シルクロードの交差点で、砂漠の謎・青の洪水に溺れる旅

シルクロードの交差点で、砂漠の謎・青の洪水に溺れる旅

最近我が社内で流行っている「スタン系男子・スタン系女子」というカテゴリーがある。
誰が言い出したか定かではないが、スタンと名のつく国を愛している人たちのことをそう呼ぶらしい。
カザフスタン、タジキスタン、トルクメニスタン・・いずれも一度も私は足を踏み入れたことのない道の国である。
そのカテゴリーの筆頭であるスタン系男子社員が「え、大野さんスタン行ったことないんですか?!めちゃくちゃいいですよ!絶対行くべきですよ!!」とちょくちょくアピールしてくるため、「いやいや、スタン系ってなんやねん。それやったらインド系女子も作ってくれ」と何となく反抗していた私に、今回伝えられた出張先、ついにやってきた、スタン系の入り口的国「ウズベキスタン」
このままスタン系女子になったら悔しすぎるな・・。
そんなことを考えつつ、他の国に比べ非常に薄い地球の歩き方を握りしめ、自分の中に眠っているかもしれないスタン系女子の素質に怯えながらも韓国乗継ぎアシアナ航空で出発した。
そして帰国した今、「スタン系女子」と自称するにはまだまだ経験が足りないが、世界一大好きなインドに迫る勢いで、ウズベキスタンは大のお気に入りの国となっている。
食事も全て美味しく、遺跡も見応えがあり、お買い物も十分に楽しめ、想像以上に楽しくて充実した10日間となった。
イスラム圏でありながら、とても美味しいビールもワインも揃っており、ビール片手に味わう満天の星空、水タバコを吸いながらの現地の人との語らい、全てが今も心の中でほっこりと暖かい思い出となっている。
中近東の情勢が心配される中、とても親日家で優しいウズベキスタンの人と、心打つ素晴らしい景色に出会う旅、みなさまのご旅行の参考になりますように。

伝統帽子をすっぽり


「カラカルパクスタン共和国」この名前を聞いたことがあるでしょうか。
ヌクスを首都とし、ウズベキスタン国土の37%を占めている共和国である。
ウズベキスタン共和国の中にある共和国の見どころは、何と言っても「20世紀最大の環境破壊」と呼ばれているアラル海である。
首都ヌクスからは車で約2時間半の道のり、実際にこの目に焼き付けるために出発した。
しかし、アラル海への道のりは、そんなに易しくはなかった。
舗装されていない道が多く、道路の真ん中に大きな穴が開いていたりするのだが、そんな道を時速100キロ平均のスピードでブッ飛ばしていくのである。
そこはさすがプロというべき腕前で、まるでマリオカートのように、穴を避け、前の車を煽り、逆車線を利用し前の車たちをごぼう抜きしてくれるドライバーさんに、私の人生を預ける。
「決してミスしてくれるなよ・・!」と最初は車にしがみついていたものの、素晴らしい適応能力で30分後には眠たくなるのだから、人間は強い。
しかし、うっかり居眠りでもしようものなら、時折飛び跳ねる車内で天井に頭を思いっきりぶつけることになる。うっかりお団子頭で行ってしまったため、天井に頭をぶつける度にピン留めが頭に突き刺さる。
そんなこんなで、うたた寝したり悲鳴を上げたりしている内に、片道でちょうど三回天井に頭を打ち付けた頃に「ムイナク」という町に到着した。
かつて世界第四位の面積を誇っていたアラル海という名の湖は、その名の通り、まるで海のように果てが見えなかったという。ムイナクも以前は漁業の町として栄えていたが、今は悲しいほどに閑散としてしまっている。
今、以前の海岸線に立って見えるのは、見渡す限りの地平線と鉄の塊と化した漁船だけである。

縮小を続けるアラル海の姿

以前は海岸線であった場所


昔の漁船がその姿を残している

そう、ここは人々が職を失い、今なお縮小し続ける湖の悲しい姿を現す場所・・
だめ・・・・だめだ・・・
ふざけちゃ・・・いけない・・・



こんなに素晴らしいフォトストップの魅力に抗える訳もなく、ついついテンションマックスではしゃぎまくってしまいました。
今はまだその姿を残す船も、水から離れてからの時間の長さを表すように朽ちてきており、いつ崩れてしまうかは分からないという。
湖が元の大きさに戻り、ここまで水が戻ってくる日は来るのか。それは今を生きる人々に委ねられているのでしょう。
あまり身近で感じることのない環境問題について、考えさせてくれる場所でした。
船の墓場の次に向かったのは、古代ホレズム王国の遺跡巡り。
アムダリヤという川にそって栄えた王国は、その川が形を変える度に城を作り替え、1000以上ものカラ(都城・城砦の意味)があったと言われている。現在もその形を残しているものは数少ないが、まだまだ全ての遺跡の発掘が終わっているわけではなく、今からまた新しい発見がでてくるかも知れない。

