イラン空港に到着したら機内で頭にスカーフを装着。イランスタイルのできあがり。さぁ、イランに入国。イラン女性はとってもおしゃれ。車を運転する女性も多く、ついつい隣の車をのぞきみしてしまう。スカーフはおだんごにかかるくらいに浅くかけて、サングラスをしている女性。めちゃめちゃ素敵だ。スリムパンツにお尻が隠れるくらいの薄出のコート、太ベルトをして頭にはスカーフ、高いヒールで颯爽と街を歩く女性も多い。女性は観光客でもスカーフをしなければいけないくらいで、思ったより自由な雰囲気。このスカーフも30年前に革命が起こってから法律で決められたことらしい。イランという国に抱いていた出発前のちょっとした緊張感は街に出て薄れていった。
並木道の美しいサアーダバード宮殿へ
高さ415mのミラードタワ―、5年前から建設中
ランチはペルシア語で赤いバラという名のレストラン。地元の人でにぎわっている。ミンチのケバブ。生の玉ねぎと一緒に食べるとおいしい 。
本日のノンアルコールビール
国内線でアフヴァーズへ
アフヴァーズから車で約1時間半。紀元前13世紀から人々が住むシューシュヘ。この町にはペルセポリスにも匹敵すると言われる遺跡が残っている。保存状態や規模はペルセポリスには及ばないが、36本の巨大な石柱跡や、馬の彫像が残っている。土台しか残っていないが、その広さから当時の繁栄ぶりがうかがえる。アレクサンダーによって破壊された後には、どこか物悲しさが感じられる。またシューシュの町には、不思議な形をした聖ダニエル廟がある。空高く伸びる白い円錐形の塔は町のどこからでも眺められ、内部は自由に行き来できるので、人々の信仰と憩いの場となっている。
チョガー・ザンビールへ
1935年、油田発掘中に偶然発見された遺跡。紀元前13世紀頃、人々の信仰の中心として建設された巨大なジッグラト、階段状ピラミッドだ。荒涼とした砂漠地帯に突如現れるジッグラトは、当時としては驚異の50mもの高さがあった。現在は三段目までがはっきりと残っている。また当時のままの日干しれんがには、人々の幸せを願う祈りの言葉が楔形文字で残っていて、上部から水が流れるよう水路も作られていた。これだけのものが3000年以上残っているということは、当時の技術がどれほどのもにであったか、身震いする。このチョガー・ザンビールは1979年に世界遺産に登録された。
真ん中のレンガには楔形文字が刻まれている!
シューシュタルの歴史的水利施設へ
ササン朝ペルシア時代に川の水を利用して運河が造られた。また400年前頃にはこの運河を利用した水車で小麦の粉を挽く作業が行われていた。アフヴァーズを流れるカールーン川へ合流する。周辺には古くから家々が作られたことが窺われ、遺跡と滝のように流れ落ちる水流とのコントラストが見事。
シューシュタルのトラディショナルレストランでランチ
120年前頃に建てられたモストフィの館を改築した人気のレストラン。パティオで伝統的なイラン料理が食べられる。ベッドと呼ばれる台にカーペットが敷いてあり、思い思いの格好で食事する人々。シューシュタル独特のホレシュテゲイメ、プラムのシチューはおすすめ。レモン味のノンアルコールビールにもチャレンジ。川からの心地よい風を感じながら青空の下で食べる食事は最高。イラン人が大好きなピクニック気分も味わえる。
本日のノンアルコールビール
アフヴァーズへ戻り、空路でイスファハンへ。
イスファハーンはあいにくの雨模様。
しかしこの町はイランの真珠ともたたえられる美しい古都。雨模様でも十分に楽しめる。町の中心部を流れるザーヤンデ川は、現在上流のダムで水をせき止めているため、涸れ川となっているのが残念。
川の南側にあるヴァーンク教会へ。17世紀に建てられたアルメニア教会で、イランとの友好の印にイスラム式のドーム型の大聖堂がおもしろい。また隣接しているアルメニア博物館では世界最小の聖書や顕微鏡でしか見ることのできない髪の毛にかかれた聖書の言葉など、興味深い展示が多数ある。
写真の右上が世界一小さい聖書
2012年に世界遺産になったばかりのマスジェデジャーメ。8世紀に建てられたイスファハーンで最も古いモスクだ。
小さなドームが連続した天井を支えるため、重なりあうように柱が林立する礼拝堂は不思議な雰囲気。
イランで最も素晴らしいと言われるメフラーブは必見。
そして世界の半分と言われたエマーム広場へ。
マスジェデ・シェイフ・ロトゥフォラーのドームは中にはいると気づかないが、入り口から天井を見上げると、光が尾のようにさし、孔雀が羽を広げる様子が見られる。
