ワイン、トスカーナ料理、カプチーノ・・・イタリアグルメの旅

ワイン、トスカーナ料理、カプチーノ・・・イタリアグルメの旅


イタリアのおいしい旅は冬がいちばん!イタリアでは秋があたらしいワインやオリーブオイル、チーズのシーズンです。おいしいものがいっぱいのイタリアへ、落ち葉が舞う11月下旬、行ってきました。






イタリアのおいしいワインやチーズを食べる・・・私の「グルメな旅」はロストバゲージからスタート。同行者の荷物は届いたのに、私のだけがない!!パリで4時間も乗り継ぎ時間があったのにどういうこと、一体・・・。2日間同じ服、メイクなしの学生時代に体験したバックパッカー的な旅の始まりかた。
気を取り直して、フィレンツェに到着した翌日からから早速ワイナリーへ。広大なぶどう畑にはじまり、熟成させる樽、ボトルに入れられ熟成される倉、出荷前の倉庫、そしてできあがったワインを保存する倉庫などを見学。どのワイナリーでも担当者がついてイタリア語で事細かに説明をしてくれます。樽は何でできているんですか?どのくらい熟成させるんですか?とか小さなこと、簡単なこと、何でも詳しく教えてくれます。ワイナリーへまで行ってしまう人っていうとワインに詳しいグルメな人のようなイメージがありますが、私のようなワインの知識のない「普通の人」でも十分見て楽しめる内容です。ワインは好きだけど、銘柄とか産地とか一切興味なし、白ワインでも赤ワインでも、むしろ安いワインの方がたくさん飲めてしまう、そんな私がワイナリーなんか行っていいのかしら・・・と気になりましたが、そんなのはワイナリーめぐりに関係ありませんでした。


今回の旅ではキャンティクラシコ2ヶ所、モンタルチーノ1ヶ所の計3つのワイナリーに行きましたが、どのワイナリーも雰囲気が違います。修道院をワイナリーに改装したところ、木の樽は使わずステンレスの樽を使うところ、それぞれ現代的なところ、クラシックなところなど変化があります。時間が許す限り、ワイナリーは複数行くことをおすすめします。
ワインのできるまでを詳しく聞いたら、次はお楽しみの試飲。基本的にワインは飲み放題。好きなだけ味わって、好きなワインを見つけます。3つのワイナリーを訪問しましたが、どのワイナリーも、また同じワイナリーの中でも熟成の仕方を違えることによってどれもまったく味が違います。ボトル1本のお値段もお手ごろ。思わずたくさん買ってしまうお値段です。日本で買ったら結構なお値段がつくワインもかなりお安く手に入るそうです。ワイナリーとは言っても、農園では半分程度がブドウ畑、残りはオリーブの木などを育てているようなところが多く、ワイン以外のものも直売しています。11月の上旬は秋口に収穫した新しいオリーブオイルが出る時期です。オリーブオイルも買うことができます。はちみつやワインビネガーなどを販売しているワイナリーもあります。タイミングが合えばそんなオリーブオイルなども試食が可能です。



モンタルチーノのナルディという、貴族が経営するワイナリーでは農園にあるお屋敷のゲストルームで前菜からデザートまでのイタリアンのコースと一緒にワインのテイスティングをしました。生ハムやラザニアといったイタリア本場のお料理とイタリアンワイン・・・最初で最後ではないかと思われるくらいセレブなランチです。
このナルディではヴィンサントというとっても甘いデザートワインもいただきました。トスカーナはもともと赤ワインの多い地域ですが、マスカット(白ぶどう)が生産される地域があり、ナルディではそのマスカットからできたヴィンサントを味わうことができます。デザートワインというとドイツやカナダで凍ったぶどうからできるアイスワインがありますが、このあたりではぶどうを徹底的に干して甘みを凝縮してつくります。それがヴィンサントです。
ナルディのヴィンサントはトスカーナの伝統的なお菓子、カントゥッチ(ナッツのたくさん入ったビスケットのようなもの)といっしょにいただきます。すでに2種のワインをけっこう飲んでいるにもかかわらず、とっても珍しいって聞くのでヴィンサントも・・・トスカーナの伝統的なお菓子、カントゥッチ(ナッツのたくさん入ったビスケット)と一緒にいただきます。ワインとデザートのマリアージュ・・・突然フランス語が出てしまうくらいのおいしさです。ワインという飲み物を越えています。ソムリエみたいな表現ができればいいんですが・・・すみません。




