憧れのB&Bステイ!! ~イギリス湖水地方癒しの旅~

憧れのB&Bステイ!! ~イギリス湖水地方癒しの旅~

エジンバラ城まるで時間が止まったように、美しい風景を残すイギリス湖水地方。その中でも人気の高い街「アンブルサイド」の中心地を抜け、その日宿泊予定のB&B「ヘブンコテージ」に着くと、宿の主人であるティムさんが勢いよく迎えてくれた。『お帰り!フェリーには乗ったかい?』と満面の笑みで話しかけてくれ、部屋に入ると『コーヒーと紅茶、どっちがいいかい?ケーキも食べるね?』と聞いてくれた。ちょっと考えてから『紅茶』と答えると、すぐに紅茶とケーキを用意してくれた。
そしてそれらをゆっくりと味わいながら旅を振り返った。


道で出会ったハイランドドレス姿の男性成田を飛び立ったのは9月22日。ロンドンで乗り継いで、降り立ったのはスコットランドの首都エジンバラ。バスに乗って中央駅に着くと、そこは想像していたい以上の神秘的な街であった。夕暮れのエジンバラの街は、何か中世の世界に迷い込んだような、それでいて現実とは違う世界のような、不思議な空間だった。ハリーポッターの作者がこの街から多くのインスピレーションを受けた理由が良く分かる。夜に一人で歩くとちょっと怖いくらいだ。

ロイヤルマイルを歩くエジンバラは世界遺産の街で、エジンバラ城からホリルードハウス宮殿へと続くロイヤルマイルに見どころが多い。銀行や図書館、交番といった場所以外に、お土産を扱う店やカフェ、パブなども多いのだが、全てが周りの空間に溶け込んでいた。そして私は、その魅惑的な街の空気をすっかり気に入ってしまった。
9月24日。エジンバラでの楽しくも慌ただしい観光を終え、朝一番の列車に飛び乗り、イングランド湖水地方に向かった。幼少期に読んだピーターラビットの世界が広がる湖水地方は、世界中の中でもいつか行ってみたいと思っていた場所のひとつである。今回は現地旅行社のアンディさんが駅まで迎えに来てくれ、湖水地方を案内してくれた。湖水地方と言うだけあって、やはり湖は多い。そして牧場も多い。人はすごく穏やかで、あたたかい。
一言で言えば、なんだか「のどか」なのだ。
湖水地方には牧場も多いピーターラビットを生んだビアトリクスポターは、湖水地方を愛し、何度も訪れ、のちに広い農場を購入するまでになった。実際に、ピーターラビットのおはなしの中には、湖水地方の風景が多く描かれている。うまく表現できないが、この場所の風景が絵本に描かれていたのだという納得の気持ちより、絵本の中の世界が実際にここに存在するのだという感動のほうが大きかった。100年以上も前に描かれた絵本の世界が、今なお大切に残されていることは本当に嬉しいことだ。