マスジェデ・エマームのドームの中央にたち、床石を踏み鳴らすと二重構造の天井に音が反響して拡声器を使ったようなエコーがかかる。マイクもない時代にコーランが響き渡るように作られたその技術に驚く。
アーリーガープ宮殿。最上階の音楽堂の天井には、一面、楽器をかたどった装飾穴が施されている。
職人技がひかるバザール
路地裏の隠れ家的チャイハネで水タバコを楽しむ。アーザーデガーンは、エマーム広場北東回路の裏にある。一歩中にはいるとガリヤーンと呼ばれる水タバコを楽しんでいるおじさんたちがずらりと並んでいる。奥は男性専用で、手前は女性客も多い。ここはイスファハーンの若者の溜まり場でもある。カップルで来ている人も多いが、とてもフレンドリーなイラン人、見知らぬ人たちともすぐに仲良くなれる。水タバコの他ガンドと呼ばれる角砂糖のついたチャイが出てきて、みんな思い思いにおしゃべりを楽しんでいる。天井には無数のアンティークランプが飾られ、水タバコから立ち昇る白い煙とで、異空間に迷い込んだような不思議な気分になる。
本日のノンアルコールビールとチキンのケバブ
一路、砂漠の都市、ジャンダクへ。
2008年、タボイタボイさんがジャンダクの古い城壁内の一部を買い取って造ったのが始まり。トラディショナルハウスだ。ジャンダクはイラン中央部に位置するキャヴィール砂漠に一番近い町。人口は約5000人の小さな町だ。その歴史は紀元前200年頃、ササン朝時代まで遡る。小さな入り口を抜けて建物内部に入ると、おしゃれな中庭がひらけている。夜になると中央で 火を焚いてチャイを飲みながらリラックスタイム。静かな空間で満天の星空が眺められる。トイレ、シャワーは共同だが清潔に保たれていて、全14室のお部屋はこじんまりとしていて暖かい。カーペットの上に直接寝具を敷くタイプで、寒い時は電気ストーブがあるのでぐっすり眠れる。建物の屋上へ上がってみると小さな城壁内が一望できる。泥で造った土壁の丸屋根のモスク、20年前頃まで実際に使われていたハマム、三角に連なる城壁は少し丸味をおびていてかわいらしい不思議な光景が目の前に広がる。タボタボイさんにリクエストすれば、砂漠の中へ車で連れて行ってくれる。砂丘を滑り下りたり、砂漠に沈む夕陽眺めらたり。こんな素敵なトラデイショナルハウスに宿泊してみると本当のペルシア人の温かさが心に沁みるはずだ。
ゾロアスター教の聖地、ヤズドで一泊した後、テヘランへ
テヘランは首都だけあって、国内の美術品が集まっている。イラン考古学博物館では紀元前5000年前の遺跡からペルセポリスの百柱の間の柱までイラン各地の有名遺跡を追体験できる。絨毯博物館、ガラス博物館、宝石博物館など、博物館巡りはつきることがない。ただし、お国柄急な休みもよくあるので注意が必要。またテヘランには中東最大規模の市場がある。内部はまるで迷路のようで金、銀、香料、絨毯から日用品にいたるまであらゆるものが売られている。バザール北端には壮麗なモスクもあり、喧噪の中、そこだけひっそりとした静かな時間が流れている。またピクニック好きのイラン人らしく、市内には緑も多い。エマームホメイニ広場を中心として地下鉄を使って、自分の足で散策してみると、イラン人の生活を垣間見ることができる。
本日のノンアルコールビール
イラン人の朝食はナン、チーズ、バター、ジャム、ハチミツにチャイが一般的。昼食、夕食にはチェロウケバブやチェロウモルグなど、米と羊やチキンなどのケバブが一皿に盛られた料理が多い。焼いたトマトと生の玉ねぎが必ずついてきて、玉ねぎをかじりながら肉を食べるのがイラン風。またライスにはソマーグという日本の紫蘇のような薬味をかける。イランはアルコールの販売、持ち込みは一切禁止されているが、ノンアルコールビールの種類が豊富。ノーマルタイプからレモン味やザクロ味まで。慣れてくるとビールなんて飲まなくても平気になるのが不思議だ。また昼夜の温度差が大きく、太陽にたっぷりと当たった新鮮なフルーツも豊富だ。夏の暑さは厳しいが、町中のジューススタンドで飲む
生のフルーツジュースは最高においしい。
ほんの少し肩の力をぬいて旅してみると、イランは思った以上に旅人に優しく、5000年もの歴史は知れば知るほどおもしろく、どっぷりとその魅力にはまりこんだみたいだ。
次はペルセポリスを見に行こう、と機内に入るなり一週間ともに旅をしたスカーフを脱ぎ捨てた。
2012年10月 山本