ペルシャブルーを堪能 イランを旅してきました

ペルシャブルーを堪能 イランを旅してきました

ニュースで何かと報道されているイランですが、観光に関しては何の心配もいりません。人は優しいし、見どころは盛沢山だし、食事やフルーツはおいしいし、イランは本当に良い国です。かつてはペルシャと呼ばれていたイランにはペルシャ絨毯やペルシャ猫などはその名の通りイラン原産のものがありますが、実はフルーツのザクロもイラン発祥。イランにあるザクロス山脈がその名の由来とのことで、それも個人的に楽しみの一つでした。

また旅行にあたって服装の心配がありましたが、思っていたよりかなりゆるいという印象です。髪を隠すスカーフはデザインが様々で(派手な人もいました)髪が長い人は後ろ髪が見えている人もいましたし、都市部では上着はゆったりでも下はタイトなジーンズやスパッツをはいている人もいました。特に注意されている様子もなかったので、観光客も難しく考える必要はまったくないと思います。逆に髪型がうまくいかなくてもスカーフで隠すのでラクチンと思いました(ものぐさですみません・・・)。

今回訪れた9月末はムハッラムと呼ばれる、イランの大多数であるイスラム教シーア派の第3代エマーム(指導者)が殉教したことを悼む月となっていて、約1か月黒い旗を掲げ哀悼の意を表します。信仰の厚い人は黒い服を着て過ごす人もいます(男性も含め)。

イランの週末は木曜と金曜日です。私がテヘランに到着したのは木曜日で中心部に入るにつれ、車がかなり混み合っていました。まずはバザールへ行くとさすが週末、人でごった返していました。週末の風景はどこの国も同じですね。早速ザクロジュースを飲みました!


道路渋滞中

2日目から本格的な観光の始まりです。まずはゴレスターン宮殿へ。


宮殿前のオブジェ

ゴレスターン宮殿は18世紀、テヘランが首都になった直後、宮殿として使われていました。現在は7つの博物館となって、世界各国から送られたアンティークの美術品や古い民族衣装などが展示され、内部はとにかくゴージャスでキラキラしています。

美術品の中には日本からの贈り物もあり、イランと日本の友好関係がうかがえます。


イランのカラスは白い

次にイラン最大の博物館、考古学博物館へ。入口から反時計回りに進むと紀元前6000年から19世紀まで順を追って見学をすることができます。ここでも日本とのかかわりが。
東大寺の正倉院にあるガラス細工の器は3世紀に起こったササン朝ペルシャからシルクロードわたって日本に入った、同じ形のものが博物館にもあります。それを思うとさらに親近感がわいてきました。
最大の見どころはやはり紀元前6~4世紀のペルセポリスの遺跡です。レリーフの保存状態もよく、いくら見ても見飽きません。

約5000年前のものと言われる世界最古のアニメーション。ヤギの動きが描かれた器もアニメの国としては気になります。

この日の最後は絨毯博物館です。15世紀以降のアンティーク絨毯が各地から集められていて、デザインを見るとどの地域で作られたかわかるということでしたが、覚えられませんでした。。。でも細かいデザインをそのまま絨毯で再現する技術はすばらしいと思いました。大作も多くあり、下世話な話ですが、全部でいくらくらいなんだろうかという想像もしつつ、堪能したのでした。


コーランの一節


世界偉人の図

その日の夜空路でシラーズへ入り、3日目はシラーズ観光です。
シラーズで人気があるのは通称ピンクモスクと言われる、マスジェデ・ナスィーロル・モルク。人気の秘密は朝の光がステンドグラスを通して礼拝堂の内部が色とりどりに照らす様子が写真映えバツグンなのです。まるで夢の中にいるようにうっとりします。でもよい気分に浸っていては出遅れます。良い写真をとろうと観光客は少しの空間も見逃しません。

もう一つの人気の理由はピンクのバラをメインとしたタイルです。ピンクモスクと言われる所以のかわいらしい色使いで、青のタイルはもちろん好きなのですが、こういう色も素敵だなぁと思いました。

次はテヘランの博物館で見たペルセポリスへ。世界遺産に登録されているペルセポリスは総面積125,000㎡という広大さで、宗教的な都として、即位式やノウルーズ(イランのお正月)の儀式などに使われました。

西はエジプトから東はインドまで配下に治め、それぞれの国の使者が貢ぎ物をもってくる様子がレリーフに残っています。そのレリーフの一つ一つに意味があり、とても興味深いことばかりです。そしてその帝国はのちのローマ帝国の祖、アレクサンダー大王により陥落します。歴史は知れば知るほどおもしろい、とつくづく思いました。

シラーズは庭園が多くバラでも有名で、また芸術や文学の中心でもあります。イランの4大詩人のうち二人を輩出し、その二人のお墓がサアディー廟とハーフェズ廟です。この2つは庭園としても美しく、特にハーフェズは生涯シラーズで過ごしたことで人気があって、人々はお気に入りの詩をそらんじることができるとか。


サアディー廟のチャイハネで

シラーズのバザールではファルデというおいしいスイーツをいただきました。これはアイス的な冷たいスイーツです。でんぷんで作られた細かい麺にバラかレモンのシロップをかけます。私はレモンを選択。シャーベットのような味わいで麺が独特の食感、これはクセになります。この日は暑かったので冷たいアイスで元気になりました。


ファルデ

そして中東といえば肉のイメージですがシラーズではマグロのケバブをいただきました。イランで魚といえばマスが多いのですが、シラーズはマグロやエビも食べることができます。マグロは食べやすくてアイスでお腹がふくれたのに、思わず完食。生玉ねぎが添えてあるのはテッパンです。


こちらは別の日のケバブ やはり玉ねぎ

最近できたオブジェ。何だか意外です(笑)

