望台からなる広大な構造。高速エレベーターで標高3571mスフィンスクス・テラスへ。ここではスイスアルプス最大、最長のアレッチ氷河を始め、ベルナーアルプス、ヴァレーアルプスなどの眺望を臨むことができる。施設内には「氷の宮殿」という名のとおり床も壁も天井も氷でできた空間やユングフラウ鉄道開通記念100周年を記念して造られた3Dシアターやギャラリー「アルパイン・センセーション」、その他に「プラトーテラス」では実際にアルプスの雪の上を歩くことができるなど盛りだくさんの内容。もちろんこれだけ広い構内にはレストランが数店入っており、半日以上いても楽しめるつくりとなっている。
まずはメンリッヒェンから11.5フラン支払いヴェンゲン行きのゴンドラにのる。ヴェンゲンに到着した私は、ユングフラウヨッホ駅に行くことに関してためらっていた。というのはあまりにその料金が高いのだ。高い高いというのは聞いていたのである程度知ってはいたが往復でなんと123フラン(スイスパス利用時)。
標高だけじゃなくて金額も世界一高い鉄道だよ!と心の中で突っ込んだのは言うまでもない。駅の窓口で一旦考えるとは言ったものの、ここまできてユングフラウヨッホに行かずに帰るわけにもいかない、ということで行くことにした。
ヴェンゲン駅からクライネ・シャイデック駅へ。
クライネ・シャイデック駅からはユングフラウ鉄道に乗り換える。
ユングフラウヨッホ駅まではクライネ・シャイデック駅から約1時間、途中の停車駅では5分程度の待ち時間があるのでその間に駅からの展望を楽しむことができる。ところがこのユングフラウ鉄道、私が乗車した便で、なぜか30分以上待たされることに。おそらく線路が1本しか無いので、入れ違いの問題で待たされたのだと思う。お詫びとしてユングフラウヨッホのレストランで使えるドリンククーポンをもらった。
ユングフラウヨッホ駅に到着。とにかく凄い人の数。ここは本当に標高3500mほどもあるのかというくらいの賑わいだった。取り敢えず、みたいポイントを絞りさっさと観光をする。立ち止まらず観光するだけでも1時間はかかるので、ゆっくりみまわったり、写真をじっくり撮ることを考えているのであればユングフラウヨッホ内だけで2時間はとることをおすすめする。帰りの列車を待つ人々の数もまた凄い!6月でこんな状況だと7月8月はとんでもない数になるのだろうなと想像した。早朝割引のチケットもあるそうなので、ユングフラウヨッホには朝1番に行くことをお勧めします。

ユングフラウ鉄道でユングフラウヨッホへ

スフィンクス展望台

プラトーテラスのメンヒを目の前にして

クライネ・シャイデック駅

ユングフラウヨッホを後にした私はミューレンを目指す。
<ミューレン>
ラウターブルンネン駅から約20分、ゴンドラと登山列車を乗り継いで到着したのがミューレン。アイガーの麓にあるグリンデルワルトではアイガーしか見ることができないが、ミューレンではアイガー、メンヒ、ユングフラウの大パノラマを町中から一度に見ることができる。また公道が続いておらず、一般車が乗り入れできないのもこの村が素朴なままで、鳥の声や川のせせらぎなど自然の音で溢れている理由の一つである。村からはユングフラウヨッホに次ぐ人気のある展望台、シルトホルン、さらにはアルメントフーベルやグリュッチアルプなどハイキングの拠点までのアクセスも容易だ。ラウターブルンネン駅から交通手段もスイスパスが有効なので手軽に訪れることができるのも嬉しい。