カステラーレというキャンティクラシコにあるワイナリーは今回訪問したワイナリーの中でも規模が小さく、またあまり工業的ではないクラシックな雰囲気のところでした。真っ暗な倉の中にはワイン樽以外に、毎年できたワインを保存する倉、ラベルのつけられる前のワインボトルが見られるユニークなワイナリーでした。
試飲の時には通常のワインのほかにグラッパというアルコール度数が40度もあるワインからつくられる蒸留酒にも挑戦。色は透明、味はテキーラみたい。正直なところこの美味しさはわからなかったのですが、間違いなく私が「おこさま」だからで、飲む人が飲めばきっと美味しいワインなんだと思います。
カステラーレのワインはボトルのラベルにも注目です。野鳥図鑑にもなりそうな鳥の絵がそれぞれのラベルに描かれています。ワインの種類によってワインの絵柄は違います。かつてトスカーナ地方にたくさんいた鳥はワインの生産が盛んになってくる中で、その農園の開発、農薬などで少なくなっていったそうです。カステラーレのラベルにはその絶滅してしまった鳥が描かれています。周りに住む動物たちと共存する開発をしたいという環境保全の願いが込められていて、カステラーレのぶどう畑は科学薬品などを使わない農法を取り入れているそうです。ワインラベルのコレクターもいるくらいです。ワインのラベルひとつとっても奥が深いんですね。
カステラーレはとても小さなワイナリーでしたが世界各地に販売網をもっていて、日本の大手飲料メーカーが輸入の代行をしているそうです。数年前日本のメーカーと契約をしているカナダのワイナリーを見たことがありますが、そこはワイナリーというよりも工場といったほうがいいくらいのところでした。こんなカステラーレのようなイタリアの田舎にある小さなワイナリーからはるばる運ばれたワインを日本でみたらどんな思いがするんだろう・・・う~ん、感慨深いものがあります。

11月はぶどうの刈り込みなども終わり、ぶどう畑には何もなくワイナリーめぐりには少しさびしい感じもするのですが、この時期に行くメリットは、初冬にでるできたてのワインやオリーブオイルが試せることかもしれません。11月はフランスのボージョレーと同じようにイタリアでも新酒のシーズンです。イタリアではノベッロとよばれる新酒はそれほど現地では人気はないようですが、レストランのハウスワインがノベッロになっていたりすることもあります。味はあっさりしていて本当にフレッシュ。ノベッロもおいしいです。言葉足らずで申し訳ないのですが、先ほどと同様私はソムリエではないのでこれ以上はお許しください。



ワイナリーから帰った翌日はトスカーナ料理のレッスン。クッキングスタジオなどではなく、先生のお宅のお台所を使います。元画家のだんなさん、現在アーティストをされている息子さんがいらっしゃるとあり、アトリエのような素敵なお家でした。そんな中でレッスンスタート。まずはテーブルでその日のメニューについて詳しい説明を受け、メモをとります。メニューは以下4つ。
・黒キャベツのクロスティーニ(前菜、カナッペみたいなもの)
・鶏肉のアロマ(メイン、ハーブと鶏肉をソテー)
・ペンネアマチャトリーナ(パスタ、トマト味のペンネ)
・ティラミス(デザート)


先生はお料理の先生暦15年のベテラン。日本語、英語でお料理の本を自費出版されています。作る料理はトスカーナの伝統的なお料理ですが、どのメニューもひと工夫が加えられたオリジナルレシピ。ときどき「ニンニク」とか「ミジンギリ」とか日本語も飛び出します。手際がよくてとってもやさしいイタリアのお母さんでした。
それぞれの作り方までは詳しくご説明できませんが、ティラミスから、メインまで一切下ごしらえなどはありません。材料の袋をむくところからスタートして最後の盛り付け、テーブルセッティングまでして完成です。エプロンをお借りし、作り方を教わり、料理し、そして食べ終わるなんて、それを4時間で??下ごしらえがほとんどしてあって最後皿に盛り付けるだけの料理番組なみの内容かとおもいきや・・・ファイブスタークラブの社員が自社のお料理レッスンツアーを甘くみていました!先生、すばらしい手際ですね~なんて言っている間にテーブルにはイタリア料理のお皿が並びました。ぼやぼやしているとおいていかれそうなスピードでしたが、丁寧に教えていただきました。


