フィヨルドは氷河が河床を削ってできた深い谷に海水が入り込んでできた地球の造形美。6月は1番日が長い季節なので時間はたっぷりあります。自然と人間がそれぞれ創り上げた風景を満喫してきました。
・フィヨルド編
<リーセフィヨルド>
リーセフィヨルドは5大フィヨルドと呼ばれるものの中で一番南にあるフィヨルドです。片道約2時間のトレッキングでリーセフィヨルド象徴、プレーケストーレン(ノルウェー語で「教会の説教台」)まで登ると、頂上からはフィヨルドの流れや山並みを一望できます。今回は日帰りで行ってきました。
拠点のスタヴァンゲルからフェリーとバスを乗り継いで、麓のプレーケストーレンフュッテへ。ここからトレッキングの開始です。
登り始めるとすぐに湖が見えてきます。そして途中にはかなり急な岩場や、平らな湿原、と景色はどんどん変わっていきます。
約1時間で中間付近です。海が見えてきました。そして森だった風景はゴツゴツした岩に変わっていきます。
そして足元も小さな岩から一枚岩のような、滑らかな岩肌になってきました。
頂上までもう一息です。
すると突然フィヨルドの光景が眼に入っていました。突然すぎて、最初は「何だ、これ?」と思ってしまったくらいです。
ここからさらにきつい登りになります。
そしていよいよ、プレーケストーレンです。平らな岩から600m垂直に落ちている断崖は圧巻。説教台の名の由来が分かる気がしました。頂上から見るフィヨルドはすごいとしか言えません。何万年という年月をかけて地球が創り上げた絶景にこれまでの疲れも忘れます。ただこの日は強風で頂上では何かにしがみついていないと怖いくらいでした。
<ソグネフィヨルド>
世界一長く、深いフィヨルドで、長さ約200km、水深は一番深いところで約1300mにもなり、内陸に行くほど何本もの細長いものに枝分かれしていきます。今回のフィヨルドエクスカージョンはベルゲンからオスロまで、列車、バス、フェリーを乗り継いでフィヨルドの最奥部まで、約12時間かけての周遊です。
まずはベルゲンから列車に乗り込みヴォスまで。座席は自由です。走り出してしばらくすると、フィヨルドの風景が次々に現れます。この日は晴天で川に映る景色も素敵でした。水量も豊かです。
ベルゲンから約1時間でヴォスに到着します。ヴォスに近付くにつれ雪山が見えてきました。列車を降りれば次は目の前のグドヴァンゲン行きのバスに乗車します。観光シーズンなので座席は満席です。
車窓から見える景色はうっとりするほど。ドライバーさんが道々ガイドもしてくれます。
この道中のハイライトは急なつづら折りの渓谷をゆっくり下っていくところです。こんな景色が見られるなんて夢のようです。
バスは約1時間20分ですが、その時間をまったく感じさせずにグドヴァンゲンに到着しました。次はいよいよフィヨルドクルーズです。
クルーズに乗り込んだらまず席を決めますが、みんな特等席を狙って大慌て。いったん決めると席を外しても横取りする人はいませんのでご安心を。船は谷を静かに過ぎていきますが、カモメに夢中の人も。船内にはカフェもあります。クルーズ中はどこを見てもすばらしく何万年もかけてできたことに感激しっぱなしでした。途中には小さな村や標高300mの牧場もみられます。ポイントでは船内にガイドのアナウンスが数ヶ国語で流れます。日本語もありました。運が良ければアザラシも見られるそうですが、今回は残念でした。
そしてクルーズのハイライトはソグネフィヨルドから枝分かれした、アウラルンフィヨルドと、ネーロイフィヨルドの唯一の合流地点です。それはまさにフィヨルドのイメージそのもの。
クルーズは約2時間でフロムに到着です。フロムはフィヨルドの最奥部で「山間の小さな平地」という意味です。フィヨルドクルーズとフロム鉄道の発着地ということもあり豪華客船も停泊していました。
フロムにはお土産屋やレストランもあるので少し休憩をして、次は登山列車のフロム鉄道です。
海抜2mから全長20kmを約1時間かけて終点のミュールダール(海抜866m)まで登っていきます。
列車は海抜669mのショース滝でいったん停まります。列車から降りることもでき、一歩外に出るとしぶきが飛んでくるほどの勢い。発電所にもつながっているというのも納得です。
そして列車に乗り込み、フィヨルドの風景を見ながら、終点ミュールダールに到着です。
そして最後の列車でオスロへ向けて出発します。すぐにトンネルに入りますが、トンネルを抜けると、そこは・・・氷河でした!!ハダンゲル氷河は一面真っ白で眼を開けられないくらいのまぶしさでした。沿線最高所はフィンセ駅で1222mです。真夏でも残雪があり、ハイキングコースやレンタルサイクルもできます。
この光景を見ると、「♪雪が解けて~、川にとなって、山を走り、谷を下る~」が実感できます。
