ブッダの歩いた道、仏跡の旅<インド>


世界人口69億人の17%、12億人が住む大国インド。2035年にはこのままのペースでいけば中国の人口を抜くといわれている。人口の80.5%がヒンズー教徒。僅か0.77%の924万人が仏教徒。仏教発祥の地にしては寂しい人数だが、全世界4億人の仏教徒の注目はインドにある。今回はブッダの歩いた道をたどって4大聖地巡りの旅に出た。




先ずはブッダが何度も訪れて説法した、8大聖地の一つバイシャリへ向かった。デリーを寝台列車で予定通り17:10に出発したものの途中牛が線路から動かなくなり、結局4時間20分遅れで09:50にパトナに着く。パトナはラージギルやナーランダー、バイシャリを目指す旅の起点だ。パトナから56㎞、車で約1時間にてバイシャリに着く。2500年前、ブッダが在世当時北インドには16の大国があったが、バイシャリはその一つ。ブッダ入滅後、経典編集のための集会が開かれ、そのシンボルとして建てられたアショーカ王の石柱が今も高々と天に向かっている。ここには8つの仏舎利(ブッダの墓)の一つ、レリック・ストゥーパがある。王宮遺跡や各国の寺、世界平和塔、博物館等、大きな遺跡公園になっている。


次にパトナから約3時間、広大な仏教大学の遺跡で有名なナーランダーへ向かう。5世紀に建設され、7世紀に三蔵法師がここに滞在した時には、1万人もの学僧が学んでおり、当時としては世界最大級の大学だった。遺跡には11の僧院跡、14の寺院跡が残っている。そのスケールの大きさは今もうかがい知れる。



ナーランダーから数十分もするとブッダが修行・説法をした地で有名なラージギルに着く。実際ブッダが修行したグリッドラクータ山(霊鷲山)に上ってみる。深い森の山頂にその場所はあった。灼熱の夏の太陽が照りつけ実に暑い。40度はあるだろう。こんな暑い中で修行をすれば煩悩など吹き飛んでしまうかもしれない。あえて過酷な自然の中に身を置くことで本質が見えてくるのだろうか。インドの地はまさに最適の地かもしれない。この地にはマガダ国のビンビサーラ王がブッダの教団に寄進した竹林精舎跡がある。緑豊かな公園になっているが最初の仏教寺院である。


翌日はいよいよ仏教徒にとって最高の聖地であるブッダ・ガヤーを訪れた。この地でブッダは覚りを得たのだ。ブッダは各地で苦行をし、ここブッダ・ガヤーの大きな菩提樹の下で深い瞑想に入った。そしてついに覚りを得たのである。聖地の象徴としてマハーボディー寺院(大菩提寺)が雄大にそびえている。実に綺麗な寺院である。雄大であるものの、静かに壮厳さを持ってたたずんでいる。この寺院のすぐ裏にブッダが座した場所を示す石の台、金剛座が置かれ、その上には大きく菩提樹が枝を広げている。菩提樹の前には世界中からお祈りをささげる人が後を立たない。聖地であるとともに観光のハイライトである。
今回、ブッダの歩いた道をたずねて、そこには今もブッダの教えが浸透していると感じた。世界中の仏教徒が一度は訪れたいと思うはずである。しかしながら大部分のインドはこの地とは違う。ものすごい人の群れ、生きることに精一杯、生き抜くためのエネルギーをびんびん感じる。大地も暑いが、そこに住む人はもっと熱い。ブッダの歩いた道はインドとは違う。このアンバランスさがインドなのかもしれない。その内部にダイナミックさと静寂さを包みこむインドは奥深い。
2010年3月 本山泰久

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