つかまれた猫のその後 ~行くたびに不思議な発見のある国インド~

つかまれた猫のその後 ~行くたびに不思議な発見のある国インド~


手のひらに乗るくらい小さな猫。その猫の写真をとろうとした私のために、飼い主らしき人(近くにいただけかもしれません)が捕まえて、その猫をこちらに向ける・・・その後、ふつうならその猫をどうしますか?


インドへは今回が4回目。学生時代の旅は無計画な旅で、細かいことをあまり覚えていません。2度目は航空会社主催の南インド。3度目はデリーとアグラ。弊社のツアーの中でも本当に多くのお客様がおでかけされる地域のひとつ、インド。今回の旅の同行者、母親も「インドへ行きたい」とだいぶ前から言っていた。「インドは汚い」とか「インド人は騒がしい」とかこんな話は少なくないのに、どうして多くの人をひきつけるのか。私自身、正直なところすごい好きな国でもないけれど、でもまた行ってみようと思わせる国。今回はムンバイから入り、湖と宮殿のウダイプール、青い街並みで有名なジョドプール、最後はデリーへ。9日間でまわりました。

プレイメイトたちに囲まれ記念撮影
ムンバイのマーケット

猫の話はムンバイのマーケットでのことでした。生きた鳥、香水、カーペット、サリーの店などなど、まったく何の関連もない店が隣どうしで並ぶマーケット。私の撮影が終わるとその子猫は、ピッチャーが投げるボールのようにおもいっきり、隅の方に投げつけられました。周りの人たちはよろこんでそれを見ているという、目を疑う光景でしたが、猫の体がやわらかいのかいつもされているのかよくわかりませんが、猫はその後も普通に歩いていたのがインド的。買い物にきたお客さんより、多いのではないかと思われる大量の客引きと、ごちゃごちゃの商品・・・まさに「混沌」。猫がかわいそうとか動物に同情する余裕もなく、むしろそれを見て一緒に笑っている私。この混沌の中で「冷酷な人間に変わってしまった自分」に少しショックをうけつつ、ウダイプールへ向かいました。

5つ星航空会社 キングフィッシャー航空

混沌のムンバイからウダイプールへは飛行機で移動しました。この区間は5つ星航空会社と言われているキングフィッシャー航空を利用しました。航空券は一人たったの¥1,600。(この運賃の席には限りがあります。また購入時期などにより値段は変わります。)ムンバイとウダイプール間は約600キロ。東京と大阪間くらいの距離です。この値段、家と会社の往復の電車賃分くらいにしかなりません・・・インドならこれで飛行機に乗れてしまうんです。しかも空港への入り口からチェックインカウンターへ荷物のカートもキングフィッシャーのポーターさんが運んでくれて、カレーとデザート、コーヒーの機内食もついてきます。機内で放送される安全のビデオにはこの会社の社長も登場。「私が採用したスタッフのサービスをお楽しみください」って、う~ん・・・なんだかな~。単純に5つ星のいい航空会社ではまとめにくい、独特の雰囲気をもつ航空会社でした。


湖を眺めながら朝食

ウダイプールでは人造湖、ピチョーラ湖の上に建つホテル「レイクパレス」泊まりました。ユニークなロケーションと豪華な雰囲気が自慢のホテルで、ホテルまでは小さなボートで向かいます。船から下りると、上からバラの花びらが降ってきて・・・あたりはローズの香りがいっぱい。遠くから私たちの到着を見ていたという、心憎い演出。夜になるとホテル中にろうそくが灯り、とてもロマンチック。さらにはスタッフがみなとても優しく、行き届いたサービスも魅力。ゲストよりスタッフの方が多いのではないかと思うほど、スタッフが多いのにも驚きます。1700年代マハラジャが所有していたこの宮殿は、今このようにホテルとして利用されています。1960年にホテルとしてオープンするにあたり増築をし、多くの客室はその新たに増築された部分になります。現在レストランとして使用されている部分がオリジナルの宮殿部分。だいぶ内装も補修がされており手が入っていますが、それでもやはり昔のマハラジャの時代をイメージさせます。お部屋もとってもクラシックな雰囲気。でも無線LAN、薄型テレビなどなど、現代のテクノロジーも満載され快適です。ムンバイのマーケットとはかけ離れたこのレイクパレスの優雅すぎる雰囲気にまたもショックを受けましたが、これもインドの現実。

