今回パタゴニアの新たな魅力を探るべく、パイネやモレノといった南部パタゴニアとあわせて通常訪れることのない中部パタゴニアを訪れる機会を得ましたので以下一部ご紹介いたします。
2日目:魅惑の中部パタゴニアへ
パタゴニアというとパイネ国立公園やペリトモレノ氷河がある南部パタゴニアが有名ですが、中部パタゴニアにも人々を虜にするような魅力的な場所が多数あることをご存知でしょうか。パタゴニアをご存知の方でも「中部ってなにがあるの?」と疑問に思われる方も多いことでしょう。実際、中部パタゴニアなんてどのガイドブックをみても殆どが空白地帯。地名はおろか、道があるのかないのかさえもわからない状態です。ですが、この空白地帯こそ、パタゴニアの本当の姿が存在するのです。何と言ってもその魅力はドラマチックな景色の。見渡すかぎり広大な、荒涼とした風景が続くアルゼンチン側から森と湖の風光明媚な美しい風景が続くチリ側への変化は、とても面白みがあり楽しみは尽きません。今回訪れた奇跡の洞窟と呼ばれる場所「マーブル・カテドラル」(カピィージャ・デ・マルモル)もこの中部パタゴニアにあります。インターネットで実際訪問した人の写真をみて一瞬で一目惚れし今回絶対行きたいと決めた場所です。この洞窟はパタゴニア北部・プエルト・リオ・トランキーロという小さな町にあります。日本から米国経由であればまずサンチャゴに入り国内線を乗り継いでバルマセダ空港が最寄の空港となります。日本出発の2日目夕刻バルマセダ空港到着後、一路プエルト・リオ・トランキーロへ。
この小さな町への道・国道7号線(アウストラル街道)は、自転車で旅するサイクリストの間では“世界で最も美しい林道”あるいは“氷河街道“とよばれているそうで、見渡すかぎり広大な、荒涼とした風景が続くアルゼンチン側と全く違い、森と湖の風光明媚な美しい風景が続きます。
これ以上に無いというくらい完ぺきなコバルトブルーのヘネラル・カレーラ湖、ベルトラン湖そしてベイカー川。頂上がお城の様な形をした雄大な岩山セロ・カスティージョ、チリの北部大氷雪地帯(カンポ・デ・イエロ・ノルテ)に広がる氷河などドラマチックな景色の移り変わりの連続です。移動途中で何度かフォトストップをしましたがいずれも絶景ばかりですっかり中部パタゴニアの虜になりました。
約6時間でホテルへ。すでに夜22時を過ぎていました。この日は山小屋風ホテル「エル・プエスト」に宿泊。疲れもピークでシャワーを浴び爆睡。
3日目:いざ奇跡の青の洞窟マーブル・カテドラルへ
マーブル・カテドラルは白い大理石が長い年月をかけて侵食されてできた、奇石の集合体で、氷河の侵食でできた湖・ヘネラル・カレーラ湖の湖上にあります。
朝食後、早速ツアーのでているボート乗り場へ。
町の前の湖の色は感動するようなものではなかったのですが、船で奥へ進んでいくにつれてどんどん色が鮮やかになって行き、それ自体とてもきれいで、いやおうなしにテンションがあがります。石灰質の水と底が白い為、乳白色をした湖はまさにバスクリン色です。
これだけの透明度は石灰質の多く含む水のため微生物があまりいないためかもしれません。約20分のクルーズで目当ての洞窟へ。侵食によって洞窟のようになっています。ボートは奇石群に接近し、洞窟の中へ入ります。近くで見るとすべての岩が荒削りの彫刻のよう。それでいて流れるような美しいカーブを作り上げているのですから不思議です。洞窟内は神秘的な雰囲気につつまれておりまさに「礼拝堂」です。大理石のマーブル模様と水面の鮮やかなブルーの反射が生み出すコラボレーションには。「うわ~」「ほ~」としか言葉が出ません。大自然の芸術の奇跡にただただ感嘆するばかりでした。
ツアーは一時間半ほどで終了。その後、チリの北部大氷雪地帯(カンポ・デ・イエロ・ノルテ)の最北部にあるエクスプロラドレス氷河が見える展望台へ。受付小屋から約20分ほど歩き、崖のようなところを登って辿り着いたミラドールから、眼下を眺めると広大な氷河が広がっておりました。
山間の渓谷をまるで河が流れているような姿で、たたずむ、氷の塊は迫力がありますが、ちょっと遠いので氷河をもっと間近に感じたい方は、氷河の上を歩くトレッキングツアーがおすすめです。約6時間くらいのコースで、装備も全部レンタルが可能です。終了後、ホテルへ。
4日目:オトウェイ湾のペンギンコロニーへ
