十字軍ゆかりのエーゲ海リゾートへ~大自然・遺跡・温泉を楽しむトルコ~

十字軍ゆかりのエーゲ海リゾートへ~大自然・遺跡・温泉を楽しむトルコ~

『ボドルム』という町をご存知だろうか。
イスタンブールから南へ約600キロ、エーゲ海に面した冬でも比較的温暖な気候で人気のビーチリゾートである。
10月上旬、少し秋の気配を感じる頃、このボドルムと、温泉、遺跡、そして自然を楽しむトルコ旅行に出発した。


 最初に訪れたのは、カッパドキア。言わずと知れた世界遺産の地域だ。有名なキノコのような岩が連なっているのだが、とても広い!!ネヴシェヒル・ユルギュップ、ギョレメなどの町が有名で、それらの町に滞在し、点在する見どころをまわる。なんだか似ているような風景、でも少しずつ違う風景に、常に感動し、疑問を持ち、もっと知りたいと思えた。また、観光の間はずっと車で移動していたので、街の全体像がつかめなかったのだが、カッパドキアを発つ朝に気球に乗ることができ、カッパドキア全体を見ることができた。

カッパドキアの余韻に浸りながらも、次に10時間以上もかけ車で訪れたのは温泉の有名な町、「パムッカレ」である。真っ白な石灰棚と真っ青な温泉の景色はよくガイドブックなどで見ることができるが、パムッカレの素晴らしさは温泉だけではない。ヒエラポリスという遺跡がとても面白い。ローマ帝国・ビザンツ帝国の遺跡が集まっているのだ。

さらに遺跡と温泉を組み合わせた温泉プールも存在する。底に遺跡がごろごろころがる中で遺跡に腰かけたり、中をのぞいてみたり、寝転がったり、遺跡好きにはとっても嬉しい贅沢な場所である。ただ、遺跡は滑りやすくなっているので、歩行には注意が必要だ。
このように温泉プールにも遺跡を取り入れるようなトルコなので、古代遺跡は想像以上にたくさんある。今回、ヒエラポリスに続き感動したのが、「アフロディスィアス」という街の遺跡である。アフロディスィアスと聞いても馴染みがないが、アフロディスィアスは「アフロディーテの街」、そしてアフロディーテというのはラテン名「ヴィーナス」なのだ。つまりここは、ヴィーナスの街だったのだ!ギリシャ神話には詳しくない私でも知っている、あのヴィーナスを信仰していた街である。
ヴィーナスの街というだけでもなんだかわくわくするが、その美しさにも感動した。劇場も競技場もアフロディーテ神殿もどれも見ごたえがあるのだが、その中で何が一番ということはなく、全体的な街の雰囲気に私は引き込まれた。緑色の草木、茶色の土、真っ青な空、そしてこれら自然の美しさに負けない、遺跡の迫力・美しさには感動した。

さて、これまで大自然・温泉・遺跡と、トルコの魅力に触れてきたが、いよいよ旅は後半。今回の旅の大きな目的のひとつである、ボドルムへ到着した。ボドルムはリゾート地なのだが、ハーバーに係留してあるクルーザーの数がとにかく多い。今回は海には出なかったが、海を眺めていると、エーゲ海は海面が穏やかで、クルーズには良いのかもしれないなぁと思えた。
 ボドルムはゆっくりと過ごすリゾート地なのだが、ボドルム城はぜひ訪れたい場所である。ボドルム城はボドルムの街から少し突き出した、エーゲ海に臨み立てられた城である。もともとは十字軍が建設した城で、十字軍遠征の際に度々利用されていたという。城の中は見学も可能なのだが、城の上からボドルムの街とエーゲ海を見渡すことができる。
現在は、リゾート地としてホテルや別荘の立ち並ぶボドルムの街も、十字軍遠征の頃は緑の山々に囲まれていたのだろう。エーゲ海を越えて現在のヨーロッパ大陸からアジア大陸に到達した十字軍の騎士たちは、何を思っていたのだろうか、時間がゆっくりと流れるボドルムの街は、いろんなことを考えるのにふさわしい。
今回ボドルムで私が滞在したのは、ハーバーの目の前にある「マリーナヴィスタ」。マリーナが見えるホテル、という意味らしいが、本当にエーゲ海が目の前なのだ。ホテルは街の中心なのだが、中央にプールがあり、リゾート気分を満喫できる。また、嬉しかったのはなんといっても屋上のテラスで食べる朝食である。パン・サラダ・卵・ウインナー、たくさんのメニューが揃うブッフェであれこれ悩んでお皿に盛り付ける。テーブルにお皿を置き、コーヒーをとりに行く。テーブルに戻ると、お皿に盛り付けたパンを小鳥たちが狙っている。慌ててテーブルに駆け寄る私。すると小鳥たちは他のテーブルへ移動。テーブルの主はそれを見つけて駆け寄っていく。そんなやりとりも微笑ましかった。
ボドルムをあとにして、向かったのはトルコの首都、イスタンブール。よく、イスタンブールはアジアとヨーロッパの架け橋とか、文化がミックスされているから面白いとか聞くのだが、実際はどんな街なのだろうかと、行ってみるまで想像できなかった。そしてイスタンブールを訪れた私は、ますます、ここはどこなんだろう、イスタンブールはどんな街なんだろう、と分からなくなっていった。アジアのような親しみはあるが、ヨーロッパのような雰囲気もある。

実際、トルコの人々はどう思っているのかと疑問だったので聞いてみたところ、“アジア”でも“ヨーロッパ”でもなく、トルコは“トルコ”として、歴史にも独特の文化にも誇りを持っていた。どこに暮らしていてもそうだが、自分の街を、国を、文化を愛し、誇りを持てるということは、幸せだと思う。そんなことを考え、旅を終えた。
いろんな文化に触れ刺激を受けたいがゆっくりもしたい、そんな人には特にトルコがおすすめだ。

2009年10月 西田

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