今回、結果から言うと私にとってこの旅は「衝撃的」な旅となった。
私にとっては始めてのMiddle East Area(中近東)。しかも、以前より興味を抱いていたエジプトへの旅行が決まった。みな誰もが一度はと興味を抱く境地ではないだろうか。ピラミッドやスフィンクス、砂漠にらくだといったお決まりのイメージを抱きつつ旅行に臨むが、そんな小さな私の考えはエジプト古代文明を目の前に砕け散るなどとは予測もできなかった。
日本を発つ・・・出発便は夜の羽田空港より、関空・ドバイを経由してのエミレーツ航空。関西国際空港からドバイへの直行便が就航し、今注目される航空会社のひつつ。関空からの機内では比較的空いていたし、すべてのシートにモニターテレビ、足掛けなどが設置されているし、日本人乗務員も5人もいたので安心できて快適だった。
ドバイ~カイロ間という日本を含まない区間でも日本語字幕の映画や日本の音楽なども聞くことができる。
エジプト到着・・・結局、到着したのは翌日の夕方で到着の際に機内からピラミッドが見えるかと探したが、正面に向って右側のシートでは見えなかった。カイロの空港では預ける荷物がなかった私は一番で入国審査に向ったが、そこには入国審査前だというのに名前の看板をもった現地の人々がわんさかいて、一番乗りの私をじっと見ている。あんなに人に見られたのは久し振りだった。自分のガイドを発見し、一緒に入国審査に向う。そこではVISAも取得するが、ほぼガイドさんがやってくれる。何だかんだとごみごみしていて時間を取ったが何とか手続きを済ませ、ホテルへ向かった。空港からホテルのあるギザ地区までは50分程かかる、見るもの全てが新鮮だったがエジプトの車事情には驚かされた。車線はあってないようなもの、クラクションを鳴り響かせ、ゆっくりな車から猛スピードの車まで、新しい車から、古い車まで、様々である。TAXIは一目見ただけでは分からない様な黒の車体に小さくTAXIとひっそり書いてある(しかもクーラーがないらしい)。とにかく異様な活気に包まれている。ホテルに到着し、長旅の疲れからかすぐに眠った。
ピラミッド・・・エジプトと日本は時差が7時間あり変な感じだったが、起床して前夜にホテルの人から聞いていた言葉を思い出した。「今は暗いが明日の朝はカーテンを開けるとピラミッドが目の前に・・・」心してカーテンOPEN!!
するとそこには見るからに大きなピラミッドが二つ、目の前に現れた。始めて肉眼でみるピラミッドに、なぜかまだホテルにいるのに感動し、何故か無意識に一礼、拍手。そしてすぐにピラミッドの観光に向かった。まずは3つの有名なギザのピラミッドの中で最大のクフ王のピラミッドの前に。以前にエジプトへの旅行でピラミッドを見た人から言われた・・・「壮大なピラミッドの下でピラミッドを見上げると・・来たな~ピラミッドに!と思う」というその一言は、出発前は半信半疑だったが、まさに現実のものとなった。何というものをつくったのだ、昔のエジプトの人々は・・・。
クフ王のピラミッドは中に入るには1日限定数のチケットを購入しなければ入ることはできない。そのため比較的空いているというカフラ王のピラミッドに行き、中に入ることができた。外側からの勇壮な見た目とは違い中は、かなり繊細に階段や王の部屋などと呼ばれている所などが造られている。その場に立つと、深く長い歴史を思い起こさせられる様な気がするのが不思議だった。何千年も昔につくられたピラミッド、王の墓であるという説があったが帰国してからのTV でエジプト文明では日本の第一人者とも言われる吉村作治さんが言っていた。王の墓ではないという、つくったのは農民達で奴隷ではない。・・・まだまだ未知の部分が多い。
その後、ギザの3大ピラミッドを一望できる、パノラマビューポイントへ向かった。着くとそこには見たことのある風景・・・雑誌等で目にする写真に写るポイントだ、丘の上にあり、風が気持ちよくなんとも爽快な気分になる。ここにはお土産物屋さんやらくだ使い等もいてラクダに乗ることも(有料)できる観光のポイントとして有名だという。
次は、ピラミッドの間を抜けてスフィンクスへ。ここには物凄い人ごみだった、その人ごみを抜けてスフィンクスへたどり着く。車に乗っている時にすでにスフィンクスは目にすることができるが、ガイドのさんの説明を受けながら近づいていくとやはり凄いと感じる。これまでまだ前半の前半であるはずの旅行が、すでにピラミッドなどに魅せられ、大いにはまっていることに気が付いた。
ルクソール・・・翌日、私はルクソールへ飛んだ。カイロから飛行機で1時間程南に下る。今回の旅ではやはりメインに近いこのルクソール。心躍らせながらも、まずはメムノンの巨像へ向かう、ハトシェプスト女王葬祭殿へ向かう途中にある。なんでもない、道端にあるので着くまで気が付かなかったがルクソールの観光を大いに期待させるかのように、椅子に座った形で2つの巨大な像が迎えてくれる。
次に王家の谷へ、高くそびえるがけの谷間を抜け、一見ここに何があるのかと疑うほどの渓谷だった。バスは谷の入り口で止まり、そこから先は現地の方の言う、電気自動車という列車にちかい乗り物で王達のお墓まで向かった。その王家の谷と言われる場所は歴代のエジプトを代表する王の墓が掘られ、観光客も中に入ることができる。私はそのうちの3つの中に入った。うち1つはかの有名なツタンカーメンのお墓(有料)にも入った。掘られた穴は人がゆうに入れることの出来る通路が正確につくられており、その壁にはエジプト古来からの当時の生活などをあらわしているエジプト独特の壁画がそのまま残されていた。勿論、色などがつい、ているものもあり、それはほとんどが手のかけられていないオリジナルで古代の人々が書いたものそのままだという。実際に見てみると本当に驚かされ、言葉では言い切れない程の驚きと感動がある。
