「何もない」を楽しむモンゴルの旅

「何もない」を楽しむモンゴルの旅

草原の中の大都市ウランバートル
9月26日
モンゴルの旅フライトディレイのため成田発が6時間遅れで17:30に。やっと成田チェックインというときに、沢山モンゴル力士を見かけた。こんなに一斉に力士をみるのは初めてだ。こういう独特な風景をみると今からモンゴルに行くのだなー!という実感がわく。ウランバートル着、午前1:30。
空港につくと現地旅行社のガイドさん(リンさんミーガーさんと)が出迎えてくれた。お二方とも日本語非常に上手。リンさんは1ヶ月、ミーガーさんは4年ほど日本に留学してたとか・・・。
空港から外に出ると、寒い!聞くともうそろそろ雪が降るそうだ。9月以降のモンゴルは寒さに要注意である。


宿泊するホテルはセルベプラザ。ファイブスタークラブでよく利用するホテル。室内はまさにスタンダードホテルといった趣。部屋は比較的広め。水の出が不安定なのが気になった。インターネットは無料で利用でき(遅い)、朝食は韓国料理とサンドイッチなどのヨーロピアンから選べた。いまいちなビュッフェをだされるよりもこちらのほうが助かる。翌朝はキムチチゲを食べたが美味しかった。
この日は次の朝すぐ出発とあってすぐ就寝。
セルベプラザ
列車に揺られてゴビ砂漠
9月27日
ウランバートルから南のサインシャンドまで列車で向かう。サインシャンドはウランバートルから南東に約500km、ドルノゴビ県に位置する町である。そこから車で移動し、ハムリーンヒードとゴビ砂漠を観光するのだ。
その前に銀行とスーパーマーケットに立ち寄るセルベプラザの隣が銀行ですぐに両替ができた。スーパーにも寄り車内で食べる飲み物とお菓子をかう。
ウランバートルは思った以上に都会である。いくつものビルディングがそびえ立ち、いくつものスーパーマーケットが見える。街行く人もおしゃれである。
駅到着。大勢の人が大きな荷物を抱え列車に乗り込んでいる。乗客の人がありえないくらいの荷物(大ダンボール4つと額に入った絵など)を持ち込んでいるのを見かけた。モンゴルのパワーを感じた。
私たちの席は一等寝台で四人用のコンパートメントになっている。シーズンだと他の旅行者と相部屋になるそうだが今は旅行シーズンではないので私とリンさんが四人部屋を二人で使った。ミーガーさんとはしばらくお別れである。
最初の数分はウランバートルを駆け抜けるため、車窓からはいくつもビルディングが見える。だが徐々にその姿はゲルになり、さらにはそれさえもなくなり10分もたたないうちに見渡す限りの地平線となる。
駅に着けばちらほら建物が見受けられるがそれ以外はこの荒涼とした景色が延々と続く。
この景色が少なくとも10時間(この列車に乗っている時間)続く訳だからモンゴルのもつ自然の雄大さに驚嘆せざるを得ない。
車内にはコーヒーやラーメンなど売ってるおばちゃんがうろうろしている。リンさんが私にミルクティーをおごってくれた。何気なく飲むと、しょっぱい!これ砂糖と間違えて塩入れてませんか?、と聞くとモンゴルのミルクティーとはほとんどスーティーツァイという塩味のミルクティーだという。これがモンゴルの味らしい。
