フランスの素顔がみえる旅~南西フランス小さな村めぐり~

フランスの素顔がみえる旅~南西フランス小さな村めぐり~


いろいろ考えると日ごろよく使うものの中にはフランスから届いたものも多い。チーズ、ワイン、ジャム・・・そのパッケージに注目!チーズやワインの箱やラベルにはフランスの村とおぼしき絵が書いてあったり、ジャムはふたがギンガムチェックの模様でいかにもヨーロピアンカントリー調。「こんなかわいらしいところで作られているんだろうな~」とか「たぶんフランスの田舎のママがイメージしたからこんな小粋なパッケージになったのね」いつもこんなこと考えてるわけではないけれど、私はふと、そんな遠くから運ばれてきた食品を目の前に思うことがあります。いけるものならこんなかわいい田舎の村に行ってみたい。その希望は、妄想と夢だけで終わりませんでした。この5月、ガイドブックにもほんの1ページだけにしか載らないくらいの、フランス南西部の小さな村々をたずねてまいりました。


シャトーピションロングヴィル

サンテミリオンの旧市街

アムステルダムからボルドーへ入り、ボルドーで2つのシャトー(ワイナリー)とボルドーのスパホテルを訪問。今回はメインの南西フランスにボルドーのおまけがついて、7泊9日で周遊しました。ボルドーのワインめぐりについて、少しだけ。いわずと知れたワインの一大生産地のサンテミリオン、メドックのシャトーを訪ねました。メドックでは「シャトーピションロングヴィル」、サンテミリオンでは「トロロンモンド」。ワイン生産者から直接ぶどうの木の品種から熟成させる樽のことなどいろいろ教わります。前にイタリアのトスカーナのワイナリーをみたこともあって、生産地によって生産過程やその規模が大きく変わることがよくわかりました。当たり前のことですがイタリアとは気候も異なります。しかもトスカーナとはワインヤードの規模が違います。ワイナリーめぐりが初めての方でもまったく問題ありません。以前どこかでワイナリーに行った事がある方ならよりボルドーのワインがより身近に感じられるかもしれません。



ツアーではどんな小さな質問も詳しく教えてもらえます。なんといっても弊社でオプショナルツアーとしてご紹介をするシャトーめぐりは日本語ガイドつきですから。言葉の心配がありませんので、ワインに詳しい方でもそうでない方でも楽しめる内容です。ワインの醸造の様子、ワイナリーのシャトーの美しさ、とてつもなく広いワインヤード、ぜひボルドーに行かれたら見ていただきたい場所です。もちろん試飲も可能です。そのシャトーごとのワインの味の違いや、年代やラベルによる味の差までは私にはわからなかったですが、せっかくシャトーに行ったならそこのワインを購入したくなるもの。もちろん多くのシャトーで購入も可能。ボルドーワインは高騰しているとのことで、だいぶお値段の張るワインが多いかったですが、日本よりずっとお安く買うことができます。
ツアーで訪問する多くが格付けのついたシャトーが多いそう。こういう恥ずかしいことをするものではないと思うのですが・・・どのシャトーがどんなお値段のワインを生産しているのか、私が買ったワインは日本で買ったらいくらするのか、日本に戻りインターネットでチェック。サンテミリオンで訪問したシャトーのワインには、多くが万の単位がついていました。ワイン売り場で金属の頑丈な扉に鍵がついたセラーに入っているたぐいのワインです。そんな有名で高品質のワインを生産するシャトーに気軽に訪問できるシャトーめぐりがおすすめです。

ルルド駅

ここからは南西フランスについて。
ボルドー++(TGV)++ルルド(ルルド1泊)
ルルド++(普通列車)++トゥールーズ(トゥールーズ1泊)
(ここからは移動はすべて車)
トゥールーズ-アルビ-コルドシュルシエル-コンク(コンク1泊)
コンク-ロカマドール-サンシルラポピー-カオール-トゥールーズ(トゥールーズ1泊)

コルドシュルシエルの街並み

結論から申しますと、どの村もかわいい。その一言です。場所によってはキリスト教の69の巡礼地のひとつになっているところもあり、小さな村に世界中から多くの信者が集まります。もちろんそんな世界的に有名な村ではなくても、どれ一つとして同じではない、それぞれに個性的なところでした。そんな南西ミディピレネー地方の小さな村をひとつずつじっくりと訪ねました。

ルルドにある要塞からの眺め

シャトーめぐりをしたボルドーから列車で約2時間半でルルドへ到着。駅からホテルや教会のあるところまでは1キロほどあります。ルルドは山坂の激しい街で駅から市内へでたとたんにスーツケースごと自分も転がりだしてしまいそうなほどの急坂。坂道で楽した後は登り坂がやってきます。駅からホテルへたった1キロの道のりに1時間もかかってしまいました。もしルルドの滞在が短いなら、もし荷物がいっぱいなら、もしその日が暑い日なら、迷わず駅からタクシーを利用するのがおすすめ!坂はのぼりでもくだりでもきついんです。

