妖精とケルト神話、そしてギネスの国アイルランド。ビール(お酒?)が大好きな私が若かりし頃より憧れていたダブリンへ、この季節のいい6月に行ける事になりました。
しかし今回の旅はギネスが目的ではありません(本当か?)。まだあまり知られぬ大自然を巡り、ギネス以外のアイルランドの魅力を探しに行く旅となりました。
日本からダブリンまでは直行便がありません。今回はKLMオランダ航空でアムステルダム経由にてダブリンへ。アイルランドはシェンゲン加盟国ではありませんので、入国審査はダブリン到着時になります。アムステルダムまでは沢山いた日本人もダブリン行きは私一人、そんなにアイルランドってマイナーな国だっけ?
ダブリン空港から市内までは便利なバス、エアリンクを利用。市内まで片道6ドルの明瞭価格なので旅行者には嬉しいもの。停留所近くのホテルだったので迷わず到着です。
ダブリンのホテルに到着したのは20時間頃でしたが、まだまだ明るく夕食兼ねての散策に出掛けました。気温も18度前後で湿気もなく快適です。
今ダブリンの若者に人気なテンプルバーエリア。ここには創業1840年の老舗パブを初め、アイルランド音楽を聞きながらビールを楽しめるアイリッシュパブが軒を連ねます。日の落ちない夜を友人達とビールを飲んで過ごす人達で溢れていました。絶好調の賑やかパブに女子1人で入るのも気が引けたので、シーフードビストロでビールを頂く事に。アイルランド初日はビール&ムール貝で一息。
■day2
時差のせいで早目に起床、今日はダブリン近郊の世界遺産のあるミース県を訪れます。アイルランドを代表する世界遺産「ボイン渓谷の遺跡群」はダブリンから北へ約60キロ、ボイン川流域に残る墳墓群です。その中心のニューグレンジは約5000年前に作られたと推測されますが未だその目的ははっきりとせず、謎の遺跡とされています。ニューグレンジの墓内は真っ暗ですが、唯一冬至の朝17分間だけ陽光が真っ直ぐ入る様設計がされています。周辺の巨石には渦巻き菱形の模様が書かれこれも未だ解明されず、謎に包まれています。
次に訪れたのはアイルランドで最も有名な十字架のある「モナスターボイス」へ。この教会跡に残るハイクロスは10世紀のもので、見事なレリーフを残しています。文字が読める人が少ない時代に絵による布教を行いました。
そのハイクロスは1000年経つも美しく、威厳を纏ってただひたすら立ち続けている様でした。
ランチには元駅舎を利用したstation houseでローストビーフをビールと共に。このホテル兼レストランは結婚式等にも使用される素敵な内装です。
午後はアイルランド人心の故郷「タラの丘」へ。ここは紀元前200年頃タラ王が宗教色の強い国家を築き、後に聖地となり繁栄した場所です。今なお、世界中のアイルランド人にとって「タラに帰る」と言う言葉は望郷の意味を持ちます。
小高い丘の上からの眺めは遥か地まで見渡せ、タラ王の時代までもが重なり見える様でした。
ダブリンから高速道路利用で約1時間程の近郊には牛や羊が草を食べ、のびのび育む姿が見られます。町に滞在するだけではなく、ちょっと足を伸ばしてみると、よりアイルランドが理解出来るに違いありません。
■day3
今朝はこの時期だけ早くオープンする「トリニティカレッジ」のライブラリーへ。かなり並ぶと聞いていましたが、8時半オープンはあまり知られていないのか、5分前でもほんの数人が待つだけでした。
ここの見どころはケルズの書とロングルーム。ケルズの書とは、9世紀初めに修道士が作成した装飾写本の傑作です。ケルト特有の模様や動物、人が書かれ、ケルト美術の最高峰とも言われます。
そして、ロングルームは見事!入った瞬間に図書館としての圧倒感を受け、ただ感動します。特にあまり人のいない時間だっただけに、静けさが心地よく時が止まった様でした。
今日はダブリンからゴールウェイへ向かいます。校外への列車はヒューストン駅から発車。掲示板にはゴールウェイ行き列車のプラットフォーム番号が10分前まで出ていませんでしたが、わらわらと改札に人々が集まり出したので私も続いて行くとちょうど放送が流れ、皆一斉にホームへ。指定席のない列車なだけにみんな小走り。