トプラク・カラ

まだまだその全貌を現していないカラのいいところは、まだまだ謎だらけなところにある。
その中でも風の都という意味をもつ「アヤズ・カラ」に至っては、誰が何のために作ったかすら分かっていないというのだから面白い。
それもそのはず、このカラには城壁しか作られていないのだ。
小高い丘を登った上に建てられているのだが、登ってみると見事に城壁しかない。城壁に囲まれてぽっかりとひらけている場所には、その名の通りとても気持ち良い風が吹いている。



頭が悪いから歴史を覚えられないという理由もあるけれど、こういった謎に包まれた歴史ってとてもロマンがあって素敵に感じます。いつまでも謎のベールに包まれていて欲しいような気もしました。
アヤズ・カラの麓にはキャンプがあり、ユルタで宿泊することもできます。
満天の星空の下、砂漠のど真ん中で謎の遺跡を眺めるなんて贅沢、なかなかできないのではないでしょうか。
隣のユルタで現地の人達が夜中まで大盛り上がりだったことも含め、なかなかできない経験をすることができました。

ユルタからアヤズ・カラが見える

ユルタは広くて快適

ウズベキスタンで一番早く世界遺産に登録されたヒワ。
昔からオアシスとして栄えたこの町は、今でも砂漠だらけの城壁外から入ってくると、ほっとさせてくれる優しさを持っている。
美しい町並みが目を引き、城壁内はまるでタイムスリップしたような気持ちにさせてくれるが、優しいだけの町じゃないのが、ヒワの裏の顔が更にこの町を魅力的にしているのかもしれない。
中央アジア最大の奴隷市場を持ち、その名を轟かせていたヒワには、奴隷売買が行われていた門が今も残っている。今でこそお土産などが売られているが、昔はこの場所に大量の奴隷が鎖につながれ、この門を通る商人たちに値踏みされていたという。
また、町の中には監獄博物館があり、昔の血なまぐさいヒワの町の歴史が飾られている。
口から長い剣を刺したり、袋の中に猛獣と一緒に入れたり、その処刑方法は多岐に渡っていたそう。昔は処刑が一種のエンターテイメントで、民衆に分かりやすいように、いかに血を流すかを考えて実行されていたというのだから、恐ろしい。
と、こんな話ばかりすると怖くなって誰も行ってくれなくなってしまうと困るので、いかにこの町が魅力的かをお伝えしようと思う。
城壁をくぐると、未完成のミナレット「カルタ・ミナル」が観光客を迎えてくれる。
青のタイルが非常に美しいミナレットであり、恐らく70~80メートルの高さのものを作ろうとして工事が始まっているにも関わらず、現在26メートルまで作られて工事が終わってしまっているので、その姿はとってもふとっちょさん。
ミナレットというものは、従来上からお祈りの時間を知らせたり、時に罪人を上から落として処刑したりするのに使われていたが、このミナレットはそのいずれの役割も果たしていなかったと言われている。
なぜ途中で工事が終わっているのか、様々な憶測があるが、その伝説の一つに、80メートルのミナレットを作り、ブハラまで見渡せるようにしようと思い工事に着手したのはいいが、26メートルまで作ったとき、ミナレットから自分のハーレムが見えることに気づき、これでは自分のプライベートが無くなってしまう!ということで工事を中止したという。
真実は、本当にタイムトリップをしてインタビューしてみるしかないが、太くて堂々としたその美しい青の姿は、とっても可愛らしくて、現在のヒワを代表する建築物となっている。

ふとっちょミナレット

碧いタイルが美しいハーレムでは、300人もの女性が生活していたと聞いて、驚愕。でも、よく話を聞くと、ハーレムは女性のための政策でもあったとのこと。
戦に行って男性が死ぬと、世の中に女性が余ってしまう。そういった余った女性のために「男性はお金があれば4回まで結婚していい」ということになり、お金持ちの男性は奥さんが4人いたし、王様は300人の中から4人を選んで、飽きた時には残りの296人から新しい奥さんとチェンジができたというのだからすごい。
女性にしてみても、出世する方法だったのかもしれませんね。



その他にも見所がたくさんありすぎて、一日では全部回りきれなかったほど!
ヒワでは、是非とも城壁内に一泊することをおススメします。
ヒワの主な見どころはほとんど城壁内にあるため、移動が楽ということもありますが、早朝や夜の街歩きは、人もまばらで、異世界に迷い込んだような気持ちにさせてくれます。
美しいミナレットをたくさん抱えている顔と共に、奴隷市場という裏の顔を持つ都市、ヒワ。
その魅力にあなたもきっとハマってしまうはずです。

夜の城壁内

シルクロードの交差点と呼ばれるウズベキスタンの中でも、一番雰囲気が残っていると言われるブハラでは、街歩きがお勧め。
キャラバン隊が宿泊していたキャラバンサライや、古今東西の商品が売買されていたというタキバザールは、今もなお活気があり、歩いているだけでタイムスリップしたような気持ちになります。
(タイムスリップしてばっかりという苦情は受け付けておりません)

