9日間であれこれ楽しむアイルランドの旅

9日間であれこれ楽しむアイルランドの旅


7泊9日で世界遺産を見て、ちょっとした船旅も楽しめ、ローカル列車にも乗れる。各地に古い城が点在しているから、場所によっては城に泊まってお姫様のような体験をすることも可能。夜にはバーでビールを片手にダンスや音楽を聴いて地元の人とのコミュニケーションも楽しめる。短い日程の中でこんなにたくさんのアクティビティで楽しむことのできる国も多くないように思います。小さいけれどたくさんの魅力にあふれる国、アイルランドへ、5月半ばに行ってきました。
今回訪問した場所の中から、アイルランドでぜひ楽しんでいただきたいいくつかをご紹介したいと思います。


1.北アイルランドにある不思議な海岸、ジャイアンツコーズウェイ

ジャイアンツコーズウェイはダブリン発着の観光バスに乗って日帰りが可能です。ダブリン出発は朝6時45分。途中イギリスの国境を越えます。国境とは言っても何か特別な線が引かれているわけではなく、ハイウェイもダブリンからずっと続いていますし、国境を越えるのにパスポートも不要です。違いと言えば同じハイウェイでも行き先の表示や交通標識がアイルランド領内はアイルランド語と英語で表示されているのが、英語だけになるところです。それから通貨がイギリスポンドになるところでしょうか。アイルランドの通貨、ユーロは観光施設への入場料であれば何とか使える、そんな程度です。日帰り観光でもポンドがあるほうが便利です。

世界遺産のジャイアンツコーズウェイはツアーバスを降りたところから海岸沿いを歩いて10分のところにあります。六角柱の石が縦にたくさん並ぶ光景は、本当に不思議な風景です。コーズウェイ海岸と呼ばれる海岸は8キロほどありますが、六角柱の海岸はそのほんの一部にすぎません。石の上をもちろん歩くことができます。細い柱の集合体なので、それが倒れるのではないかとスリルもあってとても楽しいところです。まわりは崖の海岸がどこまでも続いています。またきれいな植物がたくさん生息しており、ナショナルトラストによって厳重に保護されているのが印象的でした。ジャイアンツコーズウェイは北アイルランド唯一の世界遺産であり、世界の十指に入る奇景です。
2.アイルランドのパブめぐり


小さな町にでも、レストランはなくてもパブならあるといわれるくらい、アイルランドのパブ文化は人々の暮らしに根付いています。私も現地で体験してきました。public houseの省略でpubと呼ばれるんだそうです。実際パブは「飲みに行く」というよりは居合わせた人と世間話をして楽しむところといった感じでした。一人で入ってくるひとも多く、それだけパブは社交の場なんだなと実感しました。現地のパブで楽しまれている弊社のお客様と偶然お会いしました。最初はガイドさんとこられたそうですが、パブツアーが楽しかったので2回目はお客様だけで入られたとのこと。アイルランドの若者とにぎやかに楽しまれていました。アイルランドは人と人の間の垣根が低いと思います。かたことの英語でも聞いてもらえます。そして話してもらえます。パブはツーリストでもローカルと変わらずに存分飲めて、楽しめるところでした。アイルランドのよさはパブなしには語れないかもしれません。

さてパブでの飲み物、やっぱりアイルランドの黒ビール、ギネスビールがメインです。地域によって異なりますが、大体1パイント(570ml)4~5ユーロ程度。ほかには日本でも売られている、甘くてミルキーな「ベイリーズ」や、シードル(りんごからできたサイダーのようなお酒)もあります。アルコールが飲めなくても、ソフトドリンクもオーダー可能です。一番安価なのはやはりギネスビールだそうで、ほとんどの人がギネスを飲んでいました。現地ガイドさん曰く、パブによって同じギネスビールでも味が違うとのこと。よくはやっているパブは、ギネスの樽の循環が早いせいか、新鮮でおいしいのが飲めるそうです。
3.アイルランド鉄道移動のススメ