4日目はヤズドへ向かいました
ヤズドといえばゾロアスター教。ゾロアスター教は3世紀ササン朝ペルシアの時代に国教になりました。現在でもその信徒がヤズドに住んでいて、その象徴が「沈黙の塔」です。火、水、土を神聖なものと考えたため、それらを汚す火葬や土葬を嫌い、塔の上にある鳥葬場に遺体を安置して自然に還しました。

寺院では神聖な火が1500年もの間、絶やすことなく、灯り続けています。
ゾロアスター教の神様アフラ・マズダが手にしているリングは約束を守るようにという教えで、結婚指輪のルーツとなっています。

ヤズドには14~15世紀のイスラム建築もあります。マスジェデ・ジャーメはイランで最も高いミナレットが残り、タイルがとてもきれいです。ちなみにマスジェデ・ジャーメというモスクは各地にありますが、ジャーメは「集まる」という意味です。そして人々がお祈りに集まるので金曜日という意味もあります(金曜日は集団礼拝の日)。

アミール・チャグマーグのタキイエはムハッラムに殉教した第3代エマームのゆかりの地です。ムハッラム期間のピークの日には広場にエマームの死を悼む人々が集い、御神輿が練り歩きます。この地にあるのはイランで一番大きな御神輿ということです。


御神輿

学生のときに習ったカナート(地下水路)もイラン発祥といわれています。イランにいるとあちこちでカナートを見ることができます。こちらはヤズドからイスファハンへ向かう途中に見たカナートの泉で、水は澄んでとてもきれいです。秘密は水をきれいにする魚が住んでいること。山から勾配を考えて水路を作る知恵に感心しきりです。


水飲み場のラクダちゃん

そしてイランの古都、イスファハンへやってきました。イスファハンにもマスジェデ・ジャーメがあります。こちらの歴史は8世紀まで遡る、イスファハンで一番古いモスクです。一度は焼けてしまったそうですが再建、増改築を繰り返したため、様々な時代の建築様式やタイルを見ることができます。特に漆喰造りのメフラーブ(メッカの方向を指す)はイスファハン随一の美術品といわれるほど精巧で美しいのですが、写真では伝わりにくいので是非現地で見てほしいと思います。

イスファハンといえばイマーム広場をはじめ見どころはたくさんあり、どこも本当に素晴らしいのですが、個人的に気に入ったのはチェヘル・ソトゥーン宮殿です。チェヘル・ソトゥーンとは「40の柱」という意味なのですが、実際の柱は20本です。その心は水に映る柱。その水に映った柱を合わせて40本ということで、何だかかわいいです。

内部には博物館になっていて、特に壁一面の6枚の歴史画は圧巻。16世紀の宴や戦いの様子がザ・ペルシャというタッチと色遣いで描かれています。絵葉書になるほど人気で、私も気に入って友人に送りました。

もう一つのお気に入りはスィー・オ・セ橋です。イスファハンは町の中心をザーヤンデ川が流れ、その川にかかるいくつかの橋は16世紀に造られました。スィー・オ・セ橋はその一つで市民の憩いの場となっています。スィー・オ・セは33という意味で、橋の上のアーチが33あります。川に映して66にしてみました。

夜にはライトアップされ昼間とは違った幻想的な雰囲気です。

水に映す写真が気に入ったので、イマーム広場でも映してみました。ここは普段噴水になっているのでが、たまたま噴水が止まっている時間でした。ラッキーです。

最終日はイスファハンに後ろ髪を引かれつつ空港へ向かいましたが、途中のカシャーンで素敵な庭園に出会いました。カシャーンはイスファハンから車で約3時間、伝統工芸が盛んな町ですが、特にバラ水が有名で、イスラム教の聖地メッカにあるカアバ神殿を洗うのにもつかわれるそうです。
フィーン庭園はその郊外にあります。16世紀に造られた庭園は水路が巡らされ、水と緑が豊か、静かでとても落ち着きます。ここにも水をきれいにする魚がいました。水路を風が通って涼やかな風を東屋へ運びます。王様も日々の忙しさを忘れくつろいだことでしょう。


水場を掃除しているおじさん


素敵なチャイハネ

イラン第二の聖地ゴムにも立ち寄りました。訪れたマアスーメ廟は第8代イマームの妹のための霊廟で、イランはもとより世界のイスラム教徒たちが巡礼に訪れます。

入口は男女別になっていて女性はチャドル着用です。観光客は入口で借りることができるので安心です。異教徒はガイド付きで入らないといけませんが、ガイドさんはお祈りのため、寺院のイマームが案内してくれました。「ここで写真を撮って」と言われるままにパシャ、パシャと。そして「私を撮る?」と言われたので「はい」と言って撮らせてもらいました。逆光になってしまったのが惜しいです。

出発便が夕方だったので、最後は駆け足になりましたが、無事予定通り日程を終えました。
日程半ばでちょっと風邪気味かと思ったこともあったのですが、ザクロでビタミンをとり復活。イランは本当に素敵な国です。緑が多くて、人が優しくて。髪の毛のスカーフも何だかなじんでしまい、飛行機の中でとるのがちょっと恥ずかしくなるくらいでした。
イラン、ありがとう。ホダー・ハーフェズ(さようなら)。

2019年10月 平田

おすすめ度
テヘラン ★★★★ 博物館巡りで歴史を確認
シラーズ ★★★★★ ペルセポリスは必見
ヤズド ★★★★ 昔と今の宗教が共存
イスファハン ★★★★★ 素晴らしい古都 何日でもいたい
カシャーン&ゴム ★★★★ 時間があれば立ち寄ってほしい

中近東・東地中海カテゴリの最新記事