40時間の道も決してがっかりしない!パタゴニア氷河めぐり<アルゼンチン>

40時間の道も決してがっかりしない!パタゴニア氷河めぐり<アルゼンチン>


小学校の頃、先生から日本の真裏はアルゼンチンと教えてもらいました。そのときはなんとなく遠い国なんだな~という印象しかありませんでした。今回の旅行でアルゼンチンがいかに遠いかということを今さらながら理解すると同時に、相当な時間をかけて行ったとしても、人を後悔させることのない美しい自然がパタゴニアにはありました。



東京からアトランタ、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスを乗り継ぎ、所要約40時間、カラファテに到着。氷河、湖、アンデス山脈と自然があふれるパタゴニア地方への入り口となるところがこのカラファテです。カラファテはこの氷河を見にくる多くの観光客が泊まる街ですが、30分もあればすべてをみてまわれるほどの小さなところです。街にはお土産やさんやレストランあり、カジノあり、防寒着を忘れた人のため(?)の登山用ウエアのショップありで小さいながらにぎやかで楽しい街。食事の面で言えば、こういった気候や環境の厳しい地域にあるところでは食べられるものに限りがでてくるものだと思うのですが、どのレストランもメニューが多く、お肉や魚、ご飯やパスタ、ピザ、サンドイッチなどいろいろ楽しめるのもgood! 世界第5位のワイン生産国だけあり、ワインを飲みながら食事のできるおしゃれなレストランもたくさんあります。


そして4月のオフシーズン一歩手前の時期でも多くのお土産やさんは9時頃まで、レストランなども深夜0時過ぎまで営業していて、夜遅くまで楽しめるのも魅力があります。昼間は観光ぎっしり、夜はあまりすることもなく20:00就寝・・・という国、けっこう世界には多いと思います。他の地域の文化風習を否定するわけではないですが、個人的にはやっぱりどんなところへ旅をしてもいろいろなものを食べたいし、夜遅くまで遊びたいのが本音です。

今回はこのカラファテ3泊4日の日程でロスグラシアレス国立公園内の氷河めぐりをしました。迫力があるといわれる氷河の大崩落が見られなかったのは少し残念でしたが、それでも氷河を間近にして大自然の驚異を感じることができました。久々にふかふかのベッドで寝られる喜びをかみしめたその翌朝はホテルを7時出発。「クリスティーナエスタンシア(エスタンシアは牧場、牧地)ディスカバリーツアー」に参加しました。国立公園内でもっとも面積の大きいウプサラ氷河を船から眺め、その後、その船でクリスティーナエスタンシアに上陸、牧場の歴史を勉強した後はクリスティーナ牧場から約10キロ内陸に4WDでがたがた道を走り、途中で車を降り、そこから徒歩で約30分山道をトレッキング。そうして到着したところからはもうひとつのウプサラ氷河の河口を見学します。出発してホテルに戻るまで12時間の盛りだくさんの内容でした。朝7時とは言っても外は真っ暗。緯度が低いのでこの時期のパタゴニア地方の夜明けは朝8時過ぎです。この日のツアーに参加するお客さんを各ホテルでピックアップしながら、80キロ離れたところにあるプンタバンデラ港まで向かいます。わたしたちを待ち受けていた船は予想していたよりも小さなジェットフォイルで2階建て。こんな小さなのだと酔うに違いない・・・と心配になりましたが、氷河はアルゼンチーナ湖に向かって流れてきているので、船が走るのは湖。波がないのでそれほど大きく揺れることはありません。船は自由席なので、あえて言うのであれば2階の席をとるのがおすすめです。(わたしは1階席に座りましたが、2階のさらに上はデッキになっていて外に出られるので1階しかあいてなくてもがっかりしないでください。)