パイネへ向かうため空路、プエルトモン経由でプンタアレーナスへ。
移動日のこの日はプンタアレーナス到着後、オトウェイ湾のペンギンコロニーへ立ち寄りました。このペンギン保護区は,南米パタゴニア地方で最も大きい都市プンタアレーナスから車で1時間半ほどのところにあるマゼランペンギンの営巣地で、11月から2月の繁殖期には,約3,000羽のマゼランペンギンが集まります。マゼランペンギンは,フンボルトペンギン属に属し,パタゴニア地方に広く繁殖しています。オトウェイ湾以上の規模の繁殖地もいくつかあるそうですが,比較的交通の便がよいため人気の観光地となっているようです。私が訪れた12月中旬は,子育ても,中盤から後半に差し掛かり,巣から大きく成長した雛が顔を出し,せっせと海へエサを取りに行く親鳥の姿が見られました。マゼランペンギンは同じ巣を繰り返し使って繁殖するため,海と巣との間には,ペンギンが通る道ができており,ひょこひょこと歩いている姿が可愛らしかったです。
営巣地内のトレイルは,巣を迂回するようにつけられており,ペンギンの道と交差するところは,邪魔にならないように立体交差が設けられています。また,エサを採りに行くペンギンは,海岸近くの観察小屋に開けられた,隙間を通して観察することができます。ペンギンは親子やつがいなど2羽でいることが多く、遊歩道の近くでも毛づくろいなどをしていて、比較的間近で見ることができました。
トレイルは,普通に歩いて,1時間程度です。風が強くとても寒かったのですが、時間を忘れてシャッターをきりっぱなしでした。愛らしいペンギンの姿にとても癒されました。コロニー見学後、パイネ国立公園へ移動。この日は国立公園内の「オステリア・ラス・トーレス」に宿泊しました。パイネ国立公園へは近隣のカラファテやプエルトナタレスから日帰りで行くこともできますがパイネの山々を堪能するには国立公園内に泊まるのがおすすめです。このホテルはアルミランテ・ニエト山の麓にあり、トーレス・デル・パイネに一番近いホテルです。片道四時間のトレッキングでパイネ国立公園を代表する3本の岩峰「トーレス・デル・パイネ」へいける絶好のロケーション。部屋やレストランからも雄大なアルミランテ・ニエト山をみることができ、パイネの絶景を滞在しながらにして堪能できるパイネにきたら是非泊まりたいホテルの1つです。
5日目:
絵画の風景・パイネ国立公園観光へ
大阪府ほどの面積に匹敵するこの広大な国立公園にはトレッカー憧れの見どころがいっぱい詰まっています。行く先々に見事な景色を展開して、見るものを楽しませます。今回はスケジュールの関係もあり、車で廻りましたが、やはりここは自分の足で見て廻りたいところです。ここパイネはトレッキングルートが完備されていて、健康な方ならどなたでもトレッキングが楽しめます。
サルト・グランデは、ノルデンフェールド湖からぺオエ湖へ流れ落ちる滝です。落差はそれほどありませんが、豊富な水量で迫力があります。
グレイ湖は、車両などで行ける場所のうちでは、国立公園で、一番奥に位置します。ホステリア・ラーゴ・グレイの駐車場から、グレイ川にかかる吊り橋をわたり、森林の中 を30分ほど進みますと、グレイ湖に到着します。遠くに見えるグレイ氷河と流氷、目の前にそびえる、パイネ最高峰、標高3050mのパイネ・グランデの雄姿や、パイネの角の美しい姿をご覧いただけます。ホステリア・ラーゴ・グレイにご宿泊され、グレイ氷河に近づくクルーズや、周囲のトレッキングなどを行うのもおすすめです。
ペオエ湖は、国立公園のほぼ中央にある、エメラルドグリーンの美しい色の湖です。湖周辺からは、6つのピークからなる、パイネの角や、パイネ最高峰の、パイネ・グランデの雄姿をご覧いただけます。
ペオエ湖の小島には、「ホステリア・ペオエ」があり、今回は2泊目はここに宿泊しました。前泊した「オステリア・ラス・トーレス」と比べると施設も古くランクは落ちる印象ですが、おそらくパイネの景観が良いというロケーションでは一番かもしれません。セロ・パイネ・グランデ、クエルノ・デル・パイネ、トーレス・デル・パイネとパイネ山群全体を南側から見渡せるには良い場所にあるホテルです。ベットに横になりながら、対岸のパイネ・グランデやクエルノスといった山々を見渡すことができました。また、このホテルのレストランから山を眺めながらの食事は格別です。ここからの手頃なエクスカーションとしては、ペオエ湖を船で渡るコンパクトな展望クルーズなどがお勧めです。このホテル敷地内の展望台からパイネの朝焼けがおすすめとの情報を得ていたのですが、ホテルに聞くと午前5:30頃がベストとのことです。この日も真っ赤に染まる山並み、波静かな静寂の湖を満喫しました。