シタールを聞きながらクルーズを

船から見るシティパレス

キングフィッシャー航空の定時運行キャンペーンのおかげで、ウダイプールには定刻どおりに到着したので、心配されたピチョーラ湖でのサンセットクルーズにも参加できました。クルーズで見た、地平線に沈む夕日と美しい湖は本当に美しいフォトジェニックな光景です。レイクパレスに泊まるとホテルが主催するクルーズに参加が可能。シタールを弾くおじさんも乗船しており、インド音楽をBGMに湖に浮かぶ島や、対岸にあるシティパレスなどの遺跡の説明などを聞きながら優雅な時間を過ごせるのもこのホテルに泊まるメリットかもしれません。

ホテルの中にはとてもかわいいリスも多数発見!追いかけまわしたくなるほどかわいいリスです。湖の上なのに、中庭には緑もたくさん。そしてリスも鳥もたくさん。レイクパレスの環境はとってもいいんです。
2009年は干ばつにより湖の水が干上がり、レイクパレスは湖上ではなく草原の上に建つ陸上のホテルになったそうです。最近の環境の変化もあってかだんだんと湖の水位が下がっているそうで、常に湖上にあるホテルであるため、時に湖の底を掘り返して水を流しこみ、水位を保持することもあると聞きました。行く前にはホテルの状況、というより湖の状況を確認するほうがよさそうです。

ジョドプールにあるウマイドバーワン宮殿

ウダイプールのあるラジャスタン州にはかつての王国の王、マハラジャが住んでいた宮殿がたくさんあります。どの宮殿にも様々な歴史があり、現在では観光地や博物館になっています。レイクパレスのように宮殿が改装され「宮殿ホテル」として営業しているところも多くあり、中にはいまだ一部にマハラジャの住む宮殿ホテルも。高級ホテルは世界中にありますが、ただ豪華なだけではないインドらしい滞在ができる楽しいホテルです。

車窓から

ウダイプールからは陸路でジョドプールへ行きました。午前9時にウダイプールを出発して途中、インド最大級といわれるジャイナ教の聖地ラーナクプルの観光をはさみ7時間ほどかかります。でも、小さな農村などを通りすぎながら、さらに牛の群れをかき分けながらの移動。結構な距離ですが、車窓からの景色も興味深い。さらに運がよければかわいい子供たちとの出会いもあるかもしれません。
途中で通過するサイラ村という本当に小さな農村。車から様子を見ていたら、井戸水でシャワー中のはだかんぼの子供たち3人が私たちの車に向かってダッシュ!何よ、何よと思っている間に「写真とって」と「あめ玉をくれ」と懇願。服も着ていないのにいいのかしらと思いつつとりあえず撮影。シャワー浴びて石鹸だらけの体で走り回っている子供たちとしばし遊び、いっしょにおやつを食べました。やっぱり世界って美しい!って思う瞬間でした・・・お昼頃にはラーナクプルに到着。


ラーナクプルではすべてが大理石でできているという寺院がハイライト。作るのに65年かかったといわれる寺院。その彫刻の美しさは写真ではなかなか伝わらないのが残念です。ラーナクプルにはたったひとつのお寺しかありません。規模は小さいですが、彫刻のモチーフは一つとして同じものがなく、また彫刻が今もとてもきれいに残っているのでじっくり見ているとあっという間に時間が過ぎてしまいました。この日は近くのレストランでインド料理のランチを食べ、夕方頃にジョドプールに到着しました。

この日に泊まるジョドプールのホテルは旧市街の中。日頃弊社では利用しないホテルのため、ガイドさんも、もちろん私たちもどこにあるのかわからない。ふつう車じゃ走らないだろうと思うくらいの細い路地、マーケットの人混みの中を車で走る、走る。人を轢いちゃったりしないかしらと思うくらいの大混雑の中を車で行くので、はっきり言って怖いです。それなのでインドの街中を歩く場合には十分注意が必要です。ウインカーの代わりにクラクションを鳴らして走る自分の車にひやひやしつつ15分ほど、車でうろうろしてようやくホテルに到着しました。


ラースハベリ

ジョドプールはラースハベリという、メヘランガル砦が目の前に迫るホテルに泊まりました。この「ハベリ」とはヒンディ語で邸宅のことを言いますが、このラースハベリもまた、古い邸宅をホテルに改装したユニークなホテルです。残念なのが、ホテル内の建物すべてが邸宅であったわけではなく、旧家はこのホテルのスパとレストラン、一部の客室となり残されています。客室の大半は近年作られた建物の中にあります。それだけに設備は整い快適に過ごせるホテルです。旅行雑誌「コンデナストトラベラー」のインドで泊まりたいホテルのナンバー1になったホテルだそうで、欧米人が多かったです。