ツアーはエスタンシアの歴史を勉強したり、放牧されている馬と遊んだりするアクティビティもありますが、結局このツアーでは船と、陸からウプサラ氷河を眺めるのが一番のハイライト。まずウプサラ氷河の一番大きな先端部を見せるところを船から見ました。大きなかたまりになって割れて流れ出してきておりあまり近よることができないせいか、氷河の全体がよくわからないうちに終了しました。ただ氷山のようになって浮かんでいる氷はどれも真っ青で、透き通っていて吸い込まれそうなくらいきれいでした。水の上に出ている氷は全体の10分の1で、その下には9倍の氷があるそうです。スケールの大きさに驚きました。氷がたくさんあつまったところでは幸運にも虹をみることができました。こんなことはあまりないそうです。ラッキー!船に乗ったお客さん同士でハイタッチ。外国のツアーっぽいノリです。


ランチの後は、船からみた湖とは別の水道に流れ込むウプサラ氷河を展望台から観察。展望台とは言っても、そんな施設があるわけでもなくただの崖から眺めます。10名ほどの参加者が1台の4WDに乗り込み、約10キロを走ります。途中せせらぎを横切り、急坂あり、石ころごろごろの道ありで、容易に想像がつくと思います。はい、悪路です。悪路なのですがパタゴニアの原生植物を間近に見ることのできるチャンスでもあります。30分も走っているとそのうち、車から見えてくる植物のタイプが変わります。大きな木がたくさんの森から、草などの背の低い植物しか生息のしていないエリアへ。ドライバーさんはアラスカのようなツンドラが、南極地域や、パタゴニアでも見ることができると言っていました。環境の厳しいところだということを改めて実感します。そうしているうちに車がとまり、そこからは30分くらいの軽いトレッキング。パタゴニア地方の特徴でもある、強い偏西風に吹きつけられながら歩きます。体験したことのないくらいの強風で、写真を撮ろうにもまず、静止ができない。そんな風です。この強い風は一年を通してふきつけるそうで、いつも同じ方向に吹く風のせいでパタゴニア地方の多くの木は風になびいた形に変形しています。展望台兼、崖にたどり着くと、視界が開けて小さな湖に流れ込むウプサラ氷河が見えてきます。崖から氷河までは800メートル、しかしはっきりと見えます。しかもこの強い風のなかでも遠くから氷河にひびが入る音も聞こえます。今表面に見えている氷は200万年前の氷が押し出されている、と言われています。200万年前っていつ?って思ってしまいますが、2011年4月にこうしてはるばる日本からやってきた私たちと、アトランタからのスリランカ人2名とフランスからの女の子たちは、そのいつかわからないくらい前の氷と対面することとなったわけです。感慨深いものがありました。写真をとりたくても静止することができないくらいの風がとまることなく吹き続ける中、美しい氷河を観察。厳しい自然が作りだした偉大な景色を満喫してこの日のツアーは終了。同じ道を戻り、ホテルへは20:00頃到着。

翌日は09:00ピックアップ。ペリトモレノ氷河のツアーです。この日の目玉は先端部が6キロとも言われるペリトモレノを間近に見ること。今日はどんなきれいな氷河が見られるのか、期待がふくらみすぎて、朝ごはんもそこそこに準備。パタゴニアの気候は強い風と氷河の近くでは気温がとても低いのが特徴。前日、カラファテの街がそれほど寒くなかったので手袋、マフラーなしででかけてしまいました。氷河の気候を甘くみてはいけません。氷河は氷の塊。氷河の上を駆け抜けてくる風はとてつもなく冷たく、冷蔵庫の中にいるようでした。氷河の近くで手袋なしだと、手がかじかんでいい写真がとれないはずです。夏でも冬でも手袋は持参されることをおすすめいたします。上着はダウンの上にウインドブレーカーがあれば、4月頃の観光にはちょうどいいくらい。(欧米からのお客様はトレーナーだけとか、そういう人も多かったですけどね・・・)ダウンコートの上にウインドブレーカーという、これまで組み合わせたことのない格好で出発。その他コートやら、マフラーやら分厚い靴下とか防寒着の荷物だらけになりながら、この日は30名くらいのウルグアイから来られた皆様と同じツアーバスに同乗させていただきました。ウルグアイのこと、いろいろ教えていただきました。参考までに・・・公用語はスペイン語で、人口は340万人。首都のモンテビデオからブエノスアイレスまでは飛行機で40分だそうです。