お味は・・・もちろんこの旅行中で食べたどんなレストランの食事よりも美味しいディナーでした。日本が大好きな先生の旅行のお話や、お得意のお料理などいろいろなお話を伺いながらの楽しいお夕食となりました。なかなか外国で料理を作る機会なんてないと思います。しかもメインからデザートまで・・・。先生オリジナルの本格イタリアンですが、材料は日本にあるものでも作れるメニュー。日本に戻ってからこのメニューが再現できるようになっているのも先生のあたたかい配慮です。教会やショップが閉じる夕方から約4時間、文化交流も兼ねてお料理講習もおすすめです。


フィレンツェ最終日は夕方から中心部にあるカフェでバリスタ講習。夕方5時から約1時間、実際のカフェのエスプレッソマシーンを使って実際にコーヒーを入れます。フランチェスカさんがオーナーの「イタリアンバー」。フランチェスカさんはヨーロッパ内のイタリアンバールの立ち上げの時によばれて、そのコンサルタントやアドバイスをしたりするとっても優秀なバリスタです。夕方5時ころには仕事帰りのビジネスマンがカウンターで1杯飲んでいたり、若い女性がコーヒーを飲みながらおしゃべりをしていたり、とてもにぎやか。このお店が地元の人にとってどんな位置にあるお店なのか、とてもよくわかりました。




お店のエスプレッソマシーンは最近買い換えたそうです。ぴかぴかに磨かれたマシーンはお店の心臓部。強い気圧をかけて出すエスプレッソ以外にも、普通のコーヒーメーカーとしての役割、エスプレッソを1度に2杯入れられるシステムがはいっていたり、カプチーノ用のミルクのあわ立て機なんかもついています。アナログのように見えて結構システム化されているので、こんなに忙しいお店なら使い方が激しくて故障などもあるのではないかと思ってしまいますが、そんなことはめったにないそうです。むしろいつも平均的にたくさん機械が動かないとかえって壊れやすくなると聞きました。
最初はオーナーが目にもとまらぬ速さでエスプレッソをいれます。機械がコーヒーを入れていますが、コーヒーの粉のフィルターへのいれ方、そのスピード、すべてがコーヒーの味を変えるんだそうです。ミルクのあわ立てひとつにもこだわります。ただミルク泡だて器にあわ立ててもらうだけでは完成しないんです。ミルクのピッチャーをたたいたり、回したり・・・その一つひとつがおいしいコーヒーをつくるのになくてはならないんですね。
私も挑戦!3倍速のオーナーに比べてかなりスローモーションで作ったコーヒー・・・なんだか見た感じ、とても鮮度が悪そうなコーヒーです。その初めていれたコーヒーは私が飲むのかとおもいきや、カウンターの前に立っていたお客さんに!!!!お客さん、今オーナーにお金払ったよね?お客さんはそのコーヒー、私がいれたってこと知ってる?飲み終わったあとでクレームがくるのではないかと、本気で思いました。私のコーヒーを飲んだお客様は一気に飲んで帰っていきました。あぁ、かわいそう。


機会の説明を受けている間も目の前でお客さんへのコーヒーがどんどん入っていくのをみてこんなところにただの観光客がいていいのかと思ってしまいますが、いいんです。こんな臨場感のあふれる体験ができるのが、このバリスタ講習です。1日何百とエスプレッソを入れるような忙しいお店のエスプレッソマシーンを夕方の1時間使わせていただきます。
この講習は楽しい、というよりむしろ怖いです。なにしろ素人が初めて入れたコーヒーがお客さんのところへいってしまうんですから。これ以上の「体験」はないと思います。

トスカーナの州都、フィレンツェにはとても美しい大聖堂、有名な画家の大作、歴史の長い美術館、見所がたくさんあることをもちろん知っています。郊外にはピサの斜塔があったり、とにかくこのあたりは有名な遺跡がたくさん!6年前はそんな有名史跡をいっぱいみたくて、フィレンツェに3泊滞在しました。今度はフィレンツェ4泊も・・・そう、トスカーナのおいしいものを食べるため。最初から最後まで食べものの話しばかりだったかと思いますが、この4泊を私は遺跡そっちのけ、ひたすら食べることに神経集中して過ごしました。感想は?「いや~おいしかった!」そのひと言です。
2010年11月 吉木

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