ギリシャと聞いてどんなイメージを抱くだろうか。
神話、遺跡、リゾート、ギリシャヨーグルト、、?美しい景色とその深い歴史をもつギリシャだが、今回ギリシャに行くことを伝えて、友人や家族から出てきた言葉は”ギリシャってもう大丈夫なの?(財政破綻)”。
まだまだ財政破綻のイメージが拭えないギリシャ。実際国の経済状況は「大丈夫」とは言えないものの、観光には何の問題もなく、今回コルフ島、サントリーニ島、アテネ、カランバカでたくさんのホテルを視察に訪れたが、どのホテルもほぼ満室で、みんな口を揃えて「今年はとても忙しい」を嬉しい悲鳴を上げていた。
訪れて納得。こんなに魅力たっぷりの国、観光産業が衰えるはずがない。
◇コルフ島◇
エミレーツ航空で関空からアテネまで、そこから国内線に乗り継ぎまずはコルフ島へ。エミレーツ航空、国内線両便共に遅延し、コルフ島に着くまで26時間もかかってしまった。
ようやくホテルにたどり着きベッドに横になりたかったが、窓を開け目に飛び込む景色に外に出られずにはいられなくなる。
ギリシャのディナータイムは遅く22時くらいがピーク。この時期日が沈むのが20時くらいで、町中は遅くまで賑わっている。
あまり日本では馴染みのないコルフ島だが、“ギリシャで最も美しい島”の一つとされ、旧市街は世界遺産にも登録されている。コルフ島の空港は国際空港で、夏の間はドイツやイギリスなど、ヨーロッパ各国から直行便もたくさん飛んでいる。また大きなクルーズ船も停泊するので、バカンスシーズンになるとたくさんの欧米人で賑わいをみせる。
その立地から、トルコ、イタリア、フランス等の国に支配されていた歴史をもつこの島は、それぞれの国の街並みが混じったとても珍しい町。ベネチア風の建物と石畳の道、そんな中どこからかトルコの香りもしてくる。迷路のように入り組んでいる旧市街は、中心にある聖スピリドン教会が目印になり、方向音痴の私でも地図なしでふらふら歩いていても迷うことはなかった。カフェやタベルナ、お土産屋さんがたくさん並び、歩いているだけでわくわくする。
新要塞からは、この旧市街を一望することができる。
元々予定していなかったが、時間が余ったのでふらっと訪れてみたアジア美術館。こんな場所でアジア美術館って、小さなものを想像していたが、想像を遥かに超えた立派な建物。
この日はたまたま美術館の入場が無料。どこから来たのか聞かれたので、日本と答えると、スタッフの一人が「ちょっと待ってて」と言って、しばらくしてから分厚い本を片手に現れた。そして”Present for you!!”と差し出されたのは、なんとギリシャ語と英語で書かれた立派な日本美術の本だった。
さらに、この日は日本の特別展をやっていて、ワンフロア貸し切りで日本美術のコレクションが展示されているとか。なんと、これまで1点も見つかっていなかったという東洲斎写楽の肉筆画が、ここコルフ島のアジア美術館に眠っていたことがつい9年ほど前に明らかになったそう。(これは特別展の時にだけ見ることができる)そのほか、浮世絵だけでも1600点が所蔵されている。
コルフ島での滞在中、日本人どころかアジア人をほとんど見かけなかった。恐らく日本でコルフ島を知っている人も多くないだろう。こんな離れた場所で、こんなにも日本美術のコレクションがあるとは、誰が予想できただろうか…。
◇サントリーニ島◇
2年ほど前にカンクンを訪れた際、2人用にセットされたテーブルでいい年頃の女子が一人で食事をしていると、隣のお客さんやウェイターから「旦那さんは?なんで一人なの?」と質問攻めにあい、苦い思いをしたことがあった。それ以来ハネムーンの聖地に一人で行くのには少し抵抗があった。
しかし、サントリーニ島は女子同士で来ている人も多く、全然気になることなく過ごすことができた。免疫がついたのか…?