メヘランガル砦の足元は、ジョドプールのマーケットがあります。主に食品が多かったですが、サリーやアクセサリのお店もありました。さらにどこかからか集まった牛が路上に寝ていたり、うろうろしていたり、だんだんと夜になるにつれて牛が増えてくる状況。ムンバイ同様に混沌状態でした。お世辞にもきれいとは言えない環境の中で食べ物が販売され、私たち観光客の口に合いそうなものもあったのですが、さすがに食べることができなかったのが残念です。遅い時間帯にかなりの人通りがあり、夜10時くらいまではにぎやか。食器を売る店とかそんなに遅くまでお店を開く意味が分からないところもありましたが、インドらしい光景をこのジョドプールでもまた再び目にしました。

ジョドプールは「ブルーシティ」としても有名。家々の壁が真っ青に塗られています。インドの夏は暑く、特にラジャスタン州の暑さはとてつもないそう。そのため壁を青く塗ったのだとか。マーケットの周辺にもたくさんの青い家が並びます。ぜひここは高台からその街並みを見てみたいものです。ジョドプールのハイライトでもあるメへランガル砦から見るのがおすすめです。

メヘランガル砦



メへランガル砦はジョドプール市内から車で15分くらいのところにある砦。今もマハラジャが所有しているそうです。砦の中には小さな国があったため、宮殿や王宮、お寺が内部に多数残っています。ひとつひとつ見ていくと1日では足りないでしょう。砦の中は迷路のように入り組んでいます。全体像を1時間でつかみたい方にはメへランガル砦の上空からターザンで見学することもできます。(1回¥5,000くらい。このターザンにはヨーロッパの技術が採用されており、インストラクターは毎日安全のための研修を受けているそうです・・・個人的にはちょっと怖いと思いました。)スケールが大きく、見ごたえがある砦です。ここからのジョドプール市内の風景が見られます。市内のブルーの街並みに加え、遠くにジョドプールのタージマハルといわれるウマイドバーワン宮殿も見ることができ、とても美しい眺めです。

ピザショップでのご意見ノート

ジョドプールの観光後、そのまま空港へ向かいデリーへ移動しました。社員旅行から帰って2日後にでかけたこともあってか、というよりあとさき考えない日程でインドへ行ったことによる自己責任なのですが、デリーでダウンしてしまい、観光もできず終了。カフェやピザでツアーの食事を終了するという、旅行会社のスタッフとしてなんとも恥ずかしい終わり方・・・。デリーでは皆様にお伝えできるようなことを何一つしておりません・・・。
でもひとつだけおもしろかったこと、それはデリーには街頭アンケートが多いことと、スーパーマーケットやレストラン、ホテル、いたるところで感想を求められること。ピザ屋では入り口でノートを持ったお兄さんが立っていて、ピザを食べた感想と出身地を書かされました。「おいしかった」と書きました。ホテルではゲストノートのようなものに滞在の思い出を。さらにスーパーマーケットでは、とあるメーカーがペットボトル入りのオリーブオイルを発売するらしく、以前のビン入りと比較するアンケートを。「外国人なのでわかりません」と言っても追いかけてきて、なんとしても何かを答えさせたいらしい。「日本ではビン入りが多いです」という回答をすると、ペットボトルがいかに便利かを力説。結局、向こうが求める答えを言わせたいんですね・・・。

ラムネとレモン

ショッピングモールとすごいゴミ


猫をボールのように投げつけちゃうことも、もはや日常。12億の人口の中、動物よりやっぱり人間優先。当たり前だと思います。マーケットではありとあらゆるものが売られ、狭い店の隙間に牛が寝ていたり・・・その中で生鮮食品を買う人たち。貧富の差が大きいといわれるインドで、ローカルマーケットはなくてはならない存在。レイクパレスのようなラグジュアリーなホテルも、経済発展を続けるインドにぴったりきます。こういったホテルにインド人のお金持ちが連泊をするそうです。アンケートや街角インタビューがよくあるデリーの街中。現地の旅行会社のスタッフいわく、都会ではこういうのが流行っているそうです。私がインドに何度も行きたくなる理由。インドはいろいろな事柄が複雑に絡み合った、理解のしにくい国。行くたびに前と違った不思議な発見がある国だからかもしれません。
2011年12月 吉木

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