アイルランドの国鉄線は主要都市間なら本数も多いので移動しやすく、きれいで快適です。私はダブリンからアラン諸島やコネマラ国立公園といった観光地の入り口になったゴールウェイまでの3時間を電車で移動しました。アイルランドの列車での移動の魅力はなんと言っても車窓からの眺め。ダブリンを抜けるとすぐに、農村の風景が広がります。羊の放牧されている丘があり、菜の花がどこまでも続く畑があり、どこもフォトジェニックな景色が続きます。時々小さな駅を通過して、写真をとったりしているうちにあっと言う間にゴールウェイに到着しました。車両もきれいで座席もひろびろ。車両によってはテーブルがついていて、そこで勉強や新聞を読んでいる学生をたくさん見かけました。車内放送がまったくないということもあると思いますが、車内はとても静かです。乗り過ごしの心配?大丈夫です。車内の電光掲示板には次の停車駅の案内とそこまでの距離がタイムリーにでていますので。
4.アイルランドの自然とケルトの文化が根強く残る西部へ


アイルランドの本当のよさは田舎へ行ってこそ、見えるのかもしれません。ダブリンから列車で3時間、今回の研修ではゴールウェイという街を拠点にアイルランド西部のコナート州を車や船でまわりました。ダブリンとの大きな違いは、ゲール語(アイルランド語)が街ですれ違う人から聞こえてくることです。かつてイギリスに侵略された時代、「西に行くか、地獄へ行くか」という言葉を残すほど、先住のアイルランド人は土地がやせた西部コナート州の方へ追いやられたそうです。ゲール語を日常的に話す村が今もたくさんあり、またケルト人が作ったとされる教会などが残っています。またこのあたりは小さな島が350以上も浮かぶ湖やフィヨルド、海抜90メートル崖から海をのぞくことができるスリル満点の断崖絶壁の海岸線など、自然の驚異を目の当たりにすることのできるエリアです。そんなユニークな自然の中に素朴な村が点在し、アイルランドらしさを感じることのできる地域でした。

特にゴールウェイからバスと船で2時間ほどのイ二シュモア島は、アイルランドの原風景が残っている穏やかな島でした。イニシュモア島でのハイライトはドン・エンガスという断崖絶壁。不思議なことにが崖のきわを半円形に小さな石を積み上げてできた壁(石垣のようなもの)が残っています。かつてはそこが砦だったのではないかといわれているそうですが、そんなところまで誰かが攻めてくることが考えにくいようなところです。これも不思議な光景でした。
この崖から海面までは90メートル。日本だったらフェンスが張られるか、「近づくな危険」的な警告が張られているはずですが、ロープやフェンスなどは一切ありません。だから、やりたければ崖で片足立ちだって、崖に腰掛けてお弁当だって食べられます。


欧米の若い女の子は崖から足を空中に投げ出して座っていましたが、「あなた正気!?」と声をかけそうになりました。私はもちろん小心者なので崖に寝そべって手を出して下の海の写真を撮るだけしかできませんでした。ドンエンガスの迫力の半分も伝わらないと思いますが、この写真で想像していただければと思います。
下から巻き上げてくる風がものすごいので、立って下をのぞいてみたりすることは怖くてできないはずです。崖際に立っているときに突風がきたら間違いなく落ちます。毎年数名の外国人がここで命を落としているんですから・・・・・・・・・・・
このイニシュモア島には平屋のわらぶき屋根の家やレストランが立ち並ぶエリアもあります。昔はこのわらぶき屋根の家がアイルランドの本島にもたくさんあったそうです。この島もわらぶき屋根の家はだんだんと減っているとのことで、とても惜しい気持ちがしました。

人口はたった800人の島ですが、こんなところにも2つほどパブがあります。お昼間でしたが、島民や観光客でかなりにぎわっていて驚きました。仕事中という意識が少しだけあったので、ベイリーズコーヒー(ホットコーヒーにアイリッシュクリームのベイリーズを混ぜた飲み物)ならいいか・・と注文。飲んでみましたが、これはベイリーズコーヒーではなくベイリーズそのものでしょ、といいたくなるぐらいベイリーズの濃いコーヒーでした。島のおじいさんと若者2人、話し好きのアイリッシュがさっそく声をかけてきました。みんなアルコールで気分もよくなったところで、話が盛り上がりました。アイルランドの文化をまたひとつ身近に体感できる体験をイニシュモア島ですることができました。
コナート州にはほかにもコネマラ国立公園という湖や渓谷、そしてフィヨルドなど豊かな自然が残る地域があります。また湖畔にたつきれいな修道院などがあったり、西部アイルランドは自然とアイルランドの文化が調和した美しいところでした。
5.アイルランドのユニークな宿泊施設