サントリーニ島の中心となるのはフィラの町。バスもこのフィラを起点に島内のあらゆるところに1日何便も走っている。今回はフィラのペリカンホテルに宿泊。
まず、フィラから断崖の絶景を眺めながら、1本道をてくてく歩くこと約30分。白いフォトジェニックな風景が広がってくる。そこがフィロステファニの町。ここからは素晴らしい景色を眺めることができる。
このままさらに進むとイアの町に到着する。徒歩だとフィラから3時間くらいはかかる。フィロステファニからはバスに乗ってフィラまで戻る。バスは1.8ユーロで、乗車後おじさんがチケットを売りに来てくれるので、そこで支払う。
フィラにもどってくると、ちょうど夕日の時間。まるで絵のような美しい光景が目の前に広がる。
フィラで是非体験して欲しいのが、ロバタク(ロバのタクシー)。フィラの町からケーブルカーでオールドポートまで降りると、たくさんのロバ達が見えてくる。なんと250頭ものロバがせっせと働いている。
ロバ乗り場には中国からの団体客が。私もその団体の一人だと思われ、中国人に紛れ込んで一緒にロバに乗る。最初は他のロバと我先にと軽快に歩いていたロバも、途中から疲れが伺え、ふぅ、と休憩をして、よし!と勢いをつけて走っては止まって休憩。休憩をすると後ろのロバと衝突。と、なかなかスリルが味わえる。どんどん上っていくにつれ、眼下には言葉にできないほど美しい景色が広がってくる。
景色に見とれているとロバが急に止まったりするので、手綱を握る手を迂闊にも緩めることはできない。ケーブルカーだと3分で降りてきたところを、ロバたちは約300段もある階段を約20分かけて町まで登りきる。毎日同じ道を往復させられて可哀想に、、と思いながらも、なかなか楽しい体験だった。ロバくんありがとう。
その後、バスに乗ってピルゴスという町へ。
町は小さいのでゆっくり見て回っても1時間あれば十分。観光客も少なく、おすすめの穴場。高台にあり、綺麗な景色を臨むことができる。
ピルゴス村から約1kmのところに、サントリーニ島のワイナリー「サント・ワイン」があるので、訪れてみた。
実はギリシャは世界で最も古いワイン生産国の一つ。火山性の土壌が良質のブドウを育て、さらにはエジプトとクレタ島の中間に位置するという立地条件が加わり、昔からワイン製造は盛んに行われている。
中でも、サントリーニ島にしかないアシリティコという種類のブドウを使った白ワインは格別に美味しい。ここサント・ワインでは、アシリティコ100%のワインも試飲させてもらえる。ワイナリーを巡るツアーもやっているが、残念ながらこの日はやっていないとのことだったので、試飲だけさせてもらった。
目の前には絶景。そしておいしいワイン。
こんなに美味しいワインと素晴らしい景色を楽しめて、なんとたったの14.5ユーロ。
白ワインだけではなく、「ヴィンサント」というデザートワインも最高に美味しい。(それもこの試飲に含まれている。) ここで飲んだワインは今でも忘れられないほど。日本ではなかなか手に入らないのが残念。
そして、日が暮れるころ。イアへと向かう。
夕日を見られるポイントへ行くと、立つ場所もないほどの人で溢れている。
そして皆が見守る中、あたり全体が夕日色に包まれていく。
日が完全に沈んだ瞬間、島のあちらこちらから拍手が生まれる。
さて、翌日。サントリーニ島から午前中のフライトでアテネへ移動し、午前中には到着しその日はアテネを観光する予定だった。しかし、チェックインを済ませゲート前で待っていると30分遅延のアナウンス。いつものことかなと待っていると「1時間全ゲートをクローズします」とのアナウンス。そして、1時間待った後、次は「新しいスケジュールは1時間後にお知らせします」とのアナウンス。最終的には「フライトはキャンセルです」とのこと。預けた荷物を取りに行き、チケットカウンターに行くが、人であふれかえり、そこでも1,2時間待たされる。ようやく振り返られた便はなんと深夜の0時20分発。アテネの観光は諦めてサントリーニ市内までとりあえずタクシーで戻り、時間をつぶす。
夜また空港に戻ってくると、また人で溢れかえっており空港内にすら入れない。空港の外で2時間程待った挙句、さらにフライトが遅延し、朝方3時過ぎにようやくアテネに到着。留目には、ドライバーさんに間違ったホテルで降ろされるという顛末。なんという1日。