ルルドでの大きな目的はキリスト教の最大の巡礼地で毎晩行われる(復活祭から10月15日まで)ろうそく行列に参加すること。この村に住んでいたとある少女の前に聖母マリアが現れ、数々の奇跡をおこしたといわれています。特に病気を持つ人々に特に信仰され、その奇跡を信じて今も病を持った人々が数多くやってきます。このろうそく行列はそのみんなの祈りが一番大きくなるハイライト。足の悪い人、何か病気を持った人、看護師さん(白衣を着て参加)日暮れごろから始まるろうそく行列に参加します。
この日はあいにくの雨模様。雨はやむかもしれないしとりあえず、「ろうそく行列」なんだからろうそくを買わなくては!売店で細いろうそくに風除けのような紙のカバーがついたものを0.5ユーロで購入。雨でも行列はあるのか、何時までなのか、よくわかりません。夜10時まで明るいこの時期、太陽がまだ午後4時くらいの位置にある時間帯に夕食を済ませ、ろうそく行列のスタート場所とおぼしき聖域(ルルドの街の中心にある礼拝堂や聖母マリアの生まれたとされる洞窟などが集まるエリア)で始まりを待つこと30分。放送塔から大きな声が・・・どうやらろうそく行列の始まりらしい。フランス語、英語、スペイン語など数カ国語で「誰もが参加できる」とか「体が不自由な人に報いがあるように」とか、そんなメッセージが放送されると、200mくらいの人の行列ができ、大きな十字架をかかえた牧師さんを先頭に人々が歩き出しました。参加する人たちは聖歌を歌いながら、手に持ったろうそくを掲げ、聖域内を歩きます。とりあえず私もその波にのり参加。私はありがたくも五体満足なので、周りにいたおじいちゃん、体の不自由な人のため祈りながら歩きました。礼拝堂の上からその行列を見ると、無数のろうそくが夕暮れ時に浮き上がって見え、とても美しかったです。
ルルドからトゥールーズへは普通列車で移動。街の中心にあるキャピトル広場を囲むようにカフェやレストラン、ホテルが並び、街の規模もとても大きいのが印象的。トゥールーズはエアバス社の本社がある街としてご存知の方も多いかもしれません。(エアバス社の工場はトゥールーズ空港ビルから見えます。見学会などもあるそうです。市内にはそれにまつわるものは一切ありません)

ドライバーさん

5月ではありましたが、ほぼ毎日30度を超える暑さ。8月の気候が5月にやってきた!と2日間トゥールーズから車で村々をまわってくれたドライバーさんは驚いていました。ミディピレネーの村めぐりは朝08:30発。ドライバーさんはファイブスタークラブのお客様を日ごろからよく案内してくださるアルノーさんが担当。几帳面で丁寧なドライバーさんです。

ビューポイントからのコルドシュルシエル

1日目は画家のロートレックが生まれたところとしても知られる世界遺産のアルビ、芸術家たちが集まる村コルドシュルシエルを訪問し、この日の最後は宿泊をするコンクへ。コンクへは17:00ころ到着。このころのフランスは17:00でも太陽はまだお昼くらいの位置。夜10:00まで外で読書ができるくらいの明るさです。普通なら夕食を食べたらもうおしまいの時間ですが、日が長いおかげでゆっくり村を見て回ることができます。コンクはスペインのサンチャゴデコンポステーラへの巡礼路の通過点の一つでもあり、長い距離を歩いてきたと思われる巡礼者の皆さんをたくさんみかけました。村の中心にあるサントフォワ教会は世界遺産。教会の美しいファサードの彫刻はそれぞれがストーリーがあり面白い。中世の時代そのままのかわいらしい家々、曲がりくねった石畳の小道・・・ヨーロッパらしいかわいらしい村です。村の中にいるとまったくわからないのですが、この村はサントフォア教会を中心に岩山にへばりつくようにあり、村から少し離れたビューポイントから眺める景色は絵葉書のよう。画素数が低すぎていまいちな私の携帯電話についたカメラも取り出し、写したくらいですのでその美しさは本物だと思います。弊社の専用車ツアーではもちろんこのビューポイントを訪問します。皆様カメラの充電をお忘れなく。

ホテルサントフォア


コンクではサントフォア教会の目の前にある小さなホテルに泊まりました。お部屋の鍵といっしょにホテルの入り口のドアの鍵まで渡されます。翌朝、太陽が昇る前に逆光でないきれいな写真をとりたいとか、夜遅くまで飲みたいとか、好きにしていいからドアがあいてなければその鍵を使って、という個人宅に寄せてもらったような感覚。設備の面ではチェーンホテルや、都市にあるホテルに及びませんが、フランスの田舎らしい飾らない雰囲気が居心地のよいホテルでした。