午後八時にサインシャンドに到着。今回宿泊するゲルのスタッフがお出迎え。車で20分くらい、道なき道を越え目的のゲルにつく。移動中、周りになにも目印になりそうなものがないのによく運転できるなぁと関心してしまった。
私の泊まるゲルに案内してもらう。中は外側と違い非常にカラフルだ。ベッドが三つとテーブル一つあるのみで非常に簡素なつくりになっている。ありがたいことに電気はとおっている。といっても暖房器具はないので防寒具は必須だ。シャワー、トイレも離れてはいるがある。
真ん丸のお月さんをみて床につく。
9月28日
いきなり寝坊した。この時期ゲルはありがたいことに風が入らないように囲ってあるため、朝でも真っ暗。全然夜が明けたことに気付かなかった。
砂漠をドライブ。砂漠の中にあるお寺を訪ねる。このお寺はダンザンラフジャーというお坊さんが作ったお寺だそうだ。
リンさんによるとタンザンラフジャーはモンゴルに仏教を広めたお坊さんであり、それとともに文学者でもあり、医者であり芸術家である。さまざまな分野に長けた人で、モンゴルの仏教だけではなく、さまざまなモンゴルの文化に大きな影響を与えた偉大な人だそうだ。
お昼は砂漠の真ん中でホーショールの昼ご飯。ホーショールは揚げ餃子のことだ。用を足すときはそこら中がトイレになる。トイレトペーパを持っているとベター、折り畳み傘が役に立つとか。
その後、遊牧民を訪ねラクダのり。目の前にするとラクダは思ったよりも大きく、そして臭い。恐る恐る乗ると意外に背中は柔らかく乗り心地はよい。降りるときはラクダが膝を曲げるため、ガクッとなる。(びっくりする)
ラクダの糞は炎の燃料となるらしい。その燃料をラクダに向かって、遊牧民の子供がラクダに投げつけていじめていた。
砂漠の見所をぐるっとまわった後はサインシャンドの街に戻り夕食。ウランバートルまでは夜行列車で戻るのだがまだ時間に余裕があった。リンさんが機転をきかせてくれ、卓球をやることにした。モンゴルにはビリヤードや卓球場が至るところにあり街の若者の娯楽になっているようだ。
モンゴル人の中学生くらいの若者男女が卓球をやっていた。リンさんがその二人に声をかけまぜてもらうことになった。中学生ごときに負けてられるか!と私は息込んで勝負を挑んだが、つ、強い!何回も挑戦したが勝つことができなかった。きっとモンゴルの若者は動態視力が桁違いにハンパないのだ。
夜行列車に乗り込み、いざウランバートルへ。途中、ガタンと急停車するのが気になった。
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高原リゾート、テレルジ
9月29日
ウランバートル駅に到着。ミーガーさんが迎えに来てくれた。三人で朝食を摂った後、テレルジへ。
テレルジはここ数年で様々なツーリストゲルが建てられている高原リゾートである。美しい岩山がそびえ立ち、草原は一面に青く、丘が緩やかな曲線を描いている。高原には馬や牛もいてのどかだ。
海のリゾートもいいがこうした高原で心を休めるのも魅力的だ。