ダブリンから約2時間半弱でゴールウェイに到着しました。アイルランド西部の中心都市ゴールウェイは学生も多く活気に溢れた町です。中心部のショップストリート、ハイストリート、キーストリートにはパブやレストラン、ショップが並び、時間を問わず賑やかです。
この時期はとても日が長いので21時を過ぎても昼間の明るさ。1日が長く感じられます。
■day4
今日はゴールウェイから車で約1時間のロサビル港からフェリーでアラン諸島のイニシュモア島へ。大西洋にあるアラン諸島はケルト文化の中心地でゲール語が話されています。また、古代遺跡も残り人気の観光地です。この地に住んでいた先住民達が石灰岩の地を均し、放牧が出来る島へと変えました。その削った石灰石を壁の様に積上げた様は、海のブルーと草のグリーンに石のグレーがプラスされ、何とも美しいものです。
また、9~15世紀に建てられた修道院跡や、最大の見どころであるドン・エンガスでは大西洋に面する断崖に立つことも。但し、風も強いので、下を覗く時は注意が必要です。(私は高所恐怖症の為、下を見る事は控えました。見たらたぶん気絶します。笑)
またアラン諸島はアランセーター発祥の地でもあり、デザインに意味がある事で世界的にも知られています。
島内巡りにはミニバス、サイクリング、馬車、徒歩の方法があります。全長15キロの小さな島ですが、アップダウンもあり、徒歩だと以外に時間もかかりますので、弊社のツアーでは、陽気なおじさんのミニバスを利用して効率良く回ります。ランチは島のカフェでスープやボリュームサラダが食べられます。
せっかくゴールウェイまで来たならば、やはりアラン諸島まで足を伸ばして頂きたい。
■day5
今日はゴールウェイから、モハーの断崖を経てケリーリングにあるウォータービレッジへ向かいます。モハーの断崖はアイルランドの中でも1、2を争う人気観光地。モハーはゲール語で「廃墟になった崖」を意味しています。あまりにも有名で既に写真で沢山見ているにも関わらず、目の前に現れた時はその迫力に圧倒されました。断崖の向こうに見える大西洋がまた無限に広がり、自然の偉大さを見せつけている様でした。
ここには一応石柵があるのですが、何故かみんなお構い無しで乗り越え、断崖の縁を歩いていました。私も恐る恐る歩いてみたものの、強風が吹いたらバランスを崩して落ちるのではとか、誰かに押されたら絶対落ちるなど、いらぬ心配をしてしまい、そうそう柵内に戻りました。
観光地可されているとはいえ、モハーの断崖はゴールウェイまで来たら行くべきです。
今回のミッションの1つ、「アイルランド音楽レッスン」を受けにエニスへ。エニスは伝統音楽が息づく町で毎年音楽祭が開かれる事でも有名です。
この町で楽器初級者の私がティンホイッスルのレッスンを受けます。楽器に触るのは中学生以来。リコーダーとホルンを少し齧っていた程度の経験です。
1対1で丁寧にレッスンが始まりました。先生は凄く簡単な英語で説明をしてくれるので、とてもわかり易くすぐに吹ける様に。それにアイルランド風な息遣いをプラスすれば何とか形になりました。
初めてのアイルランド音楽レッスン。短い時間でしたが、楽しく、ついティンホイッスルを購入してしまいましたので、帰国後も練習したいと思います。
少しでも音楽の心得がある方には本場での演奏はいい思い出になりますのでおすすめです。
次に向ったのはアイルランドで最もかわいい村と言われる「アデア」へ。素朴な藁葺き屋根が未だ建ち並びます。目的地にするには小さい町なので、立寄り程度に楽しむといいでしょう。
アデアから一気に南下し、ケリー周遊路にあるウォータービルへ。ここはチャーリーチャップリンの別荘があった町です。目の前に大西洋が広がり本来なら美しい眺めなのですが、あいにくの荒れ模様…。青く見られるはずの海がグレーに・・・。
今回の旅の目的の一つで、とても楽しみにしていたダークスカイリザーブでの星空鑑賞は残念ながら出来ませんでした。アイルランドの晴天は珍しい位なので、それも含めてアイルランドということですね。(しかし、これは本当に残念・・・リベンジせねば、です。)
■day6
今朝も目覚めると雨風…。基本的に晴れ女なはずでしたが、今回ばかりは負けました。ちょっと落ち込みましたが、気を取り直し素敵な朝食を楽しみます。