ロカマドール

ちいさな村訪問2日目は朝9時出発。まず最初はロカマドールから。絶壁にはりつくようにある村はロスピタレという村から2キロ離れたところにある展望台からの眺めがgood!ここから村を写真に撮るのは午前中がいいそうで、ドライバーのアルノーさん、いつも全体的な訪問順序から、立ち寄るポイントまで写真を撮るのにいい時間帯を狙って日程を組み立ててお客様のご案内をします。それに英語も上手。ドライバーガイドとしてプロフェッショナルな方でした。ロカマドールは、初期キリスト教徒だった聖アマドールの遺体がみつけられた時、死後数年たっているにもかかわらず、生前のままだったというすごい伝説を持つ巡礼地のひとつ。岩山の上にある聖域から村の目抜き通りまで続く階段を下りながら、昔の巡礼者たちの時代に思いを馳せます。昔の巡礼者たちは罪を悔い改めるため、両膝をついてこの階段をのぼったといわれています。聖域には7つの聖堂があり、かつてさまざまな人々に奇跡をもたらしたといわれる黒いマリア像や12世紀のフレスコ画など、神聖で重要なものがたくさん残されています。階段をすべて下りると、150メートルほどのメインストリート。この通りではトゥールーズあたりで有名なスミレをつかった石鹸や、少し離れたバスク地方からの織物(バスクリネン)製品などなど、フレンチスタイルのおしゃれでかわいらしいものを売るお土産やさんもあります。15分ほど自由時間をとり、しばしショッピング。このロカマドール以外の小さな村でお土産探しは難しいかもしれません。お土産やさんがたくさんできるほど観光に俗化した感じの村はこの辺にはあまりないからです。

フォアグラのお店

フォアグラとトリュフ

続いて、サンシルラポピー。ここもロカマドールのように、崖にはりつくようにある小さな村です。15世紀から16世紀に建てたられた木造の家々に今も人々が住み、あるところはお洒落なレストランとして使われています。散策を楽しんだあとはランチ。この日のランチで南西フランスのグルメをすべて堪能しました。ミディピレネー地方、この辺はフォアグラ、トリュフやロックフォールチーズといった美食でも有名なところ。今回の周遊で最後に訪れたカオールの街はその熟成期間の長い、黒に近い赤色のワインが有名な地域でもあります。
入社以来、出張ではロブスターやステーキなどなど各地域の名産を「勉強」ということで賞味してきました。ただ今回のランチはフォアグラ、トリュフ、チーズとカオールワインを一度に楽しむという、これがランチ?しかも出張中の身で!と思うようなメニュー。言い訳がましいですけど、サラダとドリンクメニュー以外にフォアグラやらトリュフを使っていないメニューがないんです。アルノーさんには仕事できてるんだから気にしないでいいと思うけどな~、とか後押しをされつつ、そして自分では後ろめたさを感じつつ・・・、私はいただいてしまいました・・・。お昼からワインとフォアグラと・・・おいしすぎる出張です。
確かにこのあたりではメジャーな食材ということもあり、お値段は大変お手ごろ。フォアグラづくしのセットメニューでも3,000円程度です。こんなにもおいしいグルメを中世の街並みの中でいただくって、なかなかほかのところではできないでしょう。アルノーさんのアドバイスによれば、本当に安くおさめたければ、売店でサンドイッチなども買えるそうです。ただ、せっかくですので、チャンスがあればこのあたりのグルメを味わってみるのもおすすめです。

黒いワイン“カオールワイン”

2日目ももう夕方、緑の大地が続いたフランスの田舎の景色から街の景色に変わり、カオールに入りました。カオールでは要塞化したヴァラントレ橋がハイライト。この橋を高台にから眺めます。橋というよりはお城に近いイメージで、14世紀のもの。世界遺産にも登録されています。時間の関係上、じっくり市内をみることはできませんでしたが、サンチャゴデコンポステーラへの巡礼の路沿いとなるカオールは比較的大きな街で、車からみえた景色は、大通り沿いにカフェやレストランがあってにぎやかな印象でした。
パリで観光をしたならば、教会や美術館めぐり、さらにショッピング。やることがありすぎて3泊あっても時間が足りないかもしれません。フランスのパリは世界の人を集める一大観光地。パリの美しい街並みが私も大好きです。
一方で今回訪問した数々の田舎町は多くがゆっくり歩いたとしても20分で一周できてしまうようなところ。お土産やさんもあまりないし、お洒落な宿も5つ星のホテルも、選べるほどのレストランもないところがほとんどです。今回私が泊まったコンクは、2連泊したならばおそらく飽きてしまったと思います。それくらい飾り気がない、だけど素朴で美しい、それぞれの村に個性的な魅力のある南西フランスは、パリ以上に私の心を惹きつけます。ワインのラベルやチーズの箱に書いてあった絵のような風景は、確かに車の窓から、村の高台から見えました。間違いなく実際にフランスにある景色で、歴史的建造物いっぱいの街パリもフランスですが、こうした村々もフランスの素顔でもあると思います。こうしたどこか忘れられない景色、魅力があるかわいらしい村が南西フランスにも点在しています。

最も美しい村協会に登録されている村の入り口で

今フランスには厳しい条件をみたした「フランスで最も美しい村協会」に登録されている村が156あります。今回訪問した村のいくつかが登録されています。ただ多くは電車などで個人で移動するのがちょっとややこしい地域。ここはファイブスタークラブの専用車プランで、そんな田舎の村を、フランスの素顔を、ひとつずつ訪ねる旅はいかがでしょうか。
2011年5月 吉木

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