ミューレンからの街並み

私はミューレン鉄道駅から歩き、村の反対側にあるロープウェイ乗り場を目指した。
ちょうどロープウェイはギンメルワルト経由シュッテンヒェルベルク行きの便が出発するところだったので乗ることにした。嬉しいことにここでもスイスパスは使えた。ギンメルワルトからシュッテンヒェルベルクのロープウェイが、これまで乗ったロープウェイの中で最も傾斜が急で少し怖かった。
<シュッテンヒェルベルクからラウターブルンネンのハイキング>
メンリッヒェンからクライネ・シャイデックのハイキングが雪のためできなかったので、代わりにシュッテンヒェルベルクからラウターブルンネン駅まで歩くことにした。ガイドブックによると所要時間1:15の平坦な道なので、ハイキング初心者の私にはピッタリだ。道中、切り立った壁から流れる豪快な滝を見つける。シュタウフバッハの滝だ。雪解け水が一つの筋となり、300mもの高さから激しく流れ落ちる、しかしその行き着く先は水の多くは風にあおられ、霧となって消えて行くのだ。マイナスイオンというものが実在するとすれば、この辺りはマイナスイオンの楽園だろう、いやスイスに漂う空気自体が何故だか爽快さやクリーンさを感じるのだ。それはこの国が水や植物の宝庫であるアルプスの国だからだろうか。そんなことを考えながら時々放牧されている牛たちや野原に咲く花を写真におさめたりして歩き続ける。

シュタウフバッハの滝そばのハイキングコース

美しい散歩道が延々と続く

しばらくすると教会が見えてきた。ラウターブルンネンの村だ。
村のメインロードには数軒のレストラン兼ホテルが並んでいるだけののどかな風景。
グリンデルワルトへ行くための次の列車の時刻まで40分ほどあったので、レストランへ向かう。
スイスのレストランは終わるのが早いことはすでに身にしみて知っていたので、夕食難民にならないようにそそくさとレストランに入る。しかし、誰も注文を取りに来ない。合図して知らせるが、すぐ行くようなそぶりは見せるものの2分後にはもう忘れているのではないかというくらい、こない。メニューを渡されてから15分、注文を取りに来るのを待った。これでは食べていると列車に前に合わないと思い、ようやく注文を取りに来たスタッフに20:33の列車に乗りたいから申し訳ないがお店を出ますというと、テイクアウトする?と言われる。そんなにサービス精神あるなら早く注文取りにきてよ!と思うのは日本人の性だろうか。すぐにテイクアウト用のサンドイッチとフライドポテトを準備してくれた。その間に支払いも終えた。注文してからテイクアウトするまで7、8分。手際良くチャッチャッとやってくれた。
ラウターブルンネン駅からはZweilütschinen駅にてグリンデルワルト駅行きに乗り換え、そしてようやくグリンデルワルトに到着。ホテルに到着した頃にはもう夜10時手前だった。
別行動していた父親はすでにホテルで私の帰りを待っていた。夏のスイスはよる10時ごろまで日が明るいため、よく時間を確認していないと終電に間に合わない可能性がある。町の明るさに惑わされないように行動するのが吉。
<ユングフラウロッジ>
この日宿泊するホテルはユングフラウロッジ。駅から坂を徒歩5分程度下ったところにある3つ星ホテルだ。シャレー風の本館とビルディングタイプの別館・クリスタルがあり、我々は別館に通された。ビルディングタイプといっても室内には木目調のインテリアが並べられまるでシャレーに泊まっているような温かみのある造りになっている。ドライヤー、無料WIFI、テレビ、バスタブあり。スリッパ、湯沸かしポットやミニバー、冷蔵庫、セーフティーボックスはない。エアコンもないが暖房器具はある。テラスからはアイガーが見える。無料送迎サービスがあるが、徒歩で5分なのでよほど大きな荷物で無い限りは歩いて行った方が早いかも。