ツアー中はスペイン語の説明の後、ガイドさんが私と同行者のために英語で説明。ほんの少しでもスペイン語がわかれば、今からランチだとか、推測くらいできると思うんですが、スペイン語の知識のかけらもないもので、たった2名のために英語の説明をいただきました。最初から最後まで大変お世話になったガイドさんでした。
氷河の成り立ちや国立公園の歴史を聞いているうちに第一展望台に到着。ここからのペリトモレノの眺めはほどほどです。遠い!遠すぎる!!というのがここからの眺めの印象です。そそくさと写真をとり、再びバスへ。やっぱり船が一番ペリトモレノ氷河に近づけるって誰か言ってたし。ウルグアイの皆様も早く次に行こうよ・・・って言ってるみたいな感じでした(勘違いではないと思います・・・)

船からのペリトモレノ氷河の観光は、本当に手を伸ばしたら触れられそうなほどの迫力でした。氷河が大きく崩れることはありませんでしたが、何度か表面が削れるように落ちるたび、ものすごく大きな音がしました。人と話しているとその声がさえぎられてしまうくらいの大きな音です。落ちるたび船に乗っている人みんなが大興奮!ほとんど人は船内のシートではなく外のデッキにでており大きな音がするたびに、そっちへみんなが殺到。それだけ誰もがひと目みたいと思っているのがわかりました。氷河の前に船が止まっていたのは15分程度ですが、3回ほど崩れるのを見ることができました。氷河が崩れるのは小さくてもダイナミックで見ごたえのある光景。しかも目の前にある氷河は200万年前の氷。その氷が崩れて水に消える瞬間を見るってやっぱりすごいことだと思います。


お昼をはさんで午後はペリトモレノ氷河の向かいにある半島に作られた展望デッキから氷河を観光します。このあたりは斜面に沿って、トレッキングのできるようなトレイルが作られています。トレイルの途中にテラスのようになった展望スペースがありそこから氷河の全体が見られます。船からだと氷河の一部分しか見えないのですが、展望台からはペリトモレノ氷河を少し上から見下ろすことができます。全長5キロとも言われる河口全体と氷原のように広い氷の海が見えます。たくさんの亀裂が入る氷は上から見ると「いがぐり」のよう。刺さりそうなくらいとがった氷が無数に見えます。そしてその亀裂のすき間はまたまた・・・吸い込まれそうなくらい真っ青。その青さは「吸い込まれそうなくらい」以外の表現方法はないと思います・・・河口の全長は5キロとも言われています。時々、バリッという氷河に亀裂の入る音も聞こえました。より氷河に近づくことのできるこの遊歩道は、船とはまた違うペリトモレノ氷河を見ることができます。スケールが大きすぎて氷河というより氷の海のような印象を受けました。この遊歩道では1時間程度のフリータイムがあり、自由に散策をします。崩落により落ちた氷の塊のせいで船が氷河の先端まで近づくことが難しくなっている中、この遊歩道はかなり氷河に近い!散策中小さな崩落をみました。言われているような大規模なものではなかったですが、その音はやはり大きく、雷のような音でした。大満足で2日間の氷河めぐりを終えました。
カラファテの街で売られていた絵葉書を買って帰りました。その写真の氷河は、自分がみた氷河と同一のもの?と思うくらい印象が違いました。見るたび、時間が経つたび、この氷河は姿、形を変えます。氷は何万年もの旅をしながら押し出されて私たちの目の前に現れます。来年の同じ頃、また同じ氷河の前に立ったとき、今回とはまた違う氷河の姿を見せるんだと思います。いつもその姿を変える、まさに自然の造形美、大自然のダイナミックさがパタゴニアの氷河にはあります。今回の旅行でパタゴニアで見たのはたった2つの氷河。ご存知かと思いますが、このパタゴニアは大きな氷河だけでも47もあります。また氷河以外にアザラシがたくさんいる海岸、絵の具を流したように青い湖、荒涼とした大地・・・世界的に見ても特殊で美しい自然がたくさん残っています。アルゼンチンは本当に遠いです。時間がかかります。私はこの限りないパタゴニアの雄大な自然を目にしたとき、そのかかった時間とこの美しさを比較することはほんの一瞬もありませんでした。
2011年4月 吉木

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