テレルジでは四件のホテルを見て来た。
最初はオーナーがアメリカ人らしくログハウス風なアヤンチン。部屋はロッジとゲルの2種類。ゲルはベッドとストーブ、机だけのオーソドックスなつくり。ゲル宿泊客が利用するシャワー・トイレは清掃が行き届いている。理想としてはゲルとロッジを分泊すること。モンゴルに来たからにはゲルには泊まることはもちろんだがここのロッジはすばらしいので泊まらないのは勿体ない。四件見たが私はここに一番泊まりたいと思った。
つぎはベニバナ。日本語の名前だがオーナーはモンゴル人。アヤンチンのようにコンセプトがばしっときまっているわけではない。こちらも別建てのロッジとゲルの2種類がある。ファミリー用のロッジが広さやインテリア等好印象。ゲルの共同シャワー・トイレは清潔。
タミル。紹介する四件のなかでは個人的に印象は1番下。ゲルはスタンダードタイプ。シャワー・トイレ設備が古い。気になる方はホテルをグレードアップしたほうがいい。
最後はウランバートル2。名前はテレルジにあるが何故かウランバートルである。紹介する四件の中では1番の老舗である。シティーホテルタイプの部屋とゲルが2種類ある。少し内装は古臭いが割合きれい。近くに川もあり釣りも楽しめるようだ。長期滞在される方にオススメ。
帰り際に亀山に。亀山とはそのまんま、亀の形をした巨大な岩である。確かに亀のようだった。いくら自然とは言え亀の形になるとは、自然とはいかに雄大か。ほかにもこの近くには象の形や足の裏の形や、女性が横たわっているような形、ゴリラの形などさまざまな奇岩が沢山ある。岩の動物園。
ゲルバツーリスゲル
ガルバツーリストゲルテレルジからウランバートルを抜けファイブスタークラブが使うツーリストゲルへ。
本物の遊牧民の近くにゲルを作るため季節によって場所が異なるが、いずれにしてもウランバートルからは大体2時間程度でつくそうだ。だだっぴろい場所にゲルが数件並んで建ててある。周りには他のツーリストゲルがぽつぽつとみえる。
トイレは一応簡易式トイレが用意してある。シャワーはない。希望であれは近くのツーリストゲルで借りることができる。しかし近くにツーリストゲルがない場合は基本的に浴びることはできない。どうしてもということであれば別料金にはなるがウランバートルや近郊のツーリストゲルまで車を使っていってもらうことも出来る。
(近い将来、もしかしたら簡易シャワーを建てるかも・・・と現地の方がおっしゃてました)
夜と早朝は冷えるのでゲル内のストーブをつけてくれる。
電気は通っていない。夜は蝋燭の明かりで過ごす。
このようにツーリストゲルと言っても至極遊牧民の生活に近いものを体験できる貴重な場所である。不便といえば不便だがこれこそが便利なものに囲まれた日本では絶対体験できない「なにもない」世界である。
夜御飯を食べたあと、羊の解体をするというので見させてもらった。モンゴル人にとって羊を目の前で解体し、料理することは客人に対しての最高のもてなしだそうだ。明日からの私たちの食料である。(もちろん希望であればどなたでもやってくれるとのこと。)
暴れる羊に対し馬乗りになる。腹にナイフを突き刺し、神経を切断する。鳴きわめき抵抗した羊はこうすると石のように動かなくなった。その次に毛皮を削ぐ。殺してからすぐじゃないと、毛皮は剥がれにくくなるそうだ。
どうしても日本を始め発達した都市での生活をしていると、肉はすでに加工済みの商品としてでしか目にすることはできない。羊を殺すのは可哀相かもしれないがこうしないことでは我々人間は生きていくことができない。遊牧民の生活と聞いて、私を含めまず「のどか」というイメージが思い浮かぶが、実際は常に死や生というものに向き合う側面も事実なのだ。
夜は近くに光がないため周りが見渡せなくなるほど真っ暗になる。星空に包まれながら就寝。
9月30日
朝8時起床。朝ごはんを食べる。キュウリ、トマトなどの生野菜とパンとウルム(手作りバター)、タラグ(ヨーグルト)など。基本的に遊牧民は自給自足なので野菜は食べない。でもガルバでは野菜も用意してくれているので肉が苦手な方でも安心だ。
その後、乗馬。すね当てや鞍はもちろんレンタル可能。遊牧民のお兄さんに注意事項を教えてもらいいざ出発。手綱をお兄さんに握っていてもらう。これまで落馬して大怪我をした人はいないとのことなので、自分勝手に無茶をしない限りそれほど心配することはないだろう。
お昼ご飯を食べてまた乗馬。馬乳酒を飲みに近くのゲルまでいく。馬乳酒とは馬乳を発酵させたもので、現代でも好んで飲まれている飲み物である。酒と表記しているがリンさんによればアルコールは入っていないとのこと。一口飲んだが非常にすっぱく、甘くないヨーグルトドリンクのような感じ。
ゲルに戻る。馬から降りると乗っていたときはそれほど感じなかったもののおしりの下の部分に痛みが残る。
夜御飯を食べ就寝。
10月1日
乗馬三昧でした起床。朝ご飯を食べ早速乗馬。またがるだけで痛みが。馬を走らせると上下の揺れが激しくなるため痛みも増す。あまりに痛いので一緒についている遊牧民のお兄さんには走らせないでと伝えた。
初日はそれほどの痛みはなかったので甘くみていた。乗馬初心者の方は無理せずに一日に何回も乗馬しないほうがいい。
昼ご飯を食べ、このツーリストゲルともおさらば。乗馬ばかりしていたのでこの広大な草原を満喫できなかったのが名残惜しい。