やがて雪はなくなり岩から緑になっていきますが、川はずっと流れていきます。
フィヨルドは想像よりもはるかに壮大で、言葉では言い表せないくらいの景色が広がっていました。
・都市編
<ベルゲン>
ベルゲンは山が港近くまで迫っていてその山肌にも可愛らしい家々が並んでいます。色もカラフルで童話の世界に入ったみたいです。
まずはベルゲンの中心、ブリッゲンへ。ブリッゲンはかつてハンザ同盟で発展し、ハンザ商人の事務所や家として利用されていました。建物はすべて木造です。かつての隆盛を伝えるブリッゲンは世界遺産に登録されています。現在はレストランや工房、ショップに利用されていて、路地の奥に入ってどんな店が入っているのか探検するのも面白いです。
そして魚市場。新鮮な魚介類だけでなく果物やお土産ものも並び、呼び込みに活気があります。魚介はその場で調理もしてくれるのでいい匂いが漂っていて、空腹時にはたまりません。
駅側に行くと、公園と博物館や美術館が立ち並ぶエリアへ。美術館はテーマによって4つの建物に分かれています。私はムンクの絵を見てきました。
そして、ケーブルカーでフロイエン山に登るとベルゲンの町を一望できます。
6月は一番日が長い季節です。町は遅い夕焼けに輝いていました。夕焼けを見たのは夜10:00前後ですが、日はなかなか落ちません。白夜ではなくても1日の長さも堪能しました。
<オスロ>
オスロは首都というわりには、それほど大きくなくトラムやバスも充実していて観光しやすい都市でした。
まずはノーベル平和賞の授賞式が行われるオスロ市庁舎へ。中に入るとヨーロッパ最大といわれる大きな絵が目に入ります。そのほかにも1階と2回には多くの絵がありますが、その中にはムンクの部屋と言われる部屋があり、その名のとおりムンクの「人生」という絵が飾られています。
天気が良かったので広間から見る港も素敵でした。
大聖堂やアーケシュフース城、王宮など見どころは多いですが、オスロに来たらムンクの「叫び」を是非ご鑑賞下さい。国立美術館ではムンクの「叫び」をはじめ数点のムンクの絵が展示されています。「叫び」の前に立つと思わず同じ顔をしたくなりました。ムンク以外にもモネ、ピカソなど有名画家や、北欧出身の画家の絵など見ごたえのある絵が並んでいます。これが50NOK(約800円)で見られるなんて贅沢です。日曜日はなんと無料なります。ゆっくり時間をかけて名画の数々を味わいました。
オスロの中心、カール・ヨハン通りには歩行者天国になっている部分があり、ショップやカフェ、レストランが立ち並び、大道芸人も出ます。にぎやかですが公園でくつろぐ人たちもいて、緑が多いので都会の真ん中でゆったりした気分になれました。
<ストックホルム>
ストックホルムの市庁舎もノーベル賞にゆかりの建物です。ここではノーベル賞受賞祝賀晩餐会とパーティーが行われます。
それを横目にいざ旧市街のガムラ・スタンへ。
ガムラ・スタンはストックホルム中央駅からは徒歩20分くらいです。町の中に入るとまるで中世にタイムスリップしたような気分になりました。
大聖堂はストックホルム最古の教会で現国王の結婚式も行われた由緒ある教会です。中は重厚な雰囲気があり、格式を感じさせます。
大広場はその昔、大勢の処刑が行われ血で染まったと言われていますが、現在は周りにカフェが建ち並ぶ平和な広場です。カフェでは皆さん思い思いにお茶や食事をとっていました。広場ではストリートライブも行われます。
王宮では夏の間、衛兵交代式が毎日行われます。
散策好きにはもってこいのガムラ・スタン。ふと見つける路地は、どこを見ても絵になります。一番狭い路地は幅90cmほど。かわいいお店を見つけたり、お気に入りの路地を見つけるのも楽しみです。
かわいいポストも見つけました。
次は中央駅周辺に戻って散策です。
ガムラ・スタンへ通じるドロットニングガータン通りは歩行者天国になっています。
デパートやカフェ、レストラン、お土産屋が並ぶとてもにぎやかな通りです。
しばらく歩いていくとヒョートエリオットといわれる広場に突き当たります。「ヒョ-」とは「干草」の意味で、昔、干草や材木、衣類などが売られていました。今も市場になっていて花、果物、野菜、キノコがメインで売られています。お店の呼び込みでとても活気がありました。
向かいに立つ青の建物はコンサートハウスでここもノーベル賞の授賞式が行われるところです。クラシックのコンサートも行われます。さすがにノーベル賞関連の施設が多いです。
どの街でも、オープンカフェでおしゃべりしたり、公園でくつろいだり、老若男女大きなアイスクリームをほおばったり、短い夏(だけど1日はすごく長い)を満喫しているようでした。
心配した雨も降られたのはベルゲンの半日だけで、通り雨はあったものの、天気に恵まれ自然の雄大さと町の美しさを堪能した充実の旅となりました。
2012年7月 平田