次にハトシェプスト女王葬祭殿、ここはこの私のエジプト旅行中でも一番良いと思う場所のひとつになった。広大な渓谷の中、ゴツゴツした岩の崖に勇壮な建造物が見えてくる。入り口から200~300Mは離れていようか、しかしその存在感にはすぐに圧倒された。そんな距離からでもカメラを構えずにはいられなかった。入り口では厳しいセキュリティチェックがある、やはりあの忌わしい悲しい出来事の後からだという。それを抜けて段々と近づくにつれ、その日は天気もよかったからか青い空、岩の茶色と祭殿の石灰石色のコントラストがたまらなく、興味をかきたてた。祭殿内にはまた、多くの壁画や石像、壁の隅々に至る細かい所まで手がかけられている所などは見るものを魅了する、とにかく他に見た壁画や石像などより保存状態も良いのか綺麗に見えた。ここを後にするのがもったいないくらいに感じた。
ルクソール神殿・カルナック神殿・・・街の中心、ナイル川沿いから10分ほどの所にカルナック神殿がある。入り口を見る限りは大きな建物にはと思いつつ足を運び入れると、またまたその豪華さに圧倒された、というか情けないがされっぱなし。広い敷地の中にきれいに配列された建造物の数々、変わらず細かい所まで行き届いた壁画など、私が特に驚いたのは彫刻がほどこされた巨大な太く、高い何本もの柱。これもまた狂いなくきれいに配列されている。
この柱の他にオベリスクという柱がある。これは上の先がとがっていてその表面にはいくつもの彫刻がほどこされている。私はこのオベリスクに取りつかれたようにシャッターを押した。ここカルナック神殿はゆっくり歩いても1時間ほどは必要でしっかりと隅々までというには2時間くらいは必要だと思う。合わせてその足でルクソール神殿に行った。
ルクソール神殿は街のほぼ中心に程近く、街の中心、川沿いを車などで通る際には目にすることができる。
しかし、外側から見るイメージとは全く違い、中に入ってみると建物自体はカルナック神殿ほど広くはないが、巨大な柱・建造物・石像とい点では似たところが多い、しかし私が行った頃には日が傾きかけたからかなんともカルナック神殿とは違った神秘的な感じがした。夜になるとライトアップもされ、更に幻想的な姿を見せる。
このようにルクソールではカイロだけでは見ることのできない、また違った多くの遺産を目にすることができる所。エジプトへの旅行はカイロだけでなく、是非ルクソールへも足を運んでいただきたいお勧めの場所である。
カイロへ戻る・・・ルクソールの観光も終え、私の旅も終盤に差し掛かる。カイロに戻ってからまだ行かなくてはならない重要なところに足を運んだ。市内中心部にある「考古学博物館」ここをなくしてエジプトの歴史は語れないと私だけが思っていた所。しかし、ここは交通の便が良くなく入り口付近は車と人とでごった返している。日本人も多くいた。
中に入るとガイドさんがいう事にまず驚く、一見入ると中はかなり広いことを感じて取れるが、石像など歴史に関する重要なものがまるで倉庫のように所狭しと並んでいる。しかし、その中で当時のものを似せてつくったいわゆる偽物は一つしかなく、残りはすべて本物だという。1階には神殿やピラミッドなどで発見された石像や桶など、そして2階には私の個人的に今回の旅のメインとも考えていた「ツタンカーメンの黄金のマスク」を含めたツタンカーメンに関係したものが並べられている。色々と見ているうちに今回の旅のおさらいの様に、今まで足を運んだ所から発見されたものが並ぶ、そんな中、一つの部屋を見つける。別料金での入場になるその名も「ミイラ室」。歴代の王達のミイラが10体近く並べられていて、中での私語は慎み、写真撮影もできない。しかし、なんとも初めてミイラなるものを見た私はかなり衝撃的だった。ミイラによっては髪の毛なども残っていた。
ツタンカーメン・・・いよいよ対面する。さすが有名なだけあってツタンカーメン関係の装飾品は鉄格子の部屋の中に1室、すらりと並べられていた。そしてひともわんさかいる。入るとすぐに目に付いた!「うぉ!」思わず声が出る。本当に黄金に輝くマスク、続いては声が出ない。昔からのこのツタンカーメンの存在感を感じる。2度目になるがこの小さくはない博物館の2階に並んでいるほとんどのものはこのツタンカーメンに関する物品だ。破損も思ったよりは少なく、かなりきれいに残されているものが多いので非常に見がいのあるものばかりだった。特に気に入ったのはやはり黄金のマスクを見れる部屋とツタンカーメンの王座の椅子。もう一度でも見てみたい。なんだか本当に不思議な気分になる所だった。一つ注意・・この博物館は写真は取れるがすべての場所においてフラッシュでの撮影が禁止されているため、暗い部屋にての黄金に輝くマスクは帰国して愕然としたがやはりブレていた
(・_・、)。フラッシュをたいて写真を撮って係員などに見つかると、フィルムを抜かれることもあるらしい。
この様な感じで私のエジプト旅行はあっという間に終わりを迎えた。実際に行ってみて、これまでの私の得たエジプトに関する知識がいかに小さなものだったか思い知らされる旅だった。そんな未知の世界に魅了され、歴史を追い求める学者さん達の気持ちがすごく分かる気がした。また、アブシンベル、アスワン、アレキサンドリアなどへも行ってみたいという欲望にも掻き立てられた。まだまだ、広く深いエジプトの歴史をこれから少しずつでも辿って行こうと思う。
今井 康夫
2002年10月