再びウランバートルへ
ウランバートルに戻り昼食。現地手配会社の社長さんと会い、いろいろお話させてもらう。
別れ際に馬とゲルを描いた切り絵をいただいた。これがすごい!めちゃめちゃうまいのだ。細部まで丁寧に切られており、人間の手で切ったとは思えないほどの表現力!切り絵アーティスト訪問というオプションも用意しているので、ウランバートルでなにしようと考えている方には絶対おすすめ。
なんでもモンゴルでナンバーワンの切り絵師で、手元を見ないで、訪問客の横顔の形を切ってくれるらしい。
そのあとはお買い物。
カシミアの工場の直営店でリンさんに言わせれば値段も安く、デザインのバリエーションもここが1番豊富なようだ。
次に国営であるノミンデパート。五階がお土産屋さんになっている。一階はスーパーがありちょっとしたお菓子もここで買うことができる。
お土産を買い、初日も泊まったセルベプラザへ。ホテルのレストランで夕食。就寝。

10月2日
今日はウランバートル市内観光。
まずはガンダン寺。チベット仏教寺院である。見物はやはり金ぴかの観音像。高さ25メートルもあり、日本の奈良の大仏を彷彿とさせた。奈良の大仏よりは厳かな雰囲気はなく、金ぴかでなかなかユニークである。
そして歴史博物館。本来は恐竜の化石が数多く展示してある自然史博物館の予定だったが10月から開館時間が変わったようで休館だった。原始時代からモンゴルの成り立ち、民主革命まで今日までのモンゴル理解する上で重要な資料が展示されている。
最後にボグドハーン宮殿。現在は博物館になっており活仏が所有していた仏像や曼陀羅、生活用品、さらに趣味で集めた世界中の動物たちの剥製が展示されている。
その後は主要なホテルインスペクション。
コンチネンタルホテル
まずコンチネンタルホテル。特筆すべきは立地。ウランバートルで訪ねた中では1番いい場所。設備や清潔感、サービスからはスーペリアからデラックスの中間位という印象。もし自分で街歩きを楽しみたいのであればオススメ。

二番目はハーンパレス。残念ながら部屋は見せてもらえなかったがモンゴルの中では現時点では最高級のホテルなのは間違いない。高級指向だったらここ。

フラワーホテル

最後はフラワー。コストパフォーマンスを考えるとここが1番。部屋は狭いが大浴場があるなど日本人を意識したつくり。日本料理レストランの設計も居酒屋風で好印象。仲間同士でわいわい騒ぎたいのであればここがいいかも。

そのあとモンゴルの伝統文化を披露するコンサートに行かせてもらった。ここも切り絵師訪問と同じくウランバートルでは絶対はずしてほしくない場所。馬頭琴やホーミー(モンゴルの伝統文化である倍音の唱法)、民族舞踊などさまざま。日本で見れば数万はくだらない内容が格安で堪能できる。
明日はとうとうこのモンゴルともさよならである。あの広大な草原にはしばらく戻れないと考えると寂しいものである。
10月3日
モンゴル航空出発は朝6:45。5時にリンさんとミーガーさんが迎えに来てくれた。
空港の中まで見送ってもらう。わざわざ朝早くに二人も来てもらい感謝。モンゴルのガイドさんは本当レベルが高い。 モンゴルの大草原は「なにもない」ことを楽しむことだったが、そこに暮らす遊牧民や一緒に付き添ってくれたガイドさんの優しさや思いやりといった心があったため楽しい旅行にすることができた。バイラルラ~。
2007年10月  橋本康弘

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