ユングフラウロッジ

ユングフラウロッジ別館のお部屋

6月9日
この日、グリンデルワルトからベルンを経由してジュネーブに行く。
朝8時ごろ朝食を食べて、ゆっくり準備。ホテルを11時にチェックアウト。
11:19のグリンデルワルト発の便にのり、インターラーケン・オストにて乗り継ぎ、ベルンへ。
インターラーケンから乗り継いだベルン行きの便はなんとドイツ国鉄だった。ミュンヘン経由してベルリンまで行くそうだ。何時間かかるのだろう。スイスの中心地までDB(ドイツ国鉄)が乗り入れているなんて、少し前に話題になった東上線と東横線の乗り入れなんて比じゃないくらいすごいなぁ。
ベルン到着12:52。スーツケースをロッカーに預ける(7フラン)。両替機が何故か動かなかったので近くのお店で両替してもらう。
<ベルン>
スイスの首都であり、交通の要所となるベルンは時間があれば是非立ち寄りたい都市だ。1983年に世界遺産として登録された旧市街は永世中立国であるスイスだからこそ戦争に巻き込まれることなく中世の面影を残している。アーレ川と赤レンガの屋根、街路樹のコントラストが美しく、石造りの6kmにも続くアーケードや街中の至る所にある噴水は見応えがある。中でも時計塔は1218年から時を刻んできたとされ、毎時4分前になるとカスパー・ブルンナーによるからくり人形が今日もベルン市民に時を知らせる。またアインシュタインが住んでいた都市としても知られており。相対性理論を発見した当時の家は現在博物館として公開されている。

旧市街の時計塔

ベルン旧市街は世界遺産

我々は旧市街の牢獄塔近くの広場でランチ。
カプレーゼとピザを父とシェアして食べる。
2時間ほどで旧市街はひとまわりできた。
ベルンの街並みを堪能したあと、ジュネーブ行きの列車に飛び乗る。この列車から最初のアナウンスがフランス語に変わった。ベルンから約1時間半でジュネーブに到着。
この日のホテル、ベルニナを探す。駅のすぐ目の前だったのですぐ発見できた。
<ベルニナ>
ジュネーブ中央(コルナヴァン)駅の正面に立つ3つ星ホテル。立地はこれ以上ないほど良い。ジュネーブ駅にはスーパーマーケットやテイクアウトのお店、レストランも数え切れないほど多い。旧市街までも徒歩圏内。フロントの感じもよい。立地上仕方ないかもしれないが部屋は狭目、また少し古さも感じるが清潔に保たれているので嫌な感じはしない。室内はテレビ、セーフティーボックス、ドライヤー、バスタブ、無料のWIFIあり。ミニバー、冷蔵庫、スリッパ、湯沸かしポットはない。エアコンはないが暖房器具・扇風機があった。なおジュネーブのホテル宿泊者は、滞在期間有効の市内交通無料パスが貰える。こちらはトラムやバスはもちろん市内から空港に行くのでも利用できるため必ずなくさないようにしよう。

駅の目の前ベルニナホテル

ベルニナのお部屋

ホテルに荷物をおいてジュネーブをぶらぶら。
<ジュネーブ>
国際連盟諸機関の本部が置かれることで知られる、レマン湖畔のコスモポリタンシティ・ジュネーブ。駅を出てすぐに気付くのは、他の都市と異なり、多様な人種が混在していること。というのもフランスから近いため、ジュネーブの労働者の4分の1がフランスからの越境労働者。またあらゆる思想に寛容であり、1536年には宗教改革の指導者カルヴァンの亡命を受け入れるなどの歴史的背景と中立的な政治背景から数多くの移民を受け入れてきた。それ故、現在スイスを代表する産業である時計産業、銀行業は今日に至る発展をしてきたとされる。街のシンボルとなる大噴水はまるでジュネーブという街が持つ力強さと華やかさ、しなやかさを象徴しているよう見える。