ウォータービルで宿泊した「BUTLER ARMS HOTEL」はかのチャップリンも通ったと言う4つ星のクラシカルなホテルです。
ホテルを出発するも雨足は強まるばかり…。暴風雨の中リング・オブ・ケリー(ケリー周遊路)を走ります。霧も深くさすがに雄大な自然は見渡せませんでしたが、道の両側の緑は生き生きとして、一年中この青さを維持出来ているのは雨が多いアイルランドの気候によるものだとつくづく感じました。
キラーニーまでは、途中小さな町スニーム、ケンメアを経由、国立公園内のビューポイントであるモルズ渓谷、レディース・ビューで写真を撮り、約3時間程で観光の町キラーニーに到着です。雨風の中、緑と海と岩々に囲まれた周遊路を走るのは、大自然に全ての方面から迫られている様で少し怖くもありました。それだけに手付かずの自然が残る素晴らしさも感じる事が出来ました。
午後、雨も上がり、薄日も差し始めたキラーニーの町を歩く事に。ホテルの数がダブリンの次に多い町だとは聞いていましたが、町自体は小さく、端から端まで徒歩30分もあれば回れるサイズです。観光地だけあり、町には観光客も沢山いましたが、ここでも日本人を見かける事はありませんでした。
キラーニーでは観光用に馬車が使われています。少し走るとすぐ国立公園なのですが、公共のバスもなく、タクシーも少ないので、観光も兼ねた交通手段として利用されています。馬のパカパカ走る音が優しく、この町にとても似合います。
■day7
翌朝、雨も降っていなく、太陽も僅かに出ていたのでキラーニー国立公園をリベンジせねばと「ロス・キャッスル」へ行く事にしました。朝7時前と早かったのでレセプションが閉まっていた為タクシーを呼んで貰えず、さらに町まで出てもタクシーは見つからず…。片道30~40分かかると聞いていたのですが、とりあえず歩く事に。
早朝に知らない道をひたすら歩くのも気持ちがよくただ黙々と歩いていると「ナショナルパーク」と「鹿横断注意」の看板が。きっともうすぐだ、と思ったところで鹿に遭遇!じっと見つめ合ってしまいました。
さらにひたすら歩くと、ようやく城が。やはり30分かかりました。笑
誰もいない薄曇りの中、国立公園の湖の湖畔に佇む城は幻想的で何とも美しかったです。またその周りには鴨が集まって寝ている様子が可愛く、しばらく眺めていました。
心残す事なく、ダブリンへ。キラーニーからは途中マーロウ(MALLOW)で乗り換え、約3時間の列車の旅です。
到着はヒューストン駅でホテルまではルアス(LUAS)で向かいます。ルアスもバスもダブリンでは便利です。
ダブリン前半に行けなかった「ギネス・ストアハウス」へ。ダブリンは天気もよくビール日和(?)でしたので早速行ってみる事に。
工場見学好きの私はワクワク、さすがの観光スポットで観光客も沢山来ていました。ここは7階建ての建物でギネス造りの工程や歴史が学べるようになっています。また入場料に1パイントのギネスが込となっており、6、7階のバーでダブリンの景色を見渡しながら飲めるのです。
アイルランドの自然に沢山触れ、ギネスも満喫して9日間の旅を終えました。しとしと雨の多いアイルランドですが、一年中緑と花が生き生きしているので、とても町並みが美しいです。
アイルランドはギネスだけではありませんでした!
自然や歴史に触れるとよりその国が見えてきます。人々がとにかく優しく、やっぱりギネスもシーフードも美味しいアイルランド。一度は行ってみる事をおすすめします。
今回はとにかく星空鑑賞が出来なかったのは残念でなりませんが、皆様に訪れて頂き、素敵な星空写真を送って下さる事をお待ちしております。
<オススメ度>
ニューグレンジ・タラの丘★★★★★・・・謎の世界遺産やアイルランドの故郷
ゴールウェイ★★★★★・・・海も近くシーフードも美味しく歩きやすい町
モハーの断崖★★★★★・・・やっぱり一度は行くべき
エニス★★★★・・・音楽好きなら絶対立ち寄って欲しい!
リング・オブ・ケリー★★★★・・・天気が重要。良ければ最高!
キラーニー国立公園★★★★・・・天気が重要ですが、雲がかった様子も幻想的。
(2016年6月 能祖文子)
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