1時間程仮眠をして疲れ切った体を奮い起こしカランバカへと向かう。
◇メテオラ◇
世界遺産のメテオラ修道院。メテオラには宿はないため、カランバカを起点にメテオラの観光を行う。カランバカまではアテネから電車で約5時間。往復共に1時間遅延していたので、実際は6時間くらいかかった。アテネからカランバカの電車は1日1本しか走っておらず、定刻通りだと13:18に到着する。
カランバカに到着すると、目の間には大きな奇岩が迫り、その迫力と異様な光景に圧倒される。
メテオラには24つの修道院と41つの洞窟が残っている。今は6つの修道院にしか人は住んでいない。
車で走っていると、あちらこちらに大小の修道院や洞窟がみえる。
遠くから見ると、カラフルな洞窟も。
そして車を走らせていると、ガイドがあそこを見て!と指さす先を目を凝らしてみると、なんとロッククライミングをする勇者が。ガイドさん曰く、結構ここでロッククライミングをする人が多いらしい。
各修道院、開館時間や曜日がそれぞれ異なっているので、事前にチェックが必要。実際私もホテルのチェックインの際にスケジュールを聞くと、翌日観光予定だったメインのメガロ・メテオロン修道院が閉まっているということで、急遽その日のうちにタクシーで訪れることにした。
修道院に入る際、女性はパンツ姿では入ることができないので、入り口に置いてあるスカートを巻いて入る。
写真からも見て分かり通り、修道院に入るには1つの修道院を除いて全て急な階段を上る必要がある。
特にアギア・トリアダ修道院は高さ565mのところにあり、130段の階段を上らないといけないので、結構ハード。
実際目にすることはできなかったが、この修道院には1人の修道士が現在も住んでいる。
上りきったご褒美には、素晴らしい景色が待っている。
何百年もの年月もかけてできたこの奇岩群。その上にまた何十年もかけて作られたたくさんの修道院。自然の力と昔の人の力は計り知れない。私は今回時間がなく行けなかったが、現地のガイドさんのおすすめはここでのサンセットツアー。次回訪れることがあれば絶対サンセットを見てみたい。
◇◇お土産◇◇
ギリシャは物価が安く、女子には嬉しいお買い物天国だった。
・オリーブオイル:オリーブオイルの消費量が世界一のギリシャではどの料理にも大体オリーブオイルが使われている。ヴァージンオリーブオイル(100%のオリーブオイル)が激安で買える。
・白ワイン:ギリシャは世界で最も古いワイン生産国。中でもサントリーに島にしかないアシリティコというブドウから作る白ワインはとても美味しいのでおすすめ。日本でもギリシャのワインはなかなか見かけないので、是非ワイン好きなら旅の最後に買って帰りたい。サントリーニ島に訪れるなら、ワイナリーでテイスティングもできる。
・はちみつ:ギリシャのはちみつは上質でおいしい。Attikiというはちみつが有名。
・革のサンダル:町を歩いていると、革のサンダルが売ってあるのをよく見かける。ギリシャはあまり知られていないが革製品も有名で、サンダルも2000円くらいで手に入る。しかも質が良く長持ちするらしい。
・オーガニックコスメ:ギリシャには天然成分のみを使った自然派の化粧品が多い。日本でも人気のApivitaやKorresが日本の3分の1程の価格で買えるので、これは買うしかない。
・Folli Folli:ギリシャのブランド。日本の25%off、かつtax freeで買えるので、好きな方は是非。
今回コルフ島、サントリーニ島、メテオラ、同じ国なのにそれぞれ全く違う顔をもっていて、飽きることなくずっと美しい景色に感動しっぱなしだった。ただ、ギリシャに行ったにも関わらず、フライトキャンセルのためアテネを訪れることができなかったことだけが心残り。また、絶対に再訪すると誓い、帰国の途についた。
【スタッフおすすめ度】
*コルフ島 ★★★★★ 西洋の雰囲気も味わえる世界遺産の旧市街はお勧め。時間があればぜひビーチへ。海の透明度は抜群!
*サントリーニ島 ★★★★ 言わずと知れたハネムーンの聖地。美味しい白ワインはぜひ味わってみてください。
*メテオラ ★★★★★ 奇岩の上にある修道院群は圧巻。
(2017年5月 池田郁依)
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