アイルランドには田舎に行けば、B&B があります。またかつては領主の館だったところを宿にしたマナーハウスや、昔の城を宿にしたキャッスルホテルなど多様な宿泊施設があります。今回の研修ではコングというコナート州にある小さな街の古城ホテルに泊まりました。アイルランドにはたくさんの城が残っています。ツアー中に走った高速道路からも、たびたび古城を見かけましたが、どちらも一様に灰色の石造りで外見は質素です。泊まった古城もまた豪華というよりは頑丈で強固なイメージの建物でした。
今回泊まったのは1228年に築城されたアッシュフォードキャッスル。当初それほど大きな城ではなかったそうですが、ギネスビール創業者の家族などが所有してきた中で、周辺の道路や土地を買い取り、城の増改築をしながらその所有地を広げたそうです。ホテルはコリブ湖のほとりの広大な森の中にたっています。敷地内にはゴルフ場や乗馬、テニスコートなどがあったり、コリブ湖が見える散歩道があったりと、すべての施設をみてまわるのは大変なくらいの規模でした。


アッシュフォード城自体も1枚の写真には納まらないほどの大きさです。外は石のブロックを積み重ねてできた灰色1色の城ですが、中へ入ると外見からは想像がつかないくらい豪華な内装に驚かされます。残念ながらホテルの敷地へは、宿泊客以外入ることができません。これまで数々の所有者の手に渡ってきたアッシュフォード城の歴史を物語るようなインテリアと、素朴で美しいお城はアイルランドでぜひ見ていただきたいところです。この雰囲気に魅せられて、これまで数々の著名な人々が泊まったことがあるということにもうなずけます。各お部屋は、薄型テレビにWIFIインターネットが完備され、クラシカルなのは外見とレストランだけ。バスルームには床暖房が入っていたりと最新の設備が整っています。ホテル内のレストランはたびたび旅行雑誌などで表彰をされているそうで、朝ごはんをはじめ、お食事も大満足のホテルです。
アイルランドにはコングだけでなくいくつかお城のホテルがありますが、ロケーションの問題もありなかなか行きにくい地域に多いのが実情です。アッシュフォードキャッスルは、アイルランド西部の観光の途中に立ち寄ることのできるロケーションのよいホテル。スタッフの皆さんもフレンドリーで、お食事もおいしくて、雰囲気も抜群。映画のワンシーンのような、いたれりつくせり、お姫様になったような一晩をぜひアイルランドの古城ホテルで体験をしていただきたいと思います。


もうひとつ、アイルランドらしい宿といえばB&Bベッドアンドブレックファースト)かもしれません。イニシュモア島ではB&Bの視察もしました。おすすめは本土からくるフェリーの到着する港の前で、ロケーションのよい「B&Bピアハウス」です。お部屋は全体で20しかない、こぢんまりとしたかわいらしい一軒家のような宿です。弊社のコースでは通常このピアハウスを利用しています。イニシュモア島には大きなホテルなどはなく、個人経営のB&Bが点在しています。どこもオーナーの趣味でまとめられたインテリアがあったり、心のこもった朝食がだされたり、温かみがあるのが特徴です。滞在中の朝食だけが出されるのがB&Bの基本ですが、この視察をしたピアハウスにはレストランで夕食も出してもらえます。(事前に予約するのがベター)島にはそれほどたくさんのレストランがないため、これもツーリストにとってはありがたいものです。お夕食のメニューをみせてもらったところお寿司もありました。オーナーから「寿司もあるから、日本人にもおすすめよ」とのセールスを受けてB&Bをあとにしました。古城ホテルや、5つ星ホテルに比べれば、もちろんその設備、サービスなどで足りないところがあるかもしれません。人々のあたたかさをより身近に感じられるところがB&Bのよいところです。誰かのお宅を訪問しているような気分で滞在できるのも魅力です。

今回アイルランドでダブリンから北アイルランド、自然豊かなゴールウェイから西部、そして南へ下り中部、南部へとアイルランドを車や列車や船、いろいろな手段で周遊しました。たった9日間ではありましたが、それほどのあわただしさはなく、じっくりとたくさんのところを見ることができました。きらびやかで豪華なものはたくさんありませんが、素朴なケルトの文化やパブ文化など他のヨーロッパにはないユニークなものがまだまだ残っています。そんなたくさんの魅力がつまったアイルランドへ、ぜひおでかけください。
2010年5月 吉木

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