6日目:最果ての地カラファテへ
出発も早かったこともあり、早起きしました。すると、昨日ホテルスタッフがいっていたとおり05:30ごろに山肌が色づき始め、湖は鏡状になっており、色づき始めた山が写りしかも雲が晴れて絶好の撮影チャンスとなりました。4本の切り立った岩山からなるパイネタワー、まるで角の様な形のクエルノス、雪と氷河を抱いた雄大なパイネグランデとペオエ湖とのコラボレーションは絵画のような美しさです。数十枚とり後ろ髪を惹かれる思いでホテルをあとにし、カラファテ行きのバスに乗るために移動しました。
国立公園より車で約1時間、セロ・カスティージョという町(あのセントラル・パタゴニアにある名峰セロ・カスティージョの麓にある町とは違う町)の入り口にあったイミグレに入り、出国手続きをしました。イミグレの隣におみやげ物屋がありここでアルゼンチンペソの両替をすることが可能です。
バスで10分ほど走りアルゼンチン側のイミグレで入国手続き終了後、一路カラファテを目指します。なんら審査もなく驚くほどスムーズな手続きでした。今回利用したZAAHI社のバスもトイレ・エアコン付で快適でした。
チリをでて約4時間でカラファテの町の中心にある長距離バスターミナルに到着、ホテルへ移動。この日はカラファテのメインどおり「リバルタドール大通り」より2ブロックほど北にある「ミケランジェロホテル」に宿泊しました。スタンダードクラスのホテルで、少々施設は古いもののホテルスタッフもとてもフレンドリーで、徒歩2,3分でメインどおりにでられるため不自由はありませんでした。
カラファテは1時間ほどですべて回れてしまうほど小さな町です。奇抜な見所がある町ではありませんが、御土産物やレストランなどが豊富で、観光の基点としては十分な環境が整っています。
7日目:爽快!ペリトモレノ大氷河トレッキングへ
この日はこのたび最大の目玉であるペリトモレノ氷河の観光へでかけました。「パタゴニアの宝石ともよばれるこの氷河は全長35キロ、表面積195平方キロを誇り、数あるパタゴニアの氷河の中でも1,2を争う美しさを誇り、雄大で青々と輝く巨大な氷壁には圧倒される!」とのガイドブックの記載から一番期待し、楽しみにしていた観光です。今回はただみるだけではもったいないと考え、氷河の上を歩くトレッキングツアーに参加しました。朝8時ホテルを出て車で約一時間、一路ロスグラシアレス国立公園へ。展望ポイントより遠景のモレノ氷河を見た後いざ氷上トレッキングへ。まずはボートで氷河の端まで移動します。上陸し荷物をおきトレッキングへ。アイゼンをつけ氷上を約二時間トレッキングします。
英語ガイドがしっかりガイダンスしてくれるためアイゼンをはいたことのない初心者でも心配ありません。この日は絶好のトレッキング日和。ここからいよいよ氷河を歩き始めます。途中クレバスの中を歩いたりと爽快です。
所々にブルーホールと呼ばれる裂け目があり、そこを覗くと透き通るくらい美しいブルーの輝きがみられます。
そしてトレッキングの締めくくりは皆で“ウイスキーのペリトモレノ氷河割り”で乾杯。最果ての地で味わうこの格別なウイスキーは日本のどの高級バーでも味わえない贅沢な代物です。あっという間の二時間でした。
トレッキング後の氷河を見ながらのランチも最高でした。
ランチ後再びボートで戻り氷河展望台へ。ここは網の目のように遊歩道が張り巡らされていて沢山の展望ポイントがあります。氷河の奥行や全体像をみることができます。
最大の見ものは時折、轟音をたてて湖へと巨大な氷が崩落していく豪快な景色。長い年月を旅してきた氷河の終焉です。とにかくそのでかさと美しさに感動します!ここで終日のツアーは終了しホテルへ。氷河大満喫の1日でした。
最終日ブエノスアイレスへ戻り、市内観光をし今回の視察は終了。比較的天気にも恵まれ充実の視察となりました。今回の視察ですっかりパタゴニアのとりことなりました。また機会をあらためて訪れたいと思います。
2012.12 渡邊