南部モロッコとメルズーカ大砂丘、そしてエッサウィラ

南部モロッコとメルズーカ大砂丘、そしてエッサウィラ


モロッコには2つの顔がある。北部のマラケシュやフェズに代表されるメディナの街。フランス文化の影響を受け、アラブ文化と奇妙に混ざり合ったテイストの利いた街。そこは外国に野菜を輸出するほど豊かな台地が続いている。一方、南部モロッコはサハラ砂漠の西端にあり砂漠が続いている。砂漠といっても砂砂漠ではなく、大部分が礫砂漠(2mm以上の砂や石がごろごろしている砂漠)や土砂漠(粘土や土で出来ている砂漠)だ。そんな厳しい自然の中での見所はカスバ(要塞)とオアシス、そして赤い大砂丘のメルズーカだ。



今回はマラケシュを出て2泊3日のメルズーカ大砂丘の旅に出かけた。北部モロッコと南部モロッコを分けているアトラス山脈のティシカ峠を越えて、世界遺産のアイト・ベン・ハッドゥに到着。ここはカスバが集まって村になったクサールの一つだ。今もなおベルベル人の数家族が住んでいるという。「ハムナプトラ2」の映画を始め、数多くの映画のロケ地に使われたその形は実に均整の取れた美しい姿をしている。ここのレストランで美味しいタジン料理を味わいながら、その麗姿をたっぷり堪能した。



次に訪れたのは、ワルザザード近郊のオアシス「星の川」。どこに行くのか不安にさせる砂利道(未舗装道路)を走りぬけ、アンチアトラスの山の中に隠れたオアシスへ到着。1軒しかないエコロッジで素朴でおいしい自家製パンやチーズ、ミントティーに心のこもった温かさを感じた。さらにその奥にはベルベル人の民家が2軒。人里離れ、家畜を飼い、自家栽培をし、生活しているが貧しさは感じられない。



翌日は、弊社で企画中のホームステイの視察にスコーラ村を訪ねる。47ヘクタールもの村一番の地主さんの敷地に、カスバの自宅に隣接して部屋が建てられている。つい先日までは閑古鳥が鳴いていたのに、ロンリープラネットにこのホームステイが掲載された途端、なんと8部屋すべて満室になっていた。多くはフランスからのバックパッカーの若者たちはゆったりと田舎のひと時を満喫していた。庭にカーペットを敷いての朝食、なんて素敵だこと。



お昼にはティネリールを経由して、トドラ川に到着。ここのオアシスとカスバは美しい。ここから道を下ってトドラ渓谷に入る。手前で車を降りて歩いて渓谷に入っていくが、両側にそそり立つ岩壁に圧倒される。300メートルの岩頂を見ていると後ろに倒れそうだ。ヨーロッパからロッククライマーたちが練習のためここを訪れるそうだ。昼食はおなじみのタジン料理だが、田舎に来れば来るほど美味しくなる。




夕方、日暮れ時メルズーカ大砂丘に到着。ロッジで荷物を預け、テントに泊まる手荷物を持って1時間半ラクダに揺られテントに向かった。だんだんと日が暮れて夜になり、頭上に満月(ほぼ満月でした)が昇り始めると、自然に「月の砂漠」を口ずさみたいムードになってきた。赤い砂漠と月光によって出来る自分の影に酔いしれながら、4人並んで行きました。テントは砂漠の真ん中、トイレもシャワーもありません。夕飯はこれまでの中で最高に美味いタジンを食べ、食後はキャンプのスタッフの歌と伴奏を楽しみ、焚き火を囲んで談笑し、最高の夜になった。夜は寒くなり、毛布を一枚余計にかけて夢の世界へおちていった。




 明朝05:30起床、6時半の日の出を待って、それぞれ好きな場所で待機。赤い砂漠の一番高いところで待つ人、半ばで待つ人、日の出に近づいていく人。砂漠が徐々にその全容を現してくる。日の出の瞬間、歓声が一斉に上がる。ロッジに帰る朝の1時間半のキャメルライディングは夜のそれと違って、砂漠がこんなに美しく感動的なものかをインプットさせる。途中フェネック狐が現れ、歓迎してくれた。聞いてみるとラクダ引きのガイドさんが普段から餌付けをしていたそうだ。メルズーカ砂丘は不思議な砂漠で、周辺は礫砂漠だが、ここだけポツンと40km x11kmの広さで砂丘になっている。風もあまり吹かず移動せず、形が変わらない。雨もたまに降るという。想定外の砂丘だ。帰りは途中で化石採集をした。素人の私でも三葉虫の化石が見つけられる。太古の昔から変わらない地がここにある。マラケシュまでは一日がかりで戻った。




 最後にここだけは行ってほしい街、エッサウィラの紹介をしたい。モロッコといえば旧市街・メディナで有名なマラケシュやフェズが挙げられるが、ここエッサウィラはそれ以上の魅力があるかもしれない。マラケシュから車で4時間ほど行くと、海の町・青い空と白い街・エッサウィラが見えてくる。メディナと海辺の町、世界遺産の古い町並みと大西洋に面したリゾートの2面性を持つ心地よい街だ。街はまるで海の上に浮かんでいるかのようだ。メディナはさほど大きくもなく歩くのにちょうどいい。身も心も洗われる素敵な街でした。
2009年11月 本山

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