今も活気あるバザール

元キャラバンサライ

タイムスリップついでに水タバコにも挑戦。
こうゆうことをしていると自然に周りの人が話かけてくれるから嬉しい。

やっぱり吸い慣れている人はかっこいい

ここで何故か、動物の鳴き声の話になり、日本では犬は「わんわん」、鶏は「コケコッコー」と教えると、皆お腹をかかえて笑い転げていた。
じゃあウズベキスタンの犬と鶏は何て鳴くの?と聞くと、まさかの犬は「ガブガブ」、鶏は「クッカリクー」だと言うので、次は私が笑い転げることになった。
豚は「ホリュウホリュウ」だし、ネズミは「ピピピピ」と、お互いの国の動物を笑いまくって、楽しい夜は更けていった。

クッカリクー!

そして、ウズベキスタンを知らない人でも、恐らく一度は目にしたことがあるであろうサマルカンドへ。
それまでに訪れた町に比べて格段に都会であるが、その町の中には見所がひしめき合っている。まさに青の洪水と言えるほど、町中に鮮やかな青のタイルを使った建造物があり、砂漠で疲れた目を一気に癒してくれる。
「青の都」「イスラム世界の宝石」といった異名にも、心から納得できてしまう。

豪華絢爛なグリアミール廟


有名すぎるレギスタン広場



青が美しいシャヒジンダ廟群


お土産にも最適な可愛い陶器

そして、サマルカンドからタシケントへの移動では、2011年から運行を開始した高速鉄道アフラシャブ号に乗車してきました。
従来の列車の約半分の時間での移動を可能にしたアフラシャブ号は、スペイン製の車両を利用しており、乗り心地は、日本の新幹線にも劣りません。無料の飲み物と軽食のサービスもあり、軽食のパンやアイス、チョコレートなどは美味しいと評判です。車内にはテレビモニターもついており、ウズベキスタン映画などを見ながら優雅な列車の旅を楽しむことができます。食堂車両もあり、簡単なスナックやアルコールも購入できます




こうして、私の大満足なウズベキタン旅行は無事に終わったのですが、帰りにこっそりと韓国に立ち寄ってきました。
航空券のルール上、乗継地では24時間しか滞在できないため、朝9時に到着し翌日の朝8時には韓国を出発という強行スケジュール。でも、翌日日曜日なのに、寄らないなんてもったいない!ということで、韓国コスメを爆買する、チマチョゴリ体験をするという二つに目的を絞り、ちょろっと韓国で遊んできました。
韓国到着前日に「明日、4/15が北朝鮮のXデー。できる限り渡韓は避けるべし」という連絡が家族から入り、そこで初めて外務省からの注意勧告が発表されていることを知るも、もうどうしようもないので、不安な気持ちをおしこめ、家族には「トランジットだけだから大丈夫!」と半分嘘をつき、仁川空港に降り立った。

念願のチマチョゴリ体験

夜中まで活気がある明洞


美味しい食事も韓国旅の醍醐味

結果無事だったわけですが、今後の朝鮮半島情勢が非常に気になります。
こんなに楽しくて、日本から近くて、美味しくて安くて、イケメンと可愛い子ばかりの国が、今後も平和なままでいてくれることを願うばかりです。
ファイブスタークラブでは、現時点では韓国のツアーは取扱いがないものの、私のように立ち寄りアレンジは可能ですので、お気軽にご相談ください。
世界を二つに分けるとすると「居心地のいい国」と「居心地の悪い国」があると思うのですが、ウズベキスタンは完全に前者であり、とても素晴らしい10日間を過ごすことができました。
日本人へのイメージは概ね良いらしく、街で出会う人たちから「ジャポネ?ウェルカーム!」と言ってもらえた。
「おしん」が放送されていたことがあり、その影響もあって今でもバザールで「ヘイ、おしーーーん!」と呼ばれることもあるそう。
おしんの良さが分かるあたり、ウズベキスタン人の感覚は日本人寄りなのかも知れません。
ウズベキスタンという国名は知らないとしても、日本人が持っているシルクロードのイメージに一番近い国ウズベキスタン。
まだまだ奥が深い「スタン系」の国々への出発地点に立った今、次はどこのスタンに会いに行こうかとワクワクしてしまっています。
あなたも是非「スタン系男子・女子」になってみてはいかがでしょうか。

出会ってくれたたくさんの笑顔に感謝!

アヤズ・カラのユルタ★★★★★
かつて遊牧民が使っていたユルタに泊まる体験は日本ではできないので是非!
ウズベキスタン料理★★★★★
何も心配することはありません。日本人の舌にばっちり合います。
ヒワ★★★★★
やっぱり泊まって欲しい。タイムスリップしたような雰囲気を楽しんでください。
(2017年4月 大野史子)
このエリアへのツアーはこちら

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