蒸気機関車体験 湖水地方を巡るなら、ツアーに参加するのがおすすめだ。私は3つのツアーに参加した。1つ目はピーターラビットの故郷を巡るツアー、2つ目は湖水地方を南下し有名なイングリッシュガーデンを見るツアー、そして3つ目は9つの湖を巡るツアーである。
湖水地方の風景は本当に美しいツアーは、車で少人数で周るスタイルであった。日本語のガイドさんはいなかったが、日本語のオーディオテープで解説が聞ける。観光地であり、街の中を走るバスの本数は多いため不自由ではないが、見どころは郊外に多いため、やはりツアーへの参加がお薦めだ。また、今回はホテルではなくB&Bに泊まったのだが、今すぐまた泊まりに行きたいと思うほど良かった。B&Bはイギリスならではの朝食付の宿泊施設であり、日本のペンションに近い。
B&BB&B1泊目は、湖水地方最大の湖、ウィンダミア湖に近い、ボウネスという街の優しいマダムが経営するB&Bであった。ダイニングやキッチンをすぎて2階に上がるとすぐに私の部屋が用意されていた。シンプルではあるけれど、清潔感に溢れ、かつ温かい空間だった。それぞれの家庭によって雰囲気が違うように、B&Bは多種多様である。ファイブスタークラブが案内するB&Bは、基本的に部屋にシャワー・トイレを備えている。また、各部屋にポットや紅茶・コーヒー・お菓子が常備してある。基本的にレストランやバーはなく、朝食会場であるダイニングルームで朝食のみ提供される。
快適な睡眠を充分にとり、朝食の時間に下へ下りると、すでに数名が食事をしていた。フルーツやシリアルは自由に食べられるようになっており、B&Bならではのホットメニュー(トースト、卵料理、ベーコン、ソーセージ等)は席に着いてから好みを聞いて作ってくれる。イギリスというと、食事はいまいちという噂も聞くが、そんなことはない!と思った。少なくとも朝食はおいしいではないか。どこへ行ってもきっと“ママ”の家庭料理は美味しいのだ。
ストーンサークルそしてB&B2泊目は、ウィンダミア湖を北に進んだ街「アンブルサイド」にある、小さなB&Bだ。1泊目の宿より規模は小さく、本当に家に泊めてもらう、ホームステイのような感覚が味わえるB&Bであった。宿の主人、ティムさんに入れてもらった紅茶を飲み干し、部屋でのゆっくりとした時間を味わった。すごく静かな環境で、ゆっくり滞在し、トレッキング等の拠点に良いホテルである。
翌朝、私が朝食をとりにダイニングに向かうと6名ほどの宿泊客が既に食事をとっていた。ティムさんは私に大きな声で挨拶をしたあと、そこにいる皆に私を紹介し、私に一人一人紹介してくれた。常連と思われる夫婦や一人旅をしながらこの宿で仲良くなったと思われる人々、ティムさんの古い友人という人などだったが、みんなすごく人懐こく接してくれた。そして、その数時間後にはこのB&Bを出ることが寂しくてしかたなかった。また戻りたい、そう強く思えたB&Bである。
B&Bその日は湖水地方の9つの湖をまわるツアーに参加し、湖水地方の素晴らしい景色をまさしくハイライトで楽しめた。そして最後のB&B宿泊は、ボウネスにもどり、ややウィンダミア寄りであった。B&Bといっても、ここは上記2軒のB&Bとは違い、「ホテル」という印象のB&Bであった。規模が大きく客室数が多いのも理由の一つであるが、深夜まで営業するバースペースがあり、何より部屋がとても広く、豪華なベッドが置いてあるのだ!!バスタブはないものの、特に不自由なことはなく、かなり快適な滞在であった。
私は残念ながら翌日朝一番の列車でロンドンに戻る予定だったため朝食が味わえなかったのだが、滞在される方はぜひ朝食も味わってほしい。
こうして私は湖水地方・B&B体験旅行を終えたのだが、湖水地方で何より感じたのが、ゆったりとした時間の流れである。田舎の祖父母の家で過ごした夏休みを思い出すような、懐かしく温かい時間であった。それは昔からの風景を守り続ける街やそこに暮らす人々が作り上げているものでもあり、多くの旅行者がともに形成しているものでもあるように思う。湖水地方の旅行者で断然多いのがヨーロッパ各地から訪れる50-70代くらいの夫婦であり、彼らのゆったりと過ごそうとする気持ちが、あの湖水地方独特の雰囲気を作っているのではないかと思えてならないのだ。
(※もちろん彼ら以外の年代の方にも自信を持っておすすめする。)
紅茶とケーキ最終日は列車の遅延がありつつもロンドンに到着し、少しだけ、大都会ロンドンの空気も味わった。ロンドンも良かったが、せっかくイギリスに行くなら、足を延ばして地方を訪れるのが絶対おすすめだ。
味わってほしいのは、大切に守られている風景、温かい紅茶、そして何より人々の明るさと優しさだ。
2008年10月  西田

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