ヨットハーバーと大噴水

アヒルと大噴水

夕食はホテルのとなりにあるまるでドイツのビアホールかパブを思わせるレストランで。
ビールとナチョスや魚のフライなどのつまみを食べて、二人で33.50フラン。
6月10日
この日は朝食を食べたあとはジュネーブ市内へお土産の買い出し。
11時にホテルに戻り、パッキングを行い12時にチェックアウトし、早めに空港へ。
空港へは2番ホームからの列車でおよそ7分。近い。
空港にて昼食をとり、カタール航空にチェックイン。
こうして無事スイス旅行は終わりを迎えた。
〜スイス旅行お役立ち情報〜
ショッピング
とにかくお店が閉まるのが早いスイス。一般のお店は18時ごろ、早いお店だと16時に閉店することもある。レストランも夜9時がラストオーダーでそれ以降はドリンクメニューのみになることが多い。そのため10時にもなれば繁華街であっても人通りが少なくなり日中の喧騒が信じられないほどだ。買い物を楽しむつもりなら日曜日と祝祭日は終日閉店しているので曜日には気をつけよう。
両替・クレジットカード
観光地であれば必ず両替所やATMがあるため苦労しない。両替は現地でも日本でもレートはさほど変わらないようなので両替してくのが便利。クレジットカードは大抵のお店で利用可能だが、少額利用(20フラン未満など)だとお店によっては断られることもある。多少の現金は用意しておこう。
ハイキング
気をつけたいのは季節や天気。雪深い時期や雨に日は現地の人にルートの確認した上、早めに切り上げることを心がけたい。ガイドブックに載っているルートであっても雪の残り具合によって行くことができない可能性がある。また登山列車は終電が早いため帰りの便の時刻の確認も怠らないように。どれくらいハイキングするかにもよるがスニーカーの他に登山靴もあると便利。標高が高くなるに連れ昼間と朝晩の寒暖の差が激しい。重ね着でき、簡単に脱ぎ着できるものがあれば望ましい。
物価
とにかく物価が高いスイス。節約したいのであればスーパーマーケットが便利。ミグロやコープといった大型チェーンが街中には必ずある。両チェーンともプライベートブランド商品が充実しており、パンやハム、チーズなどを購入してサンドイッチにすれば外食するよりも驚くほど安上がりだ。外食する場合は一食3000円以上、スーパーマーケットでまとめて購入すれば1食500円ほどに収まる。または日本から食料を持って行くのもいいだろう。しかし、いまでは物価は高いままでいいかもしれないと思いつつある。だって物価が安かったらただでさえ観光客が多くなっているスイスがさらに人だらけになってしまうから。
最後にスイス トリビア
2012年に開通100年を迎えたユングフラウ鉄道。設計者のA.G.ツェラーは増加する観光客を見込んで1860年代からユングフラウを登る鉄道を敷設しようとする構想を持っていたそうです。しかし当初は資金繰りで実現不可能だと考えられていたそうで、目途がたって工事が進むも結果当初考えられていた予算より数倍も膨らんでしまい、A.G.ツェラーはユングフラウ鉄道の開通を待たずして亡くなってしまいました。しかし彼の功績は現在も押し寄せ、尚且つ毎年増加している観光客の数を見れば一目瞭然でしょう。何より150年近く前に観光産業に目をつけ、こんなすごい登山鉄道と造ろうとした彼の先見性と実行力には驚くばかりです。
★★★★★L 『一生に一度は行ってみたい、スーパーおすすめの旅先』
グリンデルワルト
世界遺産としても見る価値あり、尚且つハイキングコースとしても多彩。ビギナーからプロまであらゆる旅行者を虜にする。
★★★★★  『ぜひ行ってみたい旅先』
ツェルマット 雄大なマッターホルンに誰しも圧倒されるはず。
★★★★   『できれば行ってみたい旅先』
サンモリッツ 美しい山岳リゾート、ベルニナ特急に乗るのであればぜひ1泊したい。
マイエンフェルト 見渡す限りの草原、どこからかカウベルが鳴り響く・・・まるでハイジが出てきそうな素朴なハイキングスポット。
★★★    『興味があれば行ってみたい旅先』
ジュネーブ、チューリッヒ
(2014年 6